酒にまつわる昔話はあまり多くはなさそうだが、酒の特徴をよくあらわしている話。
・お酒の発見(世界の民話10 ベトナム・タイ・インドネシア/小澤俊夫・編/ぎょうせい/1999年新装版
タイの話。
一人の狩人が木のくぼみに甘い飲み物を発見。
木のくぼみにたまった水の中に、鳥が麦の粒やくるみ、こしょうを落とし、発酵したものでした。
この水を飲むと鳥はフラフラ、狩人も胸も心もいきいき。
大声で踊りの歌をうたい、何度も飲み続けているうち、眠り込んでしまいます。
狩人は途中であった隠者ワルナと、飲むと楽しくなり勇気が出てくる水を売ることを思いつきます。
二人は大儲けしますが、人々は金が少し手に入ると酒を飲みつづけ、だんだん貧しくなります。
酔うためにお金を捧げることをおそれる人はだれもいない、酒が健康を損ない理性を破壊することを知っているのだけれど、今日まで酒から逃げられないひとがいる。
・ワインはグルジアから(五分間で語れるお話/マーガレット・リード・マクドナルド 佐藤涼子・訳/星雲社/2009年初版)
お酒のみの生態がうまく表現されている話。
ワインがまだ知られていない頃の話。
ブドウのジュースを飲んでいると、その味の素晴らしさに、動物たちがあつまってきて喧々がくがく。
ナイチンゲールがいうことには
三杯飲んだら、だれでも僕のように甘い声で歌うだろう
ライオンがいうことには
五杯飲んだら、おれさまのように強く勇敢になるだろう
セミがいうことには
七杯飲んだら、わたしのようにうるさく鳴きつづけるだろう
イヌがいうことには
九杯飲んだら、だれでもぼくのようにほえ声をあげるだろう
ガチョウがいうことには
十一杯飲んだら、だれでもおろか者になるだろう
ブタがいうことには
十二杯飲んだら、だれでも泥の中で転げまわるだろう
杯を重ねるごとの生態がうまく表現されていて、苦笑いです。
酒気帯び運転で事故を起こす例があとをたちません。ときには警察官まで。
わかってはいても理性で抑えきれない魅力があり、ほどほどというのができないのもお酒です。
イスラム教でお酒を禁止しているのも、酒の摩訶不思議な力にきづいたのかもしれません。
ワインの醸造の歴史は古く、この11月グルジアで発見された壺から8000年前!に醸造の痕跡が発見されたといいます。(2017.11)
最近相撲の栃ノ心が大関になりましたが、故郷がジョージアとあって、どこかと思っていたらグルジアのことでした。「ワインはグルジアから」も、いずれは「ワインはジョージアから」と改題する必要があるかも!(2018.6)