どんぴんからりん

昔話・絵本いろいろ。語るのを目的としたものでしたが・・。それにしてもまるで森に迷い込んだ感じです。(2012.9から)

アリババと40人の盗賊(私家版)

2014年02月27日 | 私家版
中学生のころ時間を忘れて、熱心に読んだ記憶のある千夜一夜物語。
 
 出だしの「ひらけ、ゴマ!」のフレーズは、多分、世界の子どもが知っていて、お話の世界に引き込んでくれる。モルジアナが、盗賊の手下がつけたドアの白や赤のチョークを発見して機転をきかして、ほかの家のドアのも同じ印しをつけて、アリババの家がどこかわからなくしたり、家にのりこんだ盗賊の一団が大きなかめに潜んでいたのを退治するところなど、よくわかっているシーンであるが、ドキドキさせられる。

 すでに、明治8年には、英語から翻訳されたものが出版されたとあります。調べてみるとアマゾンで取り扱っているだけでも、絵本だけで10種類以上の訳があり、その他のものも含めると相当数のものが出版されているようだ。

 しかし、この有名な話も、お話し会で聞いたことがないのが不思議なくらい。すこし長すぎるのでお話し会などでは話し難いのかも知れないが。

たまたまみた絵本(再話)が、話の流れを踏まえながらも、わかりにくいところが整理され、流れがイメージとしてあり、覚えやすいのではないかと思って挑戦してみた。
しかし、さすがに30分をこえると、初心者にはなかなか難物。時間のことも考慮して、下記の本を参考に私家版をつくってみました。
 (半年かけてなんとかおぼえました。このなかで整理していったものです 2014.9.4)

 タイトルは「アリババと40人の盗賊」が、一般的ですが、物語の構成からすると、こぐま社版の「アリババと召し使いのモルジアナに殺された四十人の盗賊」というのが内容をよくあらわしています。


   アリババと、召し使いのモルジアナに殺された四十人の盗賊/子どもに語るアラビアンナイト/西尾 哲夫 訳・再話  茨木 啓子 再話/こぐま社
   アリババと40人の盗賊/マーガレット・アーリー再話・絵 清水達也文/評論社
   アリババと40人の盗賊/アラビアンナイト 下/ディクソン 編 中野好夫 訳/岩波少年文庫/1961年初版
   アリババと40人の盗賊の話/アラビアンナイト/ケイト・D・ウイギン 阪井晴彦 訳/福音館書店/1997年初版

  (そのほか、菊池寛訳がネットにありました)


<アリババと四十人の盗賊>

 むかしペルシャに、カシムとアリババという兄弟が住んでいました。父親がわずかな財産を残して死んだので、二人はそれを半分ずつわけあいました。しかし、兄のカシムは結婚するとまもなく、おかみさんがたいそうな遺産を受けついだので、町でも指折り商人になりました。
 一方、アリババも結婚していましたが、貧しい暮らしを続けていました。アリババは近くの森で薪を集めると、唯一の財産である三頭のロバにつんで町に行き、これを売ってなんとか暮らしていました。
 ある日のこと、アリババがいつものように薪を集めていると、遠くの方に、土煙が巻きあがるのがみえました。見ると、馬に乗った大勢の男たちが、こちらに向かってきます。アリババは、ひょっとすると盗賊の一団かもしれないと思い、いそいでロバを木の茂みに隠すと、自分は岩山のそばの木によじのぼって、ようすをうかがいました。
 馬に乗った荒くれ男たちが、そばまでやってきました。アリババが数えてみると、四十人いました。顔つきを見ても、身なりを見ても、盗賊の一団にまちがいありません。男たちは馬からおりると、金貨や銀貨でずっすりと重い袋を鞍からおろしました。
 一人の男が、岩山の前に立ちました。アリババがかくれている木の真下です。きっとこの男が盗賊のかしらなのでしょう。男はアリババにもはっきり聞こえる大きな声でこういいました。
「開け、ゴマ!」
そのとたん、戸口がぽっかりと開いたのです。盗賊たちは中に入っていき、最後に頭も入ると、扉はひとりでに閉じました。
 アリババは、いつまた岩が開いて盗賊たちが出てくるかもしれない、と思うとおそろしくて、そのまま木の上でじっとしんぼうしていました。
 やがて、扉が開くと、四十人の盗賊が出てきました。今度は頭が先頭に立ち、そのあとから一団がぞろぞろとついてきます。さいごの一人が外に出ると、頭はまた大きな声で呪文をとなえました。
「とじよ、ゴマ!」
すると扉は、ぴたりと閉じてしまいました。
それから四十人の盗賊は馬にまたがると、頭を先頭に、きた道をもどっていきました。アリババは一団がすっかり見えなくなるまで、じっと目をこらしていました。
 アリババは、頭が扉をあけたり、とじたりするときにいっていた呪文をおぼえていましたから、自分もやってみたくなりました。
アリババは、木からおりると、岩の前に立ちました。そして大きな声でいいました。
「開け、ゴマ!」
すると、たちまち扉が開いて、大きく開きました。中は広い洞窟で、床から天井まで、うず高くつみあげられた絹織物やじゅうたん、それから、サンゴや真珠、色とりどりの宝石でできた装飾品に飾り物、その上、数えきれないほどの金貨や銀貨の袋でいっぱいでした。
この洞窟は、何十年何百年もかけて盗賊たちが集めた宝のかくし場所だったのです。アリババはぐずぐずせずに、やるべきことをすぐにはじめました。扉は、さっきアリババが中に入ると、ひとりでに閉じてしまいましたが、あけるための呪文を知っていますから心配はありません。アリババは金貨の入った袋だけを外に運び出しました。それから、袋を三頭のロバにつめるだけつむと、その上に小枝をのせてかくしました。これがすむとアリババは、岩の前にたって呪文をとなえました。
「とじよ、ゴマ!」
すると、扉は閉じました。扉は、人がはいると、ひとりでにしまるのですが、外に出ると開いたままになっているのです。

 アリババは家につくと、おかみさんの前に金貨の袋をどさりとおきました。おかみさんは、アリババが盗んできたかと思って、おもわずこういいました。
「なんてまあ、情けない、お前さんは!」
アリババは、金貨の袋を見つけたいちぶしじゅうを話して聞かせ、なにはともあれ、これはぜったいに秘密にしておかなければいけないといいました。おかみさんはすっかりうれしくなって、目の前の金貨を一枚残らず数えてみたくなりました。
「いったいどのくらいあるか知りたいの。枡をかりてくるわ」
おかみさんは、いさんで義兄さんのカシムの家に行きました。カシムのおかみさんは、アリババがひどく貧しいことを知っていましたから、義妹がいったい枡で何をはかるのだろうとふしぎに思いました。そこで、枡の底に油をぬっておきました。
 アリババのおくさんは家に帰ると、山ずみにした金貨を、はかり始めました。枡をいっぱいにしては、長いすの上にあけ、すこしずつはなして金貨の山をつくっていきました。全部をはかりおえると、アリババが金貨を袋に入れて、庭に掘った穴に埋めました。
 アリババのおくさんはすぐ枡を返すに行きましたが、枡の底に金貨が一枚くっついていることに気がつきませんでした。
 カシムのおかみさんは、枡の底を見ました。そして金貨がついているのを見ると、さけびました。
「まあ、なんてこと! 枡ではかるほどの金貨をアリババがもっているなんて」
 そして、カシムが帰ってくるとすぐに報告し、その金貨をみせました。金貨を見せられて、カシムはアリババがねたましくて、その夜は一睡もできませんでした。
 翌朝早く、カシムはアリババの家にでかけていきました。
「アリババ、何かかくしているだろう?貧乏暮らしをしていると思っていたが、枡ではかるほど金貨をもっているとはな!」
「なんですって、お兄さん」と、アリババはいいました。
「しらばっくれるな」カシムはあの金貨を見せていいました。
「いったいどれほどの金貨をもっているんだ?きのう貸してやった枡の底に、これがくっついていたぞ」
 これを聞いたアリババは、カシムとおくさんが、自分たちの秘密をかぎつけことがわかりました。人のよいアリババはカシムに、盗賊の宝のかくし場所をしったいきさつと、その洞窟に入ったり出たりするのに必要な、まじないのことばを教えました。
 カシムは翌朝、日の出も待たずに、十頭のラバに大きな箱をくくりつけて出かけました。宝ものをひとりじめしようと思ったのです。
 カシムはアリババから教えられた道を進み、やがて岩山につきました。カシムは、大きな声であの呪文をとなえました。
「開け、ゴマ!」
 すると扉が開きました。カシムが中に入ると、扉はひとりでに閉じました。
 洞窟の中には、アリババから聞いて想像していたよりもはるかに越える宝物が、ぎっしりとつまっていました。カシムはしばらくうっとりと見とれてしまいましたが、すぐに持てるだけの宝石や金貨の袋を、つぎつぎに入口のそばに運びました。ところが自分のものになる大金のことで頭がいっぱいになっていたので、扉をひらくための呪文が思い出せないのです。
 カシムは、ゴマではなく
「開け、オオムギ!」といってしまいました。
 扉は開くどころか、ぴたりと閉まったままです。あわてたカシムは、思いつくかぎりの穀物の名を、つぎつぎにいってみましたが、扉は少しもうごかず、とじたままです。カシムはとほうにくれてしまいました。そして、なんとか呪文を思いだそうと洞窟の中をせわしなく歩きまわりました。
 昼ごろ、盗賊の一団がもどってきました。岩の近くまでくると、背中に大きな箱をくくりつけた何頭ものラバが、あたりをうろついています。盗賊たちはおどろいて、ラバを追いちらすと、刀をぬいて、岩の前に立ちました。
 洞窟の中で、カシムは馬のひづめをの音を聞きました。盗賊たちが帰ってきたのにちがいありません。カシムはおそろしさのあまり、扉が開いたとたん外に飛び出し、盗賊の頭を投げ飛ばしました。しかしほかの盗賊の刃から逃れることはできず、その場で命をうばわれてしまいました。
 盗賊たちには、この男がどうやってここに入ったのか、またほかにも洞窟のひみつをしっている者がいるのか、まったくわかりませんでした。しかし、自分たちの宝はなんとしても守らなくてはなりません。盗賊は、カシムの死体を、四つに切り裂くと、見せしめのために、洞窟の内側にぶらさげておきました。
 さて、カシムのおかみさんは、一晩たっても夫が帰ってこないので、心配になってアリババのところへ行き、カシムの様子を見てきてほしいとたのみました。アラババはすぐに、三頭のロバをつれて森に向かいました。そして岩山の前に立つと、あの呪文をとなえました。
 扉が開きました。そこにあったのは、四つ裂きにされたカシムの死体でした。
 アリババは、兄の亡がらをていねいに布でつつむと、ロバの背にのせて、小枝でかくしました。そして、のこりの二頭には前と同じように金貨の袋をのせ、これも小枝でかくして、カシムの家に向かいました。
 アリババが、カシムの家のとびらをたたくと、若い女召し使いのモルジアナがでてきました。モルジアナはたいそうかしこく、どんなむずかしいことでも知恵と機転をはたらかせて、いつもうまく切りぬけるのです。アリババもそのことをよく知っていました。アリババは、カシムの身に起こったことをすっかり話してから、こういいました。
「これは、ぜったいに知られてはならないひみつだ。このつつみの中に、殺されたご主人の亡がらが入っている。みんなにカシムはふつうに死んだことにして、葬式をださなくてはならない。お前ならうまくやってくれるだろうね」
「わかりました」モルジアナは、おちついて答えました。
 さて、翌朝はやく、モルジアナは、町の広場でだれよりもはやく店をあける靴屋のムスタファじいさんのところに行きました。モルジアナは靴屋に金貨を一枚にぎらせて、いいました。
「ムスタファじいさん、ぬってほしいものがあるの。お道具を持って今すぐ一緒にきてくださいな。でも少し先までいったら、目かくしをさせてもらいますよ」
 これを聞いたムスタファは、眉根をよせました。
「おいおい、やましいことじゃあるまいね」
 モルジアナはさらに一枚、金貨をにぎらせました。
「やましいことを人にさせるなんて、神さまがおゆるしになりません。さ、こわがらずにいっしょにきてくださいな」
 モルジアナは通りをいくつか曲がると、布でムスタファに目かくしをし、手を引いてカシムの家につれていきました。そしてバラバラになったカシムの亡がらがおいてある部屋に案内すると、ようやくムスタファの目かくしをはずしました。
「ムスタファじいさん、これをぬいあわせてほしいの。そのためにきてもらったのよ。いそいでちょうだい。仕上げてくれたら、もう一枚金貨をおわたしします」
 ムスタファが仕事を終えると、モルジアナは約束どおり三枚目の金貨をにぎらせました。そして、また目かくしをしました。
こうしてモルジアナは、だれにも疑われることなく、カシムの亡がらを棺桶におさめました。カシムはていねいに埋葬されました。死体にきずは見られず、だれもカシムの死に方にうたがうものはありませんでした。
カシムの葬儀が終わってしばらくすると、アリババとおくさんはカシムの家にうつりすみました。カシムの店はアリババの息子にまかせることになりました。

 何日かたって、盗賊たちが森の洞窟にきてみると、おどろいたことに、カシムの死体がなくなっていて、そのうえ、金貨の袋までへっていました。
「おれたちのひみつは知られてしまった」と、頭がにがにがしい顔でいいました。「泥棒は一人ではない。死体がなくなって、金貨の袋がへっているのが何よりの証拠だ。はじめの一人を消したように、そいつの仲間も消さなくてはならない。さもないと先祖代々苦労してためた、お宝すべてを失ってしまう」
 手下たちがうなずくと、頭はつづけました。
「おれたちが切りきざんだやつのことが、町でうわさになっているにちがいない。そいつがどこのだれかを、つきとめるのだ。そうすれば、そいつの仲間のこともわかるだろう。もし、しくじれば、おれたち全員の破滅につながる。だから、この役目を引きうけて、しくじった者は、死をもってつぐなわなわなければならない」
 すると、すぐに一人の手下がいいました。
「頭のいうとおりだ。おれが男として、命をかけてやってみよう。だが、万一しくじったとしても、おれが仲間のために勇気と誠をささげたことは、わすれてくれるな」
 こうして手下の男は出発し、空が明るくなるころ、町につきました。
 男が広場までくると、もうあいている店がありました。靴屋のムスタファじいさんの店です。ムスタファは仕事をはじめようとしていました。男は声をかけました。
「やあじいさん、こんなに早くから、もう仕事かい。いい年なのによく目がみえるね」
「どなたかは知らんが、わしのことをごぞんじないね」と、ムスタファがいいました。
「ごらんのとおり年はとっているが、目はまだ、むかしのままだ。ついこのあいだも、ここと同じくらい暗いところで、死人をぬいあわせたばかりさ」
 男は小躍りしました。町についてさいしょに声をかけた人物が、こちらの知りたいことを話してくれたのです。
「死人だって!」と、男はおどろいた声でいいました。「それはつまり、死人をつつむ布をぬったということですかい?」
「いやいや、そうじゃないさ」と、じいさんが答えました。「いったとうりのことだよ。だが、もうこれ以上しゃべりませんぞ」
 もはやまちがいありません。これこそ知りたかったことです。男は金貨を一枚、ムスタファの手ににぎらせました。
「あんたのひみつをさぐろうってわけじゃないさ。知りたいのはただ一つ、あんたが死人をぬった家のことさ。案内してもらえないかねえ」
「そりゃだめだ。お前さんののぞみをかなえようにも、できんのだよ。あるところまでいくと目隠しされてその家までつれていかれ、帰りもおのじようにしてつれもどされたからね」
「それなら」と、男がいいました。「もう一度目かくしをしたら、思い出すかもしれない」
そういいながら男は、ムスタファの手にもう一枚金貨をにぎらせました。
 二枚の金貨を目にするとムスタファじいさんは、のどから手が出るほどほしくなり、少しかんがえてからいいました。
「せっかくのたのみだらら、ひとつできるだけのことはやってみよう」
 男は布でムスタファに目かくしをすると、手を引いたり、自分が手を引かれたりしながら歩いていきました。やがてムスタファが足を止めると「うむ、このへんだったな」と、いいました。
 ちょうど、そこは、今でこそアリババが住んでいますが、もとはカシムの家だった真ん前でした。男は用意してきた白いチョークで、すばやく扉にしるしをつけました。
 ムスタファと手下の男が立ち去ってしばらくすると、モルジアナが買い物から帰ってきました。モルジアナは、扉のしるしに気がつき、不思議に思いました。
「このしるしは、何かしら?子どものいたずらとは思えない。だれかご主人さまに悪いことをたくらんでいるのではないかしら」
モルジアナは用心のための、近所の家の戸口という戸口に、白いチョークで同じしるしをつけました。
さて、手下の男が仲間をつれて町にきてみると、どの家にも同じしるしがついていて、見つけておいた家がどれかわかりません。
もくろみは失敗し、男はおきてにしたがい、いさぎよく死をもってつぐないました。
 すると、すぐに別の一人が、自分ならもっとうまくやってみせる、と名乗りをあげました。
この男も、前の男と同じように、ムスタファじいさんに金貨をにぎらせ、目かくしをしてアリババの家をつきとめました。そして、前よりもっと目立たない場所に、今度は赤いチョークでしるしをつけました。
 しかし、モルジアナの目は、この赤いしるしも見逃しませんでした。モルジアナはきのうと同じように、となり近所の家の目立たないところに赤いしるしをつけたのです。
 こうして、二番目の男も失敗し、前の男と同じように死のつぐないをしなければなりませんでした。
 頭は勇気ある仲間を二人も失ってしまい、今度は自分がやらなければならないと考えました。そしてまたも、ムスタファじいさんの力をかりてアリババの家をつきとめました。しかし、頭は、とびらにしるしはつけず、その家のようすを自分の目にしっかりときざみつけました。
 頭は森にもどると、あの家の者を皆殺しにする計画を話して聞かせました。2,3日たった夕方、頭は油売りに変装して19頭のラバをつれてアリババの家にやってきました。どのラバの背にも二つの大きな皮袋があり、その中の一つだけに油がはいっていましたが、あとの皮袋には使いやすい武器をもった盗賊が入ってかくれていました。
 盗賊の頭は、門の前で夕涼みをしていたアリババに、夜になって行き暮れたので、どうか一夜の宿をかしてほしい、とたのみました。アリババはこころよく旅人を迎え、ラバを中庭にいれるようにいいました。それからモルジアナをよんで、客人のために食事と寝床の用意をするようにいいつけました。
 さて召し使いのモルジアナは、いわれたことをすますと、台所でおそくまで、朝ご飯のスープをつくっていました。するとそのさいちゅうに、ランプの火が消えてしまいました。
油がなくなったのです。油の壷の中もからっぽでした。それで、あの庭にあるたくさんの皮袋から、少しくらいもらってもいいだろう、と思って、壺を持って庭へ出て行きました。
ところが、はじめの皮袋に近づくと、中から押し殺したような声がしました。
「頭、もう時間ですかい?」
 モルジアナは、はっとしましたが、とっさに機転をきかせ、同じように低い声でいいました。
「いや、まだだ、もう少しまて」
 となりの皮袋からも、同じ問いかけがありました。こうして、同じ答えを繰り返していくと、最後の袋からは声がなく、そこには油がたっぷり入っていました。
 いまや、モルジアナには、はっきりとわかりました。アリババが油商人だと思って家に招きいれたのは、三十八人の盗賊だったのです。なんとか、ご主人の命を守らなくてはなりません。
 モルジアナは、いそいで台所から大きななべを持ってくると、油をいっぱいに満たし、それをかまどの火にかけて、ぐらぐらと煮立てました。それから庭に運ぶと、皮袋の口へ、つぎつぎに油をそそぎこみました。盗賊たちはひとたまりもなく死んでしまいました。
 真夜中になると、頭は起き上がって庭をうかがいました。頭はいくつかの袋めがけて小石をなげ、手下に合図をしました。しかし、どの袋からも、だれもでてきません。頭は心配になって、庭に出て袋をのぞいてみました。全部の袋をつぎつぎにのぞきました。手下は一人のこらず死んでいました。
 頭はまさかの失敗に打ちのめされて、塀を乗りこえて逃げていきました。

 一息つくと頭は、このままですませるものかと、仕返しの次の手を考えました。
 頭は、町に一軒の店を出すことにしました。洞窟から絹織物やじゅうたんを運んで店に並べ、名前もハッサンとかえて、アリババの命をねらう機会を待ちました。
 この店はぐうぜん、アリババの息子の店のすぐ前にありました。それがわかると、ハッサンはアリババの息子にあいそよくあいさつし、だんだん親しくなって、ちょっとした贈り物をやったり、店に招いて食事をするまでになりました。息子は自分の方からもハッサンをもてなしたいと思い、父親に相談しました。すると、アリババは喜んで、自分の家に招待しようといいました。
 盗賊の頭は、殺そうとねらっている男の家から食事にまねかれたのです。男は長いひげをつけ、変装してアリババの家にやってきました。だが、モルジアナは、客をひと目みるなり、これはあやしいとにらみました。それによく気をつけてみると、上着の下には短剣までかくしているではありませんか。モルジアナは、料理を出しおわると、果物とお酒を運びました。

 食事がすむと、モルジアナは、踊り子の衣装を着て入ってきました。きらびやかな飾りと美しい衣装をつけ、銀の帯には銀の短剣をさしています。
 みんなは、モルジアナの美しさと風変わりな踊りにうっとりみとれていました。
 突然、楽しい宴の席に悲鳴があがりました。踊りながら客の前に進み出たモルジアナが、いきなり剣を客の胸に突き立てたのです。
アリババはあまりのことに、大声をあげました。
「アーツ、なんてことをするんだ!わたしたち一家にわざわいをもたらすつもりか!」
しかし、モルジアナは少しも騒がず、盗賊の上着から短剣を取りだして客の正体をあばいてみせました。


 こうして、かしこくて勇敢なモルジアナは、盗賊との知恵くらべに勝って、アリババ一家を守りぬいたのです。
 アリババは、モルジアナを息子の妻に迎えました。
 結婚した二人は、アリババを大切にしながら、運命がさだめたときがくるまで、楽しく幸せに暮らしました。
 
コメント

ブレーメンのおんがくたい(私家版)

2014年02月25日 | 私家版
 むかし、ある人が、ろばを 一ぴき飼っていました。その ろばは、これまで長いとしつき、休まずせっせと 麦の袋を 水車小屋に運んでいました。けれども、いまでは からだが弱って、だんだん仕事ができなくなってきました。
 そこで、飼い主は、もう餌をやってもいてもしかたがないと思いました。
 すると、ろばは、風向きが悪くなったのに、気がついて、家をとび出し、ブレーメンの町をめざして、ひとりで歩きはじめました。そこへいけば、町の音楽隊に入れるだろうと思ったからです。

 ろばが しばらく行くと、一匹の猟犬にあいました。犬は道に寝そべって、まるで 走りつかれたように、はあはあ息をしていました。
「おい、なんだって そんなに はあはあいってるんだ、かみつきやくん」と、ろばは聞きました。
「ああ、ああ」と、いぬはこたえました。「わたしが 年をとって、ひましによわり、いまでは 猟にでても、走れなくなったものだから、飼い主が おれをぶち殺そうとしたんだよ。だから、ひっしになって 逃げ出してきたんだ。でも、これから どうして 暮らしていったらいいだろうねえ」
「それじゃ」と、ろばが いいました。「わしは ブレーメンの町の音楽隊に入るつもりだが、おまえさんも一緒にいれてもらったらいいよ。わしは、太鼓をたたく。お前さんはラッパを吹きたまえ」
 いぬは それはいい考えだと思って、ろばと一緒にいくことにしました。

 しばらくいくと、一匹のねこにあいました。ネコは 道端に座って、雨が三日も降りつづいたような、なさけない顔をしていました。
「よう、なにを そんなに ふさいでいるんだね、ひげふきばあさん」と、ろばは 聞きました。
「自分の命が 危ないというのに、誰が うきうきしていられるものかね」と、ねこがこたえました。「実は、わたしは としをとって 歯が弱くなり、ねずみを おいかけるよりは、ストーブのうしろにすわって、のどを ごろごろならしているほうがよくなったんだよ。それで、うちのおかみさんたら、わたしを川へぶち込むと いうのさ。そこで こうして 逃げ出してはきたものの、さて、どっちへいけばいいのやら、うまい考えもうかばなくてね」
「それじゃ、わしらと一緒に、ブレーメンへいこうじゃないか。お前さんの夜の歌はすてきだから、きっと、まちの音楽隊にはいれるよ」
 ねこはそのとおりだと思って、みんなと一緒に いくことにしました。

 やがて、この三匹の宿無しが ある屋敷のそばを通りかかると、一羽のおんどりが 門の上にとまって、声をかぎりに ないていました。
「おいおい、きみのなき声は、骨のずいまで ひびくなあ。いったいどうしたんだね」と、ろばがたずねました。
「今日は、いいお天気になるとしらせたのだよ」と、おんどりがこたえました。「今日は マリアさまのひで、マリアさまが おさなごイエスさまの シャツをあらって かわかそうと なさる日なんだからね。ところが、明日の日曜日には、この家にお客がたくさんやってくる。そして、ねえ ひどいじゃないか。このわたしを スープにしろとおかみさんが、料理番にいいつけたんだ。 今晩、わたしはくびをちょんぎられてしまう。だからこうして なけるうちに、のどをふりしぼってないているのさ」
「それじゃ、あかあたまくん、わしらと一緒に いこうじゃないか。わしらはみな、ブレーメンへ いくところなんだ。どこにだって、死ぬよりましなことなら ころがっているさ。きみはいい声をしているし、わしらが一緒に 音楽をやれば、すばらしいものになるよ」
おんどりは、ろばのいうことが気にいったので、ついていくことにしました。でも ブレーメンの町は遠かったので とても、一日ではいけません。日が暮れる頃、大きな森へやってきたので、四匹は、森で、一晩をすごすことにしました。

 ろばと いぬは、大きな 木の下に 横になりました。ねこは その木の枝に のぼりました。けれども おんどりは、木のてっぺんに とびあがりました。そこが 一番 安全だと 思ったのです。
 それから おんどりは、眠る前に もう一度、四方八方を ながめました。すると、ぽつんと一つ、明かりがみえます。そこで 仲間たちに、明かりがみえるから、あまりとおくないところに 家があるにちがいないと、おしえました。
「それじゃ、いってみよう。ここは いごこちが よくないからねえ」と、ろばがいいました。
いぬは、「そこに 肉のついている骨が、二,三本あったら なおいいがなあ」と、いいました。
 みんなで 明かりのみえるほうへ歩きだしました。歩いていくと明かりだんだんあかるくなり、だんだん大きくなりました。そしてとうとう、こうこうと明かりをともした家につきました。
 そこはじつは 泥棒の家でした。
 一番体の大きな ろばが、窓にちかよって なかをのぞきました。
「なにか みえるかい、あしげくん」と、おんどりが たずねました。
「なにか 見えるかだって?」 ろばが こたえました。「すてきな食べ物や 飲み物が ならんでいる テーブルに、泥棒たちが ずらり すわって、ごきげんで 食べてるんだ」
「それが わたしたちのものだったらなあ」と、おんどりが いいました。
「そうとも そうとも。なんとかして そのテーブルにすわりたいね」と、ろばがいいました。そこで みんなは、泥棒をどうやっておっぱらったらいいだろうと相談して、とうとう いいことを思いつきました。
 ろばが まず 窓に前足をかけました。それから、いぬが ろばの 背中に とびのり、 ねこが いぬの背中に よじのぼりました。そして、最後に おんどりが 飛びあがって ねこの頭にとまりました。
 さて、すっかり用意ができると、4匹は、いち、にの、さんでいっせいに音楽をはじめました。ろばは、ひんひんとなき、いぬは大声でわんわんとほえたて、ねこはにゃあにゃあとわめき、おんどりは、こけっこうと、ときをつくったのです。それからみんなが窓から部屋の中へなだれこみました。窓ガラスががらがらと割れました。

 泥棒たちは、このものすごい叫び声を聞いて とびあがり、ばけものがきたのだと思って、びっくりぎょうてん、森の中へ逃げていきました。
 4匹の仲間たちは、テーブルをかこんでごちそうを食べること、食べること。このさきひと月食べないでいてもいいくらい、どっさり食べました。
 
 4匹の楽隊は、おなかが一杯になると 明かりを消して、めいめいにすきな寝床をさがしました。
ろばは、庭のわらのやまのうえに、いぬは戸のかげに、ねこは暖炉の あたたかい灰のなかに、うずくまり、おんどりは、屋根の上にとまりました。そして、みんな旅の疲れで、まもなくぐっすりと眠りました。

 さて、真夜中もすぎたころ、逃げ出した 泥棒たちは、ようやく家のあかりが消え、音も しずまったのに気がつきました。
親分は、「あんなに あわをくうのではなかったわい」と、いって、手下を一人えらびだして、家をさぐりに やりました。
でかけた手下は、家中 ひっそりしているので、台所にはいって、明かりを つけようとしました。そして、ぎらぎらひかる ねこのめを、まだ炭が燃え残っているのだと思って、そこへ、マッチをおしつけて火をつけようとしました。
 こうなると、ねこは すましていられません。泥棒の顔へとびかかり、ふーっと うなって、ひっかきました。
泥棒は たまげて 裏口から 逃げ出そうとしました。ところが そこに寝ていた いぬが とびおきて 足に がぶりと、かみつきました。泥棒は 庭へ出て、わらのやまのそばを かけぬけようとしましたが、ろばが 後ろ足で、ちからいっぱいけとばしました。
そのうえ、この騒ぎで 目をさましたおんどりが 屋根の上から、「こけこっこう!」と、大声でなきました。
泥棒は、無我夢中で 親分のところへ 逃げもどって こう 話しました。
「いやはや、あの家には恐ろしい悪魔のばあさんがいますぜ。そいつが、あっしに息をふきかけ、長いつめで 顔をひっかきやした。おまけに 戸口には、ナイフを持った男がいて、あっしのことを 突き刺しやがるし、中庭には まっ黒のおばけがいて、こん棒で、あっしをぶったたくんで。そのうえ、屋根の上には裁判官がいて、「「泥棒をつれてこい」」と、どなるんでさ。あっしはもう命からがら逃げ出してきやした」
 
 これを聞いて、泥棒たちは、二度とこの家に、よりつこうとしませんでした。
 そして、四匹の音楽家たちは、ここが、たいそう気にいったので、それからずっと、そこにすみつづけたということです。

 このお話は、いま、聞いたばかり。話してくれた人の口からは、まだゆげがたっていますよ。


 外国の話で、有名なものについては多数の訳がだされており、とりわけグリムの場合は、その訳も多い。
 お話を語る場合、最初は当然テキストの選択からはじまるが、あまりあたりはじれ?がないのは、誰もがよく知っているようで、そのじつ、きちんと聞いたことがないというのが無難なところだろうか。
 自分にとって、話をおぼえるのは電車にのったときとかが多い。このとき本だと持ち運びが大変で、コピーをさせていただいて利用させていただいている。多数の訳を参考にさせて書き込みをしていると、わかりにくくなることもあって、私家版として整理をしている。
 なお、この話は、福音館書店の同名絵本、岩波少年文庫グリム童話集上、こぐま社の子どもに語るグリムの昔話4を参考にさせていただいています。
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アルプ湖の白鳥・・スイス

2014年02月22日 | 昔話(外国)
 魔法使いに白鳥にされてしまった王女と侍女2人。湖でであったヤギ飼いの少年に、人間にもどるため、三つの植物を手に入れてくれるように頼みます。

 少年はその植物を知らなかったが、母に聞くとすぐにその薬草が手に入ります。
 白鳥は、王女の国にくるように話すが、ヤギ飼いの少年は、ヤギを飼いつづけると、それを断わります。

 主人公が金持ちになったり、幸せな結婚をするなど、ハッピーエンドに終わる昔話ばかりと思うと、この「アルプ湖の白鳥」のようなおわりかたも。

 王女がでてくるので、結婚することになるかと思っていると、最後は今の生活を続けることを選択する少年。
 お話のなかには、少年の生活がどうのようなものであるか、ふれられていないが、豊かな生活をしているわけでもなさそうである。

 薬草を手に入れるためにさまざまな障害を乗り越えていくのが、昔話のパターンであるが、この話では、お母さんからすぐに手に入れることができたと、そっけない。また、助けられても、少年に何もしてあげない白鳥という存在も珍しい。

 劇的な展開がないことが、逆に印象にのこる話であるが、お話を聞く側では、物足りなさがのこりそうだ。


         アルプ湖の白鳥/世界のメルヒェン図書館4 山のグートブラント/小澤俊夫 編訳/ぎょうせい/1981年初版
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やまのばんさんかい

2014年02月21日 | 絵本(日本)
やまの ばんさんかいやまの ばんさんかい絵と文:井上 洋介出版社:小峰書店絵本ナビ

  年に一度の晩さん会。山のてっぺんの大テーブルには、動物たちが集まり、やまもりいっぱいの食べ放題。
  ここにでかけて行く、動物たちの様子が楽しい。

 「○○○ ふく きて ○○○」の繰り返しの言葉。
  前の○○○には、動物たち。そして後の○○○には、動物の特徴が短く織り込まれています。

 「かえるも ふく きて きどってはねる」
 「つるも ふく きて はねひろげ」
 「かめも ふく きて こうらもみがく」
 「やまねこ ふく きて ひげ ととのえて あるく」
  等々。

 
  子どもたちが、よく知っている動物たちが次々あらわれます。
  
  晩さん会なので、夕方から夜に動物たちがでかけていきますが、そのためか全体に絵が暗い感じ。ごちそうも、もう少したくさんあってもよさそう。


                    やまのばんさんかい/井上洋介/小峰書店/2013年初版
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動物のことば・・セルビアほか

2014年02月17日 | 昔話(外国)
 何かの力をかりて動物のことばがわかるようになるという昔話も多いが、結末に注目してみると、喜劇でおわるものと、悲劇でおわるものがあって、モンゴルの「石になった狩人」では、動物から聞いたことを話した狩人が石になってしまうという非劇?で終わっている。

  一方、「動物のことば」は喜劇仕立て。

 ヘビを助けたことから、動物のことばがわかるようになった羊飼いの男が、動物の話していることを聞いて大金持ちになるという話。
 しかし、動物のことばがわかることを他人に話すと、たちまち死ぬことになる。
 男が結婚し、二人が別々の馬にのっているとき、おくさんの乗っていた馬が、おくさんのお腹に赤ちゃんがいるので重いとグチをこぼします。これを聞いた男が笑い出すと、おくさんはどうしても笑い出した理由を聞こうとします。
 おくさんが、なんどもなんどもしつっこく聞いてくるので、男は覚悟をきめて、棺桶の中に寝て、わけを話そうとする。
 しかし、メンドリが「死にたい人は死ねばいいのさ。ばかばかしい。おくさんのわがままのために、死ぬなんて。」と話すと、男は棺桶からむっくりおきあがって、「さあ、話してやろう」といって、おくさんをぴしゃぴしゃぶつと、それから、おくさんはすっかりおとなしくなって、笑ったわけを聞こうとしなかったというもの。

  似たような話の場合、聞いた後にどちらのほうが印象に残るのか知りたいところ。「石になった狩人」は、お話し会でもよく語られているようなので、同時に「動物のことば」も話してみるのも面白いのかも。


          動物のことば/子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎/実業之日本社/1964年初版
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悪魔をだましたイワン・・ベラルーシ、悪魔と勝負した百姓・・チェコスロバキア

2014年02月15日 | 昔話(外国)
・悪魔をだましたイワン(子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎/実業之日本社/1964年初版)

 三人兄弟がでてくると、末っ子が活躍するというのが普通で、上の二人の役割は少ないというのが昔話のパターンですが、この話では珍しく、上の二人もうまくやってのけます。
 ただし、上の二人は、「にいさん」で、三人目だけがイワンと名前がついていますから、やはり末っ子がメインであることには変わりありません。

いまではあまり少ないと思いますが、三人兄弟が一緒に話を聞いても納得できそうです。(いつも、上の子が損な役割の話を聞いても違和感がなければいいんですが・・・・)

 おじいさんと三人の息子があって、おじいさんが死ぬ前に、一番上の兄には、きいろいネコ、二番目にひきうす、三番目のイワンにはわらじをつくる木の皮を残します。

 一番上の兄は、ネコがネズミを退治したのをみた王さまにネコをゆずるかわりに、銀貨を手に入れます。その銀貨で立派な家をたて、およめさんをむかえてしあわせに暮らします。

二番目の兄は、泥棒が、ひきうすにぶつかって大きな音をだして逃げていったときに残した金貨を手に入れて、上の兄さんのように幸せに暮らします。

 三番目のイワンは、わらじがぼろぼろになって新しいわらじをつくるために、木の皮をさきはじめたときに、悪魔にであいます。

 わらじをつくるひもで、悪魔をつかまえて売るつもりと話すと、驚いた悪魔に帽子いっぱいの金貨をもってくればゆるしてやろうともちかけます。

 イワンが、深い穴をほって、その上にそこのぬけた帽子をおいたため、いくら金貨を帽子にあけても帽子はいっぱいになりません。

 それにきずいた悪魔は、相撲に勝ったほうが、金貨をとることにしようともちかけます。

 すると、イワンは、悪魔をクマと相撲を取らせることに成功し、悪魔は逃げ出します。

 つぎに悪魔は、足のはやいほうが金貨をとることにしようともちかけますが、イワンは、ウサギと競争させ、これにも勝ちます。

 さらに、悪魔は口笛のうまいほうが金貨をとることにしようともちかけます。

 イワンはうまく悪魔を目隠させることに成功し、目隠した悪魔を思い切りなぐると、悪魔は逃げ出し、イワンは山ほどの金貨を手に入れます。

 これと似た話が、「悪魔と勝負した百姓」(チェコスロバキア)(中・東欧のむかしばなし 三本の金の髪の毛/松岡享子・訳/のら書店/2013年初版)

 兄弟は出てこないが、イワンが悪魔とやりとりする場面が、ほぼ再現されています。

 もともと悪魔は悪役。やりこめられても誰からも同情されないのですが、昔話の悪魔はどこか憎めません。


                    
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ぽっつん とととは あめの おと

2014年02月14日 | 絵本(日本)
ぽっつんとととはあめのおとぽっつんとととはあめのおと作:戸田 和代 / 絵:岡田 千晶出版社:PHP研究所絵本ナビ

 今日は朝から雪が降り続いていて、大分積もりそうな様子。
 1週間前に子どもたちが作った雪だるまがまだ残っていて、その上に雪が降り積もります。

 雪が降り続いている間は、子どもたちも家の中。なにをして過ごしているのかな。

 こんな日に、「ぽっつん とととは」と楽しいリズム感のあるこの絵本を読んあげるのもいいのかも。

 雨がふり続いて、つまらないあーちゃん。そんなところへ、かえるがやってきて「つまらなかったら、ぼくんちに いらっしゃい」とかえるさんがお誘いにきます。
 あーちゃん、ネコ、さる、うさぎ、きりん、ぞう、トラックの人形たちも傘をさして、かえるのパーテイにでかけます。
 「ぽっつん とととは あめの おと、
  げこげこ げーっこ
  げこげこ げーっこ
 演奏会がはじまると、かたつむりが はっぱをゆーらり ゆーらり
 ことりたちも えだで ぴちぴち ぴーっち
 はなも くるくる くるりんと すてきな ダンスをはじめます

 雨の日、寝ている小さな弟を、おこさないように、おかあさんから怒られた、あーちゃんが、かえるの家で大きなテーブルをかこんで、ケーキやクッキーを食べた、すてきな日になったのがうれしい。


      ぽっつんとととは あめのおと/戸田和代・作 おかだちあき・絵/PHP研究所/2012年初版
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ぼく、なきむし?

2014年02月10日 | 絵本(日本)
ぼく、なきむし?ぼく、なきむし?作・絵:長谷川 知子出版社:文研出版絵本ナビ

 どこの家庭にもありそうな男の兄弟の口喧嘩?

 どっちが泣き虫か、いいあいになっておにいちゃんに泣いて抗議する弟のしゅんたくん。
 くやしかったらえーんと泣いてお母さんにだっこしてもらえばいいじゃんといわれたおにいちゃん。
 本当はおかあさんに甘えたいおにいさんの目には大粒の涙。
 二人とも大泣きになりますが、おかあさんにだっこされると、とたんに涙がとまります。

 弟ができると、愛情を独り占めしていたのが微妙に変化するのが感じられるおにいちゃん。
 おかあさんも子育てに忙しいと、つい、おにいちゃんだから我慢しなさいといってしまうこともありそうですね。

 いってはいけないと思っても、つい口にしてしまう。
 でも、お母さんは、お兄ちゃんの気持ちをちゃんとわかってあげていますよ。


                            ぼく、なきむし?/長谷川知子/文研出版/2010年初版
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おくびょうものがヒーロへ

2014年02月08日 | 昔話(外国)
 世界の民話シリーズなどを読むと、各国に、人一倍のこわがりやが、英雄になるという話も多い。ところが、お話し会であまり聞けないというのも面白いところ。
語り手に圧倒的に女性が多く、あまり好まれない題材というのもありそうだが、男性の語り手が増えれば、こうした話も聞ける機会も増えそうに思う。
性別の差をことさらいうことはないが、やはり微妙な違いがでてくるのはやむを得ない面もありそうである。


<ごうけつネスニー>・・北コーカサス・チェチェーヌ族
 こわさのあまり刀をふりまわして、ハエを三匹ころしたネスニーが、「この刀は六十三人の巨人をうちころした刀なり」と自分の刀に書きつけ、小麦粉の袋を背中にかついで、旅に出ます。

 やがて、ネスニーは、村人をとって食べるというサイの背中に木から落っこちて夢中でしがみつきます。サイは村人が矢で射殺してしまいますが、ネスニーは「どんなにうまくてなずけてここまでつれてきたか見ていただろう」と話します。

 次に、敵がおしよせてきて戦いになりますが、馬に乗ったネスニーが、こわさのあまり木の枝にしがみつこうとすると、木が根もとから引っこ抜かれてしまい、手ににぎった木で敵を打倒してしまう。

この手の話では、自己PRする場面がかかせないようで、ここでは「六十三人の巨人をうちころした刀なり」と書いたのが、次の展開につながりますが、なぜ六十三という数字がでてくるのか知りたいところ。

また、いやだとしぶるネスニーを、おかみさんが有無をいわさずおくりだす場面が楽しい。


          ごうけつネスニー/世界のメルヒェヘン図書館5 火の馬/小澤俊夫・編訳/ぎょうせい/1981年初版
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雪わたり

2014年02月04日 | 宮沢賢治
雪わたり雪わたり作:宮沢 賢治 / 絵:堀内 誠一出版社:福音館書店絵本ナビ

             <雪わたり/宮沢賢治・作 堀内誠一・画/福音館書店/1969年初版>

 この作品は、1921年の12月と翌年の1月に『愛国婦人』誌に掲載された宮沢賢治のデビュー作で、この作品で得た原稿料が生涯で唯一のものであったという。

 昔話では、狐はずるがしこくて悪役という役割。狐が作る団子は、牛糞や馬糞というのが相場になっているが、この「雪わたり」では、だされた団子をおそるおそる?食べた四郎とかん子が、そのおいしさにびっくり。誤解が解けた狐の生徒が大喜びし歌い始めます。

 雪の降り積もった日、四郎とかん子は野原に遊びにゆき、「かた雪かんこ、しみ雪かんこ。きつねの子ぁ、よめぃほしい、ほしい」と森で狐をからかう歌を歌っていると本当に狐がやってきます。四郎と小狐の紺三郎のかけあいが面白いので、かん子が、つい「きつねこんこんきつねの子、きつねのだんごは兎のくそ」と歌ってしまう。それを聞いた紺三郎は笑って、きつねは人をだますなんて無実の罪を着せられていたと話し、11歳までという幻燈会に二人を招待します。

 十五夜の月が登った夜、二人は紺三郎との約束を思い出し、出かけようとすると、兄たちも行きたいと言います。12歳までという入場券をみて、兄たちはふたりに鏡餅をもたせてやります。
 二人が森の奥に進んでゆくと、林の空き地には、沢山の狐の生徒と立派な燕尾服を着た紺三郎が待っています。紺三郎は二人に挨拶をすると、間もなく幻燈会がはじまります。やがてスクリーンに「お酒のむべからず」と映し出され、太右衛門と清作が酒に酔って野原にあるへんてこなおまんじゅうやおそばを食べている二枚の写真が映し出されます。
 幻燈会がやすみになったとき、可愛らしい狐の女の子が黍団子を二人の前に持ってきますが、太右衛門と清作が悪いものを知らないで食べたところを見たばかりですから手がでません。きつねの学校生徒が食うだろうかとひそひそ話し合っているのを見た四郎は、紺三郎がだますはずがないと思い。二人は黍団子を平らげます。黍団子はおいしく、狐たちは信用してもらえた事に感激し、狐の生徒はどんな時でも嘘はつかず、盗まず、そねまないという歌を歌って喜びます。

 幻燈会の後半では、「わなを軽蔑すべからず」「火を軽蔑すべからず」という2枚の狐の絵が映されて、幻燈会が終了します。

 紺三郎は四郎とかん子に信じてもらえた事にふれ、狐達は、大人になっても、嘘をつかず、人をそねまず、今までの悪い評判をすっかりなくしてしまうだろうと閉会の辞を述べて解散となります。

 二人がおじぎして家にかえりはじめると、狐の生徒たちがおいかけてきて、どんぐりや、くり、青光りの石をプレゼントしてくれます。

  この作品はいろんな人が絵を描かれているということ。
  創作意欲をかきたててくれる作品ということでしょうか。

 「かた雪かんこ、しみ雪かんこ・・・」「キック、キック、トントン。 キック、キック、キック、キックトントントン」といった、リズミカルなフレーズに魅かれ、思わず口ずさみたくなります。
 そして、子狐の紺三郎と四郎、かん子との掛け合いだけでも楽しめます。

 高校生のころまで雪国に暮らしていましたが、かたくなった雪の上(大理石よりもかたくという表現は、賢治さんならでは)をわらぐつで、歩いたとき「キュキュ」という音がします。履いているのが、わらぐつでないとこの情景がなかなかうまく伝わらないのですが、堀内さんの冒頭の絵には、こんな音が聞こえてきました。

 また、狐からどんぐりやクリのほか、青びかりの石をプレゼントされる場面がありますが、石っこ賢さんと呼ばれていた賢治さんのことですから、どんな種類の石だったのでしょうか。
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艶笑話は?

2014年02月03日 | 昔話あれこれ

 世界の民話シリーズなど数多くの出版物で、大人向けのものは限られていると思っていたが、「民衆の笑い話/日本の民話11/瀬川拓男 松谷みよ子 編/角川書店/1973年初版」では、艶笑話も収録されている。

「古屋の漏り」に似た話で、お爺さんとお婆さんが、久し振りに、いっちょやろうかい」と夜の床ではじめてみたが、爺さんのあれはぐにゃぐにゃで思うところにいかない。ちょうどそのとき、盗人が雨戸の節穴から中をのぞいていたが、「まだはいらんか」とお爺さんがきくと、お婆さんがいうことには「外からよう穴をのぞいてな」。
それを聞いた盗人が、「知れとばい」とあわてて、すぐそばの溝に身を伏せる。
婆さんが「今、みぞのところをはうとる」というと、盗人は「ここの婆さんは千里眼じゃ」と逃げ出す。

 他にも夜這いの話など、男と女の性にまつわる話が。

 このような話は世界各地にも珍しくないはずであるが、このような話をする場がなくなってきたのもありそうである。

近年までみられたという若者宿や娘宿では、一定の年齢に達した青年たちが、集団で寝泊まりし、村内の警備や様々な作業を行ったり、共同で集まり親睦を図ったようである。特に祭礼では、若者組のメンバーが子供組を指導して中心的に運営を行う場合が多く、交際上必要となる飲酒・喫煙の指導、さらに村内の恋愛、性、結婚を管理する側面を持ち、リーダーが各自に夜這い を指示して童貞を捨てさせることも行われたともいうから、もしかしたら、このような場で語られていたのかもしれない。
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長崎の勘作話、能登の三右衛門話、土佐の勘作話  etc

2014年02月01日 | 昔話(日本)
地域の短くて数多い笑い話が一人の主人公に集約された話として、大分の吉四六話にふれる機会が多いが、このほかこうした主人公は能登の三右衛門、土佐の泰作話、北の海の茂次郎、山梨の市兵衛話、山形の佐兵治話などがあるという。

その一つ。長崎の勘作話。

・冬、足が冷たくて足袋をはいてお城にでかけた勘作が、足軽の分際で足袋をはくとは何事ぞとお目玉をくらったが、「こんたびは許す」と家老にいわれ、また足袋をはいてお城にでかける。家老がそれをみて、また足袋を履いているのはけしからんとどなるが、勘作はけろりとして、「紺足袋は許すといわれましたけん」といったと。

・藩境でうなぎをつっていた勘作。諫早藩の役人がやってきて、大村藩の者はここでつりをすることはまかりならんとしかりつける。しかし、勘作は大村のうなぎと諫早のうなぎが見分けられるといって、大きなうなぎは、大村、小さなうなぎは諫早のうなぎといってたんまりうなぎをとったということ。

・藩境に大きな石があって、城の庭石にしようとして、大村と諫早の役人が口論をはじめる。勘作は「びた一文で売る」と諫早藩の役人にもちかける。安い買い物とよろこんだ諫早の役人が「買った」というと、勘作は「もしも自分のものだったら、びた一文であろうと金をだして買うばかはいない」とお引き取りを願う。

・漁師が珍しいが名前を知らない魚を殿様に献上する。殿さまが勘作に「なんという魚だ」ときくと、「きんきらきん」と勘作が答える。
それからまたほどなく、同じ魚が干して献上される。殿さまがまた勘作にたずねると「ちんちらちん」という答え。前に答えた名前と違うので、殿さまがにらみつけると、勘作は「烏賊も干せば、するめと名が変わりますたい」

  能登の三右衛門
・蔵と鞍をかけた「蔵が7つ」
・いっぱいと、一はい(一匹)をかけた「烏賊がいっぱい」
・皮肉をいう「京へ行った三右衛門」

現地でどんな扱いになっているのかも知りたいところ。


                  民衆の笑い話/日本の民話11/瀬川拓男 松谷みよ子・編/角川書店/1973年初版
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