新編世界むかし話集⑦/インド・中近東編/山室静・編著/文元社/2004年
イスラエルの昔話といいますが、アラビアンナイトの「空飛ぶじゅうたん」と酷似しています。
出だしは、両親がなくなった三人兄弟が旅をするところからはじまります。
一番上の兄は、アメリカにいって、小さい飛行機を作ることに成功します。二番目の兄は、インドにいって、どんな遠くの国でおこったことも映る鏡、末の弟はアフリカへいって、食べたらどんな病気でも治るというリンゴを手に入れました。
二番目の兄が、魔法の鏡で、遠い国のお姫さまが、重い病気になっているのをみつけ、一番目の兄の飛行機でかけつけ、弟のリンゴでお姫さまの病気をなおします。
王さまは、姫の病気を治したら、娘を三人の兄弟のひとりと結婚させると約束していました。夫を選びなさいといわれた姫は、あなたがたがきめてくださいと兄弟に言います。
「飛行機がないと、遠い都まで、とてもくることができなかった。」「魔法の鏡がなかったら、お姫さまが病気だったこともわからなかった」「リンゴがなかったら、姫の病気はなおらなかった」
兄弟は、議論しますが、決められません。王さまはユダヤ人の顧問官の意見を聞きました。顧問官は、上のふたりに、この旅で何かを失ったのか尋ねます。飛行機も魔法の鏡もそのまま。末の弟のリンゴの一部がなくなったことを聞いた顧問官の審判は、末の弟が名誉にあたいすると裁定し、お姫さまと婚礼をあげます。そしてあたらしい国王は、兄さんたちを大臣に任命します。
飛行機が出てくるので、これって昔話?と、疑問がわきます。編著者が、五百余りの昔話のほとんどを一人で訳したとありますが、さすがに重訳があります。訳される段階で、もとの話が微妙に変化してくるので、どこかの段階で、飛行機は、別のものに置き換えられてもおかしくありません。せめて「空飛ぶ船」とするのが、ふさわしいのでは?。