ずいとん先生と化けの玉/作:那須 正幹 絵:長谷川 義史/童心社/2003年初版
トン、トン、トン・・・。秋の夜、医者のずいとん先生の家の戸をたたく音がします。見ると、一人の女が立っていて、病気の子どもを診てほしいという。かごにのっていった先は、山の中。
こんな山の中に家があったのかしらと首をかしげるずいとん先生の目の前に大きな屋敷、おおぜいの使用人がでむかえてくれます。
ずいとん先生は、「今夜いっぱいがとおげだろう」とつげますが「わしになおせぬびょうきはない」と秘伝の丸薬で子どもの病気を治します。
今夜は泊まっていってくださいと女にいわれ、酒のもてなしまで。
翌日、先生が目を覚ますと、そこは洞穴の中。まくらもとには一匹のきつねがいます。
きつねは先生にお礼をいい、小判がいいかお酒がいいかとききますが、小判をもらっても木の葉にかわっているだろうし、お酒は馬の小便かもしれないと考えた先生。
「きつねが人を化かすときに化けのかわというのをかぶるそうだが、ひとつみせてくれないか」ともちかけます。
きつねは考え込みますが、子どものいのちを救っていただいたお礼に、化けのかわならぬ化けの玉をみせます。
この玉、うしなえば五日のうちにきつねの神通力がなくなるというもの。
先生、すきをみて化けの玉をふところにいれて、いっさんに山をかけおります。
ここから化けの玉を取り戻そうとするきつねと、そうはさせまいとするずいとん先生のだましあい。
ずいとん(どういう意味でしょうか)先生、評判がよくない割には、化けの玉を持ち去ったのは、村人がきつねに騙されないようにもちかえったようにも思えるし、コレラがはやっているときくと、化けの玉を奥さんにたのんで、駆け付けるあたりは医者の使命感もあるようで、たんにずるいということではかたずけられません。
ここから二転三転。
結末は あららとなるのですが・・・。
化けの玉がタマネギだったというのは、なるほどはじめからきつねの思惑があったのかも。
まさに昔話で、長谷川さんの絵とともに楽しめます。