大人と子どものための世界のむかし話14 ビルマのむかし話/大野徹・編訳/偕成社/1991年初版
おばあさんが亡くなるとき、孫をよんで、兄には臼、弟には杵をのこします。
兄は臼をすぐに捨ててしまいますが、弟はいつも杵を持ち運びしていました。
ある日、弟が薪をひろいに森に出かけると、おおきなヘビがあらわれます。弟は慌てて木の上によじのぼります。するとヘビがいうことには杵を貸してほしいといいます。
この杵は、死んだ者の鼻に押し当てると生き返るとという魔法の杵でした。
弟がヘビと一緒にでかけていくと、一匹のヘビが死んでいます。しかし鼻先に杵をおしあてると、ヘビは生き返ります。
そのあと、弟は死んだ犬を生き返らせると、犬にンガポウという名前をつけます。
死んだものを生き返らせるので、弟は医者として有名になります。
あるとき王さまの姫君を生き返らせると、王さまは喜んで弟を姫君の婿にし、王子の位につけます。
この杵のおかげで、国中は死ぬ人がなくなります。
これを見た月の女神がなんとか杵を奪いとろうとします。
お日さまが照らしている時間に、月の女神がやってきて、杵を奪いとろうとしますがンガポウはにおいで女神を追いかけます。
そのときからンガポウは月をおいかけ、ときどき月に追いついてかみつきました。
すると、人々は「ンガポウが月をつかまえた」といいました。
それが月食ときです。
しかし月は犬よりはるかに大きいので、かみついても飲み込むことができません。そこでウガポウが月をはきだすと、人々は「ンガポウが月をはきだした」というのでした。これが月食のおわりです。
月食、日食などは、昔の人にとって不思議な現象であり、昔話で由来を説明するのは自然な成り行きだったのかもしれません。
この杵、もう少し活躍させてほしいところですが、死ぬ人がいなくなる世界はどんな風景でしょうか。