小田原周辺のマイナースポットや些細な出来事を少しずつ
小田原の端々



今から5年ほど前まで小田原市曽我の県道72号沿いにステンドグラスの工房と教室があった。主宰していたWさんとは仕事関係で知り合いとなり、たまに工房に立ち寄っては、Wさんの仕事や作品を見せていただいた。Wさんの作品の多くはランプシェードだったが、市内の教会などから依頼されステンドグラスのパネルの制作も行っていた。そのWさんのステンドグラスのパネルが巡礼街道に設置されていることを最近になって思い出し、先日巡礼街道へと出かけた。小田原市国府津から飯泉までまっすぐに伸びる巡礼街道は、現在では小田原の商業圏の中心となり交通量も多いが、古くは坂東三十三観音第5番札所の勝福寺へと続く巡礼道だった。その巡礼街道の飯泉交差点近くの下り線側の道路脇にステンドグラスをはめ込んだパネルが設置されている。ステンドグラスのパネルに描かれているのは恐らく坂東三十三観音を巡る巡礼者の姿。頭には管笠をかぶり、衣装は輪袈裟で手には金剛杖を持った典型的な巡礼衣装の巡礼者が描かれている。この巡礼者のステンドグラスのパネルは巡礼街道の上下線に各3枚ずつ設置されていた。何で交通量の激しい道路脇のモニュメントに割れやすいステンドグラスのパネルが選ばれたのかは分からないが、防護のためなのかアクリル板のようなものが裏表に取り付けられている。それでも多くのパネルのガラスが割れていたりヒビが入っていた。ステンドグラスのパネルを良く見てみると、パネル右下に小さな銅のプレートがあるのに気が付いた。プレートには西暦とアルファベットのW Mと刻まれている。多分制作年と作者のイニシャルと思われる。Wさんの名前のイニシャルは確かMだったように記憶しているので、このパネルはやはりWさんの作品に間違いない。6枚のパネルに刻まれた制作年を見たところ、1995年前後の数年間に制作されたようだ。今年の春にWさんの工房があった場所の前を通ると、建物はすっかりと取り壊されて分譲地になっていた。Wさんは生まれ故郷の北海道に帰ってしまったが、作品が今でも巡礼街道沿いに残っていて、なんだか嬉しくほっとした。今ではWさんの近況を知るすべは無いが、元気に制作を続けられていると良いのだが。

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