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入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「秋」(5)

2023年08月07日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 自慢の露天風呂に新たな問題が起きた。土中に埋めた塩ビ管から立ち上がる鉄製の管との接合部から水が漏れているのを発見し、それを直そうとして小屋に戻り、取り敢えずスコップを持って出ようとしたら、遠くに牛が3頭も囲いの外に脱柵しているのが目に入った。
 図体の大きな14番が他の2頭の先導役をしたのだろう。付近の草と落とし物の様子から脱柵は恐らく昨夜だったような気がする。少しは悪びれたふうを見せればまだしも、こういう時の牛の態度は尊大で、それで余計にこちらの頭に血が昇る。
 
 ウロウロ逃げ回る3頭を牧区の中に戻したら、もう水道工事をやる気など失せてしまった。とりあえず、本管からのバルブを閉めたから、水漏れは止まっている。このバルブを開き、風呂の蛇口を開ければ多少の水漏れはあっても浴槽に水を溜めることはできるから、入浴するのには問題ない。水圧が強過ぎるのだろう。
 
 京都から来ているKさんからは働き過ぎだとよく言われる。ようやく少しゆっくりできるかと思ったのも束の間、後からあとから問題ばかり起こる。気分直しに富士見に下って美味い物でも買って来ようかと思えば、これまた軽トラの燃料が乏しくて一度里に下らなければそれもできない。

 きょうの写真、これが野生鹿の実態。まさしく「鹿の天国」、牧場や人にとっては驚異的な数だ。最近は、以前ほど鹿やその対策が話題にならないが、この写真を見たら関係者はどう思うだろうか。
 群れの中にはほぼ角が伸び切った雄鹿もかなりいて、連日連夜奔放極まりない”乱交”を繰り広げているに違いない。実に腹が立つ。
 ザクセンの選帝侯アウグスト強権王の魔性の精力は生涯に400人近い子をなしたと伝わっているが、貧しい農民が城郭の奥で夜毎の狂宴に耽る王に対して抱いた気持ちとこの怒りは通ずる。あの憎き雄鹿の精がいかほど撒き散らされるのか、来春が気になる。
 先日も下からは鹿を捕獲せよと督促されているが、囲いと、それに隣接する牧区とには牛がいる間は罠を使うことができない。我慢の汗が流れる。

 芝平の特産唐辛子、北原師から聞いていました。調べてみます。
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 本日はこの辺で。
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     ’23年「秋」(4)

2023年08月05日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

  
 このテントの主であるお二人は8月の1日に京都から来て、滞在日数は10泊の予定になっている。旦那さんは70歳を超えているから、それなりに年配のご夫婦である。昨年は7泊したはずだから、今年は滞在日数がさらに増えた。
 古都の夏の暑さは酷しい。半世紀以上も前のことだが、洛北でひと夏を過ごしたことがあるから知っている。
 ここに来て、格別何をするわけでもなく、いい風に吹かれて気ままに過ごすだけで満足のようだ。酒は飲まず、もっぱら珈琲(kさんの場合はこの漢字を使いたくなる)を嗜み、言葉おだやかに蘊蓄を語る。
 自分にもどこかの山の中で、いつかこんなふうに数日を過ごす機会が訪れることがあるだろうか。連れ合いは諦めなければならないが。

 連れ合い、考えてみればそんな人をKさんのように、どこかへ連れて出掛けた記憶は殆どない。そもそもそういう発想がなかった。どんな山行も、今はそんなふうに思わないが、それを当たり前として通した。相手も、内心はどうであったかは分からないが、格別それで不満を訴えるようなことはなかったというのが、切ない言い訳になる。

 また牛たちが囲いの中に戻ってきている。もう、隣の牧区とは自由に出入りできることは分かっているはずだから、好きなようにしておくつもりだ。
 鳥の声を聞きながら、草を食む牛の姿を眺めるのは毎朝のこっとになっている。だから、その姿が見えないとやはり物足りなく味気ない。夕暮れにいい風が吹かないのと同じだ。
 
 そういえば、昨日畜産課長から電話が入り、9日の中間検査を控え前日に牛を集めるために課員を上に行かせるかどうかと聞いてきた。一人で大丈夫だと返事しておいたが、さてどうなるか。ずっと好天が続いているから当日の天気が気になるし、台風の進路も心配の種だ。
 
 昨日、3人の教師に引率されてやって来たOB4人と15人の高校生は、4時起きして、入笠山頂でご来光を迎え、テイ沢に下る。

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 本日はこの辺で。明日は沈黙します。
 
 

 

 

 
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     ’23年「秋」(3)

2023年08月04日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 
 囲いの中の草はほぼ食べ尽くされたと言っていい。外には充分な草があると言うのに、しかし牛たちはそこから出ようとしない。9日には中間検査があり、当然いい結果を出したい。
 忙しい日が続き、気にはしていたが敢えてこちらからは手を出さず、牛たちの好きなようにさせていた。それでも給塩の際などに見る限り、問題と思えるような点はなかった。
 
 一昨日、電気牧柵の点検をしていたら、囲いを出たところに牛の一歩踏み込んだ足跡があり、アルミ線が歪んでいた。どうやらそこで牛が感電し、以来囲いの外へ出るのを嫌うようになったということが考えられる。
 しかしそれは1頭の牛の身に起きたことで、その牛に追随して他の牛までが草の乏しくなった囲いから出ようとしないのはどう理解したらよいのだろうか。偶々感電した牛が群れを主導する立場の牛だった、ということぐらいしか思い付かないが。

 昨日は4人の女性職員が例の研修のため上がってきた。午前中は小入笠の頭まで電牧の点検に同行することが決まり、彼女らには思ってもいなかった登山となったが、雄大な景色をそこから初めて目にして皆喜んだ。
 案内した牧場管理人の10分の1,いや100分の1でもいいから、彼女たちにも自分たちが所属するJA上伊那の経営する入笠牧場を知り、より好きになってもらいたかった。青い空、白い雲、広大な眺め、心地よい風、こちらの目論見、気持ちは伝わったと思う。

 その女性らに半分冗談で、午後は囲いの中の牛を追ってみるかと尋ねたら、いいという返事が返ってきた。やはり、彼女らも牛を怖れるよりか、可愛いと思う女性たちであるらしかった。
 万一のこともある。まったく危険がないわけではない。勝手に牛守だけの判断でそんなことをさせて事故でも起きたら彼女らの身体ばかりか、優しい気持ち、母性本能も傷付けてしまう。
 しかし、牛たちは牛守の誘導に従い素直に囲いから出て、それを外から眺めていた彼女らには調教の成果を見せ、牛守としての面目を立てることができた。

 ここを訪れる人たちは、周囲の森や林の緑の色が美しいと褒める。これまでは、今の季節のありふれたその色を退屈だとか、物憂いとか言ってあまり相手にしてこなかった。
 ところが、ようやく人並みになったのか、このごろになって、新緑とは違うこの地味で主張を控えた色を好ましく、美しいと思うようになった。女性にもたまにそういう表情の人がいた、いる。

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     ’23年「秋」(2)

2023年08月03日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                          Photo by Ohtsuki

 赤羽さん、ご指摘の通りです。日本国の炎暑の夏の報は標高1700㍍のここまで届いています。それに都会だけでなく、各地で異常な高温により人ばかりか農作物にもかなりの被害が及んでいることも知っています。ですから、いくら何でももう秋というのは、という気持ちは充分に分かります。伝わってきます。
 
 それでも、ここはもう秋なのです。朝夕は長袖が欲しくなり、夜は薄い布団1枚では心細い思いさえします。それに、やがて旧盆が終われば、牧場ばかりか里も待っていたように季節は移ろい、秋色を少しづつ深めていきます。
 子供時代でも、われわれのころは2学期の始まるのが8月の中頃で、夏休みは20日ありませんでした。盆が過ぎ学校へ通うようになれば途端に、夏の季節とは切っても切れなかった天竜川が、急に川面の色を変えて余所よそしく見えるようになる、そのことを子供心にも感じながら大きくなったのです。

 今は午前4時、疲労困憊の中で目が覚め、赤羽さんらしいアイデアを吟味することはできそうもありませんが、牧場も変わっていかねばならないことを認識しています。
 昨日も早朝からPVの撮影が1本ありました。すべてが終わり、夕暮れの中で解体されていく舞台を眺めながら、あんな設備がここにもあればもっといろいろな企画が考えられると思ったものです。
 ただ、これからは遠くから眺めるだけでも充分だというのが本音でもあります。



     Photo by Ohtsuki(上2枚)

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     ’23年「秋」(1)

2023年08月01日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    会場にはちょっと顔を出しただけで、こんな写真しか撮れなかった
 
 慌ただしい日が去っていった。そして虚脱感が長く後を引いた。「大成功だった」と言ってくれた人もいれば、多数の人が「よかった、感動した」と言ってくれ、29日の平澤真希氏のピアノコンサートは概ね成功裏に終了した。その陰で多くの人、企業にも賛同し協力して貰えたからこそできたことで、そうでなかったならこういう結果にはならなかったと痛感している。本当に、感謝に耐えない。

 この話は、撮影の場合と同じく牧場内のある限られた場所、通称「アラスカの森」を貸すということで始まった。ところが次第にそれだけでは済まなくなってきて、この企画に関する諸々の雑用までが覆い被さってきた。
 プロデューサーもいなければ、監督もいない。渉外を引き受ける人や、制作の現場を率いる人もはっきりしないまま「ネイチャーピアノチーム」は動き出し、普段撮影現場で目にしていた以上の混乱が次々と出来した。
 
 ピアニストである平澤氏も、いつものように設定された演奏会場で幾つかの曲目を弾けば終わると言う話ではなかった。あらゆることが氏の小さな肩に降りかかっていき、一番苦労した人と言っても間違いないだろう。
 それでもよく折れずに、投げ出さず、最後まで意志を貫いた。その勁さに改めて感心したと、ここで呟いておく
 
 きょうから8月、下界では炎暑の夏は今真っ盛り、天気予報では「危険な暑さ」という言葉が毎日のように聞こえてくる。にもかかわらず、この呟きの題名は、もうすぐそこまで来ている高原の「秋」に変わる。
 すでに牧草の色は変化を始め、澄んだ青空に赤トンボも目に付くようになる。考えてみればあのコンサートが、われわれの「夏」だったのかも知れない。
 心の中で呟いておく。みんな、ありがとう、有難かった。すぐ大声を出して済まなかった。
「大日本湯渡り党」の同士諸君、秋になったらまたあの温泉へ行って、ゆっくりと湯に浸かろう。きっといい秋が迎えてくれる。

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