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入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「冬」(15)

2020年11月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 さて、何をするかだ。7か月働き、契約の切れた初日ぐらいは時間を持て余しつつ、行方の定まらない旅人になっていようか。
 予定通り、朝風呂に入った。その中で、読みかけの「おやじは荒野をめざす」を読了した。同書の著者井上氏67歳(?)は、当牧場キャンプ場の古くからの常連で、自然を対象にした魚釣り、登山、チョウなど多彩な趣味の持ち主である。客人であり、友人であり、後輩でもある。その彼が病膏肓に至ったのか荒野も荒野、極北のアラスカを長らく旅し、各地を訪ね、多くの人、自然、動物と出会い、それらの体験を1冊の本にまとめたのが本書だ。これは自費出版のようだが、取次店を通した販売も後日行われるやに聞いている。
 いろいろと興味深い旅のことが綴られているが、その中でフランク安田のことをきちんと押さえていたのには感心した。新田次郎の「アラスカ物語」の主人公のことである。
 彼フランク安田がかつて関係した交易所跡はすっかり荒廃し、一部はビニールシートで雨風をしのいでいるようなありさまとか。それも長年の間に相当痛んでしまったいるらしい。これを目にした井上氏はとても見過ごし放置するわけにはいかないと、何とかすることを決意して帰ってきたと記している。そう本人からも直接聞いた。
 
 最後にアラスカへ行ったのはもういつのことになるのか、そう思ってわざわざ古いノートを調べてみれば1992年とある。もう28年も昔のことだ。入笠にも「アラスカの森」と名付けた場所があり、それくらいだからアラスカはずっと頭の中から消えることはなかった。苦い思い出を伴うが、初めての海外もアラスカだった。行ってみたい国、場所は他にもないわけではないが、それでもあと一回、最後となる海外への旅なら、もう一度彼の地にしてもいいとずっと考えていた。あそこへ行けばきっと、空腹を抱えて貧乏な旅を続けていた遊子、今よりか若かった切ない自分に会えるだろうという気がする、是非会ってみたい。
 井上氏には、同行する用意があると伝えてある。ただ、牧場の仕事の決着が済んでからにして欲しいとも。あそこも、アラスカに負けない、かけがえのない、かけがえのない土地なのだから。



 たくさんの柿の実が、小雨の中あるかないかくらいの風に揺れている。これからこの柿の実が落ちつくすまで椋鳥の跳梁を許しつつ、責められるように眺めているしかない。
 本日はこの辺で。


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