ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅             逮捕・・・・・13

2012-11-26 | 1部1章 逮捕

クシナガラ 涅槃ブッダ インド逃亡の最後に立ち寄る地と考えていた

鍵を開ける金属音が朝になったことを教えた。鳥の鳴き声、視界がゆっくりと広がって空気が動き始める。動き出す人々の影が壁に残って消えた。のろのろとぼくは房の外へ出て中庭へ行った。皆、座ってティーを飲んでいる。ティーを飲もうと進んで行ったぼくの身体に胡散臭い視線が絡まった。ジャパニーか?ぼくはふら々と房へ戻り毛布でロープを作った。外房の天井の鉄格子からロープの輪を吊り下げ周りの気配を窺った。
「あなたのケースはミニマムで10年の刑に相当します」
ここ数年で約300g以上の粉をやってしまった、切る事は不可能だ。数ヶ月の長い禁断の苦しさを続けるぐらいなら一瞬の死をジャンプすべきだ。自分で分かっていた、死を迷うより一瞬のチャンスを失敗しないこと、そのことしか頭になかった。鉄格子を這い上がりロープに首を掛けようとした時、監房の外に人の気配を感じた。薄暗い房内に隠れ聞き耳を立て人が去るのを待った。外房の天井に吊るされ揺れるロープに外と内の空気が緊張した。何が起ころうとしていたのか感じとられたに違いない。インド人に見つかってしまった。抵抗する気力や体力は既になく中庭に集められた20名ぐらいのインド人の前に引き摺り出された。ヒンディー語の報告と理解不能なざわめきだけが続いていた。
「奴はシックだ、アシアナに入れるしかないだろう」
と言う英語だけが理解できた。白いインド服にブルーのベストを着た大きなアフリカンだった。

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