靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

スズキ式ピアノ、母語のような音楽

2013-11-03 04:57:07 | 子育てノート
週末、友人息子君9歳のピアノリサイタルへ。自宅にお友達を招き、バッハ、ベートーベン、モーツァルト、シューマンなど8人の音楽家の14曲。合間にそれぞれの音楽家についての生涯などの説明も本人から。9歳にしてよくこれだけ全て暗記し弾ききったなあと感心。

4歳から習っていたピアノ、3年前に「スズキ式」に変え、ぐんと伸びていったと友人。

スズキ式の大きな特徴は、「音から学ぶ」というものだけれど、確かに、楽譜をなぞった音でなく、身体に染み込んだ音。「楽譜」を覚えるというより、身体の中に入った「音」を覚えているといった様子。

もう一つのスズキ式の特徴は、「競争」を排した環境のなかで音楽性を育むというもの。息子君のリサイタルも他と比べられることのない自宅で一人という環境。


今我が家の子供達が習っているのは、全く反対のメソッド。初めからセオリーもしっかり習い、楽譜をきちんと読めるよう教える。音だけを頼りに弾こうとすると、楽譜から目を離さないよう注意される。他の先生に習ったこともあったけれど、この先生に行き着いたのは、ひとえにこれほど技術面を細かく丁寧に見てくださる方はいないと思ったため。拍子強弱姿勢全てにおいて完璧でなければ、次の曲にはいけない。そしてピアノ・コンピティションも、この先生の生徒が上位をずらりと占める。徹底的に「勝てる」弾き方の教授。

上の四人が習ってきて二人止めたのだけれど、今更ながら、ああ、あの子達には、スズキ式の方が合っていたかなと思う。もっとその子自身の音の探索を楽しませてやればよかったと。長女も一旦止めたところ今年から戻り、それでも過密スケジュールに以前のようなペースでは練習もできず、ゆったりと楽しむためのみにしているのだから、ここまで完璧を求める必要もないなと思ったり。

どちらにしても毎日の練習の積み重ねというのは、必須。それでも楽譜をしっかりなぞることに力を入れるのと、とにかく聞いて音を身体に入れるのと、練習の仕方も随分と違ってくるでしょう。


昔の職場の上司が、スズキ式開発者鈴木鎮一氏(1898–1998) 直々にバイオリンを習った方だった。鈴木氏はいつも言っていたという「お豆腐屋さんの子でもね、素晴らしい音楽を奏でられるようになるんだよ」

楽譜を読めずとも、セオリーなど知らなくても、心に響く音を奏でられるようになると。

母語は読み書きやグラマーによって身につくわけではない、小さな頃からの環境によって話せるようになるもの、そう幼児の母語習得からヒントを得たとされる鈴木氏。いい音に囲まれることで、母語のように、音楽がその子の内に自然に息づき始めると。


止めた子も、ピアノを触りながら、「もう一度したいなあ」と言うことがあるのですが、他にやりたいこととのスケジュール&経済的な面とで、なかなか難しく。五人目、もし「ピアノしたい!」と言うならば、今度はスズキ式でいってみようかな、そう思っています。


友人息子君リサイタル。


その後のスナックタイム!


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-11-03 17:59:18
非常にタイミングよく!この記事をあげてくださり、考えるきっかけを下さり、ありがとう。
「母語のように音楽がその子の内に息づき始める」、目からうろこでした。こういうアプローチの仕方もあったのだと。特に幼い子が習い始めるには、スズキメソッドほうがより自然で無理のない入り方かな、と思いました。
個人的には、ピアノを習うということは、(母語の中の)学習言語の獲得に近いのかな、と思ってきました。こちらの方法だと、視覚もフル活動させるので、音が身体に入り込むのに時間がかかる、ように思います。それに「練習」という言葉が非常に似合ってしまう、ね。
その子、その人の好みのメソッドで、無理なく音を楽しめれば良いですね。伝統的なメソッドで始めた娘ですが、時折本当にうっとりと弾く瞬間が訪れるようになりました。
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Unknownさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2013-11-10 14:27:03
Unknownさんのタイミングに合えて嬉しいです。

私も目からうろこでした。「お豆腐屋さんの子でもね・・・」というフレーズはもう何年も前に聞いたのですが、「母語習得」から鈴木氏がヒントを得ていたというのを知ったのは、つい最近です。そうして初めてストンと、「お豆腐屋さん・・・」というフレーズの意味が理解できました。

「学習言語の習得」、なるほどです。まっさらなところに読み書きから入るのと、まず聞く話すを上達させてから学習言語に移るのと、もし小さな子ならば、最初はスズキ式が適っているのかな、とも思えますね。

読み書きはできても、聞く話すが苦手、伝統的メソッドで習った私自身を振り返ると、何だか日本人の英語の習得に似たものを感じてしまったり。(笑)

それでも小さな頃から学習言語が得意な子もいて。Yちゃんもそのタイプなのかな。というよりYちゃんは十分「学習言語」に移る土台ができていたということなのかもしれませんね。

本当ですね、それぞれの子に合う方法があって。うっとりと聞き入りながらのYちゃんの演奏、聞いてみたいです。またあれから随分と上達したのだろうなあ。本当に頑張ってるものね。

この前は声を聞けて嬉しかったです。今日雪が少し積もりました、とうとうですね。からりと晴れ渡ったそちらの空を想いつつ、今週も良い日々をお過ごしくださいね。ありがとう!
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