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にしみの鉄道情報局付属ブログ

電気主任技術者の話・10 低濃度PCB

2024-01-16 | 電気主任技術者

ここ数年、多くの電気主任技術者や電気工事業者などを悩ませているものに低濃度PCBがあります。

 

PCB、ポリ塩化ビフェニルは絶縁油として、1954年頃から変圧器や力率改善用コンデンサ、蛍光灯安定器などに使用されていました。1960年代後半にそのPCBの有害性が判明し、1972年に生産中止、1975年に使用禁止になりました。その後、廃棄も禁止になり、耐用年数が来たPCB機器は使用者が適切に保管する事になりました。

それらの処理は2000年以降、技術の発達で処理が可能になり、適切に保管されていた機器は日本環境安全(現中間貯蔵・環境安全事業)にて、ほぼ処理が完了しています。ただし、未把握のPCB機器があり、時折発見されています。この後から出てきたPCB機器の処理については、色々問題になっています。

 

PCB機器がこのように一応適正に処理されてきた一方で、非PCB機器のPCB含有問題も2000年代以降に判明しています。

電気機器の絶縁油は、現在新油が使われていますが、かっては再生油が使われていました。PCBの使用禁止の前もしくは、それ以降に非PCB使用機器と誤認されて、廃棄された電気機器の絶縁油が、再生に回され絶縁油の中に混入しました。

1989年以降絶縁油の再生は行われなくなりましたが、それ以前の変圧器や力率改善用のコンデンサの絶縁油には、再生油が使用された場合、ごくわずかなPCBが含まれている可能性があります。0.5%以上絶縁油にPCBが含まれる機器を高濃度PCB、0.5%以下を低濃度PCB機器としています。測定機器の検出限界の0.5mg/kg(0.00005%)以上のPCBが含まれる低濃度PCB絶縁油及び変圧器や力率改善用コンデンサは、指定された処理施設で、適正に処理する必要があります。

ちなみに0.5mg/kgというのは国際的にかなり厳しく、10mg/kg程度までは通常の油として廃棄できる国が多いようです。

 

実際のところ、変圧器の絶縁油を抜き出すことは簡単ですが、力率改善用コンデンサは密閉構造なので、取り外してドリル等で穴を開けて、油を抜き出す必要があります。そのため、コンデンサに関しては、使用停止後の調査ということなります。

1970年代1980年代の変圧器からは比較的よく低濃度PCBは見つかりますが、1990年以降の変圧器からも、たまに低濃度PCBが出てきます。一説では絶縁油交換を行った際に、ポンプを共有していて、その際に廃油が混入したのではないかと言われています。

この低濃度PCBの問題が表面化したのは2005年頃からで、そのあたりから徐々に調査が進みましたが、それ以前に相当数の低濃度PCB混入の変圧器やコンデンサ、交換された絶縁油が廃棄されたのではないかと言われています。

 

さて、この低濃度PCBの問題は年々規制が厳しくなり、絶縁油の引取や混入も、低濃度PCB不在証明書が必要になっています。近年では、変圧器の絶縁油の交換の場合、低濃度PCB不在証明書に記載された変圧器の製造番号と、実際の銘板の写真の製造番号が一致しないと、廃油処理業者が引き取らないそうです。

 

ここまでは、受変電設備の話ですが、それ以上に厄介な話なのが、蛍光灯や水銀灯の安定器です。安定器のうち、電子式の蛍光灯安定器は問題ないのですが、それ以前の力率改善用コンデンサが内蔵されたもの、ラビットスタート式の安定器も廃棄が近年難しくなっています。力率改善用コンデンサには、絶縁油が大抵入っています。今のところ、分別すれば処分できるようですが、色々難しい話も聞いています。

 

水銀灯などのHIDランプは、低圧ナトリウム灯など一部のタイプを除いて、水銀を使用しているため、水俣条約により2020年に製造禁止になり、蛍光灯も本体はすでに生産を終了し、交換用のランプが2027年までに製造を終えることになっています。LEDへの置き換えは進んでいますが、在庫品の流通や継続使用は禁止されないので、点灯時間の短い箇所を中心に、相当先まで蛍光灯や水銀灯が残ると思われます。

 

低濃度PCBは2027年までに処理を終えることになっています。受変電設備の変圧器や力率改善用のコンデンサだけでも難しいのに、世の中のラビットスタート式蛍光灯安定器及び水銀灯安定器、1989年以前のものに限っても全廃することは2027年までには無理だと思われます。

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