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にしみの鉄道情報局付属ブログ

電気主任技術者の話・3 特高受電

2020-03-19 | 電気主任技術者
前回は高圧受電の話をしましたが、今回は電力会社の送電線から直接電気をもらう特別高圧受電(特高受電)の話をします。
大規模工場や大型の商業施設、タワーマンションやオフィスビルなどの高層ビル、鉄道変電所などが特高受電の代表例です。

特高受電になる条件ですが、原則として電気を1時間あたり2000kW以上使う需要家となります。
また、2000kW以上の自家発電機がある場合、特高受電でないと電力会社は系統連系を許可してもらえません。そのため、2000kW以上の自家発がある場合、電力会社からの受電が1時間あたり2000kW以下でも、特高受電になります。これは、自家発電機が故障等で停止したとき、バックアップ用の電気を電力会社から供給するためで、バックアップ用の電力は自家発補給電力と呼ばれます。この自家発補給電力も含めて、2000kW以上の場合、特高受電になります。
ただし、近隣に送電線がない場合など、1時間あたりの使用量が2000kW以上でも自家発電がなければ、例外的に高圧受電になります。

特別高圧は、法令上の定義では7000V以上ですが、実際の受電電圧は22KV、33KV、66KV、77KVが多く、一部では154KVも見られます。
1時間あたりの受電電力が10000kW以下であれば、22KV、33KV受電、10000kW以上が、66KV、77KV受電、50000kW以上が154KVとされていますが、近隣の送電線との兼ね合いで、郊外の工場などでは5000kW以下でも66KV、77KV受電が多く見られます。

高圧受電ではほぼ1回線受電ですが、特別高圧受電からは2回線以上で受電するケースも多数見られます。これは特別高圧の場合、電力会社側、需要家側ともに送電線路の補修や遮断器の点検は、原則として停電が必要なためです。高圧の配電線では、停電を伴わない補修工事のケースもあります。
2回線受電の場合だと、通常、片側から受電して、予定された停電時は予備の側に手動で切り替えて受電します。また突発的な停電時には、予備の側に自動的に受電を切り替えて復電する機能もあります。
電力会社側では2本の送電線を1号線2号線として区別していますが、同じ送電線路でも、需要家および配電変電所によって2回線のどちらから受電しているかは異なります。また受電している側の送電線を常用線や本線、予備の側を予備線と呼ぶ場合もあります。

3回線で受電するスポットネットワークという方式もあります。これは3回線のうち2回線で受電して、回線の停電時に瞬時に予備線に切り替える方式です。この切替が自動で、瞬時に行われるので、データセンターには好まれますが、供給電圧が原則22KVもしくは33KVなので、大きな需要化には対応できません。周りの特高受電の需要家は3回線受電のスポットネットワークなのに対して、超高層ビルのような大きな電力が必要な需要家だけ、77KVの2回線受電というケースもあります。
また、スポットネットワークの送電網があるのは、東京23区の半分程度と横浜市、川崎市、名古屋市、札幌市、仙台市、大阪市、福岡市などの中心部に限られます。
また、1回線の特高受電も少なからず見られます。これは、電力会社の変電所と需要家の送電線路が直結していて、配電用変電所や他の需要家がない場合などは比較的多くみられます。
また、古い時代からある33KV送電線路では、もともと1回線しかなく、送電線路の点検工事などの時は、その送電線から受電している特高受電の需要家すべてを停電にする必要があります。鉄道変電所が1回線の送電線路から受電していると終電後の夜間しか、送電線路の停電ができないケースもあります。


この特高受電では電気主任技術者の常勤が義務付けられます。高圧受電までは、電気主任技術者は外部委託可能なので、社内で電気主任技術者を雇い入れる必要はないのですが、特高受電の場合、工場などでは社員の中から電気主任技術者を選んで選任します。また商業ビルなどでは、ビル管理会社に電気主任技術者が電気主任技術者を選任しています。
第三種電気主任技術者は50KVまでしか管理できないので、66KV・77KV・154KV受電が多い郊外の工場は第二種電気主任技術者が必要になります。
ただし、第一種電気主任技術者、つまり170KV以上の需要家は知られている限りでは、新幹線の鉄道変電所で275KV受電があるのみです。そのため第一種電気主任技術者は非常に需要が少なく、電力会社や発電事業者を除くと、ほとんど必要ない資格になります。

続く
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