さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

シーズンの到来を告げる 日本を代表する「とちおとめ」

2023-03-26 13:30:31 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より那賀地方を中心に県内各地で栽培される「いちご」を取り上げている。
今週は、12月上旬にシーズンのトップバッターとして店頭に並ぶ「とちおとめ」を紹介したい。


【写真】印南町産の「とちおとめ」

とちおとめは、栃木県農業試験場で育成され、1996年に品種登録されたいちご。
「久留米49号」というサイズが大きく多収性がある品種と、大果で甘い「栃の峰」という品種を掛け合わせてできた。女性のように美しく、多くの人に親しみを持ってもらえるようにという思いを込めて命名されたという。
東日本におけるシェアで1位となるほど収穫量が多く、一般的な品種である。

形は円錐形で果皮は光沢があり、果肉まで赤く染まっている。食してみると、糖度が高く酸味も程よくある。果汁が豊富でありながら果実がしっかりしており、日持ちがよい特徴がある。

令和3年度の調査によると、とちおとめの作付面積は全国1位で全体の約24%を占める。
店頭でよく見かける「あまおう」は約10%で、「紅ほっぺ」は約8%となっており、とちおとめが日本を代表する品種であることがよくわかる。

また、栃木県はいちごの作付面積が全国1位(約10%)で、とちおとめの他にも大粒が特徴の「スカイベリー(栃木i27号)」や、果皮が白い「ミルキーベリー」、夏に収穫ができる「なつおとめ」、近年誕生した「とちあいか」など、様々な品種が栽培されている。

西日本の地域で手にする機会は少ないかもしれないが、筆者は県内の産直市場で印南町産のものを購入した。
シーズン到来を告げるとちおとめ。僅かながら県内でも栽培されているので、見つける機会があればぜひ食してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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健康づくりにも有効 那賀地方を中心に栽培「いちご」

2023-03-19 16:40:05 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号まで、伊都地方が誇る和歌山県産の柿について取り上げた。
今週からは那賀地方を中心に栽培が盛んな和歌山県産のいちごを紹介していきたい。


【写真】和歌山県産の「いちご」

和歌山県におけるいちごの栽培は昭和30年頃に始まったとされる。北部の紀の川流域や沿岸部など県内で広く栽培され、主な品種は和歌山県農業試験場が育成したオリジナル品種「まりひめ」や全国的に知られる「さちのか」となっている。
平成19年産野菜生産出荷統計によると、県内の栽培面積は57ha。全国のいちごの栽培面積は約5000haであることから、全国で比較すると1%程度の面積となっており、いちごの一大産地というわけではない。

いちごの栽培は7月頃から始まる。苗を植え付け、つるのように伸びるランナーという茎を出した後、苗をポットに植え、本葉が4枚程度になるよう下葉を取り除いて育てる。
9月になると畑に定植し1つのうねに2列に植え付け、10月にはハウスにビニールを設置。開花が始まるとミツバチを放ち受粉を行う。夜間は照明を当て、いちごが眠ることが無いよう日を長くする工夫が必要で、昼間は25度、夜間は6度以上になるよう温度管理を行う。
収穫は12月から翌年5月頃まで。赤くなった実から収穫し出荷していく。

いちごは栄養が豊富で、ビタミンCはレモンに匹敵するほど含有。免疫力を高める効果があり感染症対策や皮膚を丈夫にする働きが期待されている。
食物繊維のひとつであるペクチンも多く含まれ、便秘や高脂血症の予防に有効とされる。
他にも、葉酸は動脈硬化による心筋梗塞や狭心症を防ぐ効果があるなど、健康につながる様々な要素が含まれている。

県内では、まりひめやさちのかの他にも多くの種類のいちごが栽培されている。
お気に入りのいちごを見つけ、美味しく味わっていただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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市場を意識し新たな価値を 目が離せない和歌山生まれの柿

2023-03-12 16:39:11 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
これまで、伊都地方が誇る和歌山の柿と題し、県内で収穫される代表的な柿を13種類紹介した。
今週は、これらの柿の魅力を振り返りたい。


【写真】県内で収穫される様々な柿

柿シーズンの始まりを告げるのが「刀根早生柿(とねわせがき)」。9月下旬から10月上旬頃に収穫され、脱渋後に市場に出回る品種である。
全国で収穫される刀根早生柿の半数以上が県内で栽培されることから目にすることが多く、秋の訪れを感じさせてくれる。

このコーナーで特に読者の皆様へお伝えしたかったのが、和歌山県で生まれた品種の存在。
平核無柿を樹上で脱渋した「紀の川柿(きのかわがき)」や、かつらぎ町で発見された
「溝端早生柿(みぞばたわせがき)」、2020年に出荷を開始した「紀州てまり」など。

溝端早生柿や紀州てまりは400グラムを超える大きなサイズが特徴で、見栄え、味がよく、最高級品として扱われる存在。
とくに紀州てまりの食感と甘さは格別で、和歌山県を代表する品種として期待したいものである。

これらの新しい品種の登場には、収穫の最盛期である10月上旬に刀根早生柿などの出荷が集中し、価格の下落を招くという背景がある。
品種の分散化による出荷時期の平準化を行い、10月中旬以降に市場での競争力が高く、味やサイズに優れた柿を育成したいという思いから、様々な工夫が行われている。

和歌山県における柿の収穫量(2019年)は43400トン。日本一の座を守りながら、持続可能な農業のあり方を追求するなかで生まれる新品種は、市場を意識した、柿の新しい価値を発信している。

柿といっても様々な種類があり、生まれた背景や渋柿と甘柿の違い、形、味にそれぞれの特徴があり、その中から自分が好きな品種を見つけるのも楽しみのひとつ。
来シーズンは柿を食べ比べながら季節の移ろいを感じていただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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柿シーズンの最後に 登場500グラムを超える「太天柿」

2023-03-05 13:30:55 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、平核無柿を硫黄で燻蒸して作る、羊羹のような食感の「あんぽ柿」を取り上げた。
柿のシーズンの最後に楽しめる柿として、干し柿にして食べられる「愛宕柿」や「蜂屋柿」を取り上げたが、加工せずに食べられる晩生型の柿がある。
今週は「太天柿(たいてんがき)」を紹介したい。


【写真】大きく立派な「太天柿」

太天柿は、不完全甘柿である「黒熊柿」に完全甘柿の「太秋柿」を交配して作られたもの。
1993年に農水省の果樹試験場で選抜育成され、2009年に登録された比較的新しい品種である。
太天柿の名は「天から授かった素晴らしく大きな果実」という意味から付けられたという。

太天柿は渋柿であることから脱渋が必要。果形は平核無柿のように扁平だが、角には丸みがある。
特徴は果実のサイズ。富有柿のおよそ1.5倍の500g~600gで、これまで取り上げた柿のなかで最大のサイズといって過言ではない。

食してみると果汁が多く、甘さは富有柿と同程度。サクサクとした食感だが熟すにつれて柔らかくなる。果実の中央に近づくほど茶色に色付いている。

令和元年の農水省統計によると、愛媛県で5.1haの栽培面積があり、その他の都道府県の記載は無いが、筆者はかつらぎ町内の産直市場で購入した。
僅かながら和歌山県内でも栽培されている。

収穫は11月上旬頃から。脱渋後に出荷されることから、最盛期は11月中旬から12月上旬にかけて。
柿のシーズンを締めくくる太天柿。一際目立つ大きな柿を見つけたら、ぜひご賞味いただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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