さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

地域の伝統野菜として活躍 メロン変種に分類「マクワウリ」

2023-08-27 20:00:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、滑らかな食感と濃厚な甘みが特徴で、紀中で栽培されている「マスクメロン」を取り上げた。
紀元前2000年頃から存在するメロン。原産地から西方に伝わったものがメロンである一方、東方に伝わったものがウリである。
今週は日本の伝統野菜のひとつ「マクワウリ」を紹介したい。


【写真】濃い黄色が特徴の「黄金まくわうり」

マクワウリはウリ科キュウリ属のツル性植物の果実で、メロン変種に分類される。
岐阜県南部の美濃地方にある「真桑村(現在の本巣市)」で盛んに栽培されたため、その地名からマクワウリ(真桑瓜)の名が付いたとされる。

様々な品種が各地に存在するが、皮が黄色い「黄金まくわうり」はお盆のお供えなどにも使われる一般的なもの。
主な産地は、岐阜県、愛知県、滋賀県。いずれも地域の伝統野菜として扱われ、旬は7月から8月。

お隣の奈良県では平安時代から栽培されており、統的な「大和野菜」として認定されている。
県内でもこの品種が一般的となっており、筆者は紀の川市で栽培されたものを購入した。

大きさは300gから大きいもので700g程。形は縦長で果皮は濃い黄色。中の果肉は白い。メロンと比べ果肉の厚みが薄く、果芯部は空洞で小さな種がある。

未熟なものは果肉が硬く甘味も少ないため、浅漬けにされることが多い。熟すると果肉が柔らかくなり、食感はマスクメロンと同様になる。

食してみると酸味は無く、さっぱりとした甘さがある。マスクメロンのような強い香りや果汁は無いものの、甘さを楽しむことができる。糖度は14度程あるという。

メロンが一般的ではない頃から日本の食卓で親しまれてきたマクワウリ。地域性のある伝統野菜として、今後も受け継がれることを期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

滑らかな食感と濃厚な甘み 紀中で栽培「マスクメロン」

2023-08-20 13:48:32 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、種ごと食べられる新品種のスイカで、県内でも栽培されている「ピノ・ガール」を取り上げた。お盆を過ぎ、小玉スイカの姿を見る機会は減ってきたが、この季節にいただきたい人気の高級フルーツがある。
今週は、県内でも栽培されている「メロン」の歴史と特徴を紹介したい。

メロンはウリ科の一年生植物。園芸分野では「果菜(実を食用とする野菜)に分類されるが、青果市場での取り扱いや栄養学上は果物や果実として分類されている。インドが原産とされ、その歴史は古く、紀元前2000年頃から栽培が始まったという。
一般的に、原産地から西方に伝わった品種群をメロン、東方に伝わったものをウリと呼ぶ。

国内で初めてマスクメロンが栽培されたのは明治26年頃。新宿御苑に導入された温室で研究が行われ、栽培方法が確立されたという。昭和7年から静岡県で商用の栽培が始まった。高級品として名高い「夕張メロン」は昭和36年から栽培が行われている。

昭和52年には日本の種メーカーが「アンデスメロン」を開発し販売を開始。栽培難度が高いとされるマスクメロン(アールスメロン)に味が近く生産が容易であることから、これらの品種が増え、メロンが一般的な存在となった。


【写真】紀中で収穫されたメロン

農水省統計(2021年)によると、国内の収穫量1位は茨城県(約24%)、2位は熊本県(約17%)、3位は北海道(約14%)。和歌山県は2016年の統計値で39位。出荷量は122tで全国出荷量の0.1%に過ぎないが、主に御坊市などの紀中地域で栽培されている。

筆者が産直市場で購入したアールスメロン系の「ビセンス」という品種は1玉2500円程。滑らかな食感と濃厚な甘みがたまらない。
栽培量は少ないが地元で作られる貴重な逸品。是非、食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

種ごと食べられる新品種 県内でも栽培「ピノ・ガール」

2023-08-13 16:43:11 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、小玉への転換が進む、県内の栽培について取り上げた。
農水省の統計値によると、スイカにおける全国の収穫量は約20年前と比べ23.7%の減少、作付面積は29.2%の減少となり、大きく数を減らしている。
その要因のひとつが種の存在。種を取り除きながら食べるのが面倒という声が多く、スイカ離れが進んでいるという。
この問題を打開しようと、近年、種ごと食べられる品種が登場し話題を集めている。
今週は、県内でも栽培が進む新品種「ピノ・ガール」を紹介したい。


【写真】種が小さく食べられる「ピノ・ガール」

ピノ・ガールは小玉スイカで、種の大きさが従来品の約4分の1と小さく、そのまま食べられる、マイクロシード。種を噛んでも苦みがない。
1玉あたりの重さは約2kgで、やや縦長の楕円形をしている。薄皮で果肉は濃い桃色。やや硬めでシャリシャリとした食感があり、糖度は15度以上のものが多く糖度が高い。
県内でも栽培が行われており、筆者は産直市場で印南町産のものを購入。価格は1000円から1500円程度。前号で紹介の「ひとりじめ」とほぼ同じ価格で手に入る。

「スイカの種を食べると盲腸(虫垂炎)になる」と聞いたことがある方も多いのではないだろうか。種が小さくなったとしても食することに問題は無いのか。
諸説あるが、種が盲腸に入り虫垂炎を引き起こす可能性は極めて低く、ヨーロッパから伝わった迷信であるという。もともとは「ブドウの種を食べると盲腸になる」という迷信が起源とされる。
実際、種は脂肪分とタンパク質でできており、消化されずに排泄されるので、食べても問題は無いという。

種を気にせず、スイカの味わいを思う存分に楽しめるピノ・ガール。スイカのイメージを変える新品種を、是非試してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小玉への転換進む 近畿で1位、県内のスイカ栽培

2023-08-06 18:00:38 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、自家製梅干しの作り方を取り上げた。土用を過ぎ、暑さが増すこの季節。水分補給に有効とされるのが「スイカ」である。喉の渇きを潤し、夏の風物詩ともいえるスイカは、県内での栽培も盛ん。今週は県内におけるスイカの歴史と今を紹介したい。

スイカの歴史は4000年前に遡り、原産地は南アフリカとされる。世界各地で栽培されるようになったのは16世紀頃といわれ、中国にシルクロードを通って伝来したことから漢字表記が「西瓜」となったとされる。

国内で栽培が始まったのは19世紀中頃。県内では大正中期から栽培されるようになった。
主な生産地は日高地方で、昭和57年頃までは大玉スイカが主流であったが、消費者のニーズの変化に伴い、小玉スイカへの転換が進んでいる。

農水省統計によると、県内の生産量は全国20位で2390t(2020年)。近畿地方では一番の生産地となっている。
一世帯あたりの消費量は3358gで全国17位、支出額は全国12位の1443円で、全国と比べ消費量が多くなっている。

県内で多く栽培されているのが「ひとりじめ」という品種。大玉スイカに負けないシャリっとした食感で、糖度は13度から14度。この品種には複数の種類があり「ひとりじめ7」「ひとりじめHM」などが県内で多く栽培され、1玉1000円から1500円程度で販売されている。


【写真】県内で栽培が盛んな「ひとりじめ」

スイカは水分が豊富で、エネルギーとなる糖分も含まれるため熱中症対策に有効。
少量の塩をかけて食べる地域もあり、塩分補給という意味で理にかなっている。100gあたり120㎎のカリウムが含まれており、摂り過ぎた水分を排出する機能がある。
また、シトルリンというアミノ酸が含まれ、血流を促しむくみを取る効果があるとされる。

夏真っ盛りのこの時期。県内産のスイカを食べて乗り切りたい。

(次田尚弘/和歌山市)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする