さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

この時期に珍しい 樹上で熟成「さつき八朔」

2022-05-29 14:01:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、100年以上の歴史を持つ「福原オレンジ」を取り上げた。収穫まで果実を木で実らせてから収穫する木成り栽培が行われ、この時期に出回る柑橘が他にもある。
今週は「さつき八朔(はっさく)」を紹介したい。


【写真】樹上で熟成された「さつき八朔」

さつき八朔とは、5月頃まで樹上で熟成させ収穫した八朔のこと。通常、八朔は12月頃から翌年2月頃に収穫され、しばらく貯蔵し酸味を抑えてから出荷するのが一般的。
さつき八朔はそれよりも2ヶ月以上収穫を待ち、樹上で完熟するのを待ち収穫する。

通常の収穫期を大きく超え、5月まで樹上に残すのは難しいことであるという。何より、八朔は霜の影響を受け腐りやすく越冬が厳しい。
また、長期間樹上にあることにより強風や、動物による被害、病気など様々なリスクがあり、収穫までに約半数が落下してしまう。収穫できるのは厳しい環境を耐え抜いたもので、希少価値が高いといえる。

食してみると寒い時期に食べる八朔とは一味違う。蜂蜜をかけたのかと思うほどの甘さがあり、酸味もバランスよく残っている。
八朔特有のサクサク感もある。この甘さを活かし、洋菓子に採用されることや、ゼリー、ピールに加工されるなど、料理人のなかでも知られた存在であるという。

県内の主な生産地は日高町や由良町など紀中のエリア。
前述のとおり紀北では霜の影響を受けやすく、八朔の木成り栽培は難しいとされる。

農水省統計(2018年)によると、八朔の都道府県別シェアの第1位は和歌山県で、全国の75%を占める一大産地。
温暖な気候を活かしたこの時期限定の八朔をご賞味あれ。(次田尚弘/和歌山市)
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100年以上の歴史をもつ 和と洋の融合「福原オレンジ」

2022-05-22 17:28:05 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、県内において田の浦オレンジの名で流通される「サンフルーツ」を取り上げた。
収穫まで果実を木で実らせてから収穫する木成り栽培は、この時期に流通する柑橘で用いられることが多い。
今週は、木成り栽培され、果汁たっぷりで甘さが際立つ「福原オレンジ」を紹介したい。


【写真】果汁たっぷりで甘さが際立つ「福原オレンジ」

福原オレンジの歴史は古く、発見されたのは100年以上前の1909年頃。千葉県にある福原氏の農園で生まれ、1930年に新品種として認められたもの。
「ユズ」に「ジョッパ」という柑橘を「高接ぎ」という手法で接ぎ木し、接着部から発芽し成長したものが福原オレンジの始まりとされる。

ジョッパとはアメリカ原産の柑橘で、直径約7㎝、重さは約200g。日本には1899年に持ち込まれ栽培を試みるも、果実が成熟するまでに冬季の寒さが原因で果実が落下し、商用には向かないとされていた。

高接ぎとは、枝や幹など高い位置で行う方法で、新品種を生み出すときに用いられ、元々の木を台木とすることで成長の期間を短縮し、早く結果を出すことができるという。

福原オレンジのサイズはジョッパとほぼ同じ。外皮には張りがあり分厚く手で剥くのは難しく、ナイフを使い8等分程度に切るのがおすすめ。
果汁が多く断面から果汁がこぼれるほど。食してみると甘さが際立ち、香りもよく、子供から大人まで楽しめる味わい。

福原オレンジは農水省などが出す統計値で全国の栽培量は公表されていないが、静岡県、長崎県、福岡県などが主な産地。
県内でも栽培されており、筆者は田辺市産のものを購入した。

100年以上の歴史をもち、和と洋の融合により生まれた福原オレンジ。ぜひ、ジューシーな味わいを楽しんでみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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田の浦オレンジの名で流通 県内で栽培される「サンフルーツ」

2022-05-15 17:34:04 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、木成り栽培され、果皮や果肉が赤味を帯び、濃い甘さのなかにあるまろやかな酸味が特徴の「紅甘夏」を取り上げた。
甘夏の枝替わりとして発見された品種が他にもある。
今週は「サンフルーツ」を紹介したい。


【写真】甘味と酸味のバランスが取れた「サンフルーツ」

サンフルーツは1962年に熊本県芦北郡の農園で発見された品種。「さんさんと降り注ぐ太陽」という意味から付けられたという。
主に愛媛県で流通するものは「サンフルーツ」、和歌山県では「田の浦オレンジ」、静岡県では「ニューセブン」と呼ばれ、地域によって名称が異なるのが面白いところ。

大きさは、甘夏や紅甘夏と同程度。外皮は甘夏と比べると滑らかで、見た目はグレープフルーツのよう。甘夏よりも甘さがあり、酸っぱさは程よい程度と、甘すぎず、酸っぱさもあるバランスの取れた味わいを楽しめる。

外皮が固く剥きづらいため、ナイフで切り込みを入れて剥くのがおすすめ。種がやや多いものの果肉をそのまま食べることができる。デザートとして食べるのもよいが、甘味と酸味のバランスの良さからサラダや和え物としても使われる。

酸味の成分であるクエン酸のほか、ビタミンB1やB2も豊富に含まれるため、疲労回復など体調を整えるのに適している。
気候の変化があるこの時期に是非食べたい逸品である。

気になるのは、なぜ和歌山県で栽培されるサンフルーツに「田の浦オレンジ」という名が付けられたのか。
発見された熊本県芦北郡に「田の浦」という地名があるのが由来であるのか、それとも、和歌山市の「田の浦」に関係するのか、様々な文献を探したが、真相を突き止めることはできなかった。

田の浦オレンジの名で流通するサンフルーツ。謎多い柑橘を手に取ってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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甘夏とは一味違う 木成り栽培の「紅甘夏」

2022-05-08 16:37:41 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、グレープフルーツのような味わいを楽しめる「河内晩柑」を取り上げた。
河内晩柑は樹上で実る期間が長い「木成り栽培」によるもの。冬の時期に収穫を終え、貯蔵することで酸味を落としてから出荷するのが一般的であるものの、樹上で完熟させ、貯蔵することなく出荷する栽培方法は、他の柑橘でも採用されている。
今週は今が旬の、木成り栽培された「紅甘夏(べにあまなつ)」を紹介したい。



紅甘夏は、甘夏の枝替わりの品種とされる。甘夏は以前このコーナーで取り上げたが、紅甘夏は甘夏と比べ、果皮や果肉が赤味を帯び、濃い甘さのなかにまろやかな酸味があり、一粒に果汁が多く含まれていることが特徴。大きさは500g程度あり、ずっしりとした重さがある。

主な生産地は鹿児島県。鹿児島県阿久根市、出水市、長島町で栽培される紅甘夏を「出水の紅甘夏」というブランド名で販売される、いわば高級甘夏。
鹿児島県の農水産物認証制度を取得するなど、通常の甘夏と同様に一大産地となっている。

筆者が手に入れた紅八朔は田辺市で収穫されたもの。生産量が多くないため統計上の数値は確認できないが、通常の甘夏の生産量第4位(2018年農水省統計)から考えると、県内でも一定量の栽培が見込まれる。

食し方は、外皮が分厚いため、果物用ナイフなどで外皮に切り込みを入れ外皮を取り除き、手で割いていく。果肉がみずみずしいため、果肉にはナイフを入れないようにすることがポイント。

果肉に含まれる成分は甘夏と同様にビタミンCが豊富で、クエン酸が含まれ、疲労回復や風邪の予防に有効。
甘夏とは一味違う紅甘夏。甘夏との食べ比べも面白い。店頭で見かけたときは是非。

(次田尚弘/和歌山市)
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地域によって呼び名が様々 グレープフルーツに似た「河内晩柑」

2022-05-01 18:54:25 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、レモンイエローをした小さな柑橘で、果汁が多く甘味を楽しめる「黄金柑」を取り上げた。
今週はグレープフルーツのような味わいを楽しめる「河内晩柑(かわちばんかん)」を紹介したい。


【写真】和製グレープフルーツの異名を持つ「河内晩柑」

河内晩柑は直径約10㎝、重さ約400gと大きい柑橘。1905年頃、熊本県河内町で見つかった文旦の偶発実生とされる。
偶発実生とは品種改良のように意図的に作られたものではなく、偶発的に親となる品種より恵まれた特性を持つ品種を指す。

河内晩柑は栽培される地域により様々な呼び名が付けられ、生産量日本一の愛媛県愛南町では「愛南ゴールド」、熊本県では「天草晩柑」、高知県では「夏文旦」と呼ばれる。
同じ品種でありながら地域ごとにその名が異なるという珍しい品種である。

特徴は「晩柑」の名が付けられるほど樹上で実る期間が長いこと。12ヶ月から15ヶ月程度実らせてから収穫し、貯蔵などせず、すぐに出荷を行う「木成り栽培」によるもの。
寒さに弱く、気温が低くなると実を自然に落下させてしまうため、比較的温暖な地域でしか栽培できないという難しさもある。

食してみるとグレープフルーツから酸味を取り除いたような味わい。種はやや多めであるものの、果汁がたっぷりで食べやすく、酸味が苦手な方でも食べやすい。

旬は4月から7月頃。農水省統計(2018年)によると、生産量1位は愛媛県(約6600t)、2位は熊本県(約2700t)、3位は高知県(約160t)、4位が和歌山県(約80t)となっている。
県内の主な生産地は有田川町、海南市、紀の川市となっている。

河内晩柑は「和製グレープフルーツ」と呼ばれることもある品種。ぜひお試しいただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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