さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

香りに優れ、大粒の果実 和歌山特産の「ぶどう山椒」

2024-07-07 13:30:31 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、日本最古のスパイスとされる「山椒」の歴史と種類を取り上げた。様々な種類の山椒のなかで、和歌山県内で主に栽培されている「ぶどう山椒」について紹介したい。


【写真】果実が大きく香りに優れた「ぶどう山椒」

ぶどう山椒は、香りに優れた「朝倉山椒」から派生した系統。ぶどうの房のように大粒の果実が実ることから、その名が付けられたとされる。

県内での歴史は古く、平安時代中期に書かれた「延喜式(えんぎしき」という法令がまとめられた書物に、「紀伊国秦椒三升」と記載がある。これは、現在の和歌山県から山椒が貢納されていたことを示している。
また、高野山に残る、正嘉年間(1257~1259年)に書かれた文書には、地域の特産物として山椒が存在していたことが示されており、800~1000年の歴史があるといえる。

ぶどう山椒は、江戸末期の天保年間(1831~1845年)に、現在の有田川町遠井(とい)にあった「医要木(いおき)勘右衛門」が、自宅の庭に大粒の果実を付けた山椒を発見。香り高く、辛味も強いことから栽培が拡大したという。医薬品としての需要が高いことから、勘右衛門の屋号として「医要木」の名が付いたとされる。

山椒の栽培は、西日が当たらず、日照時間が短い中山間地域が適している。有田川町(旧清水町)は標高500m程度で傾斜地が多く、山椒の栽培に適している。この地域の地形と風土が日本の一大産地を形成している。

ぶどう山椒と朝倉山椒を見比べてみた。指で潰したときの香りに大差は無いが、一粒のサイズは大きく、枝から多くの果実が連なっている。
筆者が手にしたのは5月下旬頃に収穫される実山椒と呼ばれるもので、このままでは食することができない。次週は実山椒の調理方法を紹介したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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日本最古のスパイス 「山椒」の歴史と種類

2024-06-30 14:53:54 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より、全国1位の生産量を誇る、ミカン科の落葉低木である「山椒」を取り上げている。
今週は、山椒の歴史や種類について紹介したい。


【写真】収穫された「実山椒」(品種は朝倉山椒)

山椒の歴史は極めて古く、出土した縄文時代の土器に付着が認められ、その頃から利用されていたものと思われる。日本書紀には「山椒(当時はハジカミと呼ばれた)の痺れるような感覚で、敵の攻撃を忘れない」と記されている。

江戸時代に入ると「山中から多く算出し近頃はおしなべる存在である」と記述された文書が現れ、この頃には、日本人にとって御馴染みの香辛料になったといえよう。いわば、「日本最古のスパイスである。

山椒には様々な種類が存在する。うなぎなどの料理に使用される「ぶどう山椒」、これと近縁とされ、香りに優れ、実の大きさが特徴の「朝倉山椒」、飛騨地方の高原で栽培され独特の辛さと持続性のある香りをもつ「高原(たかはら)山椒」、中華料理の麻婆豆腐の辛さを引き立てる花山椒として知られ、中国北部の華北が原産で漢方薬としても活用される「華北山椒」、ミントのような清涼感があり、高木にまで成長し大きな葉が特徴の「烏(からす)山椒」が知られている。

食し方は、山椒の部位により多様。3月頃の香りのよい若葉を「木の芽」と呼び、吸い物などに使用され、春の訪れを感じさせてくれる。4月頃に咲く黄色の花は佃煮などに使用され「花山椒」として。5月から6月にかけて収穫される青い実を「実山椒」や「青山椒」と呼び、ちりめん山椒などに。秋になると実が十分に熟し種子が出来る。それを「割り山椒」と呼び、乾燥させた外皮を粉末にしたものが「粉山椒」になる。

来週は、和歌山県内で栽培される品種について紹介したい。

(次田尚弘)
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全国1位の生産量を誇る ミカン科の落葉低木「山椒」

2024-06-23 16:57:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、産地におけるこの時期の風物詩といえる「摘果メロン」と、その味わい方について取り上げた。
この時期に出回る和歌山県ならではの農作物として忘れてはならないものが「山椒(サンショウ)」である。今週から山椒について紹介していきたい。


【写真】粉山椒を振りかけた鰻料理

山椒は、ミカン科サンショウ属の落葉低木。雑木林などに自生し、別名を「ハジカミ」という。一般的に鰻料理などに振りかける粉状の香辛料としてのイメージが強いが、和食料理に添えられる山椒の若葉は「木の芽」と呼ばれる。

山椒の名の由来は、山の辛みを表したものとされる。「椒」には芳しい、辛味という意味がある。原産地は東アジアとされ、国内全域に加え、朝鮮半島や中国にも分布する。

樹高は1mから3mと低木。葉の長さは10㎝から15㎝で青々とした美しさが特徴。花期は4月から5月頃で収穫期は9月から10月頃。

この時期(6月から7月)に販売される果実は未熟なもので「青山椒(アオザンショウ)」といわれる。佃煮やちりめん山椒として味わうのが一般的で、鰻料理などに振りかける「粉山椒(コナザンショウ)」は、秋に収穫される熟した実の皮を加工し乾燥粉末にしたもの。
香辛料として鰻の臭みを消す用途や、七味唐辛子の材料として重宝される。

山椒の樹皮や果皮は生薬として用いられ、主に胃もたれや消化不良など、胃腸を温める効果が強いといわれる。

県内における山椒の生産量は528.5tで全国1位。約58.6%のシェアを占めている。
また、栽培面積は167haで、こちらも全国1位。全国の栽培面積の約50.5%を占め、国内における山椒の一大産地となっている(いずれも2018年の農水省統計)。

次週は山椒の歴史や種類について紹介したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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メロンとは思えない味わい 優れた食感「摘果の白だし漬け」

2024-06-16 17:16:15 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、産地ならではの風物詩である、可愛らしい見た目が特徴の「摘果メロン」を取り上げた。成熟したメロン特有の網目は無く、ウリ科の果実であることを納得させられるフォルムであるが、切って中身を見てみると、メロンそのもの。キュウリのように浅漬けにして食べる摘果メロン。その調理方法と味わいを紹介したい。


【写真】摘果メロンを使った白だし漬けの調理手順

用意するのは、摘果メロン2玉につき、塩を小さじ2分の1、白だしを小さじ1、砂糖を小さじ1だけ。摘果メロンをよく水洗いし、上下を切り落とす。皮はそのまま残し、8から10等分にカットする。

次に、切り分けた果実をボウルなどに入れ、塩を軽く揉んで馴染ませ、30分程度置く。
やがて水分が染み出してくるので、それを捨て、ジッパー付きの保存袋に入れる。
続いて、白だしと砂糖を加え、袋の上から揉み込む。その後、冷蔵庫で半日程度漬け込めば出来上がり。

食してみるとメロンから連想される甘さは無く、柔らかい食感も無い。むしろ、コリコリとした食感で、浅漬けのキュウリに近い。
しかし、キュウリのような野菜らしい香りがするわけでは無いが、なぜか箸が進んでしまう。
唐辛子を輪切りにしたものと一緒に漬け込むことでピリ辛の味わいにアレンジすると、これもまた美味しい。

筆者が使用した摘果メロンは全長10㎝程度とやや大きめであったが、果皮は薄く、中の種も小さく柔らかかったため、とくに処理することなく食することができた。
果皮が硬いと感じられる方はピーラーで剥くなど工夫されたい。

とてもシンプルでありながら、食欲が進む不思議な食べ物。果物屋に並ぶ高級メロンとは思えないその味わいを、ぜひ試してみては。

(次田尚弘/和歌山市)
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産地ならではの風物詩 可愛らしい見た目の「摘果メロン」

2024-06-09 14:31:32 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、暖冬と雹の影響を受ける「青梅」について取り上げた。産地だからこそできる消費者の活動として、この時期に出回る「摘果(てきか)メロン」と、その活用法について紹介したい。


【写真】県内で間引かれた「摘果メロン」

摘果メロンとは、メロン栽培の過程で間引かれた果実のこと。メロンは種をまいてから収穫までおよそ120日間を要する。苗木1本あたり20枚程度の葉が付き、その中から3本の側枝(わき枝)の雌花に交配し、3個できる小さなメロンから1つを選び残し、その実に全ての養分が集中するようにする。その作業のことを摘果といい、間引かれた小さな果実を摘果メロンという。
このような摘果の作業は、主に「アールス(マスクメロン)」と呼ばれる高級品種で行われる。

紀中地域で栽培されるマスクメロンについては、以前(2023年8月20日付)このコーナーで紹介のとおり。
おさらいしておくと、メロンはウリ科の一年生植物。インドが原産で、紀元前2000年頃から栽培が始まったとされる。
農水省統計(2016年)によると、県内の収穫量は全国39位、出荷量は122tと少ないものの、一定数栽培されている。

摘果の作業は、5月下旬から7月上旬にかけて行われ、この時期になると、農家の庭先や産直市場などで見ることができる。筆者は御坊市で摘果されたものを産直市場で購入した。

果実の形は縦長をしており、サイズは大きいもので全長10㎝程度。メロン特有の網目はなく、ウリ科の植物であることに納得させられる見た目である。

中身を見てみると、大きく成熟したメロンと同様で、中心に沢山の種がある。食し方としては、キュウリのように浅漬けにするのが一般的。その味わいはいかに。次週に続く。

(次田尚弘/和歌山市)
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