さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

根強い人気を誇る 肉厚でコクがある「巨峰」

2023-09-17 14:12:13 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、家庭で親しまれるぶどうの代表格として知られ、150年もの歴史を持つ「デラウェア」を取り上げた。
今週も、かつてから家庭での親しみが深い「巨峰(きょほう)」を紹介したい。


【写真】紀北で収穫された「巨峰」

巨峰は「石原早生」と「センテニアル」というぶどうを親とし、昭和12年から育成され、昭和17年に静岡県で誕生した品種で、正式な名称は「石原センテニアル」。
育成地から富士山が見えることにちなみ、巨峰の名で昭和30年に商標登録された。

果皮は紫黒色で1粒あたりの重さは10~15gと大きい。果肉はしまっており果汁が多い。香りがよく、糖度は18~20度と甘味が強いが、その中に酸味とコクを感じることもできる。

1房あたりのサイズは大きいもので500~600g程度にまで成長するが、糖度と1房あたりの粒の数は比例しており、粒の数が少ないほど甘味が増すといわれている。
そのことから、生産者は、房の大きさと甘味のバランスを考え、適度な間引きを行うなどして調整している。
「ピオーネ」などの品種は巨峰を親として開発されたもの。今後、このコーナーで紹介していきたい。

旬は露地物で8月から10月頃。ハウス栽培のものは5月下旬頃から出回る。
2020年の農水省統計によると、栽培面積の第1位は山梨県(1019ha)、第2位は長野県(685ha)、第3位は福岡県(358ha)となっている。県内でも栽培されており、全国順位は第12位(48.2ha)。

有田川町の観光農園団地「有田巨峰村」は、気軽にぶどう狩りを楽しめる施設。開園時期は園により異なるが、概ね8月上旬から9月中旬にかけて開園し、多くの観光客で賑わう。

まもなくシーズンを終えるが、紀北地域は新鮮な巨峰が手に入りやすい。ぜひ、その味わいを楽しんでほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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家庭で親しまれる代表格150年の歴史を持つ「デラウェア」

2023-09-10 14:01:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、紀ノ川流域で栽培が盛んな「ぶどう」の歴史を取り上げた。県内では少なくとも20種類が栽培。今週は「デラウェア」を紹介したい。


【写真】小粒の実が特徴の「デラウェア」

デラウェアは種なしぶどうの定番として、古くから親しまれる品種。
1房あたりの重さは150g程度。実は小粒でありながら、甘さが強く、適度な酸味があり、香りもよい。

元々は種ができる品種であるが、ジベレリンというホルモン剤に房を浸けることで、種ができないよう処理されている。

原産はアメリカ。自然交雑種とされ1855年にオハイオ州デラウェアで発表されたことから、この名が付いた。日本には1872年に入ってきたとされる。

巨峰などの高級なぶどうと比べ、手頃な価格で購入できることから、庶民に親しまれてきた品種であるが、現在は様々な種類の大粒種が出回るようになり生産量が減少。40年間で半減したという統計値もある。

主な生産地は、第1位が山形県(904ha)、第2位が山梨県(341ha)、第3位が大阪府(267ha)となっている(平成30年度農水省統計)。
大阪府内では柏原市、交野市、枚方市などで盛んに栽培。デラウェアが日本に入って間もない1884年から本格的に栽培が行われ、出荷以外の収入源として、近隣の農家が集団で「観光ぶどう狩り」に取り組むなど、観光農業の先駆けとしても知られる。
露地物は7月下旬から9月下旬まで収穫できる。

デラウェアには、目の疲れに効果があるとされるポリフェノールの一種「アントシアニン」や、がんの抑制作用が期待される「レスベラトロール」が含まれ、皮ごと食べることでその効果が得られるという。

健康維持や増進にも役立つデラウェア。大粒種が多く出回る中ではあるが、昔懐かしい味わいを楽しんでほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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様々な品種が店頭を彩る 紀ノ川流域で栽培盛んな「ぶどう」

2023-09-03 17:18:18 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、地域の伝統野菜として知られる、メロン変種の「マクワウリ」の歴史と味わいについて取り上げた。
9月に入り、旬の真っ只中であるのが「ぶどう」。今週は、ぶどうの歴史を紹介したい。


【写真】県内で収穫された「ぶどう」

ぶどうの原産地は中近東で、古代ヨーロッパや中国に伝わったとされる。歴史は古く、紀元前3000年頃にはカスピ海沿岸などで栽培が始まっていたという。
日本では奈良時代に中国から伝来。ヨーロッパブドウが鎌倉時代初期から現在の山梨県甲州市で栽培され、やがてこの地域の特産品となった。

その後、周辺地域や関西に広がり、明治に入ると欧米から新たな品種が多数栽培されるように。
しかし、乾燥を好むヨーロッパブドウのほとんどが日本の気候に馴染めず、栽培は困難を極めた。
一方でアメリカブドウは日本でも栽培が可能で、「デラウェア」や「キャンベル・アーリー」などの品種が普及。匂いがきついことからワインには適さず、主に生食用として親しまれるようになった。

県内では主に、和歌山市、橋本市、かつらぎ町、有田川町で栽培。紀ノ川の流域は土壌が豊かで、保水性と排水性のバランスがよく、降水量は比較的少なめで、昼夜の気温の高低差が大きいという特徴がある。
水はけが良く、降水量が少なく、一日の気温差が大きい土地を好むブドウにとって、この地域は栽培地として適している。

近年、品種が増え、県内では少なくとも20種類が栽培されているといわれる。この時期、産直市場などでは様々なブドウを見かけ、2006年に品種登録された、人気のシャインマスカットもある。

栽培地の気候や農家の栽培法により、味わいが大きく変わるぶどう。県内で収穫される数々の品種を紹介していきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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