さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

銚子市の「紀国人移住碑」 先祖の功績称え、子孫の交流も

2014-12-28 13:42:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、今から350年以上前に千葉県銚子市外川(とかわ)集落を整備した、和歌山県出身者崎山治郎右衛門の功績について取り上げた。

和歌山県からの移住者が多い銚子市では、移住者の子孫らによる交流が盛んで、先祖の功績を称える活動が今も積極的に行われている。
今週は、銚子市に建つ、移住者の功績を称える石碑を紹介したい。


【写真】「紀国人移住碑」(千葉県銚子市)

銚子市の中心部にある妙福寺の境内にそれはある。
広い境内の一角に「紀国人移住碑」と刻まれた石碑が建ち、「銚子港もと海浜の一僻地、今日の繁栄はひとえに我が紀国人の開拓の功による」とある。

石碑を建てたのは和歌山県出身者の子孫らにより結成された「木国(もっこく)会」という親睦団体による。
同会は発足から100年以上の歴史を持ち、現在も200名もの会員がいるという。
この石碑は明治36年に建てられ、毎年5月、この石碑の前に会員が集まり慰霊祭を開くという。

同会の会員で、先祖が広川町出身の女性に話を聞くことができた。
「ご先祖様のおかげで今の私たち、今の銚子があると思う。
子孫が交流し和歌山とのつながりを認識しあい、この歴史を後世に伝えていきたい」。

自らの出身地という縁で集まる県人会とは異なり、先祖が和歌山県出身という和歌山とは少し遠い関係でありながらも、誇りと和歌山への愛着を強くお持ちであることが何より感慨深い。

(次田尚弘/千葉)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

和歌山県出身者が「まちづくり」 崎山治郎右衛門の功績

2014-12-21 16:40:29 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、和歌山から伝わったしょうゆ文化が息づく千葉県銚子市と、しょうゆを染み込ませて作った「ぬれせんべい」を取り上げた。
ぬれせんべい」で一躍有名になった地元の鉄道会社、銚子電鉄の終着駅がある「外川(とかわ) 」という街を整備したのは、一人の和歌山県出身者だ。


【写真】外川集落への玄関口(銚子電鉄外川駅)

今週は、この街の歴史について触れたい。

外川千葉県銚子市の南部に位置する港町。
外川漁港では一本釣りのキンメダイ「銚子つりきんめ」が水揚げされることで有名だ。

この街が整備されたのは1658年のこと。
1656年に紀州・広村(現在の広川町)から移住した「崎山治郎右衛門(さきやま・じろうえもん) 」が、冷たい親潮と暖かい黒潮がぶつかる豊かな漁場であるこの地を見込み、築港工事を開始。
外川漁港の完成を受け、南向きの斜面に集落を整備。
和歌山からの移住者を多く受け入れ、漁業や海運業に従事させた。

自らが取り入れた新しい漁法によるイワシ漁により、イワシが豊富にとれたことから、街はたいそう賑ったという。
その賑いは、いまも「外川千軒大繁昌」という言葉で語り継がれ、町内の神社には治郎右衛門の功績を称える石碑が建てられている。

外川の集落を筆者も歩いてみた。
当時の面影を残す石畳の道と、綺麗に整備された碁盤目状の区画、日当たりを重んじ、なだらかな南斜面を利用した街並みは、和歌山の温暖で豊かな港町を思い出させるものだった。

外川集落へは銚子電鉄外川駅下車すぐ。
レトロな駅からはじまる和歌山を感じる街歩きを、ぜひあなたも。

(次田尚弘/千葉)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

醤油文化が息づく街 千葉県銚子市

2014-12-14 21:13:38 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、千葉和歌山に共通する地名が、黒潮を通じた結びつきに由来することを取り上げた。
共通の地名が多い館山市勝浦市から北上したところに銚子市がある。
とくにここは和歌山からの移住者が多い地域。
今週は、銚子に根付く和歌山から伝来した文化や歴史を紹介したい。

銚子市は千葉県北東部、関東平野の最東端に位置し、利根川を挟んで茨城県に隣接する人口約6万5千人の市。
利根川の河口近くには「犬吠崎」があり、ご存知の方も多いだろう。
利根川水運を活かし、古くから漁業や醤油の醸造業で栄えてきた。

とりわけ醤油の醸造業においては、国内の醤油生産量の15%以上を占める生産地で、大手醤油メーカーの工場が存在する。
この地域で醤油の醸造が始まったのは1600年代の半ば。
醤油の発祥地である和歌山から伝わった文化だ。

温暖多湿で四季の気温差が少ないという気候が、醤油造りに欠かせない麹や酵母などの微生物の生育に適しており、また、大豆や小麦などの原材料を入手しやすい土地で、一大商圏となっていた江戸への輸送路(水運)があったことが魅力となり、和歌山醤油文化や技術を持って、銚子へ移住した和歌山県民が多く存在した。
現在も先祖に和歌山県出身者を持つ市民が多いという。

銚子醤油文化が世に知られるようになるきっかけを作ったのが「ぬれせんべい」だ。


【写真】「ぬれせんべい」(銚子市)

濃厚な醤油をふんだんに染み込ませた独特の菓子だ。
今から10年ほど前、資金不足に陥っていた地元の鉄道会社が、資金調達のひとつとして「ぬれせんべい」の販売を始めたことがネットで広まり、たちまち有名になった。
現在ではこの地域の土産品として定着。
和歌山で生まれた醤油文化が、いまもなお息づいている。

(次田尚弘/千葉)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒潮を通じた結びつき 海に共通する地名の数々

2014-12-07 16:15:59 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、「勝浦」の地名を持つ、千葉県勝浦市徳島県勝浦郡勝浦町和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の3市町が協力した「勝浦ネットワーク」による結びつきを取り上げた。
他にも千葉和歌山では共通する地名が存在する。
今週は地名の由来について深堀りして紹介したい。

白浜」や「勝浦」は既に紹介の通りだが、「めら」という地名がある。


【写真】千葉県館山市布良(めら)

千葉県南房総市の旧白浜町に隣接する千葉県館山市に「布良(めら)」という地域があり、和歌山県田辺市の天神崎近くには「目良(めら) 」という地域が存在する。
漢字は異なるが読みは同じだ。

地元の観光案内所のスタッフに尋ねると、「両県に共通する地名が多いのは黒潮に関係するようです。
漁業が盛んで技術力も高かった和歌山から、同様の環境で漁ができることを魅力に、漁師や商人が移り住んで来たと聞いています。
故郷を懐かしんで付けたのかもしれません」という。

確かに、千葉県内には「熊野」や「桃山」といったような山に関係する地名は見当たらないし、千葉県九十九里の郷土料理としてサンマやイワシのなれずし(くさりずし)があったり、南房総市では太地町と同様に捕鯨が行われている。
いわゆる「くさりずし」は関東では珍しい存在。
黒潮の海流を通じ、千葉和歌山の間に強い結びつきがあることは明らかだ。

館山市勝浦市からさらに北上したところに銚子市がある。
この街には、和歌山から伝わったとされる文化や歴史が根付いている。
次号で紹介したい。

(次田尚弘/千葉)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする