さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

「蒸気機関車」を観光資源に 古き良き地域の魅力を再興、誘客へ

2018-02-25 17:21:36 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、日本三大急流のひとつとされる「富士川」と、その上流にある、徳川頼宣公の母「養珠院」の墓所を取り上げた。
今週は舞台を西へ移し、静岡県内を流れる一級河川「大井川」と蒸気機関車が走るローカル線を紹介したい。

大井川は富士川から西へ約60㎞に位置する。南アルプスの南に位置する「間ノ岳(あいのだけ)」を水源とする延長168㎞の河川。

大井川に沿うようにして走るローカル線「大井川鐵道」は近年、蒸気機関車を用いた観光客の誘客とまちおこしを進めている。
大井川鐵道は静岡県島田市の金谷(かなや)駅と川根本町の千頭(せんず)駅を結ぶ大井川本線(39.5㎞)と、千頭駅と静岡市葵区の井川駅を結ぶ井川線(25.5㎞)を有するローカル線。

ここに動態保存された蒸気機関車(SL)が4両在籍し、日常的に営業運転を行っている。2014年からは幼児に人気の「きかんしゃトーマス」の意匠をまとったトーマス号を期間限定で運行するなど、ユニークな企画により人気を博している。
車窓に広がる雄大な大井川と、茶畑等の自然を眺めながらの旅は格別。古きよき日本の原風景から懐かしさや旅情が込み上げてくる。


【写真】島田市内を走る蒸気機関車

昨今のSLブームにより、勇壮な姿や客車に揺られる旅情、製造当時の技術の高さ、沿線の魅力を見直す機会が増えてきた。
今や蒸気機関車が走る街は多くなく、その珍しさや魅力に触れようと全国各地から足を運ぶ乗客も少なくない。

関西では京都鉄道博物館に加え、昨夏から和歌山県有田川町の有田川鉄道公園でも乗車体験ができるようになった。
SLが街に溶け込むことで、その街の潜在的な古き良き魅力を再興させることができると思う。
SLが全国各地の街を巡り、それぞれの地域の魅力を引き出してほしい。

(次田尚弘/島田市)



大井川鐵道の取材に同行し新金谷駅構内で写真撮影しました。
子ども向けの機関車トーマスの他、古い蒸気機関車と牽引される客車や大手私鉄から譲渡された古い電車などを集め、レトロ感を売りにして多くの観光客を呼んでいます。



車庫からは南海電鉄の高野線や和歌山港線で活躍後に譲渡された緑の電車が顔を覗かせていました。
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頼宣の母「養珠院」を弔う 富士川上流の墓所と紀州の縁

2018-02-18 23:58:23 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では富士山を拝め、豊かな自然を活かした体験プログラムが提供されている「田貫湖(たぬきこ)」を取り上げた。
今週は日本三大急流のひとつとされる「富士川(ふじかわ)」を紹介したい。

富士川は山梨県の鋸岳(のこぎりだけ)を水源とする一級河川。甲斐国(現在の山梨県)と駿河国を結ぶ水運の要路として人々の暮らしを支えてきた。
長い鉄橋を渡る東海道新幹線の車窓から富士山を拝んだ記憶がある方もおられるだろう。その鉄橋が架かる川こそ富士川だ。


【写真】富士川を渡る新幹線

ここは、電力の50Hz帯と60Hz帯(電源周波数)の境目にもなっている。明治27年(1894年)に東京電灯がドイツ製の50Hzの発電機を導入。一方で大阪電灯、神戸電灯、京都電灯がアメリカ製の60Hzの発電機を導入。両者共に供給エリアを拡大し、ここが境目になったとされる。

富士川の下流にあたる鉄橋から上流へ約30㎞。山梨県身延町にある日蓮宗の寺院「本遠寺(ほんのんじ)」は、徳川家康の側室で徳川頼宣の母、お万の方として知られる「養珠院(ようじゅいん)」の墓所。
養珠院は家康の三十三回忌の際、和歌山市和歌浦中の妹背山に法華経を書写した経石を治めた石室「海禅院(かいぜんいん)」を建立。
養珠院の死後、頼宣により多宝塔が建てられ、母を弔ったとされる。
平成16年の調査では養珠院とみられる遺髪が見つかっている。

養珠院の兄にあたる「三浦為春(みうら ためはる)」は徳川頼宣の傅役(もりやく)となり、頼宣の紀伊入国の際に随行。
1万5千石を治める陪臣(ばいしん)となり、代々紀州藩の家老を世襲し続けた。墓所は和歌山市の了法寺。

和歌山市から東へ約300㎞。離れた地でも歴史を辿れば紀州とのつながりが見えてくる。

(次田尚弘/富士市)



今回も取材に同行し富士山と富士川鉄橋を渡る新幹線を撮影しました。


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環境省初の自然学校 多彩なプログラムで体験型観光

2018-02-11 11:31:59 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部として、那智の滝と共に、日本三大名瀑に選ばれることがある富士宮市の「白糸の滝」を取り上げた。
今週は白糸の滝のほど近くで富士山を拝め、豊かな自然を活かした環境省主導の体験プログラムが提供されている「田貫湖(たぬきこ)」を紹介したい。


【写真】田貫湖から富士山を望む

田貫湖は富士山西麓の朝霧高原(富士箱根伊豆国立公園)に位置する。農業用水を確保するために沼地を拡張した東西約1㎞、南北0.5㎞に及ぶ人造湖。湖岸には宿泊施設やキャンプ場があり、湖の周囲を1周20分程度でサイクリングできる。野鳥やホタルの観賞地としても知られている。

豊かな自然を活かし、環境省は2000年に日本初となる国設の自然学校を開設。自然と人、人と人とのふれあいを重視し、遊びと学びが体験できる施設として好評で年間約10万人が訪れるという。

年間を通して様々なプログラムが提供され、幼児から参加できるクイズや実験を通して富士山の自然や生き物の魅力に触れられる30分程度のものや、富士山溶岩洞窟の探検や自然の素材を用いた小物作りなど多岐にわたる。
季節や日替わりでメニューが変わり、事前にウェブサイトで確認できる。

自然学校は国設に限らず、民間やNPOなど多様な主体が各地で同様の体験を提供しており、それらは環境省が運営するサイトで検索できる。和歌山県内では十数個の団体が紹介されている。

寒さが厳しい毎日であるが、民間の気象予報会社による桜の開花予想が公表されるなど春が近づいている。
自然と触れ合う体験型の春の旅を検討してみては。

(次田尚弘/富士宮市)



今回も取材に同行、湖面に映る「逆さ富士」撮るため風が止むのを待ちました。



湖の周りには展望デッキと案内板が設置されています。
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世界文化遺産「白糸の滝」 土地が織りなす文化・信仰の発信地

2018-02-04 22:06:49 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では静岡市清水区の清水港で提供される「生しらす」と創意工夫で魅力を発信する取り組みを取り上げた。
今週は舞台を富士宮市へ戻し、世界文化遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部として知られ、那智の滝、華厳の滝(栃木県日光市)と共に「日本三大名瀑」に選ばれることがある「白糸(しらいと)の滝」を紹介したい。


【写真】白糸の滝

白糸の滝は富士宮市の北部に位置する景勝地。幅150mの絶壁の全面から滝が流れ、最も大きな本滝を除くほとんどが富士山の湧き水であり、毎秒1.5トンの流量をもつ。昭和11年、国の名勝と天然記念物に指定。

江戸初期にかけて、富士山と神霊への信仰を行う「富士講(ふじこう)」とよばれる民衆信仰の開祖とされる「長谷川角行(はせがわ・かくぎょう)」が修行を行った場所で、これらを信仰する人々の巡礼の地となったとされる。
18世紀に描かれた絵図にはその様子が記され、白糸の滝は富士山信仰の構成資産であることから平成25年に世界文化遺産の構成要素のひとつとして登録された。

白糸の滝のほど近くに高さ25mの絶壁から轟音と共に流れ落ちる「音止の滝」がある。
建久4年(1193年)、源頼朝が富士の裾野で巻狩り(狩猟)を行った際、曽我兄弟が彼らの父親の仇である工藤祐経(すけつね)を討つという事件が起きた。
曽我兄弟の密談がこの滝の轟音で声が遮られたが神に念じたところ滝の音が止まったという伝説から音止の滝という名が残されているという。

那智の滝と同様に世界遺産の一部として登録され、その土地に織りなす文化や信仰の壮大さを肌で感じられ、現在も訪れる者を魅了し続ける文化遺産。
世界に誇る日本の文化がここにある。

(次田尚弘/富士宮市)



今回も取材に同行し、富士山を望みながら白糸のが見る事の出来る展望台から撮影した1枚です。

【写真】富士山が望める展望台


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