さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

脱渋の工夫による珍しい柿 県内で栽培広がる「紀の川柿」

2022-11-27 17:14:45 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では400グラム超えの特大サイズが栽培され、ブランド品種となっている「平核無柿(ひらたねなしがき)」を取り上げた。
今週は平核無柿に手を加え、新たな名称を付けて販売されている「紀の川柿(きのかわがき)」を紹介したい。


【写真】黒い実が特徴の「紀の川柿」

紀の川柿は品種の名称ではなく、木に成ったままの平核無柿を脱渋して収穫されたもの。
脱渋は平核無柿がまだ青い頃に、固形アルコールを入れた袋を果実にかぶせ、1日から2日かけて渋を抜く。その後、袋の底を開け十分に熟すまでそのまま樹上で育てる。

樹上で完熟させるため、平核無柿と比べ表皮の色が濃く、果肉が黒くなる特徴があり、同じ平核無柿とは思えないほど。食してみると食感は平核無柿と変わらずしっかりとした実で、平均糖度が16~18度といわれるように甘さが感じられる。

紀の川柿は、脱渋処理の課題を解決しようと50年以上前に立ち上げられた協議会の努力により栽培が行われるようになったという。
昭和50年頃、樹上脱渋法という脱渋処理についての技術が進み、和歌山県内の農家で栽培が始まり、紀の川柿の愛称が付けられている。

しかし、固形アルコールが入った袋をそのまま実に被せるという方法では、柿のヘタが枯れることや果実の日持ちが悪いなど様々な課題があり栽培量は伸び悩む。
そこで生まれたのがヘタを出して袋を被せ脱渋する方法。これにより課題が解決し、平成18年に紀の川柿の栽培方法が確立し、栽培が広まった。

農水省統計で紀の川柿は平核無柿に分類されるため、正確な栽培面積はわからない。
栽培に手間がかかることから生産量が少なく希少性が高い品種。黒い実が特徴の紀の川柿をぜひご賞味いただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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400グラム超えの特大サイズも 県内で栽培のブランド品種「平核無柿」

2022-11-20 13:30:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、国内栽培量の半分以上が県内で栽培されている「刀根早生柿(とねわせがき)」を取り上げた。
今週は刀根早生柿の元となる品種である「平核無柿(ひらたねなしがき)」を紹介したい。


【写真】橙色の果皮が美しい「平核無柿」

平核無柿は新潟県産の柿で、山形県の農家が仕入れた苗木の中から偶然にも種が出来ない品種を見つけた。
それを育成し、庄内地方で「庄内柿(しょうないがき)」として広がったとされる。庄内柿の原木は新潟県の文化財に指定されている。

平核無柿も前号で紹介の刀根早生柿と同様に渋柿であることから、炭酸ガスなどを用いて渋抜きが行われてから出荷される。
果実の大きさは250g程度で、形は偏平で角ばっているのが特徴。果皮は橙色で光沢がある。食してみると甘味が強く果汁も豊富。果肉は固くなく、種も無いので食べやすい。

平核無柿の中で、400g以上もある特大のものを出荷している事例がある。栽培しているのは和歌山県の農家で「クイーンパーシモン」と名付けられている。
一般的な柿と比べると非常に大きく、食べ応えがあり、和歌山県のブランド柿として知られている。

農水省統計(令和元年産)によると、栽培面積の第1位は山形県(670ha)、第2位は和歌山県(395ha)、第3位は新潟県(382ha)で、発見された東日本地域での栽培が盛んでありながら、和歌山県が第2位にランクインしている。

収穫時期は和歌山県内では10月中旬頃から11月中旬頃。食べ頃としては12月上旬まで楽しめる。
一般的なサイズの平核無柿もよいが、特大サイズのクイーンパーシモンもおすすめ。ぜひ食べてみていただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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栽培面積第1位 半数以上が県内で栽培「刀根早生柿」

2022-11-13 17:43:30 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、収穫量日本一を誇る柿の産地である伊都地方の概要と、種が無い渋柿の品種を「和歌山県産たねなし柿」と名付けたブランド化戦略について取り上げた。
今週はこの品種のひとつ「刀根早生柿(とねわせがき)」を紹介したい。


【写真】美しい橙色をした「刀根早生柿」

刀根早生は「平核無柿(ひらたねなしがき)」の枝替わりで、天理市の農家、刀根氏が台風で折れた平核無柿を若木に接木して育成したことにより、平核無柿より2週間程度早く実をつける柿ができた。
それを育成し1980年に品種登録。名称は育成者の名にちなんで付けられたという。

果実の大きさは250g程度。形は偏平で四角に角ばり、果皮の色は光沢のある橙色。
食してみると甘味が強く果汁も豊富であり、程よい硬さ。カリッとした食感で、糖度は15度程度。

日持ちはよい方で、常温で2~3日程度でやわらかくなる。固めを好む方はポリ袋などに入れ冷蔵庫で保管するのがおすすめ。熟しすぎたものは冷凍することでシャーベットとして楽しむこともできる。

柿のシーズンの始まりを告げる品種として、9月下旬から10月上旬頃に収穫され、炭酸ガスなどを用いて柿渋を抜いた後に出荷される。

全体的に橙色に色付き、へたが身にしっかりと付いているものがおすすめ。収穫して間もない柿には果皮に白い粉が付いていることがあるが、これは果粉(ブルーム)といい、水分の蒸発を防ぐため、柿が自ら分泌したものである。

農水省統計(令和元年産)によると、栽培面積の第1位は和歌山県(1287ha)、第2位は奈良県(364ha)、第3位は新潟県(203ha)となっている。

全国の半数以上が県内で栽培される刀根早生柿。秋の訪れを感じながら食していただきたい品種である。

(次田尚弘/和歌山市)
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収穫量日本一 伊都地方が誇る、和歌山の柿

2022-11-06 17:30:30 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号まで16週にわたり和歌山県内で収穫される桃を取り上げた。
秋真っ只中の今週は、収穫量日本一を誇る「柿」を紹介したい。


【写真】和歌山県産の柿

紀の川に沿った丘陵地帯である伊都地方。かつらぎ町、紀の川市、橋本市、九度山町などでは柿の栽培が盛んである。
複数の地質が帯状になった豊かな土壌で、保水と排水のバランスが柿の栽培に適しているという。
また、瀬戸内式気候に属し比較的温暖であるが、葛城山と紀伊山地に挟まれた土地で昼夜の寒暖差が大きいことから、甘さや色付きに優れた高品質な柿が栽培できる。

令和元年度における和歌山県の柿の収穫量は43400tで日本一。このうち、渋柿が8割を占めている。
渋柿というと食用に向かないように思われるが、私達が食する柿の多くは渋柿である。

渋みの原因は「水溶性タンニン」という物質で、これが口の中で溶け出すと渋みを感じるが、収穫後の柿をアルコールや炭酸ガスを用いて渋抜きの処理をすることで「不溶性タンニン」に変化させ、渋みを感じさせなくしている。
皮を剥き干し柿にすることでも同様の効果を得ることができる。渋抜きした柿は加熱処理により再び渋くなるため、ジャムなどに加工されるのは甘柿が使用される。

渋柿の主な品種である「中谷早生 (なかたにわせ)」、「刀根早生(とねわせ)」、「平核無(ひらたねなし)」などは、種が無いという特徴があり「和歌山県産たねなし柿」という名称で販売。
2020年に抗酸化成分が豊富であることが評価され「ジャパニーズスーパーフード」として認定されるなど評価も高く、ブランド化戦略が行われている。
和歌山県が誇る柿の数々を紹介していきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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