さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

冷凍した実山椒を使用 香り高い「粉山椒」の作り方

2024-07-28 13:57:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、フライパンで出来る、実山椒としらすを使った「ちりめん山椒」の作り方を取り上げた。今週は実山椒を使った「粉山椒」の作り方を紹介したい。


実山椒を使った粉山椒

土用の丑の日に、うなぎの蒲焼きに粉山椒を振りかけて食べられた方も多いのではないだろうか。
この食文化の始まりは室町時代まで遡る。うなぎの風味を引き立てる役割があることは言うまでもないが、漢方薬としても用いられる山椒には、胃腸を温め、消化を助ける効果があり、栄養豊富で脂がのったうなぎの消化を助けると同時に、山椒が持つ抗菌作用も期待されていたという。

粉山椒は、夏の終わりから秋まで樹上に残した山椒を使うのが一般的であるが、実山椒でも十分な味わいを楽しめる。
作り方は簡単。冷凍保存してあった実山椒を常温で解凍し、フライパンで水分が飛ぶまで焦げないように炒る。指で押して硬さを感じる程度になり、外皮がカサカサし、香ばしい香りがしてくれば、乾燥できた証。
続いて、すりこぎで粉々になるまでよく擦れば出来上がり。擦り切れずに残る外皮が気になる方は、ふるいやザルにかけると、市販されているような粉末状にすることができる。

一度は冷凍保存した実山椒であるが、香り高く特別感のある味わい。使用する際に都度調理するのが最も香りを楽しめるように思うが、胡椒を挽く際に使用する手頃なサイズのミルに、乾燥させた実山椒を入れ、その都度ミル挽きにして使用する方法もある。

9月頃に収穫される熟した山椒(乾燥山椒)であれば、乾燥の処理をせず、ミル挽きできる。乾燥山椒を手に入れるのは容易では無さそうだが、機会があれば味わいの差を感じてみたいところ。
実山椒を活用した楽しみ方の数々。ぜひ、試してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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フライパンで簡単調理 しらすを使った「ちりめん山椒」

2024-07-21 13:31:30 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、山椒の味わいを長く楽しむための、実山椒の下処理の方法について取り上げた。
今週は保存した実山椒を使った「ちりめん山椒」の作り方を紹介したい。


【写真】「ちりめん山椒」の調理手順

まずは、ちりめん山椒の歴史から。ちりめん山椒は、実山椒とちりめんじゃこ(しらす)を、しょうゆ、みりん、だし汁で甘辛く煮たもの。
京都の代表的なおばんざいで、土産品としても人気が高い。店により味付けが異なるのも楽しみのひとつ。

生まれたのは昭和の半ば頃で意外と歴史は浅い。京都の料理人が土産品やおすそ分けとして作り始めたのが始まり。昭和46年にこの料理人が病に倒れ、家族が販売を始めたところ人気となり、京都の名産品として知られるようになった。
海から遠い土地柄から、新鮮な魚を食する機会が少なく、保存を目的に塩や醤油で魚を加工する習慣が、京都発祥の理由とされる。

作り方は簡単。今回は和歌山県産のしらすを使用した。しらすは水分が多いため、まず、フライパンにしらすを入れ弱火にかけ、乾煎りする。乾燥しサラサラとしてきたら酒を入れ、更に乾煎りする。

ここで、山椒の出番。フライパンで山椒を乾煎りし香りが出てきたら、醤油、みりん、酒、砂糖を適量加え、弱火で炒める。最後にしらすと混ぜ合わせながら煮詰めれば完成。山椒の風味と甘辛い醤油の味付けがよく合う逸品になる。

密閉容器に入れれば2週間程度の冷蔵保存が可能。冷凍しておいた実山椒を必要なときに必要な分だけ取り出して作ることもできる。
他にも、鍋を使い、実山椒を酒とたまり醤油で煮詰めた佃煮も好まれ、こちらは冷蔵庫で1年程度保存が可能。

下処理さえしておけば、様々な料理にアレンジできる実山椒。ご飯のお供にぜひ。

(次田尚弘/和歌山市)
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保存して長く楽しむ 「実山椒」の下処理手順

2024-07-14 15:40:40 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、香りに優れ、大粒の果実が特徴の、和歌山特産「ぶどう山椒」を取り上げた。
この時期に収穫され販売される実山椒をそのまま食することはできない。
今週は、実山椒の調理方法を紹介したい。


【写真】「実山椒」の下処理手順

実山椒の調理(下処理)には、根気強い工程が待っている。まずは実山椒を小枝から外し、はさみで軸を切り落とすところから。とても細かい作業で、筆者は50g程度を処理するために1時間を要した。次に、実だけになった山椒を煮沸する。鍋に水1リットルを入れ沸騰させ、そこに塩を5g加える。

そこに水洗いした実山椒を入れ、再び沸騰させてから中火で5分程度ゆで、指で押しつぶせる程度の固さになるまでゆでる。続いて、ザルに上げ、冷水で流した後、水にさらしてアク抜きを行う。1時間おきに1~2回程度、水を替え、食べてみてえぐみや辛味が強い場合は、さらに水にさらす。えぐみが抜け、好みの辛さになれば、ざるから上げしっかりと水を切る。

この先の調理の用途が決まっていなければ、キッチンペーパーでよく水気を取ってから、冷凍用の保存袋に入れる。平らにしてできるだけ空気を抜き、金属製のトレイに乗せ、急速冷凍するのがおすすめ。冷凍で約6ヶ月の保存が可能。

他にも、塩漬けや醤油漬けにして保存する方法もある。塩漬けの場合は、消毒した保存瓶などに実山椒の約1割の量の粗塩を入れ、塩が溶けるまで毎日瓶を振る。塩が溶けると冷蔵庫で10日程かけて熟成させる。冷蔵庫で約1ヶ月、冷凍で約6ヶ月の保存が可能。

下処理に手間はかかるが、保存した実山椒は様々な料理で活躍。
次週は、フライパンを使って簡単に調理できる、ちりめん山椒の作り方を紹介したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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香りに優れ、大粒の果実 和歌山特産の「ぶどう山椒」

2024-07-07 13:30:31 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、日本最古のスパイスとされる「山椒」の歴史と種類を取り上げた。様々な種類の山椒のなかで、和歌山県内で主に栽培されている「ぶどう山椒」について紹介したい。


【写真】果実が大きく香りに優れた「ぶどう山椒」

ぶどう山椒は、香りに優れた「朝倉山椒」から派生した系統。ぶどうの房のように大粒の果実が実ることから、その名が付けられたとされる。

県内での歴史は古く、平安時代中期に書かれた「延喜式(えんぎしき」という法令がまとめられた書物に、「紀伊国秦椒三升」と記載がある。これは、現在の和歌山県から山椒が貢納されていたことを示している。
また、高野山に残る、正嘉年間(1257~1259年)に書かれた文書には、地域の特産物として山椒が存在していたことが示されており、800~1000年の歴史があるといえる。

ぶどう山椒は、江戸末期の天保年間(1831~1845年)に、現在の有田川町遠井(とい)にあった「医要木(いおき)勘右衛門」が、自宅の庭に大粒の果実を付けた山椒を発見。香り高く、辛味も強いことから栽培が拡大したという。医薬品としての需要が高いことから、勘右衛門の屋号として「医要木」の名が付いたとされる。

山椒の栽培は、西日が当たらず、日照時間が短い中山間地域が適している。有田川町(旧清水町)は標高500m程度で傾斜地が多く、山椒の栽培に適している。この地域の地形と風土が日本の一大産地を形成している。

ぶどう山椒と朝倉山椒を見比べてみた。指で潰したときの香りに大差は無いが、一粒のサイズは大きく、枝から多くの果実が連なっている。
筆者が手にしたのは5月下旬頃に収穫される実山椒と呼ばれるもので、このままでは食することができない。次週は実山椒の調理方法を紹介したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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