さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

熊野に伝わる民話の数々 古座川町「滝の拝」

2014-07-27 13:31:39 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、世界で唯一の「川の参詣道」である熊野川について取り上げた。
これらの範囲ではないが、紀南には他にも魅力的な川の文化がたくさんある。
今週は、古座川の支流にあり、県の文化財で名勝・天然記念物に登録されている「滝の拝」を紹介したい。


【写真】滝の拝(古座川町小川)

滝の拝」は古座川町役場から北へ約15キロ。
古座川沿いに走る県道43号線を北上すると、突如、大小様々な奇形の岩穴が続く川床が現れる。
一部が水路になっており、落差約8メートルの滝も存在する。
この時期は滝壺に集まる鮎を釣ろうと、地元の漁業関係者らが糸を垂らす。
伝統の漁法で、鮎を餌や囮を仕掛けず、釣り針を鮎に引っ掛けて釣り上げる「トントン釣り」が用いられ、長い竿を巧みに操る光景が見られる。

滝の拝には、古くから伝わる民話がある。
その昔、この付近に住んでいた「滝之拝太郎」という侍が、刀を滝壺へ落としてしまい、滝壺へ潜ったところ、滝の主という綺麗なお姫様たちか太郎を歓迎してくれたという。
夢中で遊んでいた太郎だが、ふと我に返り現世に戻ろうとしたところ、落とした刀に添えて、丸く大きな石を土産に貰った。
現世へ持ち帰ったところ、それまで滝壺から聞こえてきた雷のような音が静まったという。
その石は、近くの金比羅神社の境内に置かれ、今もなお、滝の主と共に祀られている、という話だ。

他にも古座川周辺をはじめ熊野には数多くの民話が存在し、どれもその地域らしく、作り話ではないような感覚を受けるのは筆者だけだろうか。
この夏、涼を求めて熊野を訪れ、地元に伝わる民話に触れてみてはどうだろう。

(次田尚弘/和歌山)
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世界で唯一、川の参詣道 「熊野川」の魅力

2014-07-20 13:31:04 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
今週も吉野熊野国立公園の魅力に触れたい。
同公園は、熊野灘に面する海岸部、吉野山大峰山脈大台ケ原大杉峡谷を中心とする山岳地域に加え、瀞峡および熊野本宮大社川湯温泉に代表される熊野川沿いの渓谷地域も含まれる。

熊野川は奈良県南部の大峯山脈を源流とし、紀伊半島中央部を南下。
大台ケ原を水源とする支流の北山川と合流し熊野灘に注ぐ一級河川。
流域面積は近畿地方で3番目に広い2360平方キロメートルで、河川の総延長は183キロメートルと近畿で一番の長さ。
この時期、北山川では観光筏下りやラフティングが楽しめ、瀞峡を巡るウォータージェット船も気持ちがいい。


川の参詣道「熊野川」(志古付近)

また、熊野川熊野本宮大社と河口に近い熊野速玉大社を舟で結ぶ主要な参詣道でもある。
熊野本宮大社の参詣者の多くが、熊野川を舟で下り熊野速玉大社に参詣したという。
そのため、この区間の熊野川は世界で唯一の「川の参詣道」として世界遺産に登録されている。

風光明媚な熊野川であるが、平成23年の紀伊半島大水害の際は甚大な被害を受けたことはご承知の通り。
普段の穏やかで広大な熊野川の姿からは想像もつかないが、瀞峡を巡るウォータージェット船乗り場をはじめ、川沿いの施設は大きな被害を受けた。
今もなお、所々に爪跡が残る箇所もあるが、懸命な復興により、水害前と変わらない程の姿に戻っているところがほとんどだ。

7日に世界遺産登録から10年を迎えた「紀伊山地の霊場と参詣道」。
山の中を続く参詣道が注目されがちだが、先人が使った「川の参詣道」も趣き深い場所。
この夏、歴史ある雄大な熊野川を訪れてみてはどうだろう。

(次田尚弘/和歌山)
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日本で最初の海域公園 熱帯性生物に触れられる「串本海域公園」

2014-07-13 20:17:03 | WAKAYAMA NEWS HARBOR

前号に続き「吉野熊野国立公園」について紹介する。
今週は本州最南端に位置し、日本で初めて海域公園に指定、ラムサール条約にも登録された「串本海域公園」に触れたい。
串本海域公園」は前号で紹介の橋杭岩から東へ車で約15分。
橋杭岩と共に本州最南端の串本町を代表する景勝地だ。
海域公園とは、優れた景観を維持と利用を図るための制度。
以前から、藻場やサンゴ礁など、海中の景観を守るため自然公園法に「海中公園地区」という制度があった。
2010年4月、海中に限らず海上も含めた海域環境を守ることを目的に「海域公園地区」という制度に改定。
串本海域公園海中公園地区に指定されたのは1970年7月で、串本、天草、霧島などと同時に、日本で初めて指定された。
海中公園という言葉は、読者の皆様にも馴染みのある言葉だろう。

それから35年後の2005年、湿地の保護と利用管理を目的としたラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)に登録。
本州中部の北緯33度30分という非サンゴ礁域に位置しながら熱帯性生物の群集が見られ、世界的にも貴重な地域であることが登録の理由だ。

【写真】サンゴに群れる熱帯魚(提供:和歌山県)


全国でも数少ないイシサンゴ類の大群衆やウミトサカ類やヤギ類などの植物、これらの間を泳ぐ熱帯魚の姿や生態は、付近の海中展望塔や水族館に加え、船に乗りながら海中を眺められるグラスボートや研修設備が整ったダイビングパークなど、体験型の施設も充実。

まもなく夏休みの到来。
この夏、海の遺産ともいえる串本海域公園を訪れ、紀南の海の魅力に触れてみてはどうだろう。

(次田尚弘/和歌山)

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「橋杭岩」の起源と伝説 自然と歴史が織りなす造形美

2014-07-06 13:45:07 | WAKAYAMA NEWS HARBOR

前号より「吉野熊野国立公園」について紹介している。
今週は「橋杭岩」の歴史と伝説に触れたい。

【写真】岩柱が特徴的な「橋杭岩」。奥に「くしもと大橋」が見える。


橋杭岩」は本州最南端の串本町に位置する景勝地。
和歌山市から南東に約100キロと、紀北の方々にとっては小旅行で訪れる感覚があるかもしれない。
柱のような岩が一直線に並ぶ光景から、どこか奇怪なものを感じるのは筆者だけだろうか。

起源を辿ると、今から1400万年程前、紀伊半島の南部では著しいマグマの活動があり、
地表から数百メートルのところへマグマが流れ込み、冷えて固まった結果、岩脈となった。
やがてそれが隆起し、風雨や波による浸食を受け、現在のような姿になったという。

構造の起源はさておき、古くから地元に伝わる「橋杭の立岩伝説」がある。
弘法大師と天の邪鬼が熊野を旅したときのこと、弘法大師の偉大さに圧巻した天の邪鬼が、本州と大島の間で橋の架け比べをしようと弘法大師へ打診。一晩という区切りを設け、まずは弘法大師から橋を架け始めた。
見る見るうちに巨大な岩を海中に立てる弘法大師の姿に焦りを感じた天の邪鬼は、邪魔をしようと鶏の鳴き真似をし、朝が来たと勘違いした弘法大師が作業を止め立ち去った結果、「橋杭」が今も残っているという伝説で、橋杭岩の名の由来ともいわれる。

名の由来に弘法大師が関係し、弘法大師の偉大さが伝説として受け継がれていることは、熊野というこの土地ならではのものであると感じる。
今秋、世界遺産登録10周年大型観光キャンペーンを迎え、他府県から多くの旅行者が訪れるこの機会に、世界遺産エリアと共に、吉野熊野国立公園の自然と歴史が織りなす造形美に触れてもらいたい。

(次田尚弘/和歌山)

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