さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

酸味が少なく、とろける食感 県内でも栽培盛んな「日川白鳳」

2022-07-31 16:40:15 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、地域に根差し親しまれる、和歌山生まれの「桃山白鳳」を取り上げた。
今週も、白鳳の変異種である「日川白鳳(ひかわはくほう)」を紹介したい。


【写真】果汁たっぷりでとろける食感が特徴の「日川白鳳」

日川白鳳は、昭和48年に山梨市で発見された白鳳の枝変わりの品種で、昭和56年に品種登録されたもの。前々号で取り上げた「はなよめ」の元となった品種でもある。

果実の大きさは250g程度。全体的に赤く色づきやすく熟すほどに赤みが増す。食してみると果汁がたっぷりでジューシーな味わいが楽しめる。
中心にある種がやや大きく感じるが、とろけるような果肉が食欲をそそる。糖度は11~13%と決して高くないが、酸味が少ない(0.2%~0.3%)ことから、甘さを感じられるのが特徴。

全国各地で栽培されており、2018年の農水省統計によると栽培面積の第1位は山梨県で全体の52%(408.2ha)。第2位が和歌山県で14%(110.2ha)、第3位が福島県で8%(66.5ha)となっている。
日川白鳳における全国の栽培面積は788.2haで、これは桃全体で4番目の栽培面積。桃全体の約1割を占める、知られた存在である。

早生白鳳に分類され収穫時期は6月下旬から7月上旬で、7月下旬まで市場に出回る。
着色が良い品種であることから、全体が赤く色づいたものがおすすめ。また、縫合線が浅く左右対称にふっくらしたものが美味しいという。

全国で広く栽培され、和歌山県でも栽培が盛んな日川白鳳。
ぜひ、その味わいを楽しんでみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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地域に根差し親しまれる 和歌山生まれの「桃山白鳳」

2022-07-24 16:38:15 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、極早生なのに甘さが期待できる希少品種「はなよめ」を取り上げた。
時を同じくして市場に並ぶ、和歌山県で生まれた品種がある。
今週は「桃山白鳳」を紹介したい。


【写真】果皮の濃さと果肉の白さが特徴の「桃山白鳳」

桃山白鳳は、昭和59年に旧桃山町(現在の紀の川市桃山町)発見された白鳳の一樹変異を育成したもの。昭和63年に品種登録され、以後、この地域を中心に栽培されている。

元となった品種である白鳳と比べ熟すのが早く、満開から80日から90日程度で成熟期を迎え、6月下旬から7月上旬頃に収穫する早生品種となっている。
果重は220g程度で円形をしており縫合線が浅いのが特徴。
果皮は濃いめで、剥きやすくなっている。果肉は乳白色で着色は少なく、果汁が多いのに実がよく詰まっており、甘味を感じることができる。

農水省の統計値(平成30年)によると、栽培されているのは和歌山県のみで面積は16ha。統計上表記されない若干数は県外でも栽培されているだろうが、和歌山県固有の全国的に珍しい品種といえよう。

発見された旧桃山町はその名のとおり桃の栽培が盛んな一大産地。この地域で収穫される桃は「あら川の桃」のブランド名で知られる。
砂れきを含み水はけに優れた地質と温暖な気候が桃の栽培に適し、上質な出来栄えは高く評価される。
桃山白鳳は桃シーズンの到来を知らせる存在として親しまれている。

県内の一大産地である「桃山」の地名を名前に付けた桃山白鳳。ぜひ味わってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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極早生なのに甘さ先行 今や希少品種に「はなよめ」

2022-07-17 15:15:31 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、桃のシーズンのトップバッターとして親しまれる極早生品種「竜門早生」を取り上げた。
今週は、時をほぼ同じくして登場する「はなよめ」を紹介したい。


【写真】甘くてジューシーな味わいが楽しめる「はなよめ」

はなよめは、山梨県で発見された「日川白鳳」の枝替わりで、平成7年に品種登録された比較的新しい品種。
早生の露地物は6月から出荷されることから「6月の花嫁(ジューンブライド)」にちなんで、また、果実の色づきが頬を染める花嫁のように見えることから、その名が付けられたという。
縁起の良い名前であることから、贈答品として人気があり、結婚の内祝いや出産祝い、父の日のプレゼントに選ばれるなど、晴れの場に活躍する桃である。

果実全体が赤く色づき、香りが良いのが特徴。果重は250g程度。糖度は15%程度と高く、酸味が少ない。果実はやや硬めでナイフを入れると容易に半分に切ることができる。
食してみると、この時期には珍しい、瑞々しさと甘さがあり、ジューシーで上品な味わい。
繊維が少ないことから、とろけるような食感がある。

2018年の農水省統計によると、全国のはなよめの栽培面積は82.7ha。栽培面積の約半分が山梨県(40.4ha)で、第2位が熊本県(11ha)、第3位が和歌山県(8.3ha)と、和歌山県内でも盛んに栽培されている。

しかし、はなよめは果実が小ぶりであることから、市場で評価されにくく、他の品種に押され生産量が減少傾向。今や希少品種となっている。

7月中旬頃まで楽しめるはなよめ。甘さを求める方はぜひ食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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桃のシーズンが到来 極早生のトップバッター「竜門早生」

2022-07-10 16:58:31 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号まで約1年半に渡り、和歌山県で栽培される柑橘とその魅力を取り上げてきた。
今年は早くも梅雨明けを迎え、果物売り場では桃の販売が始まっている。全国生産量第5位を誇る和歌山県。とくに紀の川市で栽培される「あら川の桃」は全国に名の知れた存在。
今週から和歌山県で栽培される桃を紹介していきたい。

桃は「古事記」や「桃太郎」、桃の節句など、邪気を払う力があるとされる縁起の良い果物。
和歌山県では江戸時代に栽培が始まったとされ、古い歴史をもつ。
果実にはビタミンEが豊富に含まれ、糖尿病や動脈硬化、アルツハイマー病などの生活習慣病や老化の予防に効果があるといわれる。
また、食物繊維はコレストロールの正常化や腸内細菌を改善する作用があるなど、健康への効果が期待できる。


【写真】美しい色づきの「竜門早生」

桃のシーズンのトップバッターとして登場するのが「竜門早生(りゅうもんわせ)」。
竜門早生は昭和60年頃、紀の川市の竜門地区で発見された極早生品種で主に露地栽培されている。

果実はやや腰高で表皮は果頂部を中心に全体的に赤く色づいている。果実はやや硬めでナイフを使い、容易に輪切りにすることが可能。
他の桃と比べ香りは強くなく、ほのかに香る程度で、果肉はやや引き締まった適度な食感。
水分が豊富でジューシーな味わいがあり、甘さは控えめであるが、桃のシーズンの初めに食べる極早生品種としては十分。

旬は6月中旬から7月上旬。平成25年度の生産量は57tと桃の中ではそう多くないが、和歌山生まれの新品種。
桃のシーズン到来を知らせる竜門早生を、ぜひご賞味あれ。

(次田尚弘/和歌山市)
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「国産レモン」の普及に貢献 明治の和歌山県と広島県の歴史

2022-07-03 14:06:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、認証制度でブランド化に成功した「金柑」の事例を取り上げた。
今週は、年間を通して食卓を彩る「レモン」を紹介したい。


【写真】和歌山県産のレモン

レモンはミカン科ミカン属に属する柑橘。ビタミンCが豊富に含まれ、酸味と香りが強く、主に果汁を様々な料理やスイーツに活用することは皆様もご存じのとおり。

原産地はインドのアッサム地方。日本では明治6年に静岡県で栽培がはじまり、その後、気候が近い和歌山県に伝わったとされる。
現在、レモンの一大産地である広島県には明治31年に伝わり、それには和歌山県が関係しているという。

広島県におけるレモン栽培は和歌山県からネーブルの苗木を購入した際に、偶然、レモンの苗木が混在しており、その中から3本を試植したのがはじまりとされる。

瀬戸内の気候がレモンの栽培に適していることがわかり、また、明治末期から大正初期にかけての価格高騰が追い風となり、主に、広島県の大長地域を中心に急激に栽培が普及した。

昭和39年の輸入自由化や、昭和51年と56年の寒波により、広島県をはじめ国産レモンの生産は陰りを見せ、輸入レモンが市場の大半を占めるほどに。
しかし、輸入レモンの外皮に防腐剤が添付されていることから、より安全性を重視する人々から国産レモンが支持され、栽培は現在も続けられている。

2018年の統計によると、生産量の第1位は広島県(42.1%)、第2位は愛媛県(31.3%)、第3位は和歌山県(9.6%)で、和歌山県内の主な産地は、紀の川市、湯浅町、有田川町となっている。

瀬戸内を中心としたレモン栽培に一役貢献した和歌山県。国産の良さを伝え、末永く栽培が盛んであってほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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