さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

干し柿にして脱渋 甘さと弾力がある「愛宕柿」

2023-01-29 17:18:17 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
「愛宕柿(あたごがき)」は愛媛県で生まれた渋柿。脱渋が難しい品種であることから、主に干し柿に加工される。
果実の大きさは300g程度で、釣り鐘状で先が細く尖っているのが特徴。表皮は艶がありオレンジ色が美しい。
名前の由来は諸説あるが、京都の愛宕山に奉納された際に名前を貰った、あるいは、愛宕山にあった柿の種からできた実であることに関係するという。


【写真】干し柿にして脱渋する「愛宕柿」

通常の柿と違い、販売時には大きく「渋柿」と書かれ、脱渋していないことから剥いて食べることはできない。
そのため、食するためには一工夫必要で、干し柿にする必要がある。物によっては販売時に袋詰めされた柿と一緒にビニール紐が同梱されていることも多い。
また、果実を吊るしやすいようヘタの部分に木の一部を残す工夫がされている。干し柿にするための方法は改めて紹介したい。

干し柿として食するためにかかる期間は約3週間。この頃には大きかった果実は小さくしぼみ、表皮は乾燥。表皮を剥いていくと中からは熟した実が現れる。
食してみると甘さと適度な弾力がありとても美味しい。手間暇をかけて干し柿にした甲斐があったと感じさせてくれる。

農水省統計(令和元年度)によると、栽培面積の第1位は愛媛県(91.6ha)、第2位は香川県(16.9ha)、第3位は岡山県(11.3ha)となっており、瀬戸内で栽培が盛ん。
和歌山県の栽培面積は統計上の数値は無いが、筆者は産直市場で購入。僅かと思われるが、県内でも栽培が行われている。

昔ながらの方法で脱渋し、美味しく味わえる愛宕柿。手間はかかるがおすすめの逸品である。

(次田尚弘/和歌山市)
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県が誇る高級ブランド柿 2020年に出荷を開始「紀州てまり」

2023-01-22 13:30:29 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
紀州てまりは、和歌山県の果樹試験場が「早秋柿(そうしゅうがき)」と「太秋柿(たいしゅうがき)」を掛け合わせて作ったもの。
2008年に交配し、2013年に食味や果形がよいものを選抜しさらに栽培。2019年に品種登録され2020年から出荷が始まった新品種である。


【写真】甘さが強く、やや柔らかい食感の「紀州てまり」

県内における柿全体の栽培面積は約2600ha。渋柿が77%、甘柿が23%で、渋柿のうち「刀根早生柿(とねわせがき)」は栽培面積の半数を占め、収穫の最盛期である10月上旬に出荷が集中。販売単価の下落が課題で、県内で育てられる品種の分散化による出荷時期の平準化が求められている。
そのなかで刀根早生柿の出荷が終わる10月中旬以降に市場での競争力の高い柿を育成しようと、10月中旬以降に収穫でき、サイズが大きく、高糖度であることを育成目標として研究が始まった。

育成目標のとおり、紀州てまりの特徴はサイズが極めて大きいこと。大きいものでは400gを超えるものもあり、その名のとおり手毬のようなサイズ感。
糖度は親品種である太秋柿よりも高い17%程度。食してみると、甘さが際立ち、やや柔らかい果実とのバランスが絶妙。筆者が今季食べた柿の中で最も美味いと感じたものである。

2020年に出荷が始まった新品種であるものの、農水省統計(令和元年)によると和歌山県内での栽培面積は17.2ha。昨年は55haにまで栽培面積を広げるなど期待の高まりがみられる。

東京の百貨店では贈答品として扱われ、価格は1個600円以上の値をつける。筆者は紀の川市の産直市場で購入したが、同様の価格であった。

一般的な柿と比べると数倍以上の価格にもなる紀州てまり。日本一の柿の生産地である和歌山県が誇る高級ブランド柿として、ますますの発展を期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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和歌山生まれの完全甘柿 期待の品種「溝端早生柿」

2023-01-15 13:31:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では天然の羊羹と称され、甘柿のルーツとされる「御所柿(ごしょがき)」を取り上げた。
今週は和歌山県内で生まれた「溝端早生柿(みぞばたわせがき)」を紹介したい。


【写真】カリっとした食感と甘さが特徴の「溝端早生柿」

溝端早生柿は「松本早生富有柿(まつもとわせふゆうがき)」の変異種で、1980年に発見、2005年に品種登録されたもの。複数植えた松本早生富有柿の1つが早く色付くことに生産者が気づき、大玉の実が出来ることから変異種であることが判明したという。
かつらぎ町で農業を営む溝端さんが発見し自らの名前を付けたことがその名の由来である。

富有柿よりも少し早い10月中旬に成熟する完全甘柿で、果実は大きいもので400gを超えるものもある。果形はやや扁円をしている。食してみると果肉が緻密でカリっとした食感。甘さも抜群で糖度は20度になるものもある。

完全甘柿とは果実に種が入らなくても渋みが抜けるもの。柿には甘柿と渋柿があることは前述のとおりであるが、実際には「完全甘柿」「不完全甘柿」「不完全渋柿」「完全渋柿」の4種類がある。
不完全甘柿とは果実に種が多く入ることで渋みが抜けるもの(西村早生柿や禅寺丸柿など)。
不完全渋柿とは種の周辺だけ渋みが抜けるもので(刀根早生柿や平核無柿など)、いずれも渋抜き後に出荷される。
溝端早生柿は富有柿や次郎柿と同様に渋抜きが不要な品種である。

農水省統計で栽培面積の記録は無いが、市場に出荷される程度の収穫量はあるよう。
筆者はかつらぎ町内の産直市場で購入。品種登録されているかつらぎ町を中心に出回るとみられる。

サイズが大きく甘さも抜群の溝端早生柿。来シーズン、見かけることがあれば購入し、和歌山生まれの柿を存分に味わってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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天然の羊羹と称される 甘柿のルーツ「御所柿」

2023-01-08 13:39:58 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では糖度が高く程よい食感が特徴の「甘秋柿(かんしゅうがき)」を取り上げた。
今週は甘柿のルーツともいわれる「御所柿(ごしょがき)」を紹介したい。


【写真】甘味・粘り気が強い「御所柿」

御所柿は奈良県御所市で生まれたとされる。歴史は古く1645年の書物で大和の名産品として取り上げられており、甘味が強く粘り気が多い食感から「天然の羊羹」といわれ、極上の柿として幕府や宮中に献上されていたという。

御所柿は突然変異によりできた品種とされ、成長過程で渋みが無くなる完全甘柿として各地へ広まった。
富有柿は、御所柿を別の木に接ぎ木して育成されたもので、やがて御所柿よりも富有柿が一般的となっていく。
外観が優れず、栽培が難しいことから次第に栽培される本数が減り、今や「幻の柿」とまで言われるようになった。

現在、奈良県御所市では御所柿を復興させ特産品にする動きが起きている。2009年には市場への出荷を開始し2012年の出荷数は700kgとなった。
奈良県内に残る御所柿の古木は約50箇所。樹齢300年を超えても十分に味の良い果実ができるという。

御所柿のサイズは小ぶりで150g程度。扁平で果頂部はやや尖った形をしている。ヘタは5~6弁と個体によって差があり、果形も五角形や六角形と様々。糖度は17~20度と高い。食してみると粘り気のある肉質が特徴で、まさに天然の羊羹といえる。

筆者は御所柿をかつらぎ町内の産直市場で購入した。奈良県内でも僅かな栽培量の希少品種でありながら、和歌山県内でも栽培されている。
御所柿の旬は11月中旬から12月上旬頃。和歌山県内のみならず手にする機会は稀であると思うが、見つけた際はぜひご賞味いただきたい逸品である。

(次田尚弘/和歌山市)
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