さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

静岡名産「三ヶ日みかん」 紀州みかんとのつながり

2017-07-30 22:13:40 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では東海道三大関所のひとつで紀州藩の御用宿が残る「新居関所」を取り上げた。
浜松を取材するなかで、和歌山とのつながりを見つけた。
今週は浜名湖北岸にある三ヶ日(みっかび)地区を紹介したい。

三ヶ日地区は東海道の迂回路である姫街道に面し、古くから三ヶ日宿として栄えてきた。
近年は静岡県を代表する温州みかんの産地として名が知られ、「三ヶ日みかん」のブランド名で主に東北から中部地方の店頭に並ぶ。

三ヶ日みかんの起源を辿ると「紀州みかん」に由来する。
江戸中期(享保年間)、三ヶ日地区の平山に住む「山田弥右衛門(やえもん)」が西国巡礼のため紀州を訪れた。
その際、和歌山県南部(那智という説がある)から紀州みかんの苗木を1本持ち帰り、自宅の庭の隅に植えたという。

その後、このみかんの香りがよく甘くて美味しいと評判になり、数十本の苗木をつくり自宅近くに植えられ、いつしか地区全体に栽培が広がったとされる。

以降、200年程は紀州みかんの栽培が続いたが、天保年間になり「温州みかん」の栽培が取り入れられてからは、実が小さく種が多い紀州みかんの価値が下がり、明治からは温州みかんが農園で栽培されるようになった。
大正に入りみかんの市価が上がると栽培農家の数が増え、生産量の増加と共に全国に広まった。

これらの歴史を紹介する施設「みかんの里資料館」が地区内にある。


【写真】みかんの里資料館

廃校になった小学校の校舎を利用しており、館内にはパネル展示をはじめ、かつて使われた農機具や地区内の写真が飾られている。
施設を管理する男性職員に筆者が和歌山から訪ねたことを話すと「30年程前、両県の商工会が交流会を催し和歌山へ行ったことがある」と思い出を語ってくれた。

次週に続く。

(次田尚弘/浜松市)
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「新居関所」と国道42号 紀州藩の御用宿が残る宿場町

2017-07-23 17:25:24 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では東海道三大関所「気賀関所」と、開設から明治維新まで12代に渡って関所を管理した近藤氏と紀州徳川家との歴史を取り上げた。
今週はもうひとつの三大関所である「新居(あらい)関所」を紹介したい。


国の特別史跡「新居関所」

「新居関所」は慶長5年(1600年)幕府直轄の重要な関所として設けられた。
浜松市の西隣、浜名湖の河口を挟んだ湖西市に位置する。
高潮や東海地震の津波被害を受け2度移転するも、安政5年(1858年)に再建された建造物は学校や役場の庁舎として使われ現存。
当時の建物が残る日本で唯一の関所として、大正10年(1921年)国の史跡に登録。
昭和30年には国の特別史跡に指定。渡船場の石垣や柵、大御門などが復元され、東海道の要所として風格ある佇まいが特徴。

関所近くの「新居宿 旅籠紀伊国屋」は元禄16年(1703年)に開業した紀州藩の御用宿となった旅籠屋。
昭和30年代に廃業されるまで250年に渡り営業を続け、現存する建物は明治7年築。館内は資料館になっており、当時の東海道の賑わいや文化を紹介している。

浜名湖を渡るとすぐ浜松市。以前、本コーナーで取り上げた国道42号(国道1号との重複区間)の東端となる「篠原交差点」まで僅か数キロの距離だ。
新居関所と国道42号に関係があるのではないかと筆者の記者魂を熱くしたが、国道42号は和歌山市と三重県津市の区間であったものを、平成5年、渥美半島と紀伊半島を横断し、更に紀淡海峡を超え四国・九州へと至る国土軸となる道路の構想が計画された際、現在の区間(和歌山市県庁前交差点~浜松市西区篠原交差点)に延伸されたという。
偶然であろうが、東西を隔てる関所を目前に主要な道路の境が設定されたことに浪漫を感じずにはいられない。

(次田尚弘/湖西市・浜松市)
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東海道三大関所「気賀」 歴代管理者・近藤氏と紀州の関わり

2017-07-16 18:06:44 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では井伊氏発祥の地で、菩提寺がある浜松市北区井伊谷の「龍潭寺(りょうたんじ)」を取り上げた。今週は気賀駅の程近くにある「気賀関所」を紹介したい。


【写真】再建された「気賀関所」

そもそも関所は家康の命により主要な街道の軍事・警備を目的に設置されたもの。
とりわけ気賀は東海道に沿った要所で、箱根、新居(浜松市)と共に東海道三大関所と呼ばれていた。
「入り鉄砲に出女」と言われたように、関所は人や物が移動する際、江戸へ鉄砲などの武器が必要以上に運ばれることが無いよう、また、人質として江戸に住む各大名の妻子が江戸から逃げないよう通行する人々を取り調べる機関として重要な役割をなしてきた。

この付近を通る幹線道路は現在でも「姫街道」と呼ばれている。
東海道は、浜名湖の南端を船で渡るルートが正式であるが、湖と海の境に位置することから危険を伴ったという。
そのため、浜名湖岸を大回りすることになるが、武家の妻子(奥方や姫君)などはより安全な気賀関所を通るルートが重宝されたことが「姫街道」の名の由来とされる。

関所開設より明治維新まで12代にわたり関所の管理を行った近藤氏は江戸幕府の旗本として活躍。
もとは今川氏に従う国人であったが、元禄11年(1568年)の家康による遠江侵略を機に家康に仕え、近藤秀用(ひでもち)は井伊直政の与力となった。

秀用の孫にあたる貞用(1606-1696)は、家康から頼宣に仕えるよう指示を受け、大坂冬の陣では頼宣が率いる部隊に属し功績をあげ、頼宣の紀州藩への転封に伴い自らも紀州に赴き、祖父の秀用に呼び戻されるまでの約1年間、紀州徳川家の立ち上げに尽力したとされる。

(次田尚弘/浜松市)
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井伊氏発祥の地 菩提寺「龍潭寺」と名勝庭園

2017-07-09 17:00:38 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では今年の大河ドラマの舞台で、大河ドラマ館が開設されている浜松市北区の「気賀駅」を取り上げた。
井伊氏発祥の地である「井伊谷(いいのや)」の最寄駅で、ここから多くの観光客が、井伊氏の菩提寺である「龍潭寺(りょうたんじ)」へと向かう。
今週は「井伊谷」と「龍潭寺」を紹介したい。

龍潭寺は臨済宗妙心寺派の寺で、天平5年(733年)に行基により開かれたとされる。
元禄3年(1560年)の桶狭間の戦いで戦死した井伊直盛(直虎の父)の戒名から、龍潭寺と改められたという。
井伊氏の歴代当主の墓があり、生前に結ばれることのなかった直親と直虎の墓が隣り合って祭られている。

寺には井伊氏から拝領した品々が収められ、江戸時代建立の本堂や山門など伽藍6棟が静岡県指定有形文化財に指定されている。

また、約1万坪の境内は緑豊かで「龍潭寺庭園」として国の名勝に指定。


【写真】龍潭寺庭園

江戸時代初期に造園された「池泉鑑賞式庭園」で、不老不死や子孫繁栄を願い、池の両側に守り神とされる「仁王石」、正面に「坐禅石」、中央に「守護石」が配置されており、背景には山の峰と山脈が木々で表現され、手前の池は海を、多くの石組と築山で鶴亀を表している。
春は桜やサツキ、梅雨には紫陽花、秋には紅葉、冬には梅や椿が咲き、四季の変化により異なる表情を見せてくれる。

井伊氏の歴代当主や、次郎法師としてこの寺へ出家した井伊直虎も眺めた庭園。
時が止まったような静寂な空間で、歴史に思いをはせてみてはいかがだろうか。

(次田尚弘/浜松市)
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おんな城主 直虎の舞台 観光客をもてなす「赤備え」

2017-07-02 17:00:20 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では井伊直虎や徳川家康をはじめ、浜松ゆかりの偉人を紹介する施設「浜松出世の館」を取り上げた。
今週は舞台を井伊直虎が治めていた浜松市北部に移す。
大河ドラマの放送にあわせ「大河ドラマ館」が開設され、大勢の人々が訪れる今話題の地を紹介したい。

井伊直虎は遠江井伊谷(とおとうみのくに・いいのや)の領主で、徳川四天皇のひとりで彦根藩の初代藩主「井伊直政」の養母としても知られる。
幼少の直政の後見人として養育しながら女城主として井伊家を断絶の危機から救った。
直政を家康の家臣にするまでの物語はこれからのドラマで描かれるであろう。

天竜浜名湖鉄道「気賀(きが)駅」は井伊谷への玄関口で、駅に程近い、浜松市みをつくし文化センターホールに「おんな城主 直虎 大河ドラマ館」が開設されている。


【写真】井伊家の家紋と赤備えが目立つ「気賀駅」

気賀駅では観光客をもてなそうと、大河ドラマの放送に合わせ井伊家の家紋や「井」の字が入った赤い幕を駅舎に施している。
同鉄道は浜名湖の北岸を走るローカル線で、掛川駅と新所原駅を結ぶ。
1両編成のディーゼルカーがホームに着くと、大河ドラマ館や井伊家の菩提寺である「龍潭寺(りょうたんじ)へと向かう路線バスへ乗り換える観光客で賑わっていた。

土曜・日曜を中心に、市のマスコットキャラクターである「家康くん」と「直虎ちゃん」が大河ドラマ館周辺を散策することも。大河ドラマ館は来年1月14日まで開設。
関西からのアクセスは、浜松駅から遠州鉄道と天竜浜名湖鉄道を乗り継ぐか、浜松駅バスターミナルから路線バス(約60分)でいずれも気賀駅下車。
浜名湖に近い豊かでのどかな井伊谷を訪れてみては。

(次田尚弘/浜松市)
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