さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

「生しらす」で鮮度を示す 創意工夫で魅力を発信・清水港

2018-01-29 23:53:41 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では日本夜景遺産の認定を受け、ローカル線と沿線の工場群が織りなす夜景を新たな地域資源と位置づけ、まちおこしに取り組む富士市の事例を取り上げた。

今週は富士市の西隣、静岡市清水区の清水港と、そこで水揚げされる新鮮な海の幸を使った特色ある取り組みを紹介したい。

静岡市清水区は清水港を中心に海運の要所として発展した港町で、静岡茶の輸出など国際的にも重要な港に指定されている。

この清水港に、仲卸業者らにより開設された「清水魚市場・河岸(かし)の市」という施設がある。冷凍マグロの水揚げ日本一を誇ることから、マグロをはじめ近海の魚介類、春と秋の時期には名産の桜えびを販売する市場が並び、食事処もある。

食事処がある「まぐろ館」には十数店舗の店があり、通路にはまぐろをふんだんに使った料理の見本が並び、店員らが自店の魅力を観光客らに威勢よくアピール。

筆者が訪れた店では、まぐろを中心とした刺身の盛り合わせに「生しらす」が添えられていた。生しらすは新鮮さが武器。和歌山でも食せる店舗が増えてきたが、神奈川県の鎌倉市や藤沢市、静岡県の焼津市などでは、提供する食材の鮮度の良さを示すサインとしての意味合いを持ち合わせているように感じる。


【写真】「生しらす」を添えた盛り合わせ

さらに、刺身に添えられる大根の「つま」は太めに切られてあり、ほのかに柑橘系の風味を感じるドレッシングをかけ、大根サラダとしても楽しめる。
ついつい残しがちである「つまもの」であるが、創意工夫により地域の味を引き立てるインパクトのある食材に変わる。

和歌山県と近い気候や特産品をもつ、異なる地域の食に触れることで、目立たずとも消費者へ魅力を訴えかける術が見えてくる。

(次田尚弘/静岡市)



私も取材に同行し「清水魚市場・河岸(かし)の市」の食事処がある「まぐろ館」で夕食をとりました。


【写真】清水魚市場・河岸の市
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夜景の価値を地域資源に 富士市「岳南電車」の取り組み

2018-01-21 16:00:05 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、中心市街地活性化を目的に、住民の有志らにより地域が持つ食の魅力を再発見し、商標化と定義の明確化により御当地グルメのブランド化に成功した「富士宮やきそば」の事例を取り上げた。
今週は舞台を南に移し、夜景によるまちおこしに取り組む富士市の鉄道を紹介したい。

富士市は人口約25万人。富士川や富士山の伏流水など豊富な水資源を活かし、数多くの製紙工場が立ち並ぶ。
東海道新幹線の車窓から工場群の向こうに望む富士山に歓声を上げたことのある方も多くいらっしゃるだろう。まさにその風景を作りだしているのが富士市である。

新富士駅から東へ約3キロのところにある「吉原(よしわら)駅」。
ここから内陸部へと続く鉄道がある。「岳南(がくなん)電車岳南線」。吉原駅-岳南江尾駅を結ぶ9.2kmの路線をもつ。
かつては製紙工場群との貨物輸送を行っていたことから工場群を縫うようにして走る路線が特徴。


【写真】富士山を望む岳南電車

2014年、この鉄道と工場群が織りなす景色が「日本夜景遺産」に認定された。
昔懐かしいレトロな駅のつくりや、そこから漏れる明かり、夜間も操業を行う工場の夜景が沿線全体に広がるものとして評価され、鉄道としては初めての認定となった。
また、昨年には「日本百名月」にも認定された。

岳南電車では、車両の明かりを暗くし車掌による沿線紹介と共に、車窓に広がる夜景や月明かりを楽しむ「夜景電車」を企画。運行日は同社のウェブサイトで確認できる。

昼間は富士山を望み、夜間は工場夜景を楽しむ。昼間とは異なるノスタルジーな雰囲気が乗客の心に哀愁を感じさせながらも、夜通し稼働する工場群から力をもらえる。
高台から見下ろすのとは異なる夜景の価値がここにある。

(次田尚弘/富士市)



私も取材に同行し別角度から富士山をバックに岳南電車を撮影しました。



また、南海電鉄には高石市の工場夜景をラッピングした電車があり、羽衣からの高師浜線をベース走り時には加太線や和歌山港線に来る事もあるようです。


【写真】走る工場夜景ラッピング電車
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御当地グルメで活性化 「富士宮やきそば」のブランド戦略

2018-01-14 14:00:23 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、家康紀行の番外編として「富士山本宮浅間大社」を取り上げた。
昨年末、大社のほど近くに静岡県富士山世界遺産センターがオープン。
加えて、昨今は御当地グルメとして「富士宮やきそば」の名が知られるようになりこれを求める観光客も多い。
御当地グルメの定着は、市民による地域おこしの活動がきっかけであるという。
今週は、富士宮やきそばの発展の経緯から、まちづくりの知恵に迫りたい。

富士宮やきそばの特徴は、固い蒸し麺をベースに、野菜、油かす(肉かす)が混ぜられ、鯖や鰯の削り節と青海苔を塗すというもので、太麺に絡みつく食材とソースの味が絶妙。


【写真】富士宮やきそば

約20年前、空洞化が進む中心市街地の活性化を目的とした市民によるワークショップが開催された。
富士宮市はやきそばの消費量が日本一。ここに着目し、やきそばを提供する市内の店舗150件余りを十数名のメンバーで訪問しデータベース化。
2000年に共通の名称でやきそばをPRするまちおこし団体を立ち上げ。名称を商標化し、販売する店舗にやきそばの作り方に加え文化や歴史を学ぶ講習会の参加や、市内の製麺業者を仕入先とする規定を設け、共通の幟旗の使用や、商標利用のロイヤリティー契約等、消費者に向けた御当地グルメとしての定義の見える化と活動を継続する仕組みを導入。

御当地グルメが集まるB-1グランプリでは第1回と第2回で首位となりその名が全国に知られるようになった。
富士宮市にもたらしたとされる経済効果は500億円ともいわれ、まちおこしの成功事例として名高いものである。

富士山本宮浅間大社や世界遺産センターに近い「お宮横丁」にはアンテナショップも。
街をあげての一体感とそのうまさを味わってみてほしい。

(次田尚弘/富士宮市)



今回の取材に同行した際に大鳥居前にある「お宮横丁」で名物「富士宮やきそば」を昼食にしました。


【富士山本宮浅間大社・第二大鳥居前にあるお宮横丁】

おみやげに鯖や鰯の削り節と青海苔を購入、家で焼きそばを食べる時に使用しました。
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世界遺産・富士山の構成資産 歴代将軍も崇拝「富士山本宮浅間大社」

2018-01-07 11:39:41 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
新しい年を皆様はいかがお迎えでしょうか。おかげさまで本コーナーは8年目に入ります。
今年も読者の皆様に、和歌山の魅力や縁のある歴史、他府県での優良事例など、有意義な情報をお伝えできるよう努める所存です。
 
◇ ◇

 昨年は1年を通して家康が生まれた岡崎から浜松、駿府へと家康の生涯を追ってきた。
長期に渡る現地取材を通し、これらの周辺地域で知り得た、皆様にお伝えしたい情報を「家康紀行・番外編」として紹介したい。

静岡県富士宮市にある「富士山本宮浅間(せんげん)大社」は全国に1300程ある浅間神社の総本社で、世界文化遺産「富士山‐信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一つ。
富士山を神体山として祭る神社で、本宮は富士山山麓に位置する富士宮市に、奥宮は富士山の頂上にある。


【写真】富士山本宮浅間大社(奥に富士山を望む)

本宮の本殿は家康による造営で国の重要文化財に指定。
「浅間造」と呼ばれる二階建ての社殿が特徴の建築様式が用いられ、朱色の社殿と澄み切った青空、遠くに臨む富士山のコントラストに圧倒される。
歴代将軍の崇拝が厚く、祈祷料や修繕にかかる費用の寄進、三奉行の裁許による富士山8合目以上の寄進など、江戸幕府との関わりが強かったという。

富士山頂へと続く富士山登山道の一つ「大宮・村山口登山道」の起点にあたることから、修験者からの崇拝も受けていたという。
富士山頂への登山は容易ではないが、本宮の鳥居越しに望む富士山を見上げ思わず手を合わせてしまうのは、日本人の本能のようなものだろうか。

(次田尚弘/富士宮市)

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