さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

伊勢神宮の別宮「瀧原宮」 三重県度会郡大紀町

2016-05-29 13:34:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
26日・27日にわたり開催された伊勢志摩サミットは無事閉幕。
伊勢神宮内宮の宇治橋前で安倍首相がG7の首相らを出迎え、正宮前で記念撮影をする光景は、日本古来の悠久の文化・伝統・歴史を世界に印象付けるものであった。

サミット直前の3週は会場となった賢島の歴史や志摩市の魅力を取り上げた。
今週から舞台を熊野古道・伊勢路に戻したい。

紹介するのは紀北町の北東に隣接する「度会(わたらい)郡 大紀(たいき)町」。
同町は人口約8800人。町の一部が、かつての紀伊国の領域となる。

役場の程近くに、伊勢神宮の別宮にあたる「瀧原宮(たきはらのみや)」がある。
そもそも、伊勢神宮は「神宮」と呼ばれ、天照大神を祀る「内宮」と豊受大神を祀る「外宮」、さらに両宮に属する「別宮」「摂社」「末社」「所管社」「別宮の所管社」を合わせた125社により構成され、それぞれ、伊勢市、松阪市、志摩市、度会郡の4町、多気(たき)郡の3町に鎮座している。


【写真】「瀧原宮」

瀧原宮は別宮のひとつで、内宮・外宮から最も離れたところに位置し、古くから「神宮の遥宮(とおのみや)」として尊ばれている。
垂仁(すいにん)天皇の皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)が天照大神を祀る御鎮座の地を求め、近くを流れる宮川を下流から上流へと進む途上で、この地に新しい宮を建てたのが起源といわれている。

鳥居を潜ると大きな杉の木が立ち並ぶ200メートル程の参道が続く。
神宮と同じく20年に一度、式年遷宮が神宮の翌年に行われるため、境内は社殿を交互に建てられる配置となっている。
かつては、内宮を起点に伊勢路を進む旅人らが祈願に立ち寄ったであろう。
心が改まる神聖で静寂の時を感じる瀧原宮へぜひ。

(次田尚弘/大紀町)



伊勢神宮の別宮「瀧原宮」の写真です。




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高まる緊張、伊勢志摩の魅力 三重県志摩市 3

2016-05-22 13:32:23 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
サミットを4日後に控えた今、伊勢志摩は世界中から最も注目を浴びる観光地だ。
筆者は2週間前に現地を訪れたが、既に厳戒態勢が敷かれていた。

メーン会場となる賢島とその一帯に広がるリアス式海岸は実に美しく、見る者を魅了してくれる。
この景色を一望できるお薦めのスポットを紹介したい。

「横山展望台」。賢島から北西方向へ約3㎞。伊勢志摩国立公園内の標高203mの高台に整備され、英虞(あご)湾に浮かぶ約60の島々と、重なり合うように海へ突き出た半島を一望できる。


【写真】横山展望台から望む、伊勢志摩国立公園

伊勢志摩国立公園は昭和21年に国内で13番目の国立公園に指定。
伊勢志摩エリア(伊勢市・鳥羽市・志摩市・南伊勢町)を囲む東西約50㎞、南北約40㎞の地域で、紀伊半島の東端に位置する。この地域は中央構造線と仏像構造線の活断層が通り、地震活動により沈降と隆起が繰り返されたことで、リアス式海岸が形成されたという。

横山展望台の程近くにある「横山ビジターセンター」は、同公園の歴史や魅力を伝え、豊かな自然との親しみを深めてもらおうと平成11年に開館した施設。
木を基調とした落ち着いた雰囲気で、散策コースの紹介や観光情報発信をはじめ、自然や文化を紹介する展示コーナーも充実。体験学習や自然観察会などの催しも積極的に行われており、リゾートや観光目的とは一味違う、伊勢志摩の魅力に触れられる試みが提供されている。
横山展望台へは、近鉄鵜方駅から車で約10分。駐車場も整備。

まもなく開催されるサミット。
成功を祈るとともに、この機会を通じて世界中に伊勢志摩とその周辺地域の魅力が発信され、その価値が世界中で認知されることを期待したい。

(次田尚弘/志摩市)



横山ビジターセンターと展望台からの写真です。





リアス式海岸が一望出来る、壮大な景色を楽しめます。
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伊勢志摩で確立、真珠の養殖技術 三重県志摩市 2

2016-05-15 15:52:39 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
今週は賢島を囲む英虞(あご)湾で盛んな「真珠養殖」の歴史と魅力を紹介したい。

この地域で真珠養殖が盛んであるのは、皆さんも御存知の真珠ブランド「ミキモト」の創業者である御木本幸吉氏が、明治26年、この地で真珠養殖の技術を確立したことに由来する。

真珠は「阿古屋貝(あこやがい)」の体内で作られる宝石。
養殖技術が確立されるまでは、小石などが貝の体内に入り込むことで偶発的に生成される神秘に満ち溢れたものとして世界に知られていた。

真珠の養殖に欠かせないのは「核入れ」の作業となる「挿核手術」。
偶発的なことを人工的に行う技術だ。
貝の口を開け生殖巣にメスを入れ、特別な器具を使用し真珠質を分泌する機能がある細胞(ピース)と、真珠質を巻きつけるための核(真珠核といい、BB弾のような白い球状で、淡水の二枚貝の貝殻を原料に作られたもの)を挿入。
これにより貝の体内で真珠が生成されるようになる。

その後、約1年半、上質な真珠を育てるため、貝殻の掃除を欠かさず、真珠核の位置を確認するためにレントゲンを撮影することもあるという。
手塩にかけて育てた貝を浜揚げし、真珠を取り出す瞬間は感動的だろう。

その感動の瞬間を体験できる施設がある。
「真珠取り出し体験」と銘打ち、収穫時期となった貝の口を開け真珠を取り出すもの。
筆者は1回1000円でこの体験をしてみた。
半信半疑でメスを入れると綺麗な真珠が現れた。


【写真】真珠を持った阿古屋(あこや)貝

時価総額は体験料を大きく上回るものであったらしく、携帯ストラップにして持ち帰ることにした。
どんな真珠が出てくるかは運次第。
価値ある真珠の3原則「巻き(厚み)・てり(光沢)・形」を備えた真珠に出会えることを期待し、ぜひ皆さんも挑戦してみては。

(次田尚弘/志摩市)


真珠取り出し体験が出来る「真珠の里」志摩市志摩町越賀山本水産の写真です。


三重県志摩市志摩町越賀の入り江


貝を養殖している「いかだ」


真珠工房 真珠の里


いけす内の阿古屋貝(あこやがい)、この中から自由に貝を選びます。
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サミット会場「賢島」の歴史 三重県志摩市

2016-05-08 17:00:23 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
伊勢志摩サミット(5月26日~27日)を前に、これまで「熊野古道・伊勢路」周辺の魅力を16回に渡り取り上げてきた。
伊勢路は先週紹介の紀北町から北上を続けるが、今週からしばらくは伊勢路から少し離れ、サミット会場となる「賢島(かしこじま)」周辺の魅力にクローズアップしたい。

観光地として名高い「伊勢志摩」は、かつての伊勢国と志摩国の地域で三重県の南東部に位置し、現在は伊勢市・鳥羽市・志摩市の3市がそれにあたる。
賢島は志摩市のほぼ中央に位置し、英虞(あご)湾に浮かぶ周囲約7キロ、人口100人余りの島。

島の中心部には近鉄賢島駅があり、大阪難波や京都、名古屋方面からの特急列車が行き交う。
本州からは、近鉄電車か、線路と並走し国道167号にかかる全長10メートル程の賢島橋、あるいは、賢島大橋(全長153メートル)を使えば容易にアクセスできる。


【写真】離島を繋ぐ「賢島鉄橋」を渡る近鉄特急 手前が本州、奥が賢島

筆者はこれまで幾度も賢島を訪れてきたが、このコーナーの取材をするまで本州と海を隔てた島であることに気付かなかった。かつては、干潮時に徒歩で渡ることができたため「徒越(かちご)え島」と呼ばれ、それが転じて「賢島」となったといわれている。

賢島は昭和初期までは真珠の養殖小屋が立つだけの静かな無人島。
昭和3年頃「海の軽井沢」を作ろうと近鉄などが中心となり開発が進み、本州と賢島間に賢島鉄橋を架設。
昭和4年に賢島駅が開業。賢島駅より先には貨物専用の真珠港駅があったとされる。

昭和21年、賢島が伊勢志摩国立公園に指定されたことを契機に、洋風建築のホテルを建設する動きが起こり、昭和26年に志摩観光ホテルが開業。
今回サミット会場となるホテルの前身である。
次週に続く。

(次田尚弘/志摩市)




【写真】 近鉄賢島駅
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郷土料理・マンボウに触れる 三重県北牟婁郡紀北町 3

2016-05-02 20:39:46 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では三重県紀北町の旧・紀伊長島区にある「紀勢道紀北パーキングエリア」について取り上げた。
今週は旧・紀伊長島地区の魅力をかつてから発信し続けている、「道の駅紀伊長島マンボウ」を紹介したい。


【写真】「道の駅紀伊長島マンボウ」

「道の駅紀伊長島マンボウ」は、紀北町の臨海部で整備が進められている熊野灘臨海公園内に位置する道の駅。
国道42号に面し、紀勢道紀伊長島ICからも程近い。
熊野古道の「荷坂峠(にさかとうげ)」にも近く、ウォーキングの拠点としての利用者も多い。

荷坂峠は伊勢国と紀伊国の境に位置する峠として、徳川頼宣公が紀州藩の初代藩主に着任した際、紀州への玄関口として整備。
かつては、西寄りにある「ツヅラト峠」がその役割を成していたが、つづら折りの急な峠道であることから、「荷物を担いでも超えられる坂道」という意を込めて荷坂峠と名付けられたという。
勾配がゆるく道幅も広いことから古道歩きの初心者にも歩きやすい。

道の駅の特徴は、何といっても「マンボウ」を食べられるということ。
マンボウといえば水族館でのんびりと泳ぐ姿が思い浮かぶが、実は食用魚でもある。
熊野灘で行われる定置網漁で、12月から4月頃に獲れるという。
レストランではマンボウを使ったフライなどの料理が提供され、日曜には屋台でマンボウの串焼きを購入できる。
土産品コーナーではマンボウの切り身が販売されるなど、マンボウづくし。

気になるお味は、ごく普通の白身魚と大差はないが、若干の弾力がある感じ。
串焼きでは塩コショウが効き、鶏のササミのような味を楽しめる。

水族館で観る姿が脳裏に浮かび複雑な気もするが、地域のまちおこしを願う地元の郷土料理として親しまれている。
東紀州の珍味、マンボウをお試しあれ。

(次田尚弘/紀北町)
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