さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

和歌山生まれの新品種 清見と文旦を交配「春峰(しゅんぽう)」

2021-04-25 16:50:58 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号ではオレンジの味が濃い、清見との交配種「たまみ」を取り上げた。
今週は清見と水晶文旦の交配種で、和歌山県有田郡で生まれた新品種「春峰(しゅんぽう)」を紹介したい。


【写真】八朔のようなさっぱりした味わいの「春峰」

春峰は、果樹試験場のような公的機関により開発されたものではなく、みかん農家が考案し生み出した品種。
清見と水晶文旦(ザボンと呼ばれることもある)を人為的に交配させ、収穫された実の中から選抜したものを育成し、平成6年に登録された。

サイズは200g~250gと温州みかんと比べ大きめのサイズ。文旦譲りなのか、やや縦長の形をしている。果皮は張りがありしっかりした固さがあるが、手で剥くことができる程度。水分が多く、剥くと爽やかな香りが広がるのが特徴。

糖度は10度前後と高くないが、酸味が低いために甘さが感じられる。
種が少なく、じょうのう(袋)も薄いため食べやすく、八朔のようなさっぱりした味わいがある。

農水省が公表している平成30年産特産果樹生産動態等調査(2021年2月公表値)によると、全国の収穫量は35t程度。前号で紹介の「たまみ(80t程度)」と比べても、希少性のある品種といえる。
主な生産地は和歌山県(57%)、大分県(43%)で、和歌山県内の主要な産地は海南市と記載されている。

みかん農家による創意工夫から生まれた春峰。収穫期は1月下旬から3月頃。今の時期は流通していないが、来年の春柑橘シーズンにはぜひ食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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オレンジの味が濃い、清見との交配種 県内生産量は僅か「たまみ」

2021-04-18 14:50:01 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では大粒の果肉が特徴で、デコポンと同じ、清見とポンカンの交配種である「はるみ」を取り上げた。
今週は清見と米国生まれのオレンジ「ウィルキング」の交配種「たまみ」を紹介したい。


【写真】見た目は温州みかんに似た「たまみ」

たまみは、清見やはるみと同様に静岡市の生まれ。果樹試験場で1980年にできた系統で、全国の試験地で試験栽培された後、2004年に新品種として認められ2006年に品種登録。
サイズは約150gで、温州みかんとほぼ同じサイズ。見た目も温州みかんに似ており、手で容易に剥くことができる。
種がやや多めだが、じょうのうが薄くそのまま食べられる。果汁量が多く糖度は12%程度で、オレンジのような香りが特徴。

清見と交配されたウィルキングは、地中海マンダリンとして知られるウィローリーフという品種と、キングというオレンジを交配したもの。米国生まれで1915年から作られる歴史のある品種である。
清見は温州みかんとオレンジの交配種。たまみの4分の3は海外のオレンジに由来し、香りの強さはそれに起因するといえよう。

たまみは、ウィルキングに見られる「隔年結果性」という、いわゆる表作・裏作が現れる品種で、味や収穫量に変化があり、前号で取り上げたはるみと同様、今年は甘さが足りない印象を受けた。

農水省統計(2017年)によると、収穫量は80t程度。清見の1万2千tと比べると、まだまだ一般的ではない。
主な生産地は愛媛県(35%)、長崎県(24%)、愛知県(22%)、静岡県(19%)で和歌山県での生産はごく僅かということになる。

筆者は紀の川市で栽培されたたまみを産直市場で購入した。
大々的ではないものの、新品種として県内でも栽培が始まっており、これからの生産拡大に期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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大粒の果肉が特徴 デコポンと同じ交配種「はるみ」

2021-04-11 13:31:45 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、柑橘の大トロと呼ばれるほど、瑞々しさと甘味が特徴である柑橘「せとか」を取り上げた。
温州みかんとオレンジを交配した国内初のタンゴール品種である「清見」は、様々な春柑橘を生み出している。
今週は、清見とポンカンの交配種「はるみ」を紹介したい。



この組み合わせに見覚えがある方もいらっしゃるだろう。
はるみは、清見とポンカンの交配種として有名な「デコポン」と同じ組み合わせ。厳密にいえばポンカンにも種類があり「F2432ポンカン」という品種から生まれたのが、はるみである。

外見上、デコポンのように凸が際立って見えることはないが、輪切りにしてみるとデコポンの風格を感じさせられる。
デコポンと比べ外皮が柔らかくて剥きやすく、温州みかんに似ている。
特徴は大粒の果肉。果肉が大きくなるほど水分が抜けパサパサとした食感になりがちであるが、はるみの場合、果汁が多く完熟した甘味を感じることができる。

この品種も清見と同じ静岡市清水区の生まれ。1996年に命名され、1999年に品種登録された。冬の終わり、春を感じさせる頃に旬を迎え、味と香りが春を予見させることから、はるみと名付けられたという。

はるみは表作と裏作が交互に訪れることが多く、毎年均一な結果が出ることがない難しい品種。表作に当たれば糖度が15度を超すものもあるといい、食べるまで味がわからない不思議な柑橘である。

農水省統計(2017年)によると、主な生産地は、広島県(30%)、愛媛県(27%)、和歌山県(15%)と国内3位の収穫量。
今年、筆者が食したはるみの甘味はいまひとつ。来年こそは糖度15度のはるみに出会いたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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柑橘の大トロ 瑞々しさと甘さが特徴「せとか」

2021-04-04 16:45:28 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、温州みかんとオレンジを交配した国内初のタンゴール品種である「清見」を取り上げた。
今週は清見から派生したタンゴール品種「せとか」を紹介したい。


【写真】外皮が極めて薄く、張りと丸みがある「せとか」

せとかは、清見にアンコールという柑橘を掛け合わせ、更にマーコットという柑橘を掛け合わせたもの。

艶やかな丸みが特徴。重さ約200グラム、直径7~10センチで、清見とほぼ同じサイズ。
外皮が極めて薄く、瑞々しく溢れ出しそうな果汁と濃厚な味わいから、柑橘の大トロと呼ばれることも。

外皮に傷が付きやすいため、フルーツキャップと呼ばれる緩衝材に包まれて販売されることが多いが、流通のしづらさから生産量が多くない希少品種としても知られている。

長崎県南島原市(旧・口之津町)で生まれ、長崎県島原半島と熊本県天草諸島の間の海峡「早崎瀬戸(はやさきせと)」にちなみ、また、瀬戸内海地域での栽培を期待され「せとか」と名付けられたという。

農水省統計(2017年)によると、主な生産地は、愛媛県(65%)、三重県(7%)、佐賀県(5%)、広島県(5%)、和歌山県(5%)と、期待通りの地域で栽培。
流通が難しい希少品種が故に、生産地のひとつである和歌山県は、他の県と比べせとかを食べられるチャンスがある。

おすすめの選び方は表面に張りがあり、ずっしりとした重さのあるもの。
柑橘の大トロと評されるせとかを、ぜひご賞味あれ。

(次田尚弘/和歌山市)
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