前号では、国産レモンを使用した「レモン酒」の作り方を取り上げた。防腐剤の散布がなく外皮まで安心して食すことができる国産レモン。加工品として活用される機会が増える昨今、国内の生産量は増加傾向にある。今週はレモン栽培の動向を紹介したい。
【写真】国産レモンの作付面積と収穫量の推移
農水省の統計によると、国内の消費量は約5万トン。内訳は輸入が4.2万トン、国産が0.8万トンとされている。約84%を輸入に頼っており、その多くはアメリカやチリなど、中南米からとなっている。
その背景は価格の安さに加え、年間を通して安定的な供給体制が確立されているから。国産レモンは夏季の出荷が難しい。 レモンの栽培適地は、年平均気温が17度以上で、最低気温がマイナス3度以上。三大生産地である、広島、愛媛、和歌山が、瀬戸内海に面する比較的温暖な地域であることはそれ故である。
レモンは寒さに弱く、氷点下になる時間が数時間続くだけで、外皮の障害や枝枯れ、花の減少などが発生する、デリケートな作物である。 栽培できる地域が限られるが、昨今、ミカンに代わる高単価な作物として、国産レモンの栽培が拡大している。
統計によると1990年の作付面積は約125ヘクタールで収穫量は約2000トンであったが、2021年には作付面積が約736ヘクタール、収穫量は約8650トンと、作付面積は約5.8倍、収穫量も約4.3倍と増加傾向にある。
広島県内では収穫したレモンを長期低温貯蔵により、国産レモンの流通が難しい夏季に出荷することで、高単価で販売できる仕組みを取り入れるなど、様々な工夫が行われている。 その背景には、ミカンの消費量の減少に対し、地域の特性と柑橘栽培の技術を活かし新たな収益源を求めているという複雑な状況も見え隠れする。
(次田尚弘/和歌山市)