さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

甘味と酸味の絶妙なバランス 赤い果肉が特徴「スタールビー」

2024-04-21 15:48:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、高糖度が特徴の新品種で、柑橘産業の振興が期待される「あすみ」を取り上げた。
今週は、今の時期に旬を迎える柑橘で、味わいが良好な、国産のグレープフルーツ「スタールビー」を紹介したい。


【写真】赤くて瑞々しい果肉が美しい「スタールビー」

スタールビーは1930年頃、アメリカで発見された品種。日本国内に入った時期は定かではないが、僅かながら日本でも栽培されている。
以前、このコーナーで紹介した国産グレープフルーツ(紀の川市で栽培)は果肉が白い「ホワイト・マーシュ」と呼ばれる品種。今回、果肉が赤い「スタールビー」を県内の産直市場で見つけた。栽培地は田辺市。

果重は300g程度と大きめ。温暖な地域でも日本のように厳しい寒さがある地域は腰高の球体になる傾向があり、海岸部などの温暖な地域や施設栽培される際はやや扁平な扁球形となる。
果皮の厚さにも地域性があり、寒さがある地域ほど厚みが増え1cmを超えるものも。暖地では5mm程度と薄くなる。果皮の色にも差があり暖地ほど橙色に近くなる。筆者が購入した県内産のものは1cmに満たない厚みであった。

特徴は鮮やかな赤い果肉とみずみずしさ。赤い果肉には、抗酸化性が強く、動脈硬化の予防に効果があるとされるリコピンが多く含まれているという。

食してみるとグレープフルーツ特有の酸っぱさよりも甘さが先行。それでいて、程よい苦みが残り、甘味と酸味のバランスが取れた絶妙な味わいである。果汁の多さも嬉しい点である。

食べ方は、半分にカットしスプーンですくって食べるのが一般的だが、スマイルカットにして食べやすくすることも。果汁を搾り、焼酎と炭酸水で割ったスカッシュとして楽しむこともできる。

旬は4月下旬から7月中旬。ぜひ味わってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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高糖度が特徴の新品種 柑橘産業の振興に期待「あすみ」

2024-04-14 13:34:35 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、食味が優れ高級品種として知られる、愛媛県のオリジナル品種「まどんな」を取り上げた。深い甘さが特徴のまどんなに続き、今週は抜群の糖度を誇る「あすみ」を紹介したい。


【写真】強い甘さと香りが魅力の「あすみ」

あすみは、「上田温州」と「八朔」の交配種である「スイートスプリング」に「トロビタオレンジ」を交配した「カンキツ興津46号」と、「清見」と「ポンカン」の交配種である「はるみ」を掛け合わせたもの。

1992年に育成が始まり、2014年に品種登録されている。名前は親の品種である、はるみの子どもであることと、明日の柑橘産業を担ってほしいという思いに由来するという。

果実の重さは150g~200gで、一般的な温州みかんと比べやや大きめ。扁球形で頭頂部がやや膨らんでおり、色は濃い橙色をしている。

特徴は何と言ってもその甘さ。栽培環境によるところもあるが、糖度が17%に達するものがあるほど。親の品種から受け継いだ、オレンジのようなさわやかな香りがあり食味がよい。果皮は薄いため剥きやすい。じょうのうも薄いことから容易に食べられる。種は少しある程度であまり気にならない。みかんに含まれ健康によいとされるβ-クリプトキサンチンが一般的な温州みかんよりも多く含まれる。

この品種は、かいよう病への耐性が低いため露地栽培よりもハウス栽培に向いており、筆者が購入したものもハウス栽培であった。
主な収穫期は1月下旬から3月上旬頃。比較的新しい品種で、まだ栽培が盛んになっていないため、農水省が公表する統計上、その生産量の記載はないが、全国で栽培可能。筆者は2月中旬に県内の産直市場で購入した。

高糖度で魅力的なあすみ。その名のとおり、明日の柑橘産業を担う品種として期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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地域で進むオリジナル品種 食味が優れた高級品種「まどんな」

2024-04-07 19:23:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、貯蔵技術を活かしブランド化が進む、濃い味と香りが特徴の「麗紅(れいこう)」を取り上げた。
今週は、旬は過ぎているが、麗紅に引けを取らないほどの深い甘さが特徴の「まどんな」を紹介したい。


【写真】果皮が薄く、果汁たっぷりの「まどんな」

まどんなは、1990年から愛媛県の果樹試験場で育成が行われ、2005年3月に品種登録された。品種名は「愛媛果試第28号」。販売時、JAから出荷されるものには登録商標の「紅まどんな」の名で販売。名前の由来は、愛媛県松山市が舞台の夏目漱石の小説「坊ちゃん」に登場する「マドンナ」にあるという。

「南香(なんこう)」と「天草(あまくさ)」を交配してできた品種で、果重は250g程度と大きめ。ヘタの方がやや盛り上がっているのが特徴。外皮が薄くて柔らかく、デリケートであるため、雨が当たらないよう、ビニールハウスなどで施設栽培されることが多い。外皮と果実が密着しているため、手では剥きづらく、ナイフでスマイルカットに切って食べるのがおすすめ。じょうのうも薄く、種はほとんど入っていないため、食べやすい。

魅力は何といっても糖度の高さと果汁の多さ。紅まどんなは糖度10.5度以上、酸度1.2度未満という基準を満たす必要がある。
贈答品として好まれ、価格は2Lサイズ5kgで8千円程度。1個あたり400円程度に相当する高級な品種といえる。

農水省統計(2020年)によると収穫量は4200t。愛媛県では、県が育成・登録した品種を種苗法に基づく育成者権保護の観点から、県外での栽培を認めておらず、愛媛県独自のオリジナル品種となっている。

近年、栽培地域を限定しブランド化を図る動きが進む。地域の特性を活かした魅力ある柑橘が生まれ、農業の振興につながることを期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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貯蔵技術でブランド化も 濃い味と香りが特徴「麗紅」

2024-03-31 22:00:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、樹上で熟成される晩生品種である「津之香」を取り上げた。桜の季節を迎えるが、この時期に旬を迎える柑橘はまだまだある。
今週は「麗紅(れいこう)」を紹介したい。


【写真】味と香りが豊潤な「麗紅」

麗紅は「清見」と「アンコール」の育成系統である「No.5」に「マーコット」を掛け合わせて生まれた品種。1984年に長崎県の農研機構で育成が始まり、2005年に品種登録されている。

果皮は張りがあり、色はその名のとおり少し赤みがかった橙色をしており、果肉の色も濃いオレンジ。重さは200g~300gで、一般的な温州ミカンと比べやや大きめである。
食してみると強い甘味と適度な酸味が感じられる。糖度は12度を超え、酸度は1.0%~1.2%と高めであることから、しっかりとした味わいを楽しむことができる。

果汁が豊富であることからジューシーで、強い香りがある。外皮が薄いので容易に手で剥くことができ、じょうのうが薄いため食べやすい。これらの特徴から、ジャムやケーキのトッピングに適している。

佐賀県では糖度、酸度、外観が基準を満たしたものを「はまさき」という名称で販売。収穫後、1ヶ月程度貯蔵することで食味が高まるとされ、ここでも蔵出しの技術が活用されている。

農水省統計(2020年)によると、収穫量の第1位は佐賀県(907t)、第2位は宮崎県(69t)、第3位は愛知県(60t)で、和歌山県は第8位(16t)となっている。
県内における収穫量は多くないが、この時期、産直市場で目にする品種である。

収穫は1月中旬から3月下旬頃。フレッシュな柑橘を味わえる、今シーズン最後の機会。目にすることがあればぜひ食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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樹上で熟成される晩生品種 限られた地域で栽培「津之香」

2024-03-24 14:14:14 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、適度な酸味と濃厚な甘みが特徴の、和歌山県オリジナル品種「田口早生」を取り上げた。これまで、収穫されてから一定の期間、貯蔵されてから出荷される蔵出しみかんを取り上げてきたが、この時期に収穫期を迎える晩生の品種がある。
今週は一部の地域に限られて栽培されている希少品種である「津之香(つのかおり)」を紹介したい。


【写真】オレンジのような味わい「津之香」

津之香は「清見」と「興津早生」の交雑実生で、昭和47年に長崎県の果樹研究所で生まれた品種。平成3年に品種登録されている。
果実の大きさは160g程度で一般的な温州みかんと変わらない大きさ。果皮は橙色で清見よりも濃い印象。12月中旬には完全に着色するが、クエン酸の含有量の減少が清見よりも遅く、成熟期は3月下旬となる。

栽培地域は樹上で越冬が可能な地域に限定され、年間の平均気温が17度を超える温暖な地域が適地とされる。栽培面積が少ないため農水省統計の値として公開情報は無いが、熊本県や佐賀県、和歌山県で栽培されているという。
気象庁の公表値では、和歌山県(和歌山市)の平均気温(1991年~2020年)は16.9℃とされているので、栽培に適した地域といえよう。

果皮は硬めであり手で剥くことは難しいため、ナイフでスマイルカットに切るのがおすすめ。食してみると果汁が多く、甘味と酸味が共に強い印象。糖度は15度程度になり、減酸が遅い品種であるため酸味も強い。温州みかんというよりもオレンジに近い味わい。種がほとんどなく食べやすい。

これから4月下旬にかけて旬を迎える津之香。筆者は海南市(下津)で栽培されたものを産直市場で購入した。希少な品種で目にする機会は限られるかもしれないが、ぜひ味わってほしい逸品だ。

(次田尚弘/和歌山市)
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