goo blog サービス終了のお知らせ 

さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

持続可能な観光地として ハワイにおける宿泊税「TAT」

2025-04-19 17:55:25 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、人形で地域の思いを伝播させる「ハワイアンモンクシール」の保護活動を取り上げた。ハワイでは宿泊税を用いた観光振興や環境保護の取り組みを積極的に導入している。今週は、ハワイの宿泊税とその仕組みについて紹介したい。


【写真】ワイキキに建ち並ぶ宿泊施設

宿泊税は、特定の地域の宿泊者や宿泊施設の事業者に課される税金。日本では2002年に東京都で導入され、2016年から大阪府、2017年から京都市と広がりを見せている。いずれも一定額まで非課税で、宿泊料金が高額になるにつれ税額が増す仕組み。宿泊税は条例で定められ、その用途は観光名所の国際化やオーバーツーリズム対策に用いられることが多い。

ハワイのケースを見てみたい。オアフ島では13.25%が課される。宿泊税の先進事例といわれ、観光地としての競争力を高めることを目的に1987年に導入された。「一時滞在のための宿泊施設税」を表す「TAT(Transient Accommodation. Tax)」として知られている。

税の利用用途としては、観光振興を専門とする「ハワイ州観光局(HTA)」が誘客のための様々なプロモーションを展開し、世界から注目される観光地としての維持拡大に貢献。昨今は観光振興に傾注し過ぎることなく、州内の地域への分配や開発のための基金の設立、ホノルル市内を走る新交通システムの整備に充当。環境保護にも一定の割合で利用されている。

アメリカにおける消費税は4.712%であるため、宿泊税と合わせた課税のパーセンテージは約18%。旅行者の負担は少なくない。

和歌山県内でも宿泊税の導入が検討されている。旅行者に税を課されているという負の感情を抱かせるのではなく、持続可能な観光を推進するうえで必要な負担として、その用途や効果を可視化し積極的に発信する工夫が必要だ。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人形で地域の思いを伝播 「ハワイアンモンクシール」の保護活動

2025-04-12 16:41:56 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、幸せを運ぶ守り神としてハワイで大切にされているウミガメ「ホヌ」を保護する法制度を取り上げた。海洋生物の保護対象はホヌに限らない。
今週は、ハワイ諸島の固有種で、乱獲により生息数が著しく減少したアザラシ「ハワイアンモンクシール」を保護するユニークな取り組みを紹介したい。


【写真】ハワイアンモンクシールの人形

ハワイアンモンクシールは体長が2m以上、体重が150kg以上のアザラシ。主に魚類、甲殻類、軟体動物を食べる。19世紀、油の採取を目的に乱獲されたことで著しく生息数を減らしたことをきっかけに、時の大統領であるルーズベルトが法律を設け、保護する法律が成立。以降、保護活動が盛んになり、現在は1400頭ほどという。

ワイキキビーチにも現れることで知られ、砂浜で日向ぼっこをする姿は愛くるしい。ホヌと同様に一定距離を保つことが法律で定められ、50フィート(約15m)以内に近づくと罰せられることがある。姿を見つけると地元の保護団体の職員が駆け付け、立て看板を立て距離を保つよう促すなど、希少な海洋生物を守る動きが定着している。

ワイキキビーチ近くにあるキャラクターをあしらった土産品を販売する店で、ハワイアンモンクシールの人形を見つけた。愛くるしい表情に貫録のある体つき、そこにアロハシャツをイメージさせる生地で作られたもの。収益の一部が保護活動に役立てられるという。

購入することで地域の環境保護に貢献でき、旅行者が自国に持ち帰り誰かにプレゼントすれば環境教育の一環になる。顔を見るたびに環境への意識の高まりも期待できる。旅行者が訪れた地域に貢献し、大切にされている思いを伝播させていく。ハワイアンモンクシールの保護活動から、レスポンシブル・ツーリズムを推進する意義を感じた。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

法律で海洋生物を守る 幸せを呼ぶ海の守り神「ホヌ」

2025-04-05 19:20:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、ハワイ州で展開されている「レスポンシブル・ツーリズム」の取り組みを取り上げた。ハワイでは人と海洋生物の共生を目指すために定められた州法とアメリカ連邦法がある。今週は、ハワイの海洋生物を保護する取り組みを紹介したい。

ハワイで人々に愛され、大切な存在として親しまれているのが「ホヌ」。現地の言葉でウミガメを意味し、幸せを運ぶ海の守り神として古くから大切にされている。日本とハワイを結ぶ日系の航空会社がホヌをあしらった旅客機を専属的に運行するなど、日本人にとっても馴染みのある存在である。


【写真】ワイキキの海を泳ぐ「ホヌ」

神聖な存在であるホヌを守ろうと州法では10フィート(約3m)以内に近づくことを禁止されており、これに抵触すると厳しい罰則を受けることになる。ワイキキエリアの護岸を歩いていると、目の前の浅瀬の海でホヌを見つけた。近くにはシュノーケルを付けた男性が静かにホヌの泳ぎを見守る姿があり、地域の人々の心を豊かにしてくれる神聖な生き物として、愛され親しまれていることを実感した。

遠く離れた和歌山県内にもウミガメが訪れる浜がある。みなべ町の「千里の浜」や、お隣の三重県紀宝町がアカウミガメの産卵地であることは、このコーナーでも取り上げた。太平洋沿岸に限られたものと思いきや、昨年夏には和歌山市の「磯の浦」で姿が見られるなど、和歌山県民にとってもウミガメは身近な存在。

海洋生物を温かい目で見守り、地域の文化として大切にする取り組み。保護するための制度を設けざるを得ないこともあるが、レスポンシブル・ツーリズムの観点で、地域の文化と歴史的背景を理解し、誰もがあたりまえのように自然と共生できる社会になることを願いたい。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地域への思いやりを育む「レスポンシブル・ツーリズム」の取り組み

2025-03-30 15:27:16 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より、ハワイ州独自のSDGs「アロハ・プラス・チャレンジ」を取り上げている。責任ある観光を意味する「レスポンシブル・ツーリズム」の具体的な取り組みを紹介したい。

持続可能な観光を意味する「サステナブル・ツーリズム」については、和歌山市においても数年前から観光協会と事業者が協力した取り組みを行い、筆者も携わってきた。サステナブル・ツーリズムは環境保護や地域経済の維持を重視し、オーバーツーリズム対策、宿泊施設が提供するアメニティに使われる材料や提供方法の見直し、地域の食材を使った地産地消の促進などが一般的。一方でレスポンシブル・ツーリズムは、観光客自身がその地域でどのように行動すべきか、個人の責任ある行動を促し意識させることを重視する。

ワイキキエリアの一部ホテルでは宿泊者にマイボトルを提供。共用部に浄水された水を自由に入れることができるコーナーがあり、外出の際もここで水を入れ持ち歩くことを推奨。マイボトルは記念に持って帰ることができる。


【写真】ホテルで提供される「マイボトル」

他にも宿泊者限定のワークショップとして、地域の花を使った首飾りの「レイ」作りや、ウクレレの演奏体験、ビーチクリーンなどを催している。これまでは旅の思い出作りのサービスのひとつであったかもしれないが、地域特有の文化がなぜできて現代まで継承されているかを知り、理解することでその地域への敬意や愛着が生まれ、おのずと観光客の行動の変化やリピートにつながっていく。

地域の人々には観光客に情報をわかりやすく伝え、観光客はそれを積極的に受け取り意識的に行動する。そこには互いの共感や思いやりが重要。おもてなしを超えた観光客とのコミュニケーションが求められている。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハワイ州独自のSDGs 「アロハ・プラス・チャレンジ」

2025-03-23 17:00:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、条例で景観や治安維持に取り組む、ワイキキビーチの対策を取り上げた。今週はハワイ州が推進する持続可能な社会づくりの取り組みを紹介したい。


【写真】「ラナイ」からビーチとダイヤモンドヘッドを望む

ワイキキのリゾートホテルの魅力のひとつであるのが「ラナイ」。ラナイとは客室から出られるベランダのことで、椅子や机が置かれ、ビーチやダイヤモンドヘッドを望みながらゆっくりとしたひと時を過ごすことができる場所。ホテルによってはラナイでモーニングの提供を受けることもできる。

客室とラナイを行き来するなかで気付いたことがある。隔てる大きな窓が少しでも開いていると、客室の空調が止まるということ。環境保護の取り組みの一環で、外気が客室内に入り温度が上昇することで、不用意に空調が稼働することを防ぐため、扉にセンサーを取り付け、空調を操作しているという。これはホテル独自の取り組みであるが、ハワイ州が推進する様々な取り組みがある。

ハワイ州は国連が進める持続可能な開発目標「SDGs」を基準に、独自にゴールを設定した「アロハ・プラス・チャレンジ」という特別なプログラムを設けている。歴史を辿ると約50年前に「ハワイを思いやる心」という意味がある「アラマハワイ」の概念が生まれ、国連総会でSDGsが採択される以前から、持続可能な社会を実現するための6つの取り組みを定め、世界に先駆けた活動を推進している。

6つの取り組みとは「クリーンエネルギーへの転換」「地産地消の促進」「天然資源の管理」「固形廃棄物の削減」「地域コミュニティの促進」「環境経営と教育の推進」を指し、官民が一体となった「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」が進んでいる。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする