goo blog サービス終了のお知らせ 

さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

ハワイの漁業振興に貢献 県出身者が伝えた「ケンケン漁」

2025-05-03 21:23:23 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、ハワイの文化と観光が融合した「サーフィン」の歴史と今を取り上げた。雄大で美しい太平洋に浮かぶハワイ。日本からは約6600kmのはるか南西に位置するが、和歌山とのつながりも。今週は、和歌山とハワイの歴史と今を紹介したい。


【写真】群青色のハワイの海

時は今から約140年前。1885年、日本政府とハワイ王朝で締結された協定に基づき、22名の和歌山県人がハワイに移民したことは前述のとおり。当初は3年間に限りサトウキビ畑で就労する契約であったが、1898年のアメリカ併合後、自由に仕事を選択できるようになり、この頃からハワイへの移民者が増加。

和歌山県内からは主に串本からの移民者が多く、ハワイで漁業を営んだという。ケンケンカツオの漁法で有名な「ケンケン漁」の技術をハワイに持ち込み、先住のハワイの漁師らが行っていた疑似餌を用いた漁法に応用し、成果をあげるように。

ケンケン漁とは、イカに見立てた疑似餌(ケンケン)を引きながら船を進め、カツオなどの魚を釣り上げる日本式の漁法。主に串本の田並地区からの移民が増え、昭和初期には250名余りになったという。

1924年、ハワイの日本総領事館が行った調査によると、オアフ島の全ての漁師のうち、約38%が和歌山県出身者であったという記録があり、ハワイにおける漁業の礎を築くことに大いに貢献したようである。

1925年には和歌山県出身者らで作る県人会が設立されるも、世代が変わるにつれ徐々に衰退し2002年に解散。和歌山とのつながりが薄くなることが懸念されたが、昨年「ハワイ県人会」が再興。ハワイと和歌山の関係が深まり、交流が生まれることを期待したい。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地域の文化と観光が融合 「サーフィン」の歴史と今

2025-04-26 16:41:30 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、持続可能な観光地を目指し導入されている、ハワイ州における宿泊税「TAT」を取り上げた。ここまで、魅力的な観光地として維持・拡大するための制度に触れてきた。ここからは、ハワイ特有の文化や歴史と、和歌山県の関係を紹介していきたい。


【写真】ロッカーに立てかけられた「サーフボード」

ワイキキビーチといえば海水浴のイメージが強いが、少し沖の方に目を向けると無数のサーファーの姿が見える。

サーフィンの歴史は深く、西暦400年頃、ハワイを含むオセアニアのポリネシア地域の漁師が編み出した、波乗りの技術とされる。1700年代後半、イギリス人の探検家によるハワイの発見から、ポリネシアにヨーロッパから宣教師などが移り住み、布教の妨げになるとしてサーフィンが禁止され文化が衰退。1900年に入りワイキキビーチを中心にサーフィンの文化が復活し、当時、オリンピックの金メダリストとして活躍していた、ハワイ出身の水泳選手「デューク・カハナモク」が、サーフィンの魅力を世界に普及させ、世界的なスポーツとして拡大を遂げた。

ワイキキの街を歩いていると、ビーチへと続く通路沿いに、サーフボードを保管するためのロッカーが存在する。壁に立てかけられ、チェーンなどで施錠する仕組みで、ハワイを象徴する風景のひとつである。利用料は月額約55ドル、年額約500ドル。サーフィンを愛する地域の方々が日常的に楽しめる文化が根付いている。

ワイキキではないが同じオアフ島内で、世界最高峰とされるサーフィンの大会が開催。高さ13メートル以上の波が終日続くという条件を満たす、限られたタイミングでしか開催できない厳格な大会。昨今は和歌山県出身者が招待されている。海を通じた交流が増えることを期待したい。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

持続可能な観光地として ハワイにおける宿泊税「TAT」

2025-04-19 17:55:25 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、人形で地域の思いを伝播させる「ハワイアンモンクシール」の保護活動を取り上げた。ハワイでは宿泊税を用いた観光振興や環境保護の取り組みを積極的に導入している。今週は、ハワイの宿泊税とその仕組みについて紹介したい。


【写真】ワイキキに建ち並ぶ宿泊施設

宿泊税は、特定の地域の宿泊者や宿泊施設の事業者に課される税金。日本では2002年に東京都で導入され、2016年から大阪府、2017年から京都市と広がりを見せている。いずれも一定額まで非課税で、宿泊料金が高額になるにつれ税額が増す仕組み。宿泊税は条例で定められ、その用途は観光名所の国際化やオーバーツーリズム対策に用いられることが多い。

ハワイのケースを見てみたい。オアフ島では13.25%が課される。宿泊税の先進事例といわれ、観光地としての競争力を高めることを目的に1987年に導入された。「一時滞在のための宿泊施設税」を表す「TAT(Transient Accommodation. Tax)」として知られている。

税の利用用途としては、観光振興を専門とする「ハワイ州観光局(HTA)」が誘客のための様々なプロモーションを展開し、世界から注目される観光地としての維持拡大に貢献。昨今は観光振興に傾注し過ぎることなく、州内の地域への分配や開発のための基金の設立、ホノルル市内を走る新交通システムの整備に充当。環境保護にも一定の割合で利用されている。

アメリカにおける消費税は4.712%であるため、宿泊税と合わせた課税のパーセンテージは約18%。旅行者の負担は少なくない。

和歌山県内でも宿泊税の導入が検討されている。旅行者に税を課されているという負の感情を抱かせるのではなく、持続可能な観光を推進するうえで必要な負担として、その用途や効果を可視化し積極的に発信する工夫が必要だ。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人形で地域の思いを伝播 「ハワイアンモンクシール」の保護活動

2025-04-12 16:41:56 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、幸せを運ぶ守り神としてハワイで大切にされているウミガメ「ホヌ」を保護する法制度を取り上げた。海洋生物の保護対象はホヌに限らない。
今週は、ハワイ諸島の固有種で、乱獲により生息数が著しく減少したアザラシ「ハワイアンモンクシール」を保護するユニークな取り組みを紹介したい。


【写真】ハワイアンモンクシールの人形

ハワイアンモンクシールは体長が2m以上、体重が150kg以上のアザラシ。主に魚類、甲殻類、軟体動物を食べる。19世紀、油の採取を目的に乱獲されたことで著しく生息数を減らしたことをきっかけに、時の大統領であるルーズベルトが法律を設け、保護する法律が成立。以降、保護活動が盛んになり、現在は1400頭ほどという。

ワイキキビーチにも現れることで知られ、砂浜で日向ぼっこをする姿は愛くるしい。ホヌと同様に一定距離を保つことが法律で定められ、50フィート(約15m)以内に近づくと罰せられることがある。姿を見つけると地元の保護団体の職員が駆け付け、立て看板を立て距離を保つよう促すなど、希少な海洋生物を守る動きが定着している。

ワイキキビーチ近くにあるキャラクターをあしらった土産品を販売する店で、ハワイアンモンクシールの人形を見つけた。愛くるしい表情に貫録のある体つき、そこにアロハシャツをイメージさせる生地で作られたもの。収益の一部が保護活動に役立てられるという。

購入することで地域の環境保護に貢献でき、旅行者が自国に持ち帰り誰かにプレゼントすれば環境教育の一環になる。顔を見るたびに環境への意識の高まりも期待できる。旅行者が訪れた地域に貢献し、大切にされている思いを伝播させていく。ハワイアンモンクシールの保護活動から、レスポンシブル・ツーリズムを推進する意義を感じた。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

法律で海洋生物を守る 幸せを呼ぶ海の守り神「ホヌ」

2025-04-05 19:20:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、ハワイ州で展開されている「レスポンシブル・ツーリズム」の取り組みを取り上げた。ハワイでは人と海洋生物の共生を目指すために定められた州法とアメリカ連邦法がある。今週は、ハワイの海洋生物を保護する取り組みを紹介したい。

ハワイで人々に愛され、大切な存在として親しまれているのが「ホヌ」。現地の言葉でウミガメを意味し、幸せを運ぶ海の守り神として古くから大切にされている。日本とハワイを結ぶ日系の航空会社がホヌをあしらった旅客機を専属的に運行するなど、日本人にとっても馴染みのある存在である。


【写真】ワイキキの海を泳ぐ「ホヌ」

神聖な存在であるホヌを守ろうと州法では10フィート(約3m)以内に近づくことを禁止されており、これに抵触すると厳しい罰則を受けることになる。ワイキキエリアの護岸を歩いていると、目の前の浅瀬の海でホヌを見つけた。近くにはシュノーケルを付けた男性が静かにホヌの泳ぎを見守る姿があり、地域の人々の心を豊かにしてくれる神聖な生き物として、愛され親しまれていることを実感した。

遠く離れた和歌山県内にもウミガメが訪れる浜がある。みなべ町の「千里の浜」や、お隣の三重県紀宝町がアカウミガメの産卵地であることは、このコーナーでも取り上げた。太平洋沿岸に限られたものと思いきや、昨年夏には和歌山市の「磯の浦」で姿が見られるなど、和歌山県民にとってもウミガメは身近な存在。

海洋生物を温かい目で見守り、地域の文化として大切にする取り組み。保護するための制度を設けざるを得ないこともあるが、レスポンシブル・ツーリズムの観点で、地域の文化と歴史的背景を理解し、誰もがあたりまえのように自然と共生できる社会になることを願いたい。

(次田尚弘/ホノルル)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする