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BRCA1がDNA修復で果たす役割を説明する

2016-06-03 06:06:09 | 
Research explains the role of the gene BRCA1 in DNA repair

May 30, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160530115531.htm

バーミンガム大学の科学者たちは、BRCA1という遺伝子が果たす役割の理解へと一歩近づいた
この遺伝子の変化は乳癌と卵巣癌を発症するリスクの高さと関連する

Nature Structural and Molecular Biology誌で発表された今回の研究は、BRCA1がどのようにしてユビキチンのタンパク質への結合を促進し、DNA修復でどのような重要な役割を果たすのかを説明する
この結果はさらなる研究によって確認される必要はあるものの、乳癌と卵巣癌のリスクが高いBRCA1の特定の遺伝子変異を持つ患者が明らかになる可能性がある


BRCA1にはユビキチンを他のタンパク質へと結合するE3ユビキチンリガーゼとしての作用があり、そしてユビキチンは体内の様々なプロセスを調節するのを助ける
しかしながら、DNA修復におけるユビキチンの重要性についてはほとんど知られていなかった

今回の新しい研究では、BRCA1によるユビキチンの結合は相同組換え/homologous recombinationという『間違いがない/error-free』DNA修復に必要であることが明らかにされた
このDNA修復がない細胞は突然変異を生じて癌を発症することが知られており、この研究でも BRCA1ユビキチンリガーゼ活性のない細胞は 修復に相同組換えの必要なタイプのDNA損傷に感受性であることが判明した


筆頭著者のJo Morris博士(バーミンガム大学)は言う
「BRCA1の喪失は乳癌のリスクの高さと関連することが知られているため、この遺伝子の理解に正面から取り組むget to grips with understandingことは乳癌研究の大きな目標である
我々の研究は、なぜいくつかの癌になりやすい突然変異がBRCA1遺伝子の『前部front part』に見られるのかについて説明するかもしれない
そこはユビキチンリガーゼとして機能するために必要な部分だ」

研究チームはBRCA1がどのようにしてユビキチンを結合する役割ubiquitin attachment roleを実行するのかを明らかにしようと調査し、そしてパートナーとなるタンパク質のBARD1の一部分に依存することを発見した
研究者たちはBRCA1タンパク質には手を付けずにuntouched、BARD1だけを変化させることで、BRCA1のユビキチン結合機能attachment functionを明らかにすることに成功し、それがDNA損傷への細胞の応答と適切な修復に必要であることを示した


Morris博士は次のように付け加えた
「BRCA1がDNA修復においていくつかの独立した機能を持つという我々の発見は、実際の治療に関係してくる
臨床家は現在、BRCA1の発現が低いか全く持たない乳癌患者がPARP阻害剤オラパリブOlaparibのような治療薬に抵抗するようになる可能性を心配している
我々のデータは、BRCA1を欠く癌細胞が1つ以上の『アキレスの踵』を持つことを示す
つまり癌を標的とする多くの方法が存在すると考えられ、腫瘍が治療に抵抗するようになるのを様々なやり方で妨げることが可能である」


http://dx.doi.org/10.1038/nsmb.3236
Human BRCA1–BARD1 ubiquitin ligase activity counteracts chromatin barriers to DNA resection.
ヒトのBRCA1–BARD1ユビキチンリガーゼ活性は、DNA切除に対するクロマチンによる障害を相殺する

Abstract
DNA二本鎖切断の修復において53BP1とBRCA1は反対の働きをして『経路の選択/pathway choice』に影響する

※経路の選択: 相同組換えか非相同末端結合かの選択

53BP1はDNA切除と相同組換えに対して阻害的に影響するが、BRCA1はそれを相殺する(DNA切除と相同組換えを促進する)
しかしそれがどのような作用によるのかは知られていない

今回我々はE2ユビキチンからのユビキチン転移transferを刺激するprimeために必要なBRCA1-BARD1の箇所を明らかにすると共に、
損傷したクロマチン上に存在する53BP1を移動させるrepositionためにはBRCA1-BARD1のユビキチンリガーゼ活性が必要であることを実証する

※ユビキチンは、活性化酵素/activating enzyme(E1)、転移酵素/conjugating enzyme(E2)、連結酵素/ubiquitin ligase(E3)によって基質タンパク質に結合される。BRCA1-BARD1はE3リガーゼ活性を持つ

我々はBRCA1–BARD1によるヒストンH2Aユビキチン化を確認し、
BARD1欠損細胞においてもH2A-ユビキチン融合タンパク質がDNA切除と修復を促進することを実証する

相同組換えにおいてBRCA1–BARD1が機能するためには、クロマチンを再構成するSMARCAD1が必要である

ヒストンH2A-ユビキチンへのSMARCAD1の結合、SMARCAD1の損傷箇所への最適な局在化、SMARCAD1のDNA修復における活性には、ユビキチンと結合するCUEドメインが必要である

SMARCAD1は53BP1を移動させるrepositionために必要であり、
オラパリブolaparib抵抗性またはカンプトテシンcamptothecin抵抗性におけるSMARCAD1の必要性は、53BP1の喪失によって軽減される

したがって、BRCA1–BARD1のリガーゼ活性とその後のSMARCAD1依存的なクロマチン再構成は、DNA修復の重要な調節因子である


http://www.nature.com/nsmb/journal/vaop/ncurrent/fig_tab/nsmb.3236_F8.html
Figure 8: Proposed model for the BRCA1–BARD1 Ub ligase in promoting resection at DSB-damaged chromatin.
二本鎖切断により損傷したクロマチンの切除の促進において、BRCA1–BARD1によるユビキチンリガーゼが果たす役割についての提案されるモデル

※Me: メチル化、P: リン酸化
※MRN: MRE11ヌクレアーゼ、RAD50、NBS1からなる複合体

(1) BRCA1–BARD1活性が不在の状態では、CtIP-Mre11に依存的な方法で限定的な切除が起きる
(2) BRCA1–BARD1に依存的なヒストンH2Aユビキチン修飾(K127)は、損傷に近いヌクレオソームとSMARCAD1との間の相互作用を促進する
(3) SMARCAD1の活性はヌクレオソームを移動させるrepositionか立ち退かせevict nucleosomes、53BP1とそのエフェクタータンパク質を移動させるmove
それにより53BP1によって仲介されるDNA切除の阻害から解放される
(4) DNAの長距離の切除long-range resectionが進行可能になる(Exo1,BLM,DNA2)



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/8272
2本鎖DNA切断修復機構において相同組換え経路と非相同末端結合経路の選択はMRE11のもつヌクレアーゼ活性により決定される



関連サイト
https://www.marianna-u.ac.jp/t-oncology/about/index.html
>図2i
>この過程においてBRCA1-BARD1のユビキチンリガーゼ活性が果たす役割はわかっておらず、大きな謎となっています



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141201191301.htm
トリプルネガティブ乳癌の14.6%が、何らかの有害な突然変異deleterious mutationsを持っていて、その内11.2%がBRCA1/2だった
 BRCA1 (8.5%)、BRCA2 (2.7%)
他の15の素因遺伝子においても有害な突然変異が患者の3.7%で検出され、その観察された大部分は相同組換えに関与する遺伝子だった
 PALB2 (1.2%)
 BARD1, RAD51D, RAD51C, BRIP1 (0.3% to 0.5%)
変異を持つTNBC患者は、変異を持たない患者よりも早い年齢でTNBCと診断され (P < .001)、腫瘍のグレードは高かった (P = .01)



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160210135406.htm
卵巣癌患者1915人中の347人 (18%) が、病因的な生殖細胞系列の変異pathogenic germline mutationsを卵巣癌リスクと関連する遺伝子に持っていた
PALB2とBARD1は卵巣癌リスク遺伝子であることが疑われるsuspected
これまでの9つ(BRCA1, BRCA2, BRIP1, RAD51C, RAD51D, MSH2, MLH1, PMS2, MSH6)に加えて総数11になる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160118224253.htm
BRIP1(BRCA1 Interacting Protein C-Terminal Helicase 1)遺伝子の変異は卵巣癌リスク3倍
女性の卵巣癌罹患率は1000人中18人だが、この遺伝子変異があると1000人中58人に上昇する
イギリス人の1000人に1人がこの変異を持つと推定される
BRIP1遺伝子に変異がある女性はより悪性の癌であると診断される可能性が高く、より後期のステージであり、そして年老いてから診断される傾向がある