Breast cancer cells use newfound pathway to survive low oxygen levels in tumors
Potential to render cancer cells less able to cope with hypoxia
June 20, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160620141305.htm
(Dr. Benjamin Neel speaks with researchers at Perlmutter Cancer Center.)
アメリカとヨーロッパの研究者は、腫瘍内部で見られる酸素不足に癌細胞が対処するのを助けるための新しいシグナル伝達経路を明らかにした
この研究結果は6月20日にNature Cell Biology誌で発表されたもので、研究に参加したのはニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center、カナダ・トロントのプリンセスマーガレットがんセンター、トロント大学、ハーバード・メディカル・スクール、オックスフォード大学の研究者たちである
酸素はヒトのあらゆる細胞が適切に機能するために重要だが、癌細胞は酸素が欠乏していてさえ生き残ることができる
充実性腫瘍solid tumorの多くで見られる急速で異常な細胞増殖に対して血液の供給が追いつかず、腫瘍の中には酸素が少ない部分が生じる
この『低酸素hypoxia』に直面した癌細胞はその遺伝子の発現を変化させ、酸素を使うプロセスの中で最も重要なものを除いてall but遺伝子のスイッチを切る
「我々の研究結果は癌細胞の低酸素への応答の新たな理解をもたらす
このことは、癌細胞から低酸素状態を生き残る能力を奪い去ってから低酸素の環境へと追いやって殺すという将来の治療デザインを可能にすることが期待されるhopefully」
パールマターのディレクター、Benjamin Neel, MD, PhDは言う
Neelのラボの大学院生graduate studentであるRobert Banhを中心とした今回の研究では、プロテインチロシンホスファターゼ1B/protein-tyrosine phosphatase 1B (PTP1B) という酵素から生じたシグナルが、酸素の欠乏した乳癌細胞で酸素を使うプロセスを停止させて生き残れるようにするためにこれまで知られていなかった方法で働くことが明らかにされた
糖尿病と癌とモヤモヤ病
Diabetes to Cancer to Moyamoya Disease
1990年代の前半、Neelたちは腫瘍の増殖を抑制する分子を探し求める中で、PTP1Bの遺伝子を初めて突きとめた
PTP1Bは、分子からリン酸基を取り去ることで増殖のようなプロセスをオンにしたりオフにする酵素グループの代表的なメンバーである
これまでの研究でNeelたちとマギル大学/McGill University(カナダ)のMichel Tremblayは、PTP1Bの機能が特定の癌で増殖に必要であることをマウスの実験で明らかにした(※)
その癌の中にはヒトの乳癌の20パーセントに関与するHer2という癌遺伝子によって引き起こされる乳癌(HER2+乳癌細胞)が含まれていた
※Reference 16
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18236007
"PTP1B and TC-PTP: regulators of transformation and tumorigenesis."
※Reference 41
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17347513
"Protein-tyrosine phosphatase 1B is required for HER2/Neu-induced breast cancer."
さらに最近の研究でRobert BanhとNeelたちは、PTP1Bを持たないヒトHER2+乳癌細胞は通常の培養状態では正常に育つが、低酸素では非常に急速に死ぬことを発見した
それによると、PTP1Bを持たないHER2+乳癌細胞では、癌細胞が低酸素に適応させることが知られる3つのシグナル伝達経路はうまく働いていたという
その経路の1つは有名な低酸素誘導因子(HIF)で、HIFはミトコンドリアによる酸化的リン酸化から酸素を必要としない解糖系へと細胞が酸素を使う方法を切り替えて、ミトコンドリアによる酸素消費を抑制する
しかし、『ミトコンドリア以外の酸素を消費する源』は、PTP1Bを持たない乳癌細胞では適切に抑制されないことをBanhたちは明らかにした
研究チームはさらに、PTP1BがRNF213というタンパク質を調節することによって低酸素での腫瘍の応答をコントロールすることを発見した
ユビキチンE3リガーゼのRNF213は、α-ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ/α-ketoglutarate-dependent dioxygenases (α-KGDDs) による酸素消費を抑制する
α-KGDDは酸素を使う酵素であり、様々な反応を触媒するために酸素とビタミンCと鉄を使う
※α-KGDDs: ALKBH1、ALKBH2、ALKBH3、ALKBH4、ALKBH5、ALKBH6、ALKBH7、ALKBH8、ALKBH9(FTO)
研究チームがPTP1B経路についての詳細を明らかにし始める過程で、文献の調査からRNF213がもやもや病というまれな病態でも重要であることに気付いた
もやもや病の患者の脳内では異常な血管形成が生じ、動脈がふさがれて痙攣などの発作seizureが起きる
Neelが考えるところではconceivably、もやもや病の症状は血管の細胞での低酸素に対する異常な応答を反映している可能性があり、彼のラボではこの病態の分子的な基礎を理解するための研究が進められている
「我々は癌の研究分野で、細胞がストレスに対して応答するメカニズムを説明するためにまれな疾患の研究が重要になるということを何度も見てきている」
Neelは言う
「我々はこの研究がもやもや病への洞察をもたらし、それが再び癌生物学の研究にフィードバックされることを望んでいる」
http://dx.doi.org/10.1038/ncb3376
PTP1B controls non-mitochondrial oxygen consumption by regulating RNF213 to promote tumour survival during hypoxia.
PTP1BはRNF213を調節することにより非ミトコンドリア酸素消費を制御し、低酸素中の腫瘍の生存を促進する
Abstract
もやもや病の原因遺伝子産物であるRNF213はユビキチンE3リガーゼであり、HER2+乳癌細胞ではPTP1Bによって負の調節を受ける
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ce587959b3b5c648a5587f04ed677dac
低酸素になるとHIFはALKBH5遺伝子のスイッチを入れ、増加したALKBH5はNANOGというmRNAのメチル基を取り除く
メチル化が低下したNANOGのmRNAは破壊されなくなり、乳癌の癌幹細胞の数は増加する
Potential to render cancer cells less able to cope with hypoxia
June 20, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160620141305.htm
(Dr. Benjamin Neel speaks with researchers at Perlmutter Cancer Center.)
アメリカとヨーロッパの研究者は、腫瘍内部で見られる酸素不足に癌細胞が対処するのを助けるための新しいシグナル伝達経路を明らかにした
この研究結果は6月20日にNature Cell Biology誌で発表されたもので、研究に参加したのはニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center、カナダ・トロントのプリンセスマーガレットがんセンター、トロント大学、ハーバード・メディカル・スクール、オックスフォード大学の研究者たちである
酸素はヒトのあらゆる細胞が適切に機能するために重要だが、癌細胞は酸素が欠乏していてさえ生き残ることができる
充実性腫瘍solid tumorの多くで見られる急速で異常な細胞増殖に対して血液の供給が追いつかず、腫瘍の中には酸素が少ない部分が生じる
この『低酸素hypoxia』に直面した癌細胞はその遺伝子の発現を変化させ、酸素を使うプロセスの中で最も重要なものを除いてall but遺伝子のスイッチを切る
「我々の研究結果は癌細胞の低酸素への応答の新たな理解をもたらす
このことは、癌細胞から低酸素状態を生き残る能力を奪い去ってから低酸素の環境へと追いやって殺すという将来の治療デザインを可能にすることが期待されるhopefully」
パールマターのディレクター、Benjamin Neel, MD, PhDは言う
Neelのラボの大学院生graduate studentであるRobert Banhを中心とした今回の研究では、プロテインチロシンホスファターゼ1B/protein-tyrosine phosphatase 1B (PTP1B) という酵素から生じたシグナルが、酸素の欠乏した乳癌細胞で酸素を使うプロセスを停止させて生き残れるようにするためにこれまで知られていなかった方法で働くことが明らかにされた
糖尿病と癌とモヤモヤ病
Diabetes to Cancer to Moyamoya Disease
1990年代の前半、Neelたちは腫瘍の増殖を抑制する分子を探し求める中で、PTP1Bの遺伝子を初めて突きとめた
PTP1Bは、分子からリン酸基を取り去ることで増殖のようなプロセスをオンにしたりオフにする酵素グループの代表的なメンバーである
これまでの研究でNeelたちとマギル大学/McGill University(カナダ)のMichel Tremblayは、PTP1Bの機能が特定の癌で増殖に必要であることをマウスの実験で明らかにした(※)
その癌の中にはヒトの乳癌の20パーセントに関与するHer2という癌遺伝子によって引き起こされる乳癌(HER2+乳癌細胞)が含まれていた
※Reference 16
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18236007
"PTP1B and TC-PTP: regulators of transformation and tumorigenesis."
※Reference 41
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17347513
"Protein-tyrosine phosphatase 1B is required for HER2/Neu-induced breast cancer."
さらに最近の研究でRobert BanhとNeelたちは、PTP1Bを持たないヒトHER2+乳癌細胞は通常の培養状態では正常に育つが、低酸素では非常に急速に死ぬことを発見した
それによると、PTP1Bを持たないHER2+乳癌細胞では、癌細胞が低酸素に適応させることが知られる3つのシグナル伝達経路はうまく働いていたという
その経路の1つは有名な低酸素誘導因子(HIF)で、HIFはミトコンドリアによる酸化的リン酸化から酸素を必要としない解糖系へと細胞が酸素を使う方法を切り替えて、ミトコンドリアによる酸素消費を抑制する
しかし、『ミトコンドリア以外の酸素を消費する源』は、PTP1Bを持たない乳癌細胞では適切に抑制されないことをBanhたちは明らかにした
研究チームはさらに、PTP1BがRNF213というタンパク質を調節することによって低酸素での腫瘍の応答をコントロールすることを発見した
ユビキチンE3リガーゼのRNF213は、α-ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ/α-ketoglutarate-dependent dioxygenases (α-KGDDs) による酸素消費を抑制する
α-KGDDは酸素を使う酵素であり、様々な反応を触媒するために酸素とビタミンCと鉄を使う
※α-KGDDs: ALKBH1、ALKBH2、ALKBH3、ALKBH4、ALKBH5、ALKBH6、ALKBH7、ALKBH8、ALKBH9(FTO)
研究チームがPTP1B経路についての詳細を明らかにし始める過程で、文献の調査からRNF213がもやもや病というまれな病態でも重要であることに気付いた
もやもや病の患者の脳内では異常な血管形成が生じ、動脈がふさがれて痙攣などの発作seizureが起きる
Neelが考えるところではconceivably、もやもや病の症状は血管の細胞での低酸素に対する異常な応答を反映している可能性があり、彼のラボではこの病態の分子的な基礎を理解するための研究が進められている
「我々は癌の研究分野で、細胞がストレスに対して応答するメカニズムを説明するためにまれな疾患の研究が重要になるということを何度も見てきている」
Neelは言う
「我々はこの研究がもやもや病への洞察をもたらし、それが再び癌生物学の研究にフィードバックされることを望んでいる」
http://dx.doi.org/10.1038/ncb3376
PTP1B controls non-mitochondrial oxygen consumption by regulating RNF213 to promote tumour survival during hypoxia.
PTP1BはRNF213を調節することにより非ミトコンドリア酸素消費を制御し、低酸素中の腫瘍の生存を促進する
Abstract
もやもや病の原因遺伝子産物であるRNF213はユビキチンE3リガーゼであり、HER2+乳癌細胞ではPTP1Bによって負の調節を受ける
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ce587959b3b5c648a5587f04ed677dac
低酸素になるとHIFはALKBH5遺伝子のスイッチを入れ、増加したALKBH5はNANOGというmRNAのメチル基を取り除く
メチル化が低下したNANOGのmRNAは破壊されなくなり、乳癌の癌幹細胞の数は増加する