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脂肪を蓄積した癌は悪性化する

2016-06-04 06:06:52 | 
Cancer cells become more aggressive from fat storage

June 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160602083554.htm


(The cell images represent cancer cells where the cell nuclei are depicted in light blue and the fat droplets in red. Photo: Belting's Research Group

Published: 02/06/2016)

全ての癌細胞が等しく悪性ではないことが確認されており、ほとんどは放射線療法や化学療法で無力化することが可能である

ランド大学(スウェーデン)の研究者は、癌細胞の中には脂肪滴を蓄積するものがあることを発見した
この脂肪滴は癌細胞をさらに悪性化させ、転移する能力を増加させるようである


腫瘍の内部は敵対的な環境である
酸素は欠乏し、pHレベルは低く酸性で、栄養素も不足している
そのような環境で生き残る細胞はいわゆる『ストレス』を受けた状態であり、より悪性であると考えられている

Mattias Belting教授の研究グループは最近、そのような細胞に化学療法薬を届ける可能性のある方法についての論文を発表した(プレスリリースSciencedaily
そんな彼らは今回、何年もかけて追求してきたもう一つの研究の経過trackから得られた発見について報告する
それはストレス状態の細胞と脂肪細胞の類似性に関するconcernものだ

「腫瘍の内部で生き残るために、ストレス細胞は休止状態に移行する
そのような細胞は放射線療法や化学療法が効かなくなるが、脂肪滴は蓄積し続けることができる
脂肪は後にそれらの癌細胞が休止状態を抜け出して増殖し転移する際には燃料となる」
Mattias Beltingはそのように説明する

癌性腫瘍のそのような細胞はしばらくの間『良い時と悪い時』の間を移行することが知られている
癌細胞の視点から見ると、『良い時』は癌細胞が転移して再発を引き起こす時である

「癌細胞の中で血流に入って転移を形成できるのは非常にわずかな割合に過ぎない
我々の考えでは、最も転移を形成する能力があるのは脂肪細胞に似たような癌細胞である
それらは脂肪滴をエネルギーとして使い細胞膜を構築するか、シグナル物質を作り出すことが可能であり、それらをすべて同時に行うこともできる」
今回Cancer Research誌で発表された論文の筆頭著者でdoctoral studentのJulien Menardは言う

この新たな知識は癌細胞の転移と戦うために使うことができる
癌と関連する死亡のほとんどは転移が原因である

ストレス細胞がどのようにして脂肪の貯蔵を蓄積するのかを知った我々は、それらが余分なエネルギーを獲得するのを防ぐことが可能である
そのような効果を持つ薬剤は既に市場に存在する可能性がある

例えば抗血栓薬anti-thrombotic drugとして知られるヘパリンは血餅blood clotを溶かすだけでなく、
癌細胞による脂肪パーティクル/fat particleの取り込みを減らすこともできる

「数千人の患者の研究から、ヘパリンの投与を受けている癌患者の転帰は投与されていない患者よりも良いことが示されている
ゆえに癌に対するヘパリンの効果を調査するいくつかの臨床研究が既に進行中である
もしこの治療がうまくいくなら、その理由の一部はおそらくストレス細胞が脂肪を蓄えるのを防いだためだろう」


Cancer Research誌で発表された研究には患者のサンプルから撮られた画像が含まれ、
それには脂肪細胞と類似した癌細胞が正確に腫瘍の酸素欠乏領域内、つまり細胞がストレスを受けている場所に位置することが示されている

脂肪と癌との間のつながりは、肥満があるタイプの癌の発症リスクを伴うというよく知られた事実とも一致する
肥満の人々は血液中に脂肪パーティクル/fat particlesが多く、それはストレス状態の癌細胞にとっても利用可能になりうる
加えて、肥満の人々の腫瘍はより悪性になりうることも知られている


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-2831
Metastasis stimulation by hypoxia and acidosis-induced extracellular lipid uptake is mediated by proteoglycan-dependent endocytosis.
低酸素とアシドーシスによって誘発される細胞外脂質の取り込みによる転移の刺激は、プロテオグリカン依存的なエンドサイトーシスによって仲介される

Abstract
低酸素とアシドーシスは腫瘍微小環境に固有のストレス要因であり、それらは腫瘍の悪性度ならびに治療への抵抗性の増大と関連付けられてきた
ストレスによって誘発される癌の進行を促進する適応メカニズムに関する分子は、興味深い治療介入候補を構成する

今回我々は腫瘍細胞の低酸素とアシドーシスへの適応応答におけるヘパラン硫酸プロテオグリカン/heparan sulfate proteoglycans (HSPGs) の新たな役割に関するエビデンスを提供する
それはリポタンパク質の内在化internalizationの増大を通じてであり、結果として脂肪を貯蔵する表現型が生じ、腫瘍形成能が促進される

膠芽腫患者の低酸素と酸性ストレス下の腫瘍と細胞は、脂肪滴/lipid droplet (LD) が詰め込まれたloaded表現型を獲得し、
それらはメジャーなリポタンパク質の全て、つまりHDL、LDL、VLDLのリクルートの増大を示した

LD蓄積を誘発するストレスは、
in vitroでは再酸素添加/reoxygenationの間のスフィロイドspheroids形成能と関連し、
in vivoでは肺転移の能力potentialと関連した

機構的レベルでは、低酸素はHSPGsに対して表面的には影響しなかったものの、
リポタンパク質受容体 (VLDLRとSR-B1) は低酸素によって一時的transientlyに上方調節された

しかしながら、重要な事に、ストレスを介するリポタンパク質の取り込みは完全なHSPG発現に強く依存することを我々は薬理学的・遺伝学的アプローチを使って示す

腫瘍細胞ストレスの状況でのHSPGの機能的な関連は、HSPG依存的なリポタンパク質細胞シグナル伝達の活性化 (ERK/MAPK経路) によって証明される
加えて、LDがloadされた表現型は、HSPGを標的とすることによって無効化reversalされる

我々はHSPGsが腫瘍微小環境の主なストレス要因への適応応答において重要な役割を持つ可能性があると結論する
それは腫瘍細胞の細胞シグナル伝達に対して機能的な結果を伴い、転移の潜在能力metastatic potentialにつながる

※ヘパラン硫酸: N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)またはN-スルホグルコサミン(GlcNS)とグルクロン酸(GlcA)またはL-イズロン酸(IdoA)の繰り返し二糖を骨格とする多糖でそれぞれの糖に様々な組合わせで硫酸基をもち、プロテオグリカンを構成する
アンチトロンビン,線維芽細胞増殖因子(FGF),肝細胞増殖因子(HGF)などと結合し,血液凝固反応や細胞増殖因子によるシグナル伝達に関与する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160420090110.htm

癌細胞の急速な増殖により、腫瘍は低酸素で、低栄養で、低pHになる
そのような敵対的な環境でストレス状態の癌細胞は自発的に死ぬか、または放射線や化学療法で死んでしまうが、環境に適応した癌細胞は生き残り、より悪性で治療に抵抗性である
ランド大学のMattias Beltingたちは、通常の癌細胞と低酸素のストレス細胞の表面に存在する存在する数千ものタンパク質を分析してきた
ストレス細胞ではカベオリン-1が『門番gatekeeper』として働き、ストレス細胞の表面タンパク質を取り込ませないようにしていた
Mattiasたちは『門番』を効率的に通過して細胞内に輸送されることが可能な ストレス細胞上の約30の表面タンパク質を同定し、その内の1つに対して抗体と細胞毒を組み合わせて『ミサイル』としてストレス細胞だけに打ち込むことに成功した

http://dx.doi.org/10.1038/ncomms11371
Hypoxia regulates global membrane protein endocytosis through caveolin-1 in cancer cells.
低酸素は癌細胞の膜タンパク質のエンドサイトーシスをカベオリン-1を通じて全体的に調節する

低酸素によるストレス状態の細胞は表面の抗原を取り込まなくなるが、これはHIF依存的であり、カベオリン-1を介して阻害される
具体的には、ダイナミン依存的な膜ラフトのエンドサイトーシスが、カベオリン-1によって阻害される
低酸素のようなストレスを受けた癌細胞ではカベオリン-1が過剰発現され、タンパク質の取り込みinternalizationが阻害される



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参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

BRCA1がDNA修復で果たす役割を説明する

2016-06-03 06:06:09 | 
Research explains the role of the gene BRCA1 in DNA repair

May 30, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160530115531.htm

バーミンガム大学の科学者たちは、BRCA1という遺伝子が果たす役割の理解へと一歩近づいた
この遺伝子の変化は乳癌と卵巣癌を発症するリスクの高さと関連する

Nature Structural and Molecular Biology誌で発表された今回の研究は、BRCA1がどのようにしてユビキチンのタンパク質への結合を促進し、DNA修復でどのような重要な役割を果たすのかを説明する
この結果はさらなる研究によって確認される必要はあるものの、乳癌と卵巣癌のリスクが高いBRCA1の特定の遺伝子変異を持つ患者が明らかになる可能性がある


BRCA1にはユビキチンを他のタンパク質へと結合するE3ユビキチンリガーゼとしての作用があり、そしてユビキチンは体内の様々なプロセスを調節するのを助ける
しかしながら、DNA修復におけるユビキチンの重要性についてはほとんど知られていなかった

今回の新しい研究では、BRCA1によるユビキチンの結合は相同組換え/homologous recombinationという『間違いがない/error-free』DNA修復に必要であることが明らかにされた
このDNA修復がない細胞は突然変異を生じて癌を発症することが知られており、この研究でも BRCA1ユビキチンリガーゼ活性のない細胞は 修復に相同組換えの必要なタイプのDNA損傷に感受性であることが判明した


筆頭著者のJo Morris博士(バーミンガム大学)は言う
「BRCA1の喪失は乳癌のリスクの高さと関連することが知られているため、この遺伝子の理解に正面から取り組むget to grips with understandingことは乳癌研究の大きな目標である
我々の研究は、なぜいくつかの癌になりやすい突然変異がBRCA1遺伝子の『前部front part』に見られるのかについて説明するかもしれない
そこはユビキチンリガーゼとして機能するために必要な部分だ」

研究チームはBRCA1がどのようにしてユビキチンを結合する役割ubiquitin attachment roleを実行するのかを明らかにしようと調査し、そしてパートナーとなるタンパク質のBARD1の一部分に依存することを発見した
研究者たちはBRCA1タンパク質には手を付けずにuntouched、BARD1だけを変化させることで、BRCA1のユビキチン結合機能attachment functionを明らかにすることに成功し、それがDNA損傷への細胞の応答と適切な修復に必要であることを示した


Morris博士は次のように付け加えた
「BRCA1がDNA修復においていくつかの独立した機能を持つという我々の発見は、実際の治療に関係してくる
臨床家は現在、BRCA1の発現が低いか全く持たない乳癌患者がPARP阻害剤オラパリブOlaparibのような治療薬に抵抗するようになる可能性を心配している
我々のデータは、BRCA1を欠く癌細胞が1つ以上の『アキレスの踵』を持つことを示す
つまり癌を標的とする多くの方法が存在すると考えられ、腫瘍が治療に抵抗するようになるのを様々なやり方で妨げることが可能である」


http://dx.doi.org/10.1038/nsmb.3236
Human BRCA1–BARD1 ubiquitin ligase activity counteracts chromatin barriers to DNA resection.
ヒトのBRCA1–BARD1ユビキチンリガーゼ活性は、DNA切除に対するクロマチンによる障害を相殺する

Abstract
DNA二本鎖切断の修復において53BP1とBRCA1は反対の働きをして『経路の選択/pathway choice』に影響する

※経路の選択: 相同組換えか非相同末端結合かの選択

53BP1はDNA切除と相同組換えに対して阻害的に影響するが、BRCA1はそれを相殺する(DNA切除と相同組換えを促進する)
しかしそれがどのような作用によるのかは知られていない

今回我々はE2ユビキチンからのユビキチン転移transferを刺激するprimeために必要なBRCA1-BARD1の箇所を明らかにすると共に、
損傷したクロマチン上に存在する53BP1を移動させるrepositionためにはBRCA1-BARD1のユビキチンリガーゼ活性が必要であることを実証する

※ユビキチンは、活性化酵素/activating enzyme(E1)、転移酵素/conjugating enzyme(E2)、連結酵素/ubiquitin ligase(E3)によって基質タンパク質に結合される。BRCA1-BARD1はE3リガーゼ活性を持つ

我々はBRCA1–BARD1によるヒストンH2Aユビキチン化を確認し、
BARD1欠損細胞においてもH2A-ユビキチン融合タンパク質がDNA切除と修復を促進することを実証する

相同組換えにおいてBRCA1–BARD1が機能するためには、クロマチンを再構成するSMARCAD1が必要である

ヒストンH2A-ユビキチンへのSMARCAD1の結合、SMARCAD1の損傷箇所への最適な局在化、SMARCAD1のDNA修復における活性には、ユビキチンと結合するCUEドメインが必要である

SMARCAD1は53BP1を移動させるrepositionために必要であり、
オラパリブolaparib抵抗性またはカンプトテシンcamptothecin抵抗性におけるSMARCAD1の必要性は、53BP1の喪失によって軽減される

したがって、BRCA1–BARD1のリガーゼ活性とその後のSMARCAD1依存的なクロマチン再構成は、DNA修復の重要な調節因子である


http://www.nature.com/nsmb/journal/vaop/ncurrent/fig_tab/nsmb.3236_F8.html
Figure 8: Proposed model for the BRCA1–BARD1 Ub ligase in promoting resection at DSB-damaged chromatin.
二本鎖切断により損傷したクロマチンの切除の促進において、BRCA1–BARD1によるユビキチンリガーゼが果たす役割についての提案されるモデル

※Me: メチル化、P: リン酸化
※MRN: MRE11ヌクレアーゼ、RAD50、NBS1からなる複合体

(1) BRCA1–BARD1活性が不在の状態では、CtIP-Mre11に依存的な方法で限定的な切除が起きる
(2) BRCA1–BARD1に依存的なヒストンH2Aユビキチン修飾(K127)は、損傷に近いヌクレオソームとSMARCAD1との間の相互作用を促進する
(3) SMARCAD1の活性はヌクレオソームを移動させるrepositionか立ち退かせevict nucleosomes、53BP1とそのエフェクタータンパク質を移動させるmove
それにより53BP1によって仲介されるDNA切除の阻害から解放される
(4) DNAの長距離の切除long-range resectionが進行可能になる(Exo1,BLM,DNA2)



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/8272
2本鎖DNA切断修復機構において相同組換え経路と非相同末端結合経路の選択はMRE11のもつヌクレアーゼ活性により決定される



関連サイト
https://www.marianna-u.ac.jp/t-oncology/about/index.html
>図2i
>この過程においてBRCA1-BARD1のユビキチンリガーゼ活性が果たす役割はわかっておらず、大きな謎となっています



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141201191301.htm
トリプルネガティブ乳癌の14.6%が、何らかの有害な突然変異deleterious mutationsを持っていて、その内11.2%がBRCA1/2だった
 BRCA1 (8.5%)、BRCA2 (2.7%)
他の15の素因遺伝子においても有害な突然変異が患者の3.7%で検出され、その観察された大部分は相同組換えに関与する遺伝子だった
 PALB2 (1.2%)
 BARD1, RAD51D, RAD51C, BRIP1 (0.3% to 0.5%)
変異を持つTNBC患者は、変異を持たない患者よりも早い年齢でTNBCと診断され (P < .001)、腫瘍のグレードは高かった (P = .01)



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160210135406.htm
卵巣癌患者1915人中の347人 (18%) が、病因的な生殖細胞系列の変異pathogenic germline mutationsを卵巣癌リスクと関連する遺伝子に持っていた
PALB2とBARD1は卵巣癌リスク遺伝子であることが疑われるsuspected
これまでの9つ(BRCA1, BRCA2, BRIP1, RAD51C, RAD51D, MSH2, MLH1, PMS2, MSH6)に加えて総数11になる



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160118224253.htm
BRIP1(BRCA1 Interacting Protein C-Terminal Helicase 1)遺伝子の変異は卵巣癌リスク3倍
女性の卵巣癌罹患率は1000人中18人だが、この遺伝子変異があると1000人中58人に上昇する
イギリス人の1000人に1人がこの変異を持つと推定される
BRIP1遺伝子に変異がある女性はより悪性の癌であると診断される可能性が高く、より後期のステージであり、そして年老いてから診断される傾向がある
 

前立腺癌が去勢抵抗性になると代謝が変化する

2016-06-01 06:06:40 | 
Differences in metabolism between androgen-dependent, castration resistant prostate cancer may lead to new therapies

May 26, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160526095533.htm

進行した前立腺癌は一般にアンドロゲンを除去することで治療する
アンドロゲンは前立腺癌の増殖を助ける男性ホルモンである
この治療は最初は効果があるものの、しばしば腫瘍は『去勢抵抗性/castration resistant』という致命的な状態になる

ベイラー医科大学とミシガン大学の研究者は他の研究所とも協力して、去勢抵抗性前立腺癌/castration resistant prostate cancer (CRPC) が特定の代謝的な特徴を持っていることを明らかにした
これは新たな治療法につながる可能性がある
この研究結果はNature Communications誌で発表される

「我々は遺伝子発現とメタボロミクスのデータを統合する革新的なアプローチを用いて、前立腺癌で変化する重要な代謝経路を明らかにした」
ベイラーで分子細胞生物学の教授であり責任著者のArun Sreekumar博士は言う

「これらの代謝経路の中でも特にヘキソサミン生合成経路/hexosamine biosynthetic pathway (HBP) が著しい変化を示した」


研究者たちは、去勢抵抗性の前立腺癌のHBPの活性がアンドロゲン依存性の前立腺癌よりもはるかに低いことを発見した
さらに、HBP活性の低さは腫瘍の成長を促進するようである

「我々がCRPC腫瘍細胞と同様にHBPに関与する遺伝子を実験的にノックダウンすると、その細胞は細胞培養と動物実験の両方で増殖が顕著に増加した」
Sreekumarは言う

「HBP代謝経路の最終産物はUDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)だが、このUDP-GlcNAcをHBPが低下した細胞に与えると増殖は遅くなった」

研究者がラボで培養したCRPC細胞に対して、臨床的に抗アンドロゲン剤として使われるエンザルタミドをUDP-N-アセチルグルコサミンと共に加えると、細胞の増殖はさらに減少した

「この結果は特に注目に値する
なぜなら、我々の使った細胞は基本的にエンザルタミド単独には抵抗するからだ」

これらの結果は、治療に抵抗する腫瘍の代謝的な特徴を研究することが 癌を治療するための新たな標的を発見する可能性をもたらすことを示す
今回の場合、HBPを去勢抵抗性前立腺癌の潜在的な治療標的として明らかにした
アメリカでは年間約3万人がこの病気で死亡している


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms11612
Inhibition of the hexosamine biosynthetic pathway promotes castration-resistant prostate cancer.
HBPの阻害はCRPCを促進する

Abstract
CRPCのドライバとなる正確な分子的な変化は明らかになっていない
今回我々は新たなネットワークベース統合アプローチを使い、CRPCにとって決定的となるHBPにおける異なる変化を示す

HBPの酵素の一つであるグルコサミン-リン酸 N-アセチル基転移酵素/glucosamine-phosphate N-acetyltransferase 1 (GNPNAT1) の発現は、浸潤しない前立腺癌/localized prostate cancer (PCa) と比較してCRPCでは有意に低下していた

CRPC様の細胞で遺伝学的にGNPNAT1を機能喪失loss-of-functionさせたところ、in vitroとin vivoの両方で増殖と悪性度が増加した

これは完全長アンドロゲン受容体/full-length androgen receptor(FL-AR)の細胞ではPI3K-AKT経路の活性化によって仲介され、
AR-V7バリアントを含む細胞では転写因子のspecific protein 1 (SP1) によって発現を調節される炭水化物応答配列結合タンパク質ChREBP)によって仲介されていた

印象的なことに、HBPの代謝産物であるUDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)をCRPC様細胞に加えると、in vitroと動物実験の両方で増殖は有意に低下した
UDP-GlcNAcはエンザルタミドと組み合わせると加法的な効能additive efficacyがあることもin vitroで実証する

これらの観察はCRPCにおいてHBPを標的とする治療的価値を実証する


http://www.nature.com/ncomms/2016/160519/ncomms11612/fig_tab/ncomms11612_F4.html
Figure 4: Therapeutic targeting of HBP in CRPC.


AR-FL
HBP↓→PI3K/AKT↑→AR↑→細胞周期遺伝子→CRPC進行

AR-V7
HBP↓→SP1↑→ChREBP↑→細胞周期遺伝子→CRPC進行



<コメント>
去勢抵抗性になる前の前立腺癌細胞では、HBP経路は上昇し、UDP-GlcNAcも増えている

>Further, increased activity of HBP in PCa was confirmed in 15 matched tumour–benign pairs by measuring the product to substrate ratio for the reaction carried out by GNPNAT1 (N-acetylglucosamine-6-P to glucosamine-6-P; Fig. 1e) and levels of UDP-GlcNAc (Supplementary Fig. 2E), the end product of HBP.

>Tissue microarray analysis further confirmed significantly higher expression of both GNPNAT1 and UAP1 in PCa compared with Ben, whereas, interestingly, their expression was significantly lower in sites of lymph node metastasis and CRPC tissues compared with localized PCa (Fig. 1f,g and Supplementary Fig. 3A).

HBPが上昇している状態の前立腺癌にはエンザルタミドが有効
それと同じようにHBPの産物を増やしてやると、CRPCでもエンザルタミドが有効になるということらしい