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サリドマイドの催奇形性と抗腫瘍効果に共通するメカニズム

2016-06-22 06:06:56 | 癌の治療法
Scientists discover mechanism of thalidomide

Malformations, anti-cancer effects have a common mechanism

June 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160617104926.htm


(サリドマイドは腫瘍細胞内で特定のタンパク質複合体(黄色で強調されている)を消滅させる
同じメカニズムが胎児には深刻な奇形を引き起こす


Credit: Bassermann/TUM)

1950年代にサリドマイドthalidomideは鎮静剤sedative drugとして妊婦に処方され、結果として深刻な奇形malformationの幼児が数多く生まれることとなった
その悲惨な先天的欠陥birth defectの理由は現在まで不明のままだった

そんなサリドマイドの分子メカニズムを、ミュンヘン工科大学/Technical University of Munich (TUM) の研究者はとうとう明らかにした
彼らの研究結果は現在の癌の治療法に強い関連がある
なぜなら、それと関連する物質が現在の癌治療の処方に必須の要素だからである


サリドマイドは西ドイツで鎮静剤として発売され、他の国では『コンテルガン/Contergan』というブランド名で市場に出た
しかし55年前の1961年、胎児unborn childrenにぞっとするような恐ろしい奇形deformationを引き起こして大ニュースになった
全世界で5千から1万人の子どもが奇形を生じ、今日に至るまで世界中で2千人以上の犠牲者がいまだにこの悲劇の結果と共に生きている
この破壊的devastatingな副作用が明らかになってすぐにサリドマイドは市場から回収された

しかし最近になってサリドマイドthalidomideは特定の腫瘍の増殖を阻害することが偶然発見されたことから復活を遂げ、後継となるレナリドミドlenalidomideとポマリドミドpomalidomideという2つの物質が癌の治療薬として承認されている
このサリドマイドの派生物はどちらも多発性骨髄腫のような骨髄のがんの治療に使われて成功を収めた

それらは腫瘍に対する強い可能性を示しつつサリドマイドより副作用も少ないが、それらはいまなお深刻な先天的欠陥を引き起こすリスクがあり、妊娠中に服用してはならない


複数のタンパク質が関与
Several proteins involved

サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、これらは『免疫調整薬/immunomodulatory drug (IMiD)』としても知られる
その名の通り、それらには免疫応答を調整する能力がある

TUM大学病院の内科学IIIで教授のFlorian Bassermannと彼のチームは免疫調整薬の分子メカニズムを研究し、その成果がNature Medicine誌で発表されている
Bassermannはトランスレーショナルがん研究ドイツコンソーシアム/German Consortium for Translational Cancer Research (DKTK) の主任研究員Principle Investigatorでもある


以前、別の研究チームはセレブロンcereblonというタンパク質がIMiDの機能において重要な役割を果たすことを明らかにしていた(※)

※Reference
5. Cereblon expression is required for the anti-myeloma activity of lenalidomide and pomalidomide. Blood 118, 4771–4779 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21860026

6. Lopez-Girona, A. et al. Cereblon is a direct protein target for immunomodulatory and antiproliferative activities of lenalidomide and pomalidomide. Leukemia 26, 2326–2335 (2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22552008

しかしながら、セレブロンがどのようにしてIMiDの影響を仲介するのかについての正確な詳細は、Bassermann教授らによって今回初めて解き明かされたworked out
それによると、細胞内でのセレブロンはCD147とMCT1というタンパク質と常に結合している
これら2つのタンパク質は典型的には造血細胞blood buildingや免疫細胞で生じ、役割としては特にamongst other thingsそれらの増殖と代謝を促進して、新しい血管の形成を促す
多発性骨髄腫のような癌では腫瘍細胞にCD147とMCT1が特に高レベルで存在している


IMiDはタンパク質を『(競合して)打ち破る』
IMiDs "outcompete" proteins

CD147とMCT1は常にペアで存在し、いわゆる複合体を形成している
しかしながら、それらがもう片方を見つけて活性化するためには、セレブロンの助けが必要である
セレブロンに結合すると複合体の形成と安定性が促進promoteされ、そうして活性化した複合体は細胞の増殖を刺激して、乳酸のような代謝産物の排泄を促進facilitateする

多発性骨髄腫のような疾患ではこのタンパク質複合体の量が増加し、腫瘍細胞は増殖して急速に拡散することが可能になる
そのような癌にIMiDを投与すると、この薬はタンパク質複合体をセレブロンとの結合からほとんど追い出すdisplaces the complex from its binding to cereblon
結果として、CD147とMCT1という複合体はもはや活性化することができずに消え失せ、最終的に腫瘍細胞は死ぬことになる

印象的なこととして、TUMの科学者と神経変性疾患ドイツセンター/German Centre for Neurodegenerative Diseases (DNZE) の研究チームは、このタンパク質複合体の破綻が破壊的な先天的欠陥も引き起こすことの実証にも成功した

「メカニズムは全く同一identicalだ」
Bassermann教授が説明する

「このタンパク質複合体を特異的に不活化することで、サリドマイド治療後に観察されるのと同じ発達上の欠陥が引き起こされた」

これら2つのタンパク質がないと、血管は適切に発達することができない
このことはコンテルガンによる典型的な奇形が新たな血管の減少または異常形成と関連するという有力な仮説を立証confirmする


新たな治療アプローチ
New treatment approaches

IMiD治療の臨床的な効果と、観察される分子的な影響の完全な相関から、直接の臨床的結果が引き出される


「このタンパク質複合体の消失は、この種の治療に十分反応した患者でのみ観察される」
Florian Bassermannは言う

これは実際の治療を開始する前に患者の応答を評価する際の助けになりうる
つまり患者の腫瘍細胞のサンプルを取り出して培養し、IMiDで処理するのである
もし培養でタンパク質複合体が破綻するなら、その患者でIMiD治療が有効である可能性は非常に高いだろう


今回の研究結果はIMiDを使わない新しい治療法の根拠となる
このタンパク質複合体は腫瘍の治療にとって特に魅力的な標的である
なぜならこの複合体は細胞表面で主に見られ、細胞の内部から外部へ事実上結びつけているからである
したがって、複合体の不活化は特定の抗体や他の特別な薬によって容易に達成される可能性がある
その可能性が現在、Bassermann教授たちによって探し求められている


http://dx.doi.org/10.1038/nm.4128
Immunomodulatory drugs disrupt the cereblon–CD147–MCT1 axis to exert antitumor activity and teratogenicity.
免疫調整薬はセレブロン-CD147-MCT1複合体を破綻させ、抗腫瘍活性ならびに催奇形性を発揮する

Abstract
サリドマイドとその誘導体derivativeのレナリドミドやポマリドミドのような免疫調整薬/immunomodulatory drugs (IMiDs) は、血液系腫瘍hematologic malignancy、特に多発性骨髄腫/multiple myeloma (MM) や 5番染色体長腕欠損/del(5q) の骨髄異形性症候群/myelodysplastic syndrome (MDS) の治療法として重要である

CRL4ユビキチンリガーゼ複合体の基質受容体であるセレブロン/cereblon (CRBN) は、IMiDが抗癌効果ならびに催奇形性を仲介するための主な標的である

今回我々はユビキチンとは独立したCRBNの生理学的シャペロン様機能を同定した
CRBNは、ベイシジン/basigin(BSG; CD147としても知られる)と、溶質輸送体solute carrierファミリー16メンバー1(SLC16A1; MCT1とも)というタンパク質の成熟を促進する

このプロセスによりCD147–MCT1という膜貫通複合体が形成されて活性化できるようになる
CD147–MCT1複合体は様々な生理的な機能を促進し、それは例えば血管形成angiogenesis、増殖、浸潤、乳酸排出などである

我々はIMiDがCD147とMCT1への結合に関してCRBNを打ち破りoutcompete、CD147-MCT1複合体の安定性が失われることを発見した

それと一致して、IMiDに感受性の多発性骨髄腫(MM)の細胞はIMiDに曝露した後にCD147とMCT1の発現を失い、一方でIMiDに抵抗性の細胞ではそれらの発現が保持された

さらに、del(5q) のMDS細胞ではCD147の発現が上昇し、この発現はIMiD治療後に弱まったattenuated

最後に、
ゼブラフィッシュにおけるベイシジンのノックダウンは
サリドマイド曝露による催奇形性の影響と見かけ上は同じ表現型になるphenocopyことを
我々は示す

これらの研究結果は、IMiDによる催奇形性と多面的抗腫瘍効果の両者を説明するための共通の機構的枠組みmechanistic frameworkを提供する



関連サイト(pdf)
http://www.jsm.gr.jp/files/shourokupdf/jsm39.pdf
レナリドミド投与によるcereblonの活性変化がどのように骨髄腫細胞に細胞死を誘導するのかが精力的に研究されている。



関連サイト
http://beautiful-nature.net/
私はこれをbasic immunoglobulin superfamilyの意味でベイシジン(basigin)と命名した。
彼らはベイシジンがMCT1とMCT4に結合すること、さらMCT1, MCT4を細胞膜へ運ぶ役割をすることを明らかにした。



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/662fdc857d52a82f163891c81e7bc3c2
多発性骨髄腫にサリドマイド誘導体が効かなくなる理由



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141117164409.htm
多発性骨髄腫に対して、レナリドミドとイクサゾミブ(経口プロテアーゼ阻害剤)、デキサメタゾンを組み合わせるフェーズI/II試験



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151207165330.htm
レナリドミドとデキサメタゾンに加えて、抗ヒトCD38モノクローナル抗体のダラツムマブ(フェーズI/II)、プロテアソーム阻害剤のイクサゾミブ(フェーズIII)、骨髄腫細胞や限定的にナチュラルキラー細胞上に発現する細胞表面糖タンパク質のCS1を標的するヒト化モノクローナル抗体のエロツズマブ(フェーズIII)をそれぞれ追加併用する臨床試験



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151112123700.htm
マントル細胞リンパ腫に対して、レナリドミドとリツキシマブ(B細胞のCD20を標的にする抗体)を組み合わせるフェーズII試験



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1038/onc.2013.454
グルコース欠乏はMCT1発現を増加させ、MCT1依存的な腫瘍細胞の移動を増大させる

Abstract
解糖系の最終産物である乳酸は、腫瘍増殖を多面的に促進する要因である
その働きは主に細胞による取り込みに依存し、その取り込みプロセスは 乳酸とプロトンを共輸送symportするシンポーターsymporter である『モノカルボン酸輸送体1/monocarboxylate transporter 1(MCT1)』によって促進される
したがって、この輸送体またはそのシャペロンタンパク質である『ベイシジン/basigin(BSG; CD147)』を標的にすることは癌の魅力的な治療オプションである(MCT1それ自体が悪性腫瘍の表現型に関与する)が、その発現の調節ならびに両タンパク質の相互作用と活性に関する基本的な情報がまだ欠けている

今回の研究で我々は 酸化力のある腫瘍細胞oxidative tumor cellにおいて グルコース欠乏が用量依存的に MCT1とCD147タンパク質の発現とそれらの相互作用を上方調節することを明らかにした
このような翻訳後の誘導は、解糖系阻害、低酸素、酸化的リン酸化(OXPHOS)阻害剤のロテノン、または過酸化水素を用いて再現可能だった一方で、酸化的な基質oxidative substrateならびに特定の抗酸化剤によって阻害された
このことは、それがミトコンドリアによる制御であることを示す

事実、グルコースを除去した上でのMCT1とCD147タンパク質の安定は ミトコンドリア不全とそれに関連する活性酸素種の生成に依存することを我々は発見した

グルコースの供給が限られていると(これは自然に生じるか、または腫瘍への多くの治療中に起きる状況である)、MCT1とCD147のヘテロ複合体が集積した(その集積する場所は細胞膜の突出protrusionも含まれる)
これにより、酸化力のある腫瘍細胞oxidative tumor cellがグルコースに向かって移動する能力は増加する

MCT1とCD147を過剰発現する細胞の移動は増加したが、それは グルコースが欠乏していても代わりの酸化的燃料を提供された細胞では阻害された
同様に、抗酸化剤を投与するか、MCT1の発現を欠損させる、または薬理学的にMCT1を阻害しても阻害された

我々の研究は 腫瘍細胞の移動を促進するグルコースセンサーとしてミトコンドリアを同定した一方で、MCT1もこの応答の変換器transducerであることを明らかにした
これはMCT1阻害剤を癌で使用する新たな根拠rationaleを提供する