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トキソプラズマ感染が神経変性疾患と関連する理由

2016-06-16 06:06:27 | 
Scientists unpack how Toxoplasma infection is linked to neurodegenerative disease

New research focused on glutamate, the most important neurotransmitter in the brain

June 9, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160609150841.htm


(ニューロン(灰色)、アストロサイト(緑色)、血管(赤)

Credit: Wilson lab, UC Riverside.)

トキソプラズマ・ゴンディ/Toxoplasma gondiiは体長5ミクロンの原生動物門の寄生虫で、世界の人口の約3分の1に感染している
十分に加熱されていない肉やよく洗われていない野菜を食べることで感染し、アメリカでも15から30パーセントが感染、フランスとブラジルでは80パーセントまでが感染している
特に危険なのは妊娠中であり、妊娠女性における感染は深刻な先天性の障害を引き起こし、死ぬことさえある

この寄生虫の慢性的な感染には2つの要素がある
単一の細胞による寄生と、それによって引き起こされる組織の炎症である


カリフォルニア大学リバーサイド校の生物医学科学者チームは、トキソプラズマの感染が脳内の神経伝達物質の混乱につながり、それがもともと罹患しやすい傾向のある人に神経疾患を引き起こすと主張するpostulate
PLOS Pathogens誌で報告された彼らの研究はマウスで実施されたもので、他の全ての哺乳類と同様にマウスはこの寄生虫の自然宿主natural hostである

この報告で彼らはトキソプラズマ感染がグルタミン酸の著しい増加につながることを示す
グルタミン酸はニューロン間で興奮性のシグナルを伝達する脳内で最も重要な神経伝達物質である
このグルタミン酸の増加は『細胞外』つまり細胞の外で生じるもので、通常はアストロサイトという中枢神経系(脳と脊髄)の特殊specializedな細胞により厳密にコントロールされている
グルタミン酸の増加buildupは、外傷性脳損傷/traumatic brain injury(TBI)や重度の病的な神経変性疾患(てんかん、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症)でも観察される

アストロサイトが果たす役割の一つは、ニューロンに有害になりうる病的なレベルまで増加しないようにlest細胞外のグルタミン酸を除去することである
これは主にグルタミン酸トランスポーターのGLT-1によって行われ、細胞外のグルタミン酸を調節する役割を担っている
GLT-1はニューロンによって放出されたグルタミン酸を取り込み、より安全な物質であるグルタミンに変換する
グルタミンは細胞がエネルギーとして使うことができるアミノ酸である


「ニューロンが発火fireする時にグルタミン酸はニューロンとニューロンの間の空間に放出される」
中心となった研究者lead researcherのEmma H. Wilsonが説明する
彼女はリバーサイド医学部の生物医科学部で助教授associate professorであり、トキソプラズマ症toxoplasmosisについて15年以上も研究している

「近くのニューロンはグルタミン酸を検出し、それがニューロンの発火を引き起こす
グルタミン酸がGLT-1によって除去されなければニューロンは適切に発火することができず、やがてニューロンは死に始める」

Wilsonと彼女のチームはトキソプラズマが感染している間のアストロサイトは膨張swellして細胞外グルタミン酸の濃度を調節することができず、GLT-1は適切に発現しないことを明らかにした
これはニューロンから放出されたグルタミン酸の蓄積buildupにつながり、ニューロンの発火は不発に終わるmisfire

「慢性的なトキソプラズマ感染が不活発quiescentで良性benignであると憶測されているのとは異なり、これらの結果は正常な神経学的経路ならびに脳の生化学的な変化に対する潜在的なリスクについて我々は知っておくawareべきであるということを示唆する」


次に研究者たちがトキソプラズマ感染マウスに抗生物質のセフトリアキソン/ceftriaxoneを投与したところ、GLT-1は上方調節された
この抗生物質はALSのマウスモデルに有益な効果をもたらし、様々な中枢神経系の損傷において神経を保護することが知られている
このGLT-1発現の回復は細胞外のグルタミン酸を病的な状態から正常な濃度まで著しく減少させ、ニューロンの機能を正常な状態まで回復した

Wikipedia(en)には「セフトリアキソンは興奮性アミノ酸トランスポーター2ポンプの発現と活性を中枢神経系で増加させ、グルタミン酸作動性の毒性glutamatergic toxicityを低下させる潜在性を持つ [30][31]
セフトリアキソンは脊髄性筋萎縮症(SMA)[32]、筋萎縮性側索硬化症(ALS)[33] など多くの神経疾患で神経保護的な性質を持つことが示されてきている」とある


「我々はトキソプラズマ感染の結果として起きる脳内の主要な神経伝達物質の直接的な破綻を初めて示した」
Wilsonは言う

「この最も一般的な病原体の実体realityを理解するため、さらに直接的で機構的な調査を実施する必要がある」

Wilsonたちの次の研究予定は、トキソプラズマ慢性感染中の何がGLT-1の下方調節を開始させるのかについてである

「グルタミン酸恒常性の維持に対するこのトランスポーターの重要性にもかかわらず、その発現を決定するメカニズムについてはほとんど理解されていない」
Wilsonは言う

「末梢の免疫細胞も含めた細胞が、どのようにして脳内の寄生虫をコントロールしているのかを我々は知りたい
トキソプラズマ感染は一生を通じてニューロンの内部に寄生虫性嚢胞/シストparasitic cystが存在することになる
我々はさらに、シストcystを殺すことに焦点を当てたプロジェクトを進めたいと考えている
寄生虫はシストにより免疫応答から隠れており、シストの除去は寄生虫の再活性化ならびに脳炎のリスクの脅威を取り除き、脳内の慢性感染を最小限に抑えることを可能にする」


奇妙なことに、この寄生虫はネコの中でしか性的な生殖ができない
この寄生虫は核を持つあらゆる哺乳類の細胞で無性生殖asexuallyで増殖し、事実この寄生虫はこれまでテストされたあらゆる哺乳類で見られる

感染後、寄生虫の再感染と脳炎を防ぐためには免疫応答能のあるcompetent免疫系が必要である
免疫系に欠陥がある人が感染すると予防薬prophylactic drugを一生続ける必要があり、さもなくばシストが再感染して死ぬ危険がある

この寄生虫は、危険を志向risk-seekingするような、特定の行動を乱す潜在性potentialを持つ脳内の領域に住み着く(感染したマウスはネコの尿から逃げず、尿に向かって走る)

トキソプラズマはかつて考えられていたほど潜伏latentしたり休止状態dormantではない
先天性の感染や網膜トキソプラズマ症の症例が増加しつつあるon the rise(脳と網膜は密接な関連がある)
統合失調症の人はトキソプラズマに感染しやすい
トキソプラズマの感染はアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんといくらかの相関が示されている

にもかかわらず、Wilsonは感染が主な心配の原因ではないことに言及する

「我々は長い間この寄生虫と生きてきた
宿主を殺したいのではなく、家を失いたいのではない
感染を防ぐ最も良い方法は肉を加熱調理し、手と野菜を洗うことだ
もしあなたが妊娠しているなら、ネコのトイレの砂litterを変えないように」


http://dx.doi.org/10.1371/journal.ppat.1005643
GLT-1-Dependent Disruption of CNS Glutamate Homeostasis and Neuronal Function by the Protozoan Parasite Toxoplasma gondii.

Abstract
中枢神経系はその免疫特権的な性質immune privileged natureから慢性的かつ潜在感染に脆弱でありうる
脳の生涯感染とそれによる炎症が宿主の神経学的な健康に与える影響はほとんどわかっていない
免疫能のある人でトキソプラズマ感染はほとんど無症候性だが、最近の研究で特定の神経変性疾患ならびに精神障害との強い相関が示唆されている

今回我々は主なアストロサイトグルタミン酸トランスポーターであるGLT-1のトキソプラズマ感染後の有意な低下を実証する
我々は感染したマウスの前皮質で微量透析法microdialysisを行い、グルタミン酸の細胞外濃度が有意に増加することを観察した

グルタミン酸の調節不全と一致して、樹状突起棘dendritic spine(シナプスはここにつくられることが多い)の減少、VGlut1とNeuNの免疫反応immunoreactivityを含む形態的な変化がニューロンの分析で明らかにされた
さらに、行動的なテストならびに脳波electroencephalogram(EEG)記録では、ニューロン出力の有意な変化が示された

最後に、これらのニューロン接続の変化は、トキソプラズマ感染によるGLT-1下方調節に依存する
β-ラクタム抗生物質のセフトリアキソンceftriaxoneの投与は、細胞外グルタミン酸濃度、ニューロンの病理と機能を回復した

合わせて考えると、これらのデータはトキソプラズマ感染後にグルタミン酸のアストロサイトによる精密な調節が乱されることを実証し、慢性感染で観察される一定範囲の異常a range of deficits observed in chronic infectionの原因を説明する



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