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膵臓癌はグルコースの代わりにアラニンを使う

2016-08-14 06:06:33 | 
Pancreatic cancer cells find unique fuel sources to keep from starving

August 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160810141934.htm

膵臓の癌細胞は、周囲の『サポート細胞』にグルコースの代わりとなる栄養源を供給させるよう命令することによって密集した腫瘍内での飢餓を回避する
この発見は癌細胞とマウスで実施された研究によるもので、8月10日のNature本誌で発表された
研究を主導したのはニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター、ハーバードのダナ・ファーバー癌研究所、そしてミシガン大学メディカルスクールの研究者たちである

この結果は膵臓癌の独特な能力に焦点を合わせたもので、血流から供給される酸素とグルコースが不足すると膵臓癌細胞は周囲からエネルギーを探し集めるscavenge for energy
腫瘍の内部では細胞の異常な増殖が利用可能なリソースを急速に消費し尽くすために、そのようなことが起きる

今回の研究では、膵臓癌細胞が膵星細胞/pancreatic stellate cell(PSC)にシグナルを送ることが初めて明らかになった
膵星細胞とは膵臓内で構造的なサポートを提供するために様々な物質を分泌する細胞である

このシグナルは膵星細胞を構成する細胞の一部を分解させて、アラニンなどのアミノ酸を分泌させる
このアラニンを癌細胞は取り込んでミトコンドリアへと送り、グルコースの代わりの燃料源として使うのである


「我々の研究は膵臓癌が燃料を別のやり方で使うだけでなく、その燃料を他の癌よりもはるかに効率的に周りから集めるscavengeというさらなる証拠をもたらす」
責任著者corresponding authorのAlec Kimmelman, MD, PhDは言う
彼はランゴンのローラ・アイザック・パールマターがんセンターで放射線腫瘍学部の部長chairである

「この研究は腫瘍と膵星細胞との間の新たな種類のクロストークの存在を確立する
この知識は、膵臓癌に独特な驚くべき代謝的な柔軟性に干渉する薬剤のデザインを助けるかもしれない」


飢餓に直面して
Faced with Starvation

膵臓癌細胞が低栄養な環境でも増殖し続けることから、研究チームは膵星細胞が腫瘍細胞に燃料を供給fuelしうるのかどうかを特定しようとした
実験の結果、実際に膵星細胞は代謝産物metabolitesを分泌しており、癌細胞のミトコンドリアの代謝は20から40パーセント増加し、癌細胞の増殖を増大させていた

チームは次に、分泌された代謝産物の内のどれが癌細胞によって取り込まれてミトコンドリアの代謝の増加を促進しているのかを解明しようとした
分析されたおよそ200の代謝産物の中で、アミノ酸のアラニンとアスパラギン酸だけがこのパターンに一致しており、そしてアラニンだけがミトコンドリアの代謝と腫瘍細胞の増殖を著しくsignificantly増加させていた

チームはさらに、アラニンを構成する炭素分子を標識することで癌細胞がどのようにしてアラニンを使っているのかを確認した
分析の結果、膵臓腺癌細胞pancreatic adenocarcinoma cellsはアラニンを関連する代謝産物に変換し、それをトリカルボン酸回路/tricarboxylic acid cycle(TCA回路)に供給feedしていた
TCA回路は別名クエン酸回路と呼ばれ、ミトコンドリアのエネルギー産生の最初の部分を構成する一連の反応のことである
重要なことに、アラニンをミトコンドリアで使うことによって腫瘍細胞はグルコースを別の重要な経路、例えばDNAの材料building blocksを作るような経路へと転用できるようになっていた

加えて、チームは癌細胞がまだ未知のファクターを分泌してシグナルを送り、膵星細胞にオートファジーというプロセスを促進させて、もっと多くのアラニンを供給するように指令を出していることを突き止めた

オートファジーは細胞の生命にとって基礎的なものであり、損傷した細胞の一部を小胞へと包んでリソソームへと向かわせて融合させる
この融合した小胞(オートリソソーム)でタンパク質と脂質は分解されて代謝産物に変化し、リサイクルされて新しいDNA鎖や細胞膜が作られる
癌細胞はこのような材料がなければ、手持ちの材料building blocks on handだけで増殖することは不可能である

研究グループはこの代謝的なクロストークの腫瘍の増殖に関する重要性をマウスでテストした
膵星細胞によるアラニンの分泌はオートファジーに依存しており、遺伝学的な技術を使って癌モデルのマウスの膵星細胞で選択的にオートファジーを阻害すると、腫瘍の成長は強く抑制された


NYUランゴンのDafna Bar-Sagi, PhDが率いた過去の研究では、膵臓癌細胞はその表面上に小胞vesiclesを形成して近くを浮遊するタンパク質を捉え、それをマクロピノサイトーシスmacropinocytosisというプロセスで細胞内に引き込むことが判明している(
Bar-SagiとKimmelmanは共同で研究を進めcollaborate、マクロピノサイトーシスとオートファジーという2つのプロセスが協力cooperateすることで 周りから集めたタンパク質と脂質を飢えた癌細胞のリソソームへと送り届けるのかどうかを解明しようとしている

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23665962
"Macropinocytosis of protein is an amino acid supply route in Ras-transformed cells."


「水酸化クロロキン/hydroxychloroquine(HCQ)という薬剤を使った臨床試験がいくつか進行中である
HCQはリソソームを阻害するとされ、これはオートファジーとマクロピノサイトーシスを両方とも抑えるかもしれない」
Kimmelmanは言う

「これら早期の試験からはいくつかの有望な結果が報告されているものの、我々はさらに強力で特異的なオートファジー・リソソーム阻害剤が開発されることを期待している」


http://dx.doi.org/10.1038/nature19084
Pancreatic stellate cells support tumour metabolism through autophagic alanine secretion.

Abstract
膵管腺癌/pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) は悪性の疾患であり、ストロマの極度の線維症的な応答と代謝の調節異常が特徴である (1, 2, 3, 4
PDAC生物学におけるストロマの役割は複雑であり、生物学的な状況に依存して様々に異なる重要な役割を演じる (5, 6, 7, 8, 9, 10
また、ストロマの反応は脈管構造vasculatureも損ない、非常に低酸素で栄養の乏しい環境を作り出す (4, 11, 12
そのような腫瘍はas such、その代謝的な必要性を支えるためにどのようにして栄養素を捉えて使うのかを変えなければならない (11, 13

今回我々はストロマ関連膵星細胞/stroma-associated pancreatic stellate cells (PSCs) がPDACの代謝にとって重要であり、それは非必須アミノ酸/non-essential amino acids (NEAA) の分泌を通じてであることを示す

我々は特に、以前記述されてこなかったアラニンの役割を明らかにする
PDACにおいてアラニンはグルコースとグルタミン由来の炭素を上回ってoutcompeteTCA回路に燃料を供給し、それはしたがって非必須アミノ酸の生合成、脂質の生合成に使われる

この燃料源の移行は、腫瘍のグルコースへの依存、血清由来の栄養素への依存を低下させる
それらは膵臓腫瘍の微小環境では限られている (4,11

さらに、我々はPSCsによって分泌されるアラニンがPSCのオートファジーに依存し、このオートファジーのプロセスが癌細胞によって刺激されることを実証する

ゆえに、我々の結果はPSCsと癌細胞との間の新たな代謝的な相互作用を明らかにする
この相互作用ではPSC由来のアラニンが代わりの炭素源として働く
この発見はこれまで評価されてこなかった膵臓腫瘍内部の代謝ネットワークを強調するものであり、そこでは厳しいaustere腫瘍微小環境における増殖を促進するために異なった燃料源が使われる


Figure 2: Alanine is secreted by stellate cells and is used by PDAC to fuel biosynthetic reactions.


a,
炭素代謝中心におけるアラニントランスアミナーゼ/alanine transaminases (GPT1/GPT2)の役割
グルコースglucose (Glc), ピルビン酸pyruvate (Pyr), 乳酸lactate (Lac), アセチルCoA/Ac–CoA, クエン酸citrate (Cit), α-ケトグルタル酸/α-ketoglutarate (αKG)



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/991a30f257378e25e2ce5b7d9b0a0bf7
癌細胞は本当にグルコースで増殖するのか?



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f2c26e0f57a3ab816dc42885092e26cc
非小細胞肺癌はグルコースが欠乏すると代わりにPEPCKでグルタミンを使うようになる



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25511375
乳癌細胞は脳に転移するとグルコースに依存しない増殖を獲得する



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

癌細胞は自分を消化して作ったアミノ酸で飢餓を生き残る

2016-08-12 06:06:00 | 
Cutting off the cancer fuel supply

August 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160810174355.htm

ニュージャージー州のラトガーズがん研究所/Rutgers Cancer Instituteとプリンストン大学の研究者は、オートファジーという細胞の生存メカニズムを標的とすることで癌細胞の『燃料供給fuel supply』を遮断するという、癌治療に向けた新たなアプローチを明らかにした

ラトガーズ研究所の副所長Deputy DirectorであるEileen P. White, PhDと彼女の同僚たちは、Genes & Development誌の8月10日版に発表された論文で (doi: 10.1101/gad.283416.116) Krasタンパク質をドライバとする肺癌に焦点を合わせた


Q: なぜこの主題が調査するほど重要なのか?
Q: Why is this topic important to explore?

A: 肺癌の85から90パーセントが非小細胞肺癌/non-small-cell lung cancer (NSCLC) であり、標準治療への反応は概して良くない
転位性NSCLCの患者でいくらかのサブセットでは、特定の突然変異(EGFR, MAPK, PI3Kシグナル伝達)を標的とする治療が開発されたおかげで生存の改善が見られている
KrasなどRasタンパク質ファミリーの突然変異もNSCLCでしばしば検出されるが、しかしRasの変異を直接標的とする薬剤で有効だったものは一つもない
オートファジーの重要な細胞プロセスを解明し、そしてKrasをドライバとする腫瘍細胞におけるオートファジーの役割を理解することはNSCLCへの新たな治療アプローチにつながる可能性がある


Q: オートファジーとは何? そしてこのプロセスがどのようにして我々が既に知ることと関連する?
Q: What is autophagy and how does this process relate to what we already know?

A: 細胞が飢餓やストレスに陥ると自分自身を『食べる』ことがあり、そのようなプロセスをオートファジーと呼ぶ
これまで長い間信じられていた考え方は、オートファジーは細胞が自分自身の一部を消化してリサイクルすることrecyclingであり、その目的は細胞の代謝のサポートで、栄養の供給が中断interruptionされても生き残るためだというものだった
しかしそれが本当なのか、そしてリサイクルすることが何のために必要なのかは分かっていなかった

癌細胞は通常の細胞以上にオートファジーのスイッチを入れ、オートファジーを生き残るためにも使う
以前Whiteたちのグループは、Rasタンパク質ファミリーによって活性化した癌細胞にはオートファジーが必要であり、細胞の維持管理cell maintenance、代謝的なストレスへの耐性metabolic stress tolerance、そして腫瘍の成長にとって必須だということを発見している
Rasタンパク質の『スイッチがオン』になると、細胞の増殖と生存を可能とする他のタンパク質のスイッチを入れる能力を獲得する
したがって、オートファジーが何をしているかを理解することは、癌の治療に利用可能な固有の弱点inherent weaknessを明らかにする可能性がある


Q: あなたのチームはどのようにして研究に取り組み、そして何を学んだ?
Q: How did your team approach the work and what did you learn?

A: ラトガーズのWhiteたちのグループはプリンストン大学のRabinowitzたちと共に研究を実施し、オートファジーはどのようにして癌細胞がストレスを生き残ることを可能にするのかを解明しようとした

我々は遺伝子工学で作成されたKrasをドライバとするNSCLCのマウスモデルから作られた腫瘍由来の細胞系統を使い、質量分析mass spectroscopyという分析技術を通じて、オートファジーによって消化される細胞内要素の経路を追跡した
分析の結果、癌細胞は実際に自分自身を分解してリサイクルし、飢餓を生き残っていた
細胞内の一部をバラすcannibalizationことは、細胞の発電所であるミトコンドリアに燃料を供給してエネルギーレベルを維持する
したがって、オートファジーを阻害することは発電所への燃料供給を遮断し、エネルギー危機の状態を作り出して最終的に癌細胞を殺す


Q: この発見の意味は?
Q: What is the implication of this finding?

A: この発見は、オートファジーの阻害により癌細胞への『燃料』を遮断することが、Krasをドライバとする肺癌に対する潜在的な治療戦略である可能性を示唆するものだ

Krasをドライバとする肺癌で明らかにされたオートファジー経路が他のタイプの癌にも当てはまるかどうかは、将来の研究により明確になるだろう


http://dx.doi.org/10.1101/gad.283416.116
Autophagy provides metabolic substrates to maintain energy charge and nucleotide pools in Ras-driven lung cancer cells.
オートファジーはRasをドライバとする肺癌細胞におけるエネルギーチャージとヌクレオチドプールを維持するための代謝の基質を提供する


Abstract
オートファジーはタンパク質や他の巨大分子macromolecules、小器官organellesを分解し、そして仮説としてそれらをリサイクルすると考えられている

Krasをドライバとする肺癌のモデルとして遺伝子工学で作成したマウスモデル/genetically engineered mouse models (GEMMs) では、オートファジーは欠陥のあるミトコンドリアの蓄積を防ぎ、悪性腫瘍malignancy を促進する
オートファジーを欠損する腫瘍由来細胞系統は、呼吸が損なわれrespiration-impaired、飢餓に感受性があるstarvation-sensitive
しかしながら、欠陥のあるミトコンドリアdefective mitochondria、または代謝的な基質の供給不全impaired supplyから起きる 飢餓への感受性がどの程度までなのかは不明なままである

今回我々は、Krasをドライバとする肺腫瘍(野性型と、オートファジーに欠陥があるAtg7−/−)のミトコンドリアゲノムを配列決定した

Atg7の削除はミトコンドリアゲノムの突然変異の増大という結果になったものの、
非同義の変異nonsynonymous mutationsの存在は少な過ぎて、全般的なミトコンドリア機能不全を引き起こすことはできなかった

対照的に、放射性同位体でラベル化した栄養素を用いたパルスチェイス実験/pulse-chase studyにより、
オートファジー欠陥細胞では飢餓の間の ミトコンドリアへの基質の供給が損なわれていることが明らかになった
このことは、活性酸素種/reactive oxygen species (ROS) の増加、エネルギーチャージenergy chargeの低下、総ヌクレオチドプールの劇的な低下と関連する

オートファジー欠陥細胞の飢餓での生存は、全般的な抗酸化剤であるN-アセチル-システインでは回復しなかった一方、
グルタミンまたはグルタミン酸(どちらもTCA回路/クエン酸回路に入りヌクレオチド合成nucleotide synthesisに使われる)、またはヌクレオシドnucleosidesによって完全に回復した

ゆえに、ヌクレオチドプールの維持は、Krasをドライバとする腫瘍細胞が飢えた時の決定的に重要な課題challengeである

オートファジーは、生体エネルギーの基質ならびに生合成の基質を提供することによって、ヌクレオチドプールとそれによる飢餓の生き残りをサポートする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/281aae37e50f702fb8cee950d3ad6a58
癌細胞の移動にはオートファジー遺伝子のAtg5とAtg7が必要



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125114106.htm
Atg5またはAtg7を抑制すると制御性T細胞(Treg)は機能しなくなる



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?

 

ブドウ糖がなくても癌細胞が生き残る方法

2016-08-10 06:06:17 | 
Researchers have discovered a mechanism that allows cancer to survive without glucose

August 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160808144859.htm

腫瘍細胞の主な目的は何よりもまず『生き残ること』である
たとえそれが、自らの属する生物の健康を犠牲にしてもである

生存を維持するために腫瘍細胞は通常の細胞が持たない能力を備えequipped、それは例えばグルコースのレベルが非常に低くても生き続ける能力である
そしてそれこそが、現在広く使われる血管形成の阻害剤がしばしば癌の除去に失敗する理由の可能性の一つである
血管の形成を阻害して栄養素全般、特にグルコースを遮断してどれほど飢えさせたとしても、腫瘍細胞は生き残る


今回スペインの国立がん研究所/Centro Nacional de Investigaciones Oncológicas(CNIO)の研究者たちは、癌細胞がグルコース無しでも生き残ることを可能にするための鍵となる生化学的なメカニズムの一つを突き止めた
彼らは特に、あるタンパク質のグループが『スイッチ』として働くことを明らかにした
グルコースが利用可能な時の腫瘍細胞は、生き残って増殖し続けるための特定の生化学経路を使う
しかしグルコースが使えない時、このスイッチは異なる経路の引き金を引いて同じ目的(つまり生き残ること)を達成する

Cancer Cell誌で発表された論文のintellectual authorであるCNIO研究員Nabil Djouderの説明によると、「腫瘍細胞はとても賢い
成長と増殖に必須であるように思われるドアが閉じると細胞は別のドアを開いて、どんなストレスであっても適応して生き残れるようにする
そのような理由で腫瘍細胞は高度に洗練されたメカニズムを発展させて 生き残るために学習し、
そしてそれこそが癌を治癒させるのが非常に難しい理由である」


この論文は基本的な性質を述べたもので、現時点では臨床的な応用からは程遠い
しかしながら、高インパクトな学術誌での今回の発表は、コミュニティーが癌を『高度に関連性のあるピースからなるパズル/a highly relevant piece of the puzzle 』であると見なすことを確認するものだ


研究者たちは腫瘍細胞がどうやって腫瘍の塊の中心部で生き残るのかをずっと不思議に思っていた
そこにはほとんど血管が届かないからである

加えて、抗血管形成薬anti-angiogenic agentsへの抵抗性を理解する必要もあった
抗血管形成薬は近年最も広く使われるようになった抗癌剤の一つで、
その有効性は腫瘍に栄養を供給する血管の成長を妨害し、癌細胞から栄養素を飢えさせることを基盤とする
しかし癌細胞はやがてこの薬剤に抵抗するようになり、飢えても死ぬことはない


グルコースを検出して、それに応じた行動をするための『スイッチ』
'Switches' to detect glucose and act accordingly

細胞内で起きることは全て(それが癌細胞であるかどうかは関係なく)、生化学的な反応の連鎖が基礎にある
タンパク質は様々な分子の付加によって修飾され、そのような変化が他のタンパク質に変化を誘発する

とてもシンプルな隠喩metaphorとしては、それはまるで多くのスイッチを持つ『回路』のようであり、それぞれのスイッチがつながったり切れたりする


Djouderたちは今回の研究で、グルコースが存在するかどうかを細胞が検出できるようにするためのスイッチのシステムを明らかにした
その検出の状態に照らして、癌細胞の究極の目的である『生き残ることsurvive』を達成するためにはどの生化学的経路をたどるべきかが決定される

この洗練されたシステムはURI、OGT、c-Mycという3つのタンパク質から構成され、3つのうちURIがスイッチとして働く
c-Mycは有名な癌遺伝子oncogeneであり、細胞の増殖と生存を促進する
しかしながら、Djouderのグループは癌細胞が栄養素ストレスの状態nutrient stressでも生き残るために重要matterなのもc-Mycタンパク質のレベルであることを発見した


一連のイベントは次のように起きる

・URIはOGTの活性をコントロールする

・OGTはグルコースを感知し、グルコースを利用してc-Mycレベルをコントロールする
 グルコースが存在する時のOGTはグルコースを使ってc-Mycのレベルを安定化させ、c-Mycが癌遺伝子としての役割を果たすことを可能にする

・これに反して、細胞がグルコースが不足するという状況に直面すると、URIはOGTを強力に阻害する
 OGTの活性は低下し、グルコースの消費は減少する

・OGTによるc-Mycの安定化は抑制され、c-Mycは分解されて排除される
 この結果、グルコースが不足すると細胞の生存はURIに依存するようになる(つまりURIは発癌性の活性を持つ)


「我々の発見は重要なグルコース感知メカニズムの存在を示唆している
URIは加減抵抗器rheostatとして働いてOGTの活性をコントロールし、したがってc-Mycレベルを変化させる
これが癌細胞に『選択的な性質selective traits』を与え、厳しい代謝的ストレスに耐えて攻撃的な環境から受ける選択圧下で生き残れるようにする」

「このメカニズムは一般的な腫瘍発生tumorigenesisにおいても重要である可能性があり、
グルコース欠乏にさらされた癌細胞がどのようにして後退regressどころか拡大expandできるのかについて説明するのを可能にするかもしれない」


この発見は今のところ実用化practical applicationからは程遠い
なぜなら、URIの作用を乗っ取るような単純な戦略は現在は単純に不可能だからである
URIの機能はまだ十分に理解されているとは言えず、実際、CNIOのNabil DjouderたちはURIの研究を続行する予定である


http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2016.06.023
Regulation of OGT by URI in Response to Glucose Confers c-MYC-Dependent Survival Mechanisms.
グルコースに応じたURIによるOGTの調節はc-MYC依存的な生存メカニズムを与える



Highlights
・癌細胞においてURI/OGT/PP1γは機能的なヘテロ三量体の複合体を形成する
・グルコース欠乏はURIのセリン371をリン酸化させ、PP1γを解放してOGTを阻害する
・OGTの阻害はc-MYCを減少させ、代謝的ストレス下での癌細胞の生存を促進する
・URIのセリン371をアラニンに変化させると(S371A)、O-結合型β-N-アセチルグルコサミン付加(O-GlcNAcylation)が増加し、c-Mycレベルが増大して、肝臓の発癌hepatocarcinogenesisが促進される

※O-GlcNAcylation: O-結合型β-N-アセチルグルコサミン付加。O-GlcNAc転移酵素(O-結合型β-N-アセチルグルコサミン転移酵素)によって触媒される

URI1: unconventional prefoldin RPB5 interactor

OGT: O-Linked N-Acetylglucosamine (GlcNAc) Transferase

c-Myc: V-Myc Avian Myelocytomatosis Viral Oncogene Homolog

PP1γ: protein phosphatase 1γ


Summary
癌細胞は低栄養の状態下でも適応して生き残るが、根底にあるメカニズムはほとんど調査されていない

今回我々はグルコースが『コシャペロンco-chaperone(シャペロンを補助するタンパク質)であるURI』『PP1γ』『O-結合型β-N-アセチルグルコサミン付加(O-GlcNAcylation)を触媒する酵素のOGT』の機能的な複合体を維持することを実証する

グルコース欠乏はプロテインキナーゼA(PKA)の活性化を誘発し、PKAはURIのセリン371をリン酸化することで、結果としてPP1γが解放され、URIはOGTの阻害を仲介するようになる
OGTの活性の減少はO-GlcNAcylationを低下させてc-MYC分解を促進し、細胞の生存を維持する

グルコースが存在すると、PP1γと結合したURIは OGTとc-MYCレベルを増大させる

それらと一致して、セリン371がリン酸化されないようにしたURI(S371A)を肝細胞で発現するマウスは高いOGT活性を示し、c-MYCは安定化して肝臓の腫瘍発生tumorigenesisは加速され、それはc-MYCの発癌機能oncogenic functionsと一致する

我々の研究は、URIによって調節されるOGTが
グルコースが変動してもそれに応じたc-MYC依存的な生存機能を与えることを明らかにする


References

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25453901
Inhibition of de novo NAD(+) synthesis by oncogenic URI causes liver tumorigenesis through DNA damage.
発癌URIによる新規NAD+合成阻害はDNA損傷を通じて肝臓腫瘍発生を引き起こす


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19661383
Glucose deprivation contributes to the development of KRAS pathway mutations in tumor cells.
グルコース欠乏は腫瘍細胞におけるKRAS経路の突然変異に寄与する


<コメント>
2009年にScienceに掲載された論文では、一般的に信じられているような「グルコースが多いと癌になる」どころか、「グルコースが不足すると癌化する」という可能性が示唆されていた
これまでその理由はよくわからなかったが、どうやらグルコースは様々なタンパク質や複合体を安定させるために使われるのだという



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2174442f0ceb3acce3c4a816f949b3db
糖分が少ない領域に適応した癌細胞はKRAS/GLUT1でブドウ糖をかき集めるようになる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f2c26e0f57a3ab816dc42885092e26cc
グルコースによって発現が調節されるPCK2は、グルコースが少なくても解糖系の中間生成物の産生を助ける



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/886e4bba2af90bbc4bda6ab12d6caae1
癌細胞からPKCζが失われると、腫瘍は代わりの栄養分を用いることが可能になる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/e66f633e000a98c97c5e8bddfa27ba74
抗血管新生薬とミトコンドリア阻害剤を組み合わせて癌を殺す



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3602a7dca002902cc23d302bfc4b6307
AMPKとPFKFB3が細胞分裂に応じたミトコンドリアへのダメージを検出すると、細胞はエネルギー源をグルコースに依存するようになる



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?
 

KRAS突然変異による肺癌形成には脂肪酸の酸化が必要

2016-08-08 06:06:12 | 
Scientists discover new therapeutic target for lung cancer driven by KRAS

July 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160728125715.htm


(UT Southwestern researchers (left to right)
Dr. Mahesh Padanad,
Dr. Smita Rindhe,
Dr. Pier Paolo Scaglioni, and
Dr. Margherita Melegari
have found a new way
to target lung cancer through the KRAS gene, one of the most commonly mutated genes in human cancer.

Credit: Image courtesy of UT Southwestern Medical Center)


テキサス大学(UT)サウスウエスタン・メディカルセンターの研究者たちは、KRAS遺伝子を通じて肺癌を標的にする新たな方法を突き止めた
KRASはヒトの癌で最も一般的に変異している遺伝子の一つであり、これまで標的とすることが難しいとされてきた


肺癌でKRAS変異の根底にある生物学を調査していた研究者たちは、ACSL3遺伝子の結果として生じる活性は肺癌細胞が生き残るために必要であり、ACSL3を抑制すると肺癌細胞が死ぬことを突き止めた

この発見が重要である理由は肺癌の症例の約30パーセントでKRAS遺伝子の突然変異が起きるからであり、その変異は予後の悪い悪性度と治療抵抗性に関連するためである

国立癌研究所/National Cancer Institute (NCI) によると、肺癌は癌関連死の原因として第一位のままである

「最近いくつかの進歩があったものの、KRASの突然変異体は今でも非常に困難な標的のままである
この遺伝子から始まった腫瘍には治療の選択肢が欠乏dearthしている」
首席著者senior authorのPier Paolo Scaglioni博士は言う
彼は血液学・腫瘍学部において内科学の助教授Associate Professorであり、Harold C. Simmons総合がんセンターの一員でもある


KRAS遺伝子 (Kirsten rat sarcoma viral oncogene homolog) からはK-Rasというタンパク質が作られ、細胞の分裂時に影響を与える
K-Rasが変異を起こすと細胞分裂は制御不能になり、癌化する可能性がある

「KRASの変異体は腫瘍の成長を促すだけでなく、既に確立した肺癌の生存も促進する
現時点では臨床的に関連するrelevant効果的な阻害剤は何もないので、効果があると証明される治療の開発には強い臨床的な関心が存在する」
Scaglioni博士は言う
彼はSimmons Cancer Centerにある癌シグナル伝達研究室/Cancer Signaling Laboratoryのリーダーである

研究チームはACSL3 (Acyl-CoA synthetase long-chain family member 3) という酵素の活性が変異体KRAS遺伝子の肺癌形成促進にとって必要だということを発見し、
さらにACSL3酵素の基質substratesである脂肪酸が肺癌において臨床的な役割を持つことも実証した


「癌細胞の脂質代謝を阻害するためのさらなる標的、しかも標的治療につながりうるようなものを発見しなければならないという切迫した必要性が存在する
肺癌におけるACSL3の重要性の発見は、この対処されていない需要unmet needを満たす」
筆頭著者first authorであり研究チームの一員であるMahesh S. Padanad博士は言う


Cell Reports誌で発表された今回の研究では複数の相補的complementaryなアプローチ、つまり細胞系統、マウス、ヒトの患者の腫瘍サンプルを使い、肺癌におけるACSL3の生物学的な重要性を理解しようとした


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.07.009
Fatty Acid Oxidation Mediated by Acyl-CoA Synthetase Long Chain 3 Is Required for Mutant KRAS Lung Tumorigenesis.
KRAS変異体の肺腫瘍発生にはACSL3によって仲介される脂肪酸酸化が必要である



Highlights
・肺癌細胞におけるACSL3の発現と活性は、変異体KRASによって上方調節される
・変異体KRAS肺癌細胞でACSL3を抑制すると、β酸化とATPレベルが低下する
・ACSL3は変異体KRAS肺癌細胞の生存と発癌能oncogenic capacityに必要である
・ACSL3はヒト肺癌の標本specimensで発現が高く、癌の開始/イニシエーションinitiationを促進する


Summary
KRASが変異した細胞では代謝ネットワークの調節が異常をきたす
しかしながら、細胞での代謝の変化が 変異体KRASの腫瘍発生tumorigenesisにどれほど寄与するのかは完全には理解されていない

今回我々は変異体KRASが
アシルCoAシンテターゼ長鎖ファミリーメンバー3/Acyl-coenzyme A (CoA) synthetase long-chain family member 3 (ACSL3) を通じて細胞内の脂肪酸代謝を調節することを報告する
ACSL3は脂肪酸を『脂肪酸アシルCoA/fatty Acyl-CoA』のエステルesterへと変換するが、これは脂肪合成とβ酸化の基質である

※脂肪酸アシルCoAシンテターゼ/fatty acyl-CoA synthetase: β酸化したり中性脂肪などを合成するために、脂肪酸をCoAと結合させて活性化する酵素

ACSL3の抑制は細胞内ATPの枯渇depletionと関連し、肺癌細胞の細胞死を引き起こす

さらに、変異体KRASは肺癌細胞の脂肪酸の取り込みuptake、維持retention、蓄積accumulation、β酸化を促進し、それはACSL3に依存的なやり方/ACSL3-dependent mannerである

我々のデータは変異体KRASが脂質の恒常性を再プログラムして代謝的な必要性を確立することを実証し、それは治療標的として利用されうることを示す


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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/910a0223f30d3b68e39d6905f1c05820
乳癌は増殖するために脂質を取り込む



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4056326cf9626ead69dd90ab0886df52
白血病の癌幹細胞は脂肪組織に隠れる



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

白血病の癌幹細胞は脂肪組織に隠れる

2016-07-26 06:06:18 | 
Cancer stem cells in 'robbers cave' may explain poor prognosis for obese patients

July 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160720132343.htm


(癌幹細胞は脂肪組織に隠れ、しかも脂肪組織の性質を変化させて化学療法に抵抗できるようにする

Credit: University of Colorado Cancer Center)

様々な種類の癌で肥満の患者は痩せている人よりも悪い結果になるfare worseが、それについてコロラド大学がんセンターは説得力のあるcompelling研究をCell Stem Cell誌で発表した
それによると、白血病の幹細胞leukemia stem cellsは脂肪組織に『隠れ』、化学療法に耐えられるよう生存をサポートさせるのだという
それはまるで白血病幹細胞が治療から隠れるために脂肪組織を『盗賊の洞窟/robbers' cave』として使うだけでなく、その洞窟を彼らの好みに合うように積極的に改造adapt this cave to their likingするかのようである

「癌は幹細胞から生じるということが最近ますます認識appreciateされるようになっており、癌幹細胞を殺すことに失敗すると再発につながりうると考えられている
また、研究者たちは周囲の組織の重要性についても認識appreciateするようになった
それは『ニッチniche』または『腫瘍微小環境tumor microenvironment』と呼ばれ、癌幹細胞をサポートする
白血病leukemiaでニッチとして明白なのは骨髄だが、その他の組織についてはこれまであまり注意が払われてこなかった
今回の研究は腫瘍をサポートするニッチとして脂肪組織adipose tissueを初めて評価する一つである」
コロラド大学がんセンターの研究者、Craig Jordan, PhDは言う
彼はコロラド大学医学部の血液学でNancy Carroll Allen Professor教授職でもある


Jordanは、筆頭著者のHaobin Ye, PhDによる『独特originalで洞察に満ちたinsightful』論理の道筋line of reasoningが 今回の研究にとってどれほど必要だったかについて述べている

一つ、「肥満の白血病患者は予後が悪い」
二つ目、「幹細胞は増殖のドライバであり、治療に抵抗し、白血病の再発を生じさせる」
三つ目、「腫瘍の微小環境は癌幹細胞にとって重要である」

肥満、幹細胞、腫瘍微小環境、この三つが交わる交差点は脂肪組織である
では、脂肪組織の幹細胞は肥満の患者の予後の悪さの原因になりうるだろうか?


研究グループはまず白血病マウスモデルの脂肪組織で見つかる癌細胞を調べることから始めた
すると、普通の癌細胞と癌幹細胞の混合したものが見つかるだろうという予想に反して、脂肪組織からは癌幹細胞が豊富に見つかったenriched
そこには『ケチなコソ泥sneak-thief』は一人もおらず、癌幹細胞という『大泥棒master thief』が脂肪組織を『盗賊の洞窟/robbers' cave』のように利用していたのである

さらに、脂肪組織には不釣り合いにdisproportionately高い割合の幹細胞が存在していただけでなく、これらの幹細胞は骨髄微小環境の幹細胞とは異なるエネルギー源を使用していた
適切なことにappropriately、脂肪組織にいた幹細胞は脂肪酸によって生存と増殖を強めておりpower、エネルギーは脂肪酸の酸化によって製造していた
事実、これらの脂肪組織にいた幹細胞は脂肪に対して積極的にシグナルを送ることで脂肪分解lipolysisというプロセスを実行させ、脂肪酸を微小環境にリリースさせていた

※appropriate: adj「適切である」、v.t.「無断占用する」

「この基礎生物学basic biologyは魅力的fascinatingである
腫瘍は局所的な環境local environmentを自らに適したように改造adaptしていたのだ」
Jordanは言う


最後に、研究グループが脂肪組織にいる幹細胞に化学療法を実施すると、エネルギー源を脂肪酸に切り替えていた幹細胞は脂肪組織の外側の幹細胞よりも化学療法に抵抗性であることが判明した
YeとJordanたちがヒトの白血病サンプルを検討したところ、マウスモデルと似たような特徴、つまりエネルギー源として脂肪酸を使うように特化した細胞は化学療法に対してさらに抵抗性であることが明らかになった

「おそらく、化学療法で脂肪組織にいる幹細胞を殺すのは骨髄の幹細胞よりも難しいかもしれない」
Yeは言う


この仮説がさらなる研究で実証bear outされれば、肥満の患者の方が予後が悪いという事実を説明する助けとなる可能性がある

研究グループは肥満の度合いに変化をつけたマウスモデルでの研究の継続を計画しており、脂肪組織が多いほど癌幹細胞へのエネルギーが多く生じるのかどうか、または治療を回避する癌幹細胞のための『盗賊の洞窟』が大きくなるのかどうかを潜在的に調べることになるだろうという


http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2016.06.001
Leukemic Stem Cells Evade Chemotherapy by Metabolic Adaptation to an Adipose Tissue Niche.



Highlights
・生殖腺脂肪組織/gonadal adipose tissue (GAT) は、白血病幹細胞/leukemic stem cells (LSCs) のリザーバーreservoirとして働く
・白血病細胞とGATとの間の相互作用は、白血病細胞の脂肪酸代謝に燃料を供給するfuel
・CD36は、LSCsを代謝的かつ機能的に異なる2つのサブセットに分けるsegregates
・GATは、CD36陽性のLSCsのために化学療法への抵抗性を与えるニッチnicheをもたらす


Summary
以前、脂肪組織/adipose tissue (AT) は 正常な造血幹細胞/hematopoietic stem cells (HSCs) のための 髄外extra-medullaryのリザーバーであり、腫瘍の発達も促進する可能性が突き止められている

今回我々は白血病幹細胞のサブ集団が生殖腺脂肪組織(GAT)を代謝を支えて化学療法を回避するためのニッチとして利用しうることを示す

急性転化/芽球クリーゼblast crisisした慢性骨髄性白血病/chronic myeloid leukemia (CML) のマウスモデルにおいて、脂肪組織に存在するLSCsは炎症促進性の表現型pro-inflammatory phenotypeを示し、GATの脂肪分解lipolysisを誘導する
GATの脂肪分解はLSCsの脂肪酸酸化に燃料を供給し、特に脂肪酸トランスポーターのCD36を発現するサブ集団内部ではそうである
CD36陽性のLSCsは独特な代謝的性質を持ち、脂肪組織で著しく豊富であり、GAT微小環境によって化学療法から保護される
また、ヒトの急性転化CMLの一部ならびに急性骨髄性白血病/acute myeloid leukemia (AML) 細胞で 同様の生物学的な特徴として共通するのはCD36である

これらの発見は、明確に異なる白血病幹細胞サブ集団の代謝的な需要ならびに生存を支えるための独特の微小環境を作り出す 白血病細胞と脂肪組織との間の印象的な相互作用を示唆している


Results
白血病の生殖腺脂肪組織(GAT)では、脂肪分解を負に調節する因子である『リポ蛋白質リパーゼ/lipoprotein lipase(LPL)』 ならびに 細胞死を活性化する因子である『CIDE-A (CIDEA)』の発現が低下していた (Figures 3C and 3D)

LPLは脂肪細胞の遊離脂肪酸(FFAs)の流入を制御し (Ebadi and Mazurak, 2014)、
CIDEAは脂肪滴/lipid droplet (LD) と結合するタンパク質であり、リパーゼからLDを保護し、したがって脂肪分解を阻害する (Nordström et al., 2005)

 LPL,CIDEA─┤脂肪分解

Figures 3EとS3Bで示したように、TNF-α、IL-1α、IL-1β、CSF2は脂肪分解を誘発することが可能である
さらに、これら4つのサイトカインは GATの体外培養explantならびに3T3-L1脂肪細胞におけるLPLとCIDEAの発現を 両方とも低下させる (Figures 3F and S3C)

 TNF-α,IL-1α,IL-1β,CSF2↑─┤LPL,CIDEA↓─┤脂肪分解↑

上記の炎症性サイトカインに加えて、脂肪酸はそれ自体が強力な炎症促進性の物質pro-inflammatory agentであることにも我々は言及する (Snodgrass et al., 2013)


Reference
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15919794
A human-specific role of "cell death-inducing DFFA (DNA fragmentation factor-alpha)-like effector A (CIDEA)" in adipocyte lipolysis and obesity.
脂肪細胞の脂肪分解ならびに肥満におけるCIDEAのヒト特異的な役割

http://diabetes.diabetesjournals.org/content/54/6/1726.long
Figure 6
ヒト脂肪組織におけるCIDEAとTNF-αとの間のクロストーク


TNF-αは、MAPKsのp44/42とJNKを介して基礎的な脂肪細胞の脂肪分解を刺激し、JNKを介してCIDEAの発現を阻害する
CIDEAはTNF-αの分泌を阻害するが、それはTNF-αが転写された後のメカニズムによる




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腫瘍へと変化する幹細胞にとってミトコンドリアの代謝経路はエネルギー源であり、NANOGは細胞を再プログラムして燃料としてグルコースの代わりに脂肪酸を使うように命令する



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脂肪酸輸送タンパク質のCD36は、骨格筋への脂肪酸の取り込みを促進する



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?
 

ミトコンドリアのストレスが癌の代謝的な移行を引き起こす

2016-07-10 06:06:32 | 
Mitochondrial stress induces cancer-related metabolic shifts

July 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160707083121.htm


(ミトコンドリアのストレスはカルシウムイオン/カルシニューリンを介して120近い遺伝子の発現を誘発する
それらの遺伝子は細胞の代謝、形態、アポトーシスへの抵抗性、細胞の浸潤に関与し、さらにMDM2の発現低下によってp53が上方調節される
p53レベルの上昇は物理的結合とユビキチン化によってHif-1aレベルを負に調節し、Hif-1aは急速に分解される
まとめると、この研究はミトコンドリアのストレスはHif-1a経路の活性化に依存せず単独で細胞の代謝の変化を誘発することを示す

Credit: University of Pennsylvania)

癌の腫瘍が育つためにはエサを食べなければならず、無調整の増殖には安定した血流と栄養を必要とする
したがって、癌を一掃しようと試みる研究者が取る方法の一つは、
腫瘍の急速な成長を可能にするような代謝的移行をしている細胞を標的とすることである

しかし、ペンシルベニア大学の新たな研究結果は、そのような努力が『腫瘍に役立つ代謝的変化を可能にするために鍵となる重要な経路』を見落としてきたことを示唆する

彼らはミトコンドリアのストレスだけでp53を含む経路を通じて代謝的な移行を引き起こすことを発見した
p53は癌において多くの重要な役割を演じることが知られるタンパク質である

「我々が調べた5つの癌細胞の系統の全てで、ミトコンドリアの機能が影響を受けると p53が誘導された」
首席著者senior authorのNarayan Avadhaniは言う
彼はペンシルベニア獣医学校の生医科学部において生化学のHarriet Ellison Woodward Professor教授職である

「ここから我々は、HIF-1α経路からは独立して腫瘍の増殖を促進する可能性を発見するに至った
HIF-1αはこれまで治療的な介入の主な標的とされてきた経路である」

この研究は癌がどのようにして進行するのかについての我々の理解を深める新たな要素を指し示す
代謝的ストレスのマーカーは、癌の悪制度や転移のしやすさを示すバイオマーカーとして使える可能性すらある
この研究はOncogene誌で発表される


Avadhaniたちは以前の研究で、ミトコンドリアの破綻が腫瘍の成長につながることを示している
ミトコンドリアはしばしば『細胞の発電所』と呼ばれるが、その理由はミトコンドリアが細胞のエネルギーの『通貨』であるATPを作り出すからであり、細胞はこのATPを利用して様々な機能を実行する

彼らは関連する研究で、ミトコンドリアをストレスにさらすとp53の増加が引き起こされることも観察していた
しかし、その発見についてこれまで追跡調査はしていなかった

p53はヒトの癌の約5割で変異していることから、腫瘍を抑制する機能があると広く信じられている
彼らはミトコンドリアのストレスとp53との間のつながりについて詳しく調べようと決めた


彼らが癌細胞を含む6つの細胞系統で実験的にミトコンドリアDNA(mtDNA)を枯渇させてミトコンドリアにストレスを与えたところ、枯渇に応じてp53レベルが増加した

癌ではHIF-1αの活性がp53に対して『補足的な役割』と『正反対の役割』の両方を演じることが知られているため、p53の増大に対してHIF-1αがどのようにして反応するのかを調べたところ、p53はHIF-1αの活性を阻害していることが判明した

細胞系統の中からヒトの結腸癌の細胞系統を特に選んでp53を実験的に消去すると、彼らは再びHIF-1αとの関連を発見した
p53を消去した結腸癌の細胞系統は、野生型の結腸癌細胞系統よりもHIF-1αの活性が6倍も高かったのである
これもまたp53がHIF-1αを阻害することを示していた

この結果がミトコンドリアDNAの枯渇と厳密には関連しないことを確かめるため、研究者はミトコンドリアのストレスを別の手段で誘発させた
化学物質を使い、ミトコンドリアの膜を破綻させることにより、それが全てp53を誘導することを明らかにした

さらなる研究により、p53はHIF-1αレベルを核と細胞質の両方で低下させることが分かった
ミトコンドリアDNAが枯渇すると、HIF-1αに応答する遺伝子が鈍くなるbluntedことも明らかになった

特筆すべきこととして、細胞がブドウ糖を分解してエネルギーを作る解糖系という代謝プロセスに関与する複数の遺伝子の発現が、ミトコンドリアDNAを枯渇させると劇的に上昇したjumped dramatically
これらの中のいくつかは通常はHIF-1αによって調節されているのと同じ遺伝子であり、これはつまりミトコンドリアのストレスは、HIF-1α経路と似てはいるが完全に異なる経路として癌細胞に代謝的な移行を引き起こすことを示している

最後に、研究チームはmtDNAが枯渇した細胞ではp53が物理的にHIF-1αへ干渉することを実証した
p53はHIF-1αが通常結合する遺伝子のプロモーターに結合できないように妨害し、
そしてHIF-1αのユビキチン化プロセスを促進して分解される目印となるタグを付けていた


今回の発見は、癌の成長を支える環境を育む代謝的な移行を妨げるための新たな方向性と標的を指し示すものだ

「我々はミトコンドリアのストレスも、考慮すべき『力force 』であることを示す」
Avadhaniは言う

「代謝的な変化を防ぐために HIF-1αにのみ焦点を合わせても、それではおそらく十分ではない
ミトコンドリアのストレスも、それらと全て同じ変化を誘発する」

Avadhaniたちはこれらの先端的な研究を追求する中で、
ミトコンドリアストレスの分子的なマーカーを標的にするような治療的介入を設計すべく研究を続け、
充実性腫瘍の『食事feed』を助ける代謝的な移行を阻止head offしようと試みている


http://dx.doi.org/10.1038/onc.2016.211
Mitochondrial stress-induced p53 attenuates HIF-1α activity by physical association and enhanced ubiquitination.
ミトコンドリアストレスによって誘導されるp53は物理的結合ならびにユビキチン化促進によりHIF-1αの活性を弱める

Abstract
逆行性シグナル伝達retrograde signalingは、ミトコンドリアの機能不全を核に伝えて細胞の生存に必要な代謝的移行metabolic shiftを誘導するためのメカニズムである

我々は以前、様々な細胞タイプにおいてミトコンドリアDNA(mtDNA)の一部を枯渇させるとミトコンドリアから核への逆行性シグナル伝達経路/mitochondrial retrograde signaling pathway (MtRS) が誘導されることを示した
この経路にはカルシウムイオン(Ca2+)に感受性のカルシニューリンcalcineurin(Cn)の活性化が含まれ、即時に起きるストレス応答の上流イベントである

多くの細胞タイプで、このストレスシグナル伝達は不死化細胞において腫瘍形成性の表現型を誘導することが示された

この研究で我々は、MtRSがp53の発現も誘導することを示す
p53の発現はCa2+のキレート化剤chelatorsによって阻害され、そしてショートヘアピンRNA(shRNA)を介するCnAβ mRNAのノックダウンによっても抑制された

※CnAβ: カルシニューリンcalcineurin(Cn)は触媒サブユニットのCnAと調節サブユニットのCnBからなるヘテロダイマーで、CnAには
という3つのアイソザイムが、CnBにはという2つのアイソザイムがある

ミトコンドリアのイオノフォアionophoreである『カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン/carbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazone』によって誘発されるミトコンドリアの機能不全は
膜貫通/膜内外電位差transmembrane potentialを破綻させ、p53の発現誘導ならびにMDM2の下方調節に等しく有効だった

ストレスによって誘導されるp53は、物理的に低酸素誘導因子/hypoxia-inducible factor-1α (HIF-1α) と相互作用して、後者のプロモーターDNAモチーフへの結合を抑制する

加えて、一部のmtDNAが枯渇した細胞においてp53はHIF-1αのユビキチン化と分解を促進した

mtDNAが枯渇した細胞ではHIF-1αが阻害されていながら、解糖系経路の遺伝子であるグルコーストランスポーターの1から4(Glut1, Glut2, Glut3, Glut4)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK1)、グルコキナーゼが上方調節されていたが、プロリン水酸化酵素アイソフォームはそうではなかった

この点で、我々の結果は MtRSがHIF-1α経路とは独立して腫瘍の成長を誘発することを示す



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/dfcb999fdeae70ab72096799bc592d75
ミトコンドリアの電子伝達系の異常は核への逆行性シグナルを介して癌のような変化を起こさせる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b3cae58e45c1c6f2092ed2cf3408b90e
非定型カドヘリンのFatカドヘリンが失われるとミトコンドリアは不安定になり、細胞は必要とするエネルギーを発生するために解糖系へと切り替える
 

癌はミトコンドリアを利用して運動性と転移能を得る

2016-07-09 06:06:29 | 
Mitochondria are exploited in cancer for tumor cell motility, metastatic competence

A newly identified pathway for this mechanism also provides a viable, 'drugable' target for many different types of tumors

July 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160707151117.htm

細胞の発電所powerhouseであるミトコンドリアはあらゆる生き物にとって重要だが、その理由はエネルギーを作るだけではなく細胞の生存をコントロールするからである
しかし、癌においてミトコンドリアがどのように機能しているのかはまだ完全には理解されていない

このことは特に重要である
なぜなら一般的に腫瘍細胞は正常な組織と比べて急速に増殖proliferateするため、科学者たちはミトコンドリアの機能を保存するメカニズムが腫瘍の増殖expansionを支える原因ではないかと疑ってきたからである


今回ウィスター研究所の科学者は、腫瘍細胞のミトコンドリア内に存在する特有specificのタンパク質ネットワークを突き止めた
このネットワークはミトコンドリアの『故障のない/完全なclean』機能を維持するために必要であり、腫瘍細胞の増殖を可能にするだけでなく遠隔臓器に移動して浸潤できるようにする

関与する要素を理解したことによりウィスターの科学者はネットワーク内の個々のサブユニットをオフにすることが可能となり、癌細胞の増殖して転移する能力を大幅に低下させた
PLOS Biology誌で発表された彼らの研究結果はそれが魅力的な治療標的になりうることを示唆する

「これは生合成の高い必要性に対処すべく腫瘍がどのようにして急速に適応するかという一例である」
ウィスター研究所の所長Presidentであり最高経営責任者/Chief Executive Officer(CEO)のDario C. Altieri, M.D.は言う
今回の論文の首席著者lead authorの彼はウィスター癌研究センターでは部長directorであり、特別教授職のRobert & Penny Fox Distinguished Professorでもある

「ミトコンドリアは、増殖と転移に必要なエネルギーを加工処理processする腫瘍の能力に強く関与する
そのため、異常な増殖と転移を支えるために腫瘍がどのようにしてミトコンドリアの機能を維持して利用するのかというメカニズムを突き止めることは、様々な癌における新たな治療標的を明らかにする可能性がある」


以前の研究で、タンパク質を折りたたんで安定化する能力、つまりタンパク質恒常性proteostasisは、細胞のストレスを減らすために重要であるという証拠がもたらされていた
加えて、腫瘍はタンパク質恒常性のメカニズムを自分に有利なように乗っ取ることが知られていたが、それがミトコンドリアでどのようにして起きるのかはほとんど知られていないままである
ウィスター研究所によって記述されるネットワークはこの疑問に答え、その重要な役割を立証した

さらに、そのネットワークの中でも特にClpPがヒトの原発癌と転移性の癌において全般的に過剰発現しており、生存の短さと相関することが明らかになった
科学者は今回の研究だけで乳癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、メラノーマ、リンパ腫の全てでClpPサブユニットが過剰発現していることを突き止めた


「ミトコンドリア機能に関与する経路を標的とした少なくない関心が存在し、我々はそのような経路の一つを明らかにした
それは様々な癌に共通し、創薬可能な(druggable)標的をもたらす」
ウィスターのAltieriラボでpostdoctoral fellowであり、研究の筆頭著者first authorであるJae Ho Seo, Ph.D.は言う

「他の研究でミトコンドリアタンパク質の標的化が実現可能であることが前臨床モデルで示されてきた
そのため、我々が今回の研究で明らかにしたネットワークを乱すことは腫瘍の進行につながる重要なプロセスを停止させる可能性がある」


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pbio.1002507
The Mitochondrial Unfoldase-Peptidase Complex ClpXP Controls Bioenergetics Stress and Metastasis.
ミトコンドリアのアンフォールダーゼ-ペプチダーゼ複合体であるClpXPは生体エネルギーストレスと転移を制御する

Abstract
ミトコンドリアは、タンパク質毒性的なストレスproteotoxic stressのリスクから生体エネルギーbioenergeticsを存続させるための緩衝剤bufferとして働く
しかし、疾患におけるこれらのメカニズムの役割はほとんど理解されていない

我々はプロテオミクススクリーニングを用いて、ミトコンドリアのアンフォールダーゼとペプチダーゼの複合体であるClpXPが腫瘍細胞のミトコンドリアにおいて癌タンパク質のサーバイビンsurvivin(BIRC5)ならびに呼吸鎖の複合体IIサブユニットであるコハク酸デヒドロゲナーゼB/succinate dehydrogenase B(SDHB)と結合することを示す

ClpXPのサブユニットであるClpP(Caseinolytic Protease, ATP-Dependent, Proteolytic Subunit Homolog)またはClpX(Caseinolytic Mitochondrial Matrix Peptidase Chaperone Subunit)のノックダウンはミスフォールドしたSDHBの蓄積を誘発し、酸化的リン酸化とATP産生を損ない、『ストレス』シグナルである『5′アデノシン一リン酸/5′ adenosine monophosphate(AMP)によって活性化されるタンパク質キナーゼ(AMPK)』のリン酸化とオートファジーを活性化する

ClpXPを標的とすることによって誘発されるミトコンドリア呼吸の調節不全はin vivoで酸化ストレスを引き起こし、それは続けて腫瘍細胞の増殖を低下させ、細胞の運動性motilityを抑制し、転移性の播種metastatic disseminationを無効化した
さらに、ClpPは原発癌と転移性の癌で全般的に過剰発現し、患者の生存の短さと相関する

したがって、腫瘍はClpXPによって方向づけられるタンパク質恒常性/ClpXP-directed proteostasisを利用してミトコンドリアの生体エネルギーbioenergeticsを維持し、酸化ストレスを緩衝し、転移する能力を可能にする
この経路は癌における『新薬の開発につながる/druggable』な治療標的をもたらす可能性がある


Author Summary
細胞の発電所であり酸化ストレスの中枢ハブであるミトコンドリアは、ミトコンドリアに含まれるタンパク質の状態を厳密に制御する必要があり、きちんと折りたたまれなかった/ミスフォールドmisfoldedしたタンパク質、凝集したタンパク質、さもなくば損傷したタンパク質は急速に除去される

今回我々は腫瘍のミトコンドリアが『タンパク質恒常性protein homeostasis/proteostasis』の統合ネットワークを組み立てることによりタンパク質セットを管理し、それによりタンパク質の折りたたみfoldingと分解degradationを制御することを示す
このタンパク質複合体は、アンフォールダーゼとペプチダーゼであるClpXP、サーバイビンsurvivin、Hsp90様シャペロンのTRAP-1から形成され、酸化的リン酸化の複合体IIサブユニットであるsuccinate dehydrogenase B (SDHB) の機能を調節する

我々はこのプロセスへの干渉がエネルギー産生を損ない、酸化ストレスを促進し、重要な下流のシグナルを停止させることを発見した
このシグナルはin vivoでの腫瘍細胞の増殖、浸潤、転移性播種にとって重要である

我々の結果はミトコンドリアのタンパク質恒常性ネットワークが進行した癌における治療の機会をもたらす可能性を示唆する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7375811853bf97f841338ba990da2cb5
転移するメラノーマ細胞は非常に強い酸化ストレスを経験する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a42f46f190c4e408448d70b0cd3aa91e
癌細胞がマトリックスから離れて生き残る方法
 

ブロゲステロンはどのようにして遺伝子を沈黙させるのか

2016-07-08 06:06:10 | 
Breast cancer cells: The importance of keeping silent

July 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160707101038.htm


(今回の研究で使用した 免疫蛍光染色された乳癌細胞
緑の蛍光はセリン294がリン酸化されたプロゲステロン受容体を示し、赤の蛍光シグナルは同じプロゲステロン受容体がセリン400でリン酸化されたものを示す

Credit: Francois Le Dily (CRG))

ゲノム調節センター/Centre for Genomic Regulation(CRG)の研究者は、ホルモン依存性の乳癌細胞における抑制メカニズムを初めて記述する
この乳癌細胞で見られる抑制複合体は、癌にとって鍵となる2つの重要なプロセス、つまり細胞増殖と細胞死に関連する遺伝子を沈黙させるsilence
今回の発見は遺伝子をサイレンシングするメカニズムgene-silencing mechanismsに関する新たな知識をもたらし、将来の治療に向けた新しい標的を突き止めるのを助けるだろう


遺伝子のサイレンシングは、遺伝子の活性化と同じくらい重要である
にもかかわらず、ホルモンを介する遺伝子調節についてのこれまでの研究はそのほとんどが特定の遺伝子の活性化に影響する因子の調査に焦点を合わせてきており、遺伝子のサイレンシングにはあまり注意が払われてこなかった
今回ゲノム調節センター(CRG)の研究者は、ホルモン依存性の乳癌細胞では細胞の増殖と細胞死に関する遺伝子に作用して積極的に抑制するためのメカニズムが存在することを発見した

「これまでステロイドホルモンは特定の遺伝子の活性を促進できるという事実に重きが置かれ、ホルモンが遺伝子を抑制したりサイレンシングするためのメカニズムについてはほとんど知られていなかった」
Guillermo Vicentは言う
彼はEMBO Journalで発表された今回の論文の主な著者であり、Miguel Beato博士が率いるクロマチン遺伝子発現グループに所属している
この研究でVicentと彼のチームは、乳癌に由来する細胞系統ではステロイドホルモンのプロゲステロンによって約1000の遺伝子が活性化されるが、同時にそれらとは別の650の遺伝子が抑制されることを明らかにした

「我々は、プロゲステロン受容体に加えて複数のタンパク質から構成される抑制複合体repressor complexを含めた積極的な抑制メカニズムについて初めて記述する
この抑制複合体は、ATPアーゼのBRG1、脱メチル化酵素demethylaseのKDM1、ヒストン脱アセチル化酵素のHDAC1/2、そしてHP1ガンマ/HP1gから構成される」


研究ではDNAとヒストン、そして他のタンパク質の複合体からなるクロマチンの中で起きる細胞の核内でのプロセスに焦点を合わせた

細胞が様々な機能を実行するためには多くのタンパク質が必要であり、それらは遺伝子にコードされている
細胞はタンパク質を作るために、それをコードするDNAに記された指示書の読み取りと翻訳を担当する転写因子を通じて遺伝子の発現をコントロールしなければならない

しかしながら、それは単純なプロセスではない
DNAはクロマチンにパッケージングされて梱包packagedされており、その情報にアクセスするためにはクロマチンを様々な方法で調整しなければならない

※クロマチン: DNAと8分子のヒストンからなるヌクレオソームを最小単位として、そこにそのほかのヒストン分子や非ヒストンタンパク質などが結合したもの。ヌクレオソームの凝縮は様々な程度に変化し、凝縮の程度が高い領域はヘテロクロマチン、そうでない領域はユークロマチンと呼ばれる


CRGの研究者は、プロゲステロン受容体に対して抑制されるべき遺伝子のシグナルを送る分子として、FOXA1というタンパク質を突き止めた
FOXA1は抑制複合体の要素の一つであるBRG1と相互作用し、抑制複合体はクロマチンをさらにコンパクトに凝縮する
凝縮により遺伝子を転写する機構へのアクセスは制限され、遺伝子を読み取ることが不可能になる


「興味深いことに、我々はこの抑制複合体の要素の一つが遺伝子の活性化にも参加することを観察している
そこではクロマチンを再構成してアクセスしやすくする能力を持つ別の複合体の一部を形成する
一方で、抑制的な役割を演じる際には異なる状況でクロマチンを再構成し、遺伝子の活性化の時とは異なる遺伝子のサイレンシングを促進する」

Vicentによると、サイレンシングされる遺伝子は細胞の増殖に関与し、加えて細胞死/アポトーシスに関与する遺伝子もあるという

「我々の研究は培養された癌細胞で実施したものだが、遺伝子のサイレンシングのプロセスについて知ることは将来の乳癌の治療につながる新たな標的を突き止めることを可能にするだろう」


http://dx.doi.org/10.15252/embj.201593260
Hormone induced repression of genes requires BRG1-mediated H1.2 deposition at target promoters.
ホルモンによる遺伝子の抑制には、標的プロモーターでのBRG1を介するヒストンH1.2の付着を必要とする


Abstract
真核細胞の遺伝子調節はクロマチン凝縮compactionの変化と関連し、その凝縮の変化は転写の活性化または抑制と関連するDNAの調節配列regulatory sequenceへのアクセスを調整する
ホルモンによる遺伝子活性化におけるクロマチン再構成のメカニズムについてはよく知られているが、抑制がどのようにして成し遂げられるかはあまり理解されていない

今回我々は乳癌細胞においてリガンドで活性化されたプロゲステロン受容体(PR)は、キナーゼのERK1/2ならびにMSK1と共に転写的に抑制される遺伝子へと直接リクルートされることを報告する
これらの抑制される遺伝子は細胞増殖に関与する

PRは HP1γ-LSD1抑制複合体と結合したBRG1 をリクルートし、
この複合体は、SUV39H2によってトリメチル化されたヒストン3リジン9/H3K9me3に結合したHP1γを介して さらに固定されるanchored

遺伝子活性化の間に観察されるのとは対照的に、抑制されるプロモーターにはBRG1だけがリクルートされ、BAF複合体はリクルートされない
その理由はおそらく、パイオニア因子pioneer factorとしてFOXA1が豊富に局在することによる

BRG1はヒストンH1.2と相互作用することにより遺伝子抑制に参加し、その沈着を促進し、転写開始箇所/transcription start site(TSS)の周囲に位置するヌクレオソームを安定化する

我々の結果はホルモン依存的な転写抑制メカニズムならびにプロゲスチンprogestinによる乳癌細胞の増殖の調節におけるBRG1の新たな役割を明らかにする

※プロゲスチン: 黄体ホルモン効果を示す物質の総称



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幹細胞は白血球とは異なるやり方で血管から出る

2016-07-04 06:06:39 | 
New way out: Researchers show how stem cells exit bloodstream

June 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160628182542.htm

ノースカロライナ州立大学の研究者は、治療として使われる幹細胞の血管から出る方法が以前考えられていたのとは異なることを明らかにした
研究者が『血管外駆出/angiopellosis』と名付けたこのプロセスは、静脈内注入による幹細胞療法についての我々の理解を改善するだけでなく、癌の転移にも関連がある

※diapedesis: 血管外漏出/遊出

※angiopellosis: 血管外駆出と訳しておく。angio「血管」 + pello=「駆る、進ませる(drive)」 + sis「過程」「活動」。心室からの駆出はejection

感染箇所にたどり着く必要がある時、白血球は血管外漏出diapedesisというプロセスにより血管から出る
このプロセスで白血球は形状を変化させ、血管の内壁を形成する内皮細胞の間に割り込むようにして無理やり通り抜ける

血管外漏出のプロセスはよく理解されており、研究者たちは白血球以外の細胞、たとえば治療用の幹細胞や転移する癌細胞も同様の方法で、つまり細胞自身が自らを隙間に押し込んで血管から出ると考えていた
しかし州立大学の分子生物医科学部で助教授のKe Chengが率いる研究グループは、そのような幹細胞のふるまいが白血球とは異なることを発見した

治療用の幹細胞は白血球と同じく、血管から外へ出て特定の組織を標的にする能力を持つ
しかしその正確な方法は十分理解されてはいなかった
そのプロセスを研究するためにChengたちはゼブラフィッシュをモデルとして利用した
この遺伝学的に調整されたゼブラフィッシュの胚は透明で、血管は蛍光で緑色に光るよう目印が付けられていた
研究者はこの胚に、ヒト、ラット、イヌの白血球と心臓幹細胞を赤色の蛍光タンパク質で目印をつけて注入し、
低速度撮影・三次元・光シート顕微鏡画像の分析から、Chengたちはそれらの細胞が血管を出る際の進行progressを追跡した

予想された通り、白血球は血管外漏出diapedesisによって外へ出た
しかしながら、幹細胞が外へ出る時、血管の内部を覆う内皮細胞によって積極的に外へ排出expelされたのである
内皮細胞を覆う膜が幹細胞を囲むように伸びて、幹細胞が中に入るように互いに会合して、血管の外へと押し出していた

「血管外漏出では白血球が積極的に動いて、外に出るために形を変える
血管の内皮細胞は受動的である」

「しかし治療用の幹細胞では正反対が真であり、幹細胞が受動的で、内皮細胞が積極的に動く
内皮細胞は形を変えて幹細胞を囲むだけでなく、血管の外に押し出す
我々はこのプロセスを『血管外駆出angiopellosis』と名付けた
これは細胞が血管を出るためのもう一つの方法を代表する」

さらに、血管外漏出と血管外駆出との間には2つの重要な違いが存在した
1つは、血管外駆出が起きるには数分ではなく数時間が必要ということである
2つ目の違いは、血管外駆出では一度に2つ以上の細胞を排出可能ということである

「血管外駆出は細胞が血管外に出るための『グループ・チケット』である」
Chengは言う

「我々は細胞がまとまってクラスターとして通過するのを観察した
そこから我々は当然のようにobviously 、他の種類の細胞、例えば転移する癌細胞もこの効率的な方法を使って血管から出るのかどうかという疑問を抱くに至った
それを止めるとすれば、我々は何をしなければならないのだろうか、と」


http://dx.doi.org/10.1002/stem.2451
Angiopellosis as an Alternative Mechanism of Cell Extravasation.
血管外駆出は細胞遊出のもう一つのメカニズムである

Abstract
幹細胞は静注すると傷ついた組織を目指してhome in移動する能力を持つ
幹細胞が治療効果を発揮するためには、血管壁を通過して組織に入らなければならないが、注入された幹細胞が血管外へ遊出するために利用するメカニズムはいまだ特徴付けられていない

我々は生体顕微鏡ならびに蛍光タンパク質GFPを発現する血管を持つトランスジェニック・ゼブラフィッシュ系統/Tg(fli1a:egpf) を使い、
注入した幹細胞の血管遊出の詳細なプロセスを 白血球 (WBC) と比較しながらin vivoで実証する

白血球は通常の血管外漏出プロセスによって血管外へ出た一方で、
注入された心臓幹細胞ならびに間葉系幹細胞はそれとはまったく異なる方法で血管外へ出た

我々はこのプロセスを血管外駆出/Angio-pello-sisと名付けた
このプロセスは血管外漏出diapedesisという一般的な説に対して代わりとなるメカニズムを代表する



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循環腫瘍細胞は癌幹細胞と上皮間葉転換の性質を持つと推測されるが、血管外への遊出は上皮的な性質が特徴



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5225fce88ef5befc9d605bc6572fa890
循環腫瘍細胞が血管外に遊出して転移するためには、コルタクチンやTks4/Tks5による浸潤突起と、MT1-MMPが必要



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160209140818.htm
癌細胞が血管から出ようとする時、EPHA2という受容体が活性化していると出ることができない



 

乳癌が低酸素を生き残るための新たな経路が発見される

2016-06-24 06:06:00 | 
Breast cancer cells use newfound pathway to survive low oxygen levels in tumors

Potential to render cancer cells less able to cope with hypoxia

June 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160620141305.htm


(Dr. Benjamin Neel speaks with researchers at Perlmutter Cancer Center.)


アメリカとヨーロッパの研究者は、腫瘍内部で見られる酸素不足に癌細胞が対処するのを助けるための新しいシグナル伝達経路を明らかにした
この研究結果は6月20日にNature Cell Biology誌で発表されたもので、研究に参加したのはニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center、カナダ・トロントのプリンセスマーガレットがんセンター、トロント大学、ハーバード・メディカル・スクール、オックスフォード大学の研究者たちである


酸素はヒトのあらゆる細胞が適切に機能するために重要だが、癌細胞は酸素が欠乏していてさえ生き残ることができる
充実性腫瘍solid tumorの多くで見られる急速で異常な細胞増殖に対して血液の供給が追いつかず、腫瘍の中には酸素が少ない部分が生じる
この『低酸素hypoxia』に直面した癌細胞はその遺伝子の発現を変化させ、酸素を使うプロセスの中で最も重要なものを除いてall but遺伝子のスイッチを切る

「我々の研究結果は癌細胞の低酸素への応答の新たな理解をもたらす
このことは、癌細胞から低酸素状態を生き残る能力を奪い去ってから低酸素の環境へと追いやって殺すという将来の治療デザインを可能にすることが期待されるhopefully」
パールマターのディレクター、Benjamin Neel, MD, PhDは言う

Neelのラボの大学院生graduate studentであるRobert Banhを中心とした今回の研究では、プロテインチロシンホスファターゼ1B/protein-tyrosine phosphatase 1B (PTP1B) という酵素から生じたシグナルが、酸素の欠乏した乳癌細胞で酸素を使うプロセスを停止させて生き残れるようにするためにこれまで知られていなかった方法で働くことが明らかにされた


糖尿病と癌とモヤモヤ病
Diabetes to Cancer to Moyamoya Disease

1990年代の前半、Neelたちは腫瘍の増殖を抑制する分子を探し求める中で、PTP1Bの遺伝子を初めて突きとめた
PTP1Bは、分子からリン酸基を取り去ることで増殖のようなプロセスをオンにしたりオフにする酵素グループの代表的なメンバーである

これまでの研究でNeelたちとマギル大学/McGill University(カナダ)のMichel Tremblayは、PTP1Bの機能が特定の癌で増殖に必要であることをマウスの実験で明らかにした(※)
その癌の中にはヒトの乳癌の20パーセントに関与するHer2という癌遺伝子によって引き起こされる乳癌(HER2+乳癌細胞)が含まれていた

※Reference 16
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18236007
"PTP1B and TC-PTP: regulators of transformation and tumorigenesis."

※Reference 41
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17347513
"Protein-tyrosine phosphatase 1B is required for HER2/Neu-induced breast cancer."


さらに最近の研究でRobert BanhとNeelたちは、PTP1Bを持たないヒトHER2+乳癌細胞は通常の培養状態では正常に育つが、低酸素では非常に急速に死ぬことを発見した
それによると、PTP1Bを持たないHER2+乳癌細胞では、癌細胞が低酸素に適応させることが知られる3つのシグナル伝達経路はうまく働いていたという
その経路の1つは有名な低酸素誘導因子(HIF)で、HIFはミトコンドリアによる酸化的リン酸化から酸素を必要としない解糖系へと細胞が酸素を使う方法を切り替えて、ミトコンドリアによる酸素消費を抑制する
しかし、『ミトコンドリア以外の酸素を消費する源』は、PTP1Bを持たない乳癌細胞では適切に抑制されないことをBanhたちは明らかにした

研究チームはさらに、PTP1BがRNF213というタンパク質を調節することによって低酸素での腫瘍の応答をコントロールすることを発見した
ユビキチンE3リガーゼのRNF213は、α-ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ/α-ketoglutarate-dependent dioxygenases (α-KGDDs) による酸素消費を抑制する
α-KGDDは酸素を使う酵素であり、様々な反応を触媒するために酸素とビタミンCと鉄を使う

※α-KGDDs: ALKBH1ALKBH2ALKBH3ALKBH4ALKBH5ALKBH6ALKBH7ALKBH8、ALKBH9(FTO

研究チームがPTP1B経路についての詳細を明らかにし始める過程で、文献の調査からRNF213がもやもや病というまれな病態でも重要であることに気付いた
もやもや病の患者の脳内では異常な血管形成が生じ、動脈がふさがれて痙攣などの発作seizureが起きる

Neelが考えるところではconceivably、もやもや病の症状は血管の細胞での低酸素に対する異常な応答を反映している可能性があり、彼のラボではこの病態の分子的な基礎を理解するための研究が進められている

「我々は癌の研究分野で、細胞がストレスに対して応答するメカニズムを説明するためにまれな疾患の研究が重要になるということを何度も見てきている」
Neelは言う

「我々はこの研究がもやもや病への洞察をもたらし、それが再び癌生物学の研究にフィードバックされることを望んでいる」


http://dx.doi.org/10.1038/ncb3376
PTP1B controls non-mitochondrial oxygen consumption by regulating RNF213 to promote tumour survival during hypoxia.
PTP1BはRNF213を調節することにより非ミトコンドリア酸素消費を制御し、低酸素中の腫瘍の生存を促進する

Abstract
もやもや病の原因遺伝子産物であるRNF213はユビキチンE3リガーゼであり、HER2+乳癌細胞ではPTP1Bによって負の調節を受ける



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ce587959b3b5c648a5587f04ed677dac
低酸素になるとHIFはALKBH5遺伝子のスイッチを入れ、増加したALKBH5はNANOGというmRNAのメチル基を取り除く
メチル化が低下したNANOGのmRNAは破壊されなくなり、乳癌の癌幹細胞の数は増加する
 

p53の調節と核小体の完全性

2016-06-08 06:06:48 | 
Aspects of the regulation of the anti-tumor protein p53

June 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160606103754.htm

ブリュッセル自由大学のDenis Lafontaine教授が率いるRNA分子生物学研究室は、抗腫瘍タンパク質のp53の調節において必須の側面aspectを明らかにした

p53は癌細胞を殺すことにより我々を守っており、『良い』タンパク質であると考えられている

通常の細胞ではp53が常に分解され、p53は欠乏している
癌細胞でp53は安定化して分解されなくなり、増加したp53が細胞死につながる

p53のレベルは様々な方法で調節されているが、p53を上方調節する重要な因子のいくつかはリボソーム内に存在する
リボソームは全ての生物の全てのタンパク質を合成する必須の細胞ナノマシンである
リボソームタンパク質は『p53を分解するタンパク質』を捕えて隔離し、それによりp53の分解を妨害して、p53が分解されないようにする

我々の細胞の中心には核小体/nucleolusと呼ばれる重要な工場が存在し、そこでリボソームは合成されている
数十年もの間、核小体の外観/性質aspectは細胞の健康状態を示す良い指標であると考えられてきた
細胞がストレスを受けるか疾患になると、核小体の形状、サイズ、そして数は、大きく変化する
核小体の異常は、特に癌細胞やウイルス感染細胞で顕著notably appearである

現在のところ、癌の病理学者は核小体のバイオマーカーとしての潜在性を利用していないが、その理由は日常的な臨床プロトコルで実行implementationできるぐらいしっかりrobustとした信頼できる定量的なツールが存在しないためである

Denis Lafontaine教授は言う
「我々の目的には2つの要素twofoldがある
一つは、基本的な生物学的疑問に答えたかったというものだ
『核小体の完全性integrityを支配する原理原則principleは何なのか?』
我々は核小体の構造の維持において細胞のどの構成要素が重要なのかに特に興味を抱いたnotably wonder」

核小体がイタリアの科学者のFontanaによって1774年に発見されて以来、これらの基本的な疑問は誰も答えられていない
この疑問に対処すべく、Lafontaineのラボはハイスループットなスクリーニング・プラットフォームを構築した
これはロボット化した顕微鏡により何千という細胞を短時間で調べて形態と構造morphologyの詳細intimate detailをチェックし、テーラーメイドなコンピュータ・アルゴリズムに報告するというものである

概念実証proof of conceptとして、Lafontaineのラボはリボソームタンパク質の一つを持たない核小体に何が起きるのかに焦点を当てた

「これはミカドを遊ぶようなものだ」

※Mikado: 積み上げた棒を動かさずに1本ずつ抜き取る遊び

Denis Lafontaineは言う

「我々はリボソームタンパク質をそれぞれ一つずつ抜き取り、ロボットとソフトウェアに問う
『核小体の構造に影響はあったかい?』と」

Lafontaine教授は続ける
「もう一方の要素として、核小体の異常を定量的quantitivelyかつ定性的qualitativelyに見分けるための強力なコンピュータ・コードを我々は開発したかった
言い換えると、我々は健康な細胞とそうでない異常な細胞で核小体がどのように見えるのかをはっきりとunequivocally伝えるtellことができるようにしたかった
なぜかと言われれば、それは彼らが持っていないツールを臨床家に提供することを我々が目指したからだ」

ルーヴァン・カトリック大学 (ICTEAM-ELEN) のChristophe De Vleeschouwer教授と協力して、Lafontaineのラボは革新的な指標indexを開発した
その名を『核小体崩壊指標/index of nucleolar disruption』といい、略して『iNo score』と呼ぶ
このスコアは核小体の構造が損傷を受けたかどうか、そしてもし損傷していたらそれがどれぐらい重度なのかについての統計的に確認された情報を提供する

Lafontaine教授は次のように結論づける
「我々の研究の主要な結論は、80のリボソームタンパク質の中で核小体の構造を維持するために必要なのはほんの2つか3つに過ぎないということだ
そして本当に愕然astoundとさせる結果は、核小体の構造に最も必要なリボソームタンパク質はまさにp53レベルの調節に重要なリボソームタンパク質だということである
これはまったく予想されていなかった結果で、我々が期待したものをはるかに越えていた
基礎研究は常に我々を驚かせ続けるものだ」

今回の研究は生物医学的な研究への応用として重要であり、iNoスコアは臨床生物学で利用される潜在性を持っている


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms11390
Involvement of human ribosomal proteins in nucleolar structure and p53-dependent nucleolar stress.
核小体構造ならびにp53依存的な核小体ストレスにおけるヒトリボソームタンパク質の関与

Abstract
核小体は強力な疾患バイオマーカーであり、癌治療の標的である

リボソームの生合成は核小体で始まり、ほとんどのリボソーム (r-) タンパク質/ribosomal (r-) proteinsは前駆体rRNAへと組み立てられる

今回我々は、ヒトの80個のr-タンパク質それぞれを欠乏させると核小体の構造にどのように影響するのかを体系的systematicallyに調査し、
加えてプレ-rRNAのプロセシング、成熟したrRNAの集積、p53の安定状態レベルに対する影響も調べた

我々が開発した定性的かつ定量的に核小体の形態/構造morphologyの変化を正常なものと識別するための画像処理プログラムを使った分析の結果、
特にuL5 (以前formerlyはRPL11と呼ばれていた) と uL18 (RPL5) が核小体の完全性に最も強く寄与することを我々は発見した
それらは5S rRNAと共に、組み立て後期の60Sサブユニットの中央隆起central protuberanceを形成し、
Hdm2を捕らえることでp53を安定させる因子として働く

他にp53の恒常性に寄与する主な因子としては、厳密に後期に組み立てられるstrictly late-assembling大サブユニットのr-タンパク質もそうであり、これも核小体構造に必要である

核小体の構造維持ならびにp53安定状態レベルの維持に特に寄与するr-タンパク質を明らかにしたことは、細胞と癌生物学の基礎的な側面への洞察をもたらす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/fee0262154c9e36d6e756c6d68235371
核小体低分子RNA/small nucleolar RNA(SNORA)のSNORA42は結腸直腸癌の進行を予測する
 


脂肪を蓄積した癌は悪性化する

2016-06-04 06:06:52 | 
Cancer cells become more aggressive from fat storage

June 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160602083554.htm


(The cell images represent cancer cells where the cell nuclei are depicted in light blue and the fat droplets in red. Photo: Belting's Research Group

Published: 02/06/2016)

全ての癌細胞が等しく悪性ではないことが確認されており、ほとんどは放射線療法や化学療法で無力化することが可能である

ランド大学(スウェーデン)の研究者は、癌細胞の中には脂肪滴を蓄積するものがあることを発見した
この脂肪滴は癌細胞をさらに悪性化させ、転移する能力を増加させるようである


腫瘍の内部は敵対的な環境である
酸素は欠乏し、pHレベルは低く酸性で、栄養素も不足している
そのような環境で生き残る細胞はいわゆる『ストレス』を受けた状態であり、より悪性であると考えられている

Mattias Belting教授の研究グループは最近、そのような細胞に化学療法薬を届ける可能性のある方法についての論文を発表した(プレスリリースSciencedaily
そんな彼らは今回、何年もかけて追求してきたもう一つの研究の経過trackから得られた発見について報告する
それはストレス状態の細胞と脂肪細胞の類似性に関するconcernものだ

「腫瘍の内部で生き残るために、ストレス細胞は休止状態に移行する
そのような細胞は放射線療法や化学療法が効かなくなるが、脂肪滴は蓄積し続けることができる
脂肪は後にそれらの癌細胞が休止状態を抜け出して増殖し転移する際には燃料となる」
Mattias Beltingはそのように説明する

癌性腫瘍のそのような細胞はしばらくの間『良い時と悪い時』の間を移行することが知られている
癌細胞の視点から見ると、『良い時』は癌細胞が転移して再発を引き起こす時である

「癌細胞の中で血流に入って転移を形成できるのは非常にわずかな割合に過ぎない
我々の考えでは、最も転移を形成する能力があるのは脂肪細胞に似たような癌細胞である
それらは脂肪滴をエネルギーとして使い細胞膜を構築するか、シグナル物質を作り出すことが可能であり、それらをすべて同時に行うこともできる」
今回Cancer Research誌で発表された論文の筆頭著者でdoctoral studentのJulien Menardは言う

この新たな知識は癌細胞の転移と戦うために使うことができる
癌と関連する死亡のほとんどは転移が原因である

ストレス細胞がどのようにして脂肪の貯蔵を蓄積するのかを知った我々は、それらが余分なエネルギーを獲得するのを防ぐことが可能である
そのような効果を持つ薬剤は既に市場に存在する可能性がある

例えば抗血栓薬anti-thrombotic drugとして知られるヘパリンは血餅blood clotを溶かすだけでなく、
癌細胞による脂肪パーティクル/fat particleの取り込みを減らすこともできる

「数千人の患者の研究から、ヘパリンの投与を受けている癌患者の転帰は投与されていない患者よりも良いことが示されている
ゆえに癌に対するヘパリンの効果を調査するいくつかの臨床研究が既に進行中である
もしこの治療がうまくいくなら、その理由の一部はおそらくストレス細胞が脂肪を蓄えるのを防いだためだろう」


Cancer Research誌で発表された研究には患者のサンプルから撮られた画像が含まれ、
それには脂肪細胞と類似した癌細胞が正確に腫瘍の酸素欠乏領域内、つまり細胞がストレスを受けている場所に位置することが示されている

脂肪と癌との間のつながりは、肥満があるタイプの癌の発症リスクを伴うというよく知られた事実とも一致する
肥満の人々は血液中に脂肪パーティクル/fat particlesが多く、それはストレス状態の癌細胞にとっても利用可能になりうる
加えて、肥満の人々の腫瘍はより悪性になりうることも知られている


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-2831
Metastasis stimulation by hypoxia and acidosis-induced extracellular lipid uptake is mediated by proteoglycan-dependent endocytosis.
低酸素とアシドーシスによって誘発される細胞外脂質の取り込みによる転移の刺激は、プロテオグリカン依存的なエンドサイトーシスによって仲介される

Abstract
低酸素とアシドーシスは腫瘍微小環境に固有のストレス要因であり、それらは腫瘍の悪性度ならびに治療への抵抗性の増大と関連付けられてきた
ストレスによって誘発される癌の進行を促進する適応メカニズムに関する分子は、興味深い治療介入候補を構成する

今回我々は腫瘍細胞の低酸素とアシドーシスへの適応応答におけるヘパラン硫酸プロテオグリカン/heparan sulfate proteoglycans (HSPGs) の新たな役割に関するエビデンスを提供する
それはリポタンパク質の内在化internalizationの増大を通じてであり、結果として脂肪を貯蔵する表現型が生じ、腫瘍形成能が促進される

膠芽腫患者の低酸素と酸性ストレス下の腫瘍と細胞は、脂肪滴/lipid droplet (LD) が詰め込まれたloaded表現型を獲得し、
それらはメジャーなリポタンパク質の全て、つまりHDL、LDL、VLDLのリクルートの増大を示した

LD蓄積を誘発するストレスは、
in vitroでは再酸素添加/reoxygenationの間のスフィロイドspheroids形成能と関連し、
in vivoでは肺転移の能力potentialと関連した

機構的レベルでは、低酸素はHSPGsに対して表面的には影響しなかったものの、
リポタンパク質受容体 (VLDLRとSR-B1) は低酸素によって一時的transientlyに上方調節された

しかしながら、重要な事に、ストレスを介するリポタンパク質の取り込みは完全なHSPG発現に強く依存することを我々は薬理学的・遺伝学的アプローチを使って示す

腫瘍細胞ストレスの状況でのHSPGの機能的な関連は、HSPG依存的なリポタンパク質細胞シグナル伝達の活性化 (ERK/MAPK経路) によって証明される
加えて、LDがloadされた表現型は、HSPGを標的とすることによって無効化reversalされる

我々はHSPGsが腫瘍微小環境の主なストレス要因への適応応答において重要な役割を持つ可能性があると結論する
それは腫瘍細胞の細胞シグナル伝達に対して機能的な結果を伴い、転移の潜在能力metastatic potentialにつながる

※ヘパラン硫酸: N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)またはN-スルホグルコサミン(GlcNS)とグルクロン酸(GlcA)またはL-イズロン酸(IdoA)の繰り返し二糖を骨格とする多糖でそれぞれの糖に様々な組合わせで硫酸基をもち、プロテオグリカンを構成する
アンチトロンビン,線維芽細胞増殖因子(FGF),肝細胞増殖因子(HGF)などと結合し,血液凝固反応や細胞増殖因子によるシグナル伝達に関与する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160420090110.htm

癌細胞の急速な増殖により、腫瘍は低酸素で、低栄養で、低pHになる
そのような敵対的な環境でストレス状態の癌細胞は自発的に死ぬか、または放射線や化学療法で死んでしまうが、環境に適応した癌細胞は生き残り、より悪性で治療に抵抗性である
ランド大学のMattias Beltingたちは、通常の癌細胞と低酸素のストレス細胞の表面に存在する存在する数千ものタンパク質を分析してきた
ストレス細胞ではカベオリン-1が『門番gatekeeper』として働き、ストレス細胞の表面タンパク質を取り込ませないようにしていた
Mattiasたちは『門番』を効率的に通過して細胞内に輸送されることが可能な ストレス細胞上の約30の表面タンパク質を同定し、その内の1つに対して抗体と細胞毒を組み合わせて『ミサイル』としてストレス細胞だけに打ち込むことに成功した

http://dx.doi.org/10.1038/ncomms11371
Hypoxia regulates global membrane protein endocytosis through caveolin-1 in cancer cells.
低酸素は癌細胞の膜タンパク質のエンドサイトーシスをカベオリン-1を通じて全体的に調節する

低酸素によるストレス状態の細胞は表面の抗原を取り込まなくなるが、これはHIF依存的であり、カベオリン-1を介して阻害される
具体的には、ダイナミン依存的な膜ラフトのエンドサイトーシスが、カベオリン-1によって阻害される
低酸素のようなストレスを受けた癌細胞ではカベオリン-1が過剰発現され、タンパク質の取り込みinternalizationが阻害される



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参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

BRCA1がDNA修復で果たす役割を説明する

2016-06-03 06:06:09 | 
Research explains the role of the gene BRCA1 in DNA repair

May 30, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160530115531.htm

バーミンガム大学の科学者たちは、BRCA1という遺伝子が果たす役割の理解へと一歩近づいた
この遺伝子の変化は乳癌と卵巣癌を発症するリスクの高さと関連する

Nature Structural and Molecular Biology誌で発表された今回の研究は、BRCA1がどのようにしてユビキチンのタンパク質への結合を促進し、DNA修復でどのような重要な役割を果たすのかを説明する
この結果はさらなる研究によって確認される必要はあるものの、乳癌と卵巣癌のリスクが高いBRCA1の特定の遺伝子変異を持つ患者が明らかになる可能性がある


BRCA1にはユビキチンを他のタンパク質へと結合するE3ユビキチンリガーゼとしての作用があり、そしてユビキチンは体内の様々なプロセスを調節するのを助ける
しかしながら、DNA修復におけるユビキチンの重要性についてはほとんど知られていなかった

今回の新しい研究では、BRCA1によるユビキチンの結合は相同組換え/homologous recombinationという『間違いがない/error-free』DNA修復に必要であることが明らかにされた
このDNA修復がない細胞は突然変異を生じて癌を発症することが知られており、この研究でも BRCA1ユビキチンリガーゼ活性のない細胞は 修復に相同組換えの必要なタイプのDNA損傷に感受性であることが判明した


筆頭著者のJo Morris博士(バーミンガム大学)は言う
「BRCA1の喪失は乳癌のリスクの高さと関連することが知られているため、この遺伝子の理解に正面から取り組むget to grips with understandingことは乳癌研究の大きな目標である
我々の研究は、なぜいくつかの癌になりやすい突然変異がBRCA1遺伝子の『前部front part』に見られるのかについて説明するかもしれない
そこはユビキチンリガーゼとして機能するために必要な部分だ」

研究チームはBRCA1がどのようにしてユビキチンを結合する役割ubiquitin attachment roleを実行するのかを明らかにしようと調査し、そしてパートナーとなるタンパク質のBARD1の一部分に依存することを発見した
研究者たちはBRCA1タンパク質には手を付けずにuntouched、BARD1だけを変化させることで、BRCA1のユビキチン結合機能attachment functionを明らかにすることに成功し、それがDNA損傷への細胞の応答と適切な修復に必要であることを示した


Morris博士は次のように付け加えた
「BRCA1がDNA修復においていくつかの独立した機能を持つという我々の発見は、実際の治療に関係してくる
臨床家は現在、BRCA1の発現が低いか全く持たない乳癌患者がPARP阻害剤オラパリブOlaparibのような治療薬に抵抗するようになる可能性を心配している
我々のデータは、BRCA1を欠く癌細胞が1つ以上の『アキレスの踵』を持つことを示す
つまり癌を標的とする多くの方法が存在すると考えられ、腫瘍が治療に抵抗するようになるのを様々なやり方で妨げることが可能である」


http://dx.doi.org/10.1038/nsmb.3236
Human BRCA1–BARD1 ubiquitin ligase activity counteracts chromatin barriers to DNA resection.
ヒトのBRCA1–BARD1ユビキチンリガーゼ活性は、DNA切除に対するクロマチンによる障害を相殺する

Abstract
DNA二本鎖切断の修復において53BP1とBRCA1は反対の働きをして『経路の選択/pathway choice』に影響する

※経路の選択: 相同組換えか非相同末端結合かの選択

53BP1はDNA切除と相同組換えに対して阻害的に影響するが、BRCA1はそれを相殺する(DNA切除と相同組換えを促進する)
しかしそれがどのような作用によるのかは知られていない

今回我々はE2ユビキチンからのユビキチン転移transferを刺激するprimeために必要なBRCA1-BARD1の箇所を明らかにすると共に、
損傷したクロマチン上に存在する53BP1を移動させるrepositionためにはBRCA1-BARD1のユビキチンリガーゼ活性が必要であることを実証する

※ユビキチンは、活性化酵素/activating enzyme(E1)、転移酵素/conjugating enzyme(E2)、連結酵素/ubiquitin ligase(E3)によって基質タンパク質に結合される。BRCA1-BARD1はE3リガーゼ活性を持つ

我々はBRCA1–BARD1によるヒストンH2Aユビキチン化を確認し、
BARD1欠損細胞においてもH2A-ユビキチン融合タンパク質がDNA切除と修復を促進することを実証する

相同組換えにおいてBRCA1–BARD1が機能するためには、クロマチンを再構成するSMARCAD1が必要である

ヒストンH2A-ユビキチンへのSMARCAD1の結合、SMARCAD1の損傷箇所への最適な局在化、SMARCAD1のDNA修復における活性には、ユビキチンと結合するCUEドメインが必要である

SMARCAD1は53BP1を移動させるrepositionために必要であり、
オラパリブolaparib抵抗性またはカンプトテシンcamptothecin抵抗性におけるSMARCAD1の必要性は、53BP1の喪失によって軽減される

したがって、BRCA1–BARD1のリガーゼ活性とその後のSMARCAD1依存的なクロマチン再構成は、DNA修復の重要な調節因子である


http://www.nature.com/nsmb/journal/vaop/ncurrent/fig_tab/nsmb.3236_F8.html
Figure 8: Proposed model for the BRCA1–BARD1 Ub ligase in promoting resection at DSB-damaged chromatin.
二本鎖切断により損傷したクロマチンの切除の促進において、BRCA1–BARD1によるユビキチンリガーゼが果たす役割についての提案されるモデル

※Me: メチル化、P: リン酸化
※MRN: MRE11ヌクレアーゼ、RAD50、NBS1からなる複合体

(1) BRCA1–BARD1活性が不在の状態では、CtIP-Mre11に依存的な方法で限定的な切除が起きる
(2) BRCA1–BARD1に依存的なヒストンH2Aユビキチン修飾(K127)は、損傷に近いヌクレオソームとSMARCAD1との間の相互作用を促進する
(3) SMARCAD1の活性はヌクレオソームを移動させるrepositionか立ち退かせevict nucleosomes、53BP1とそのエフェクタータンパク質を移動させるmove
それにより53BP1によって仲介されるDNA切除の阻害から解放される
(4) DNAの長距離の切除long-range resectionが進行可能になる(Exo1,BLM,DNA2)



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/8272
2本鎖DNA切断修復機構において相同組換え経路と非相同末端結合経路の選択はMRE11のもつヌクレアーゼ活性により決定される



関連サイト
https://www.marianna-u.ac.jp/t-oncology/about/index.html
>図2i
>この過程においてBRCA1-BARD1のユビキチンリガーゼ活性が果たす役割はわかっておらず、大きな謎となっています



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141201191301.htm
トリプルネガティブ乳癌の14.6%が、何らかの有害な突然変異deleterious mutationsを持っていて、その内11.2%がBRCA1/2だった
 BRCA1 (8.5%)、BRCA2 (2.7%)
他の15の素因遺伝子においても有害な突然変異が患者の3.7%で検出され、その観察された大部分は相同組換えに関与する遺伝子だった
 PALB2 (1.2%)
 BARD1, RAD51D, RAD51C, BRIP1 (0.3% to 0.5%)
変異を持つTNBC患者は、変異を持たない患者よりも早い年齢でTNBCと診断され (P < .001)、腫瘍のグレードは高かった (P = .01)



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160210135406.htm
卵巣癌患者1915人中の347人 (18%) が、病因的な生殖細胞系列の変異pathogenic germline mutationsを卵巣癌リスクと関連する遺伝子に持っていた
PALB2とBARD1は卵巣癌リスク遺伝子であることが疑われるsuspected
これまでの9つ(BRCA1, BRCA2, BRIP1, RAD51C, RAD51D, MSH2, MLH1, PMS2, MSH6)に加えて総数11になる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160118224253.htm
BRIP1(BRCA1 Interacting Protein C-Terminal Helicase 1)遺伝子の変異は卵巣癌リスク3倍
女性の卵巣癌罹患率は1000人中18人だが、この遺伝子変異があると1000人中58人に上昇する
イギリス人の1000人に1人がこの変異を持つと推定される
BRIP1遺伝子に変異がある女性はより悪性の癌であると診断される可能性が高く、より後期のステージであり、そして年老いてから診断される傾向がある
 

前立腺癌が去勢抵抗性になると代謝が変化する

2016-06-01 06:06:40 | 
Differences in metabolism between androgen-dependent, castration resistant prostate cancer may lead to new therapies

May 26, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160526095533.htm

進行した前立腺癌は一般にアンドロゲンを除去することで治療する
アンドロゲンは前立腺癌の増殖を助ける男性ホルモンである
この治療は最初は効果があるものの、しばしば腫瘍は『去勢抵抗性/castration resistant』という致命的な状態になる

ベイラー医科大学とミシガン大学の研究者は他の研究所とも協力して、去勢抵抗性前立腺癌/castration resistant prostate cancer (CRPC) が特定の代謝的な特徴を持っていることを明らかにした
これは新たな治療法につながる可能性がある
この研究結果はNature Communications誌で発表される

「我々は遺伝子発現とメタボロミクスのデータを統合する革新的なアプローチを用いて、前立腺癌で変化する重要な代謝経路を明らかにした」
ベイラーで分子細胞生物学の教授であり責任著者のArun Sreekumar博士は言う

「これらの代謝経路の中でも特にヘキソサミン生合成経路/hexosamine biosynthetic pathway (HBP) が著しい変化を示した」


研究者たちは、去勢抵抗性の前立腺癌のHBPの活性がアンドロゲン依存性の前立腺癌よりもはるかに低いことを発見した
さらに、HBP活性の低さは腫瘍の成長を促進するようである

「我々がCRPC腫瘍細胞と同様にHBPに関与する遺伝子を実験的にノックダウンすると、その細胞は細胞培養と動物実験の両方で増殖が顕著に増加した」
Sreekumarは言う

「HBP代謝経路の最終産物はUDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)だが、このUDP-GlcNAcをHBPが低下した細胞に与えると増殖は遅くなった」

研究者がラボで培養したCRPC細胞に対して、臨床的に抗アンドロゲン剤として使われるエンザルタミドをUDP-N-アセチルグルコサミンと共に加えると、細胞の増殖はさらに減少した

「この結果は特に注目に値する
なぜなら、我々の使った細胞は基本的にエンザルタミド単独には抵抗するからだ」

これらの結果は、治療に抵抗する腫瘍の代謝的な特徴を研究することが 癌を治療するための新たな標的を発見する可能性をもたらすことを示す
今回の場合、HBPを去勢抵抗性前立腺癌の潜在的な治療標的として明らかにした
アメリカでは年間約3万人がこの病気で死亡している


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms11612
Inhibition of the hexosamine biosynthetic pathway promotes castration-resistant prostate cancer.
HBPの阻害はCRPCを促進する

Abstract
CRPCのドライバとなる正確な分子的な変化は明らかになっていない
今回我々は新たなネットワークベース統合アプローチを使い、CRPCにとって決定的となるHBPにおける異なる変化を示す

HBPの酵素の一つであるグルコサミン-リン酸 N-アセチル基転移酵素/glucosamine-phosphate N-acetyltransferase 1 (GNPNAT1) の発現は、浸潤しない前立腺癌/localized prostate cancer (PCa) と比較してCRPCでは有意に低下していた

CRPC様の細胞で遺伝学的にGNPNAT1を機能喪失loss-of-functionさせたところ、in vitroとin vivoの両方で増殖と悪性度が増加した

これは完全長アンドロゲン受容体/full-length androgen receptor(FL-AR)の細胞ではPI3K-AKT経路の活性化によって仲介され、
AR-V7バリアントを含む細胞では転写因子のspecific protein 1 (SP1) によって発現を調節される炭水化物応答配列結合タンパク質ChREBP)によって仲介されていた

印象的なことに、HBPの代謝産物であるUDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)をCRPC様細胞に加えると、in vitroと動物実験の両方で増殖は有意に低下した
UDP-GlcNAcはエンザルタミドと組み合わせると加法的な効能additive efficacyがあることもin vitroで実証する

これらの観察はCRPCにおいてHBPを標的とする治療的価値を実証する


http://www.nature.com/ncomms/2016/160519/ncomms11612/fig_tab/ncomms11612_F4.html
Figure 4: Therapeutic targeting of HBP in CRPC.


AR-FL
HBP↓→PI3K/AKT↑→AR↑→細胞周期遺伝子→CRPC進行

AR-V7
HBP↓→SP1↑→ChREBP↑→細胞周期遺伝子→CRPC進行



<コメント>
去勢抵抗性になる前の前立腺癌細胞では、HBP経路は上昇し、UDP-GlcNAcも増えている

>Further, increased activity of HBP in PCa was confirmed in 15 matched tumour–benign pairs by measuring the product to substrate ratio for the reaction carried out by GNPNAT1 (N-acetylglucosamine-6-P to glucosamine-6-P; Fig. 1e) and levels of UDP-GlcNAc (Supplementary Fig. 2E), the end product of HBP.

>Tissue microarray analysis further confirmed significantly higher expression of both GNPNAT1 and UAP1 in PCa compared with Ben, whereas, interestingly, their expression was significantly lower in sites of lymph node metastasis and CRPC tissues compared with localized PCa (Fig. 1f,g and Supplementary Fig. 3A).

HBPが上昇している状態の前立腺癌にはエンザルタミドが有効
それと同じようにHBPの産物を増やしてやると、CRPCでもエンザルタミドが有効になるということらしい

 

癌への防御を複数同時に回復する

2016-05-31 06:06:02 | 
Taking control of key protein stifles cancer spread in mice

May 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160520101003.htm


(4匹のマウスの肺は全て癌に曝露したが、右の2つはタンパク質経路の特定の1つを刺激する一方でもう1つの経路は止めるように介入した
左の2つには何の介入もしなかった

Credit: Ma, et. al./Brown University)

癌が転移するためには、血流へと出発した癌細胞が生き残ることを許してくれる組織を見つけなければならない
しかし癌細胞は単に『見に行く』だけではなく、積極的に転移の準備をさせる場合があり、
例えば人体の防御を抑制するタンパク質を勝手に使うco-opt
ブラウン大学の科学者による新たな研究では、そのタンパク質の制御を取り返すwrest backことによりマウスの肺で防御の多くを回復し、癌の転移を寄せつけなかったstave offことを報告する

「癌は宿主の抗腫瘍応答を取り込むco-optか回避する能力を持つことが知られている」
Jack A. Elias博士は言う
彼はブラウン大学の内科学・生物科学/medicine and biological sciencesの学部長deanであり、Scientific Reports誌に発表された研究の責任著者でもある

見たところ、癌によって取り込まれるようになる重要なタンパク質は『キチナーゼ3様1/Chitinase 3-like-1 (CHI3L1) 』である
CHI3L1は多くの生物で感染と戦うのを助け、組織の治癒を刺激する役割を持つタンパク質だが、このタンパク質は間違った方向に行きやすく、様々な疾患の発症の一因となる
例えば特発性肺線維症/idiopathic pulmonary fibrosis(IPF)のようなヒトの疾患でCHI3L1は強すぎる反応を開始させて肺の損傷scarringにつながり、喘息のような疾患では有害な免疫応答を持続させる
ヒトはYKL-40と呼ばれるCHI3L1の直接的な類似バージョンを持ち、癌患者ではその高い発現が進行した癌の転移ならびに予後の悪さと強く相関する

※YKL-40: N末端チロシンリジンロイシン-40kDaの略。CHI3L1とYKL-40は同じ(またはCHI3L1は遺伝子名)と思われる(WikipediaGenecards


Eliasを中心とするブラウン大学とエール大学のチームは2014年の研究で、組織が癌の転移を受け入れreceptiveるようにする際にCHI3L1が中心的な役割を果たすことを明らかにした

「それは非常に根本的な経路であるように思われる」
肺の内科学と免疫学の専門家のEliasは言う

「この病気で、あの病気で、という特定の疾患だけに関係する経路ではない
人体が応答する根本的な経路であり、結果として多くの異なる結果が生じる」

今回の研究で科学者たちはCHI3L1がどのようにして癌の転移を促進するのかを説明するだけでなく、特に広範な影響を持つ新たな介入をテストした

科学者はマウスにメラノーマ細胞と乳癌細胞を曝露させ、それから8日間にわたって、異なるマウスに異なる回数、CHI3L1の発現を抑制させた
そのように処置したマウスでは腫瘍と戦うために持っている複数のメカニズムが回復し、肺が癌を受け入れるhospitableようになるのが阻止された
実験的な対照群として処置されなかったままのマウスは、癌細胞への曝露後に急速に肺に癌を生じた


防御を回復する
Restoring defenses

複数の実験によりこのマウスの肺で何が起きているのかについての詳細が明らかにされた

研究者は癌がCHI3L1を刺激することによって転移に寄与する経路と、
CHI3L1と癌の転移を抑制する新規の経路を同定し、
そして腫瘍がこの抗腫瘍応答を回避するやり方も明らかにした

例えば癌が存在するとセマフォリン7Aというタンパク質がCHI3L1の発現を誘発し、NK細胞やPTENなど多くの抗腫瘍応答を鈍らせるという

研究ではRIG様ヘリカーゼ/RIG-like helicase (RLH) という抗ウイルス免疫応答経路の活性化も新たに実証された
RLH経路は癌細胞のCHI3L1を刺激する能力を無効化counteractし、CHI3L1が仲介する腫瘍誘発効果も低下させる

さらに、研究者は癌細胞がNLRX1という別のタンパク質を刺激することも実証した
NLRX1はRLH応答を抑制し、腫瘍細胞がCHI3L1を誘導できるようにする

「したがって、」
Eliasは言う
「癌細胞はCHI3L1を刺激する一方で、同時にNLRX1を使ってRLH経路によるCHI3L1阻害効果をも抑制するのである」


Eliasのチームがテストした新たな介入ではPoly(I:C) と呼ばれるRNAのような分子を使い、RLH経路を刺激することによりRLH免疫を増進bolsterさせた
マウスはこの介入でCHI3L1の産生が減少し、癌を増大する応答は抑制された
処置しなかったマウスは2週間以内に肺に癌を生じたが、Poly(I:C) を与えられたマウスは癌を寄せ付けなかったfend off

特に目立つ影響として、NK細胞とNK細胞を呼び寄せるタンパク質の増加、LIMK2とPTENというタンパク質の産生の刺激、BrafとNlrx1というタンパク質の抑制が観察された

※LIMK2はcofilinをリン酸化して不活性化するキナーゼ。論文Discussionには「cofilinは細胞分裂・走化性chemotaxis・腫瘍転移で中心的な役割を演じるアクチン解重合因子depolymerizing factor(ADF)である(48」とある

最近科学者たちはこれらの個々のタンパク質のいくつかに焦点を当てることにより癌と戦う薬剤の開発を試みてきているが、多数を同時に標的とすることはなかった

「我々がこの論文で示したのはRLHというまったく新しい経路が存在し、RLH経路は実際にCHI3L1の産生を制御しうるということである」
Eliasは言う

「そしてCHI3L1が作られるのを制御できれば、これらの経路のそれぞれと癌の転移モデルが制御可能である」

研究チームは複数の実験で、処置したマウスとしなかったマウスを単純に比較しただけではなく、しばしばCHI3L1のような特定のタンパク質を産生する遺伝子を欠損させるように設計した対照群となるマウスも使った
これらのステップは、調査する特定のタンパク質が 疑わしいと考えられる重要な役割を本当に演じているかどうかをテストするのを助けたのである

癌のマウスの肺への転移の抑制に関して、CHI3L1に対してRLHを優勢にすることが重要であるmeaningfulことが証明されたことは明らかである

「RLH経路の刺激が、一つではなく多数の抗腫瘍応答を増大させるというのはエキサイティングだ」
Eliasは言う

「もしRLH経路を作動agonizeさせることができれば、癌において本当に優れた効果を発揮するだろう」


http://dx.doi.org/10.1038/srep26299
RIG-like Helicase Regulation of Chitinase 3-like 1 Axis and Pulmonary Metastasis.

Abstract
Chi3l1は様々な癌によって誘導され、転移の発生において重要な役割を演じ、予後の悪さの前兆となるportend
しかしながら、これらの応答を仲介するためにChi3l1が使うメカニズム、そしてChi3l1によって誘導される腫瘍応答を制御する経路はほとんど理解されていない

我々はChi3l1が腫瘍進行を助長fosterするために使うメカニズム、ならびにRIG-like helicase (RLH) という自然免疫応答がChi3l1上昇と肺への転移を制御する能力を特徴付けた

今回我々は、RLH活性化はMAVS依存的な方法で
腫瘍によるChi3l1の誘導とその受容体であるIL-13Rα2の発現、そして肺への転移を抑制する一方で、
NK細胞の集積accumulationと活性化を回復し、
IFN-α/IFN-β、chemerinとその受容体ChemR23、リン酸化cofilinとそのキナーゼLIMK2、PTENの発現を増大させ、
BRAFとNLRX1を阻害することを実証する

Chi3l1が多方面に関与multifacetedして腫瘍の進行と転移を免疫的に刺激し、その生成elaborationと組織への影響はRLH自然免疫応答によって阻害されることをこの研究は実証する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141222111651.htm

CHI3L1はメラノーマを肺に転移しやすくする
セマフォリン7aはインテグリンβ1またはプレキシンC1と相互作用することによってCHI3L1を調節する
インテグリンβ1はCHI3L1を促進し、プレキシンC1はCHI3L1を抑制する
CHI3L1の受容体であるIL-13Rα2が欠損してもメラノーマの肺転移は減少した



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160414081524.htm
細胞質中のウイルスDNAはSTINGを刺激し、STINGはTBK1と相互作用することにより自然免疫応答を引き起こす
NLRX1はその相互作用を阻害することでHIVの感染を促進する
癌のPD-L1やCTLA-4と同様に、NLRX1を阻害することでHIV免疫を強化できるかもしれない



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/e8310b5188771c5641bb7f9210909050
膠芽腫の幹細胞にウサギウイルス/ミクソーマウイルスが有効



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https://www.sciencedaily.com/releases/2013/06/130620100739.htm
ミクソーマウイルスとラパマイシンの組み合わせは多形膠芽腫の癌幹細胞に有効



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141112102511.htm
ミクソーマウイルスは神経膠腫周辺の免疫細胞を呼び寄せてウイルスを貪食させる



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151222113154.htm
ササゲモザイクウイルスが免疫応答を引き起こして腫瘍を排除し転移から保護する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b7a5da24739d4d27c1a5144d12147bf7
制御性T細胞とT細胞の総数を比較して、免疫系が抑制されていると癌リスクが上昇する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/532f5008161c8bf2e3aad801fa7d002d
癌細胞のウイルス防御経路のスイッチを入れることでインターフェロンを分泌させ、免疫細胞を目覚めさせる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3266b03a7ede0094a15e8310a435d9d6
癌細胞にウイルス感染を擬似的に誘導することにより、癌幹細胞を標的にする



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141020104930.htm
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)への感染はアルツハイマーのリスクが2倍



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/9188166d5393c1811979cb5c5591d41f
膵臓癌は初期の段階からエクソソームexosomeを分泌し、それが肝臓のクッパー細胞に取り込まれて遺伝子発現を変化させる
マウスでの膵臓癌モデルではマクロファージ遊走阻害因子(MIF)がエクソソームによって血流に乗り、肝臓に線維形成を誘導する
進行した膵臓癌の患者の血流でもMIFはエクソソームで発現していた
エクソソームのMIFは、肝臓への転移が生じた患者の方が多かった