雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

まくら

2011-10-23 | 日記

 暦のうえでは「霜降」だというのに、街路樹の銀杏の葉がまだ黄葉していない。 銀杏が元気よく黄葉をまくのは、間もないことだろう。

 タイトルの「まくら」は、イエス・ノー枕とかのまくらではない。 落語の「まくら」である。 その昔、ラジオで聞いた若くして亡くなった先代の桂春蝶師匠の噺にはまったことがあった。 

 ある長屋の男が寝ようとしていたら、入り口の戸を「ドンドン」と叩く音がする、何事かと戸を開けてみると、青い顔をした男が「ずぼーッ」と立っていて云うことには、「わいが寝ようとしていたら、ドンドンと戸を叩く音がするねん」 「ふん、それでどうしたんや」 開けてやるとな、青い顔をした男が立っていて。そいつが云いよんねん、俺が寝ようとしていたら、表の戸をドンドンと叩く音がするねん」 「また、ドンドンかいな、それで?」 「開けてやったらな」 「青い顔をした男がたっていたんやろ」 「違うねん、真っ赤な顔をした男が立っていてん」 「あ、そうか、それで?」 「そいつの言うのにはな…」 聞き手の男のってきて「ふん、それでどうしたんや」 「それでな、そいつの言うことにはな」 「ふんふん」 「わい、酔うてんねん」

 この時の落語は、「皿屋敷」だったような、違ったような。 年寄りというのは、ついさっきのことは忘れるくせに、古いことは馬鹿みたいに憶えていたりする。 お菊と青山鉄山の怪談話である。 お菊の美人幽霊が、毎夜井戸からでて来て皿を数えることを知った若い衆たちが、怖いもの見たさに皿屋敷に出かける。 皿を数える「9まい」の声を聞くと幽霊に殺されるというので、「7まい」の声で「わーっ」と逃げ帰る。 なにごともなかったので、また次ぎの夜もでかける。そのうち、人伝に噂を聞いて見物にきた人々が増え過ぎて、「7まい」で逃げ帰ろうとしても人がつかえて帰れない。 見物の人々がパニックになっていると、お菊の幽霊は「8まい、9まい、10まい、11まい…」 「こらーっ、お菊」と、見物客が怒り出す。 お菊の幽霊が言うには「わたい、風邪ひいてまんねん。それで2日分数えといて、あすの晩休みまんねん」

 


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