ねこらい堂  「おやじマニアの日常」

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マカロニ千一夜 3「見てくれはアメリカ製」

2007-11-04 07:02:06 | マカロニ
1960年前半のイタリア娯楽映画界の特徴ですが、
ハリウッドでブームであった古代歴史スペクタクル物、
海賊物などの亜流作品が大量生産されておりました。
いわゆる「剣とサンダル物」と呼ばれる作品群で、
「ヘラクレス」「マチステ」「ゴライアス」などという
筋肉隆々・怪力自慢の正義漢が大活躍する単純明快な作品です。

これらの作品群は、国際マーケットを意識し、
主人公の「ヘラクレス」や「ユリシーズ」は、必ず青い目、
ブロンドのアメリカ人俳優を使い、
あたかもハリウッド製のような創りにしていました。

ヒロインや脇役はもっぱら地元イタリアの大部屋俳優を使っていましたが
無名なのを逆手に取って、アメリカ人風の芸名をつけ、
果ては監督・脚本のスタッフまでがアメリカ人風の名前でクレジットされており

見た目では全くアメリカ映画と区別がつかなくなっておりました。

筋肉派だがハリウッドではピークを過ぎていたミッキー・ハギティ、鳴かず飛ば
ずだったリチャード・ハリソン、ボディビルダー上がりでスカウトされたスティ
ーブ・リーブス、ゴードン・ミッチェルといったところが、これらの作品に出演
していました。

60年代中ばになると、「剣とサンダル物」が飽きられてきて
次にブームとなったのが西部劇です。
本場ハリウッドでは、1960年代を境にして西部劇映画作品の質が低下してき
ます。
50年代は、ジョン・ウェインらを中心とした痛快西部劇が多数製作されました
が、
60年代に入るとネタ切れになり、やたら深刻な作品や、痛快さに欠ける作品が
増え
ハリウッド製西部劇の商品力が落ちてきたのです。

そこに目をつけたのが、機を見るのに敏感なイタリア映画界。
ハリウッド製西部劇から、「開拓者精神」という西部劇の魂を取り払ってしまい

その代わりに「痛快ガン・アクション」 + 「流血残酷趣味」をまぶして完成
させたのが、イタリア製西部劇「マカロニ・ウェスタン」でした。

「剣とサンダル物」の伝統に則り、
主人公は落ち目のハリウッド俳優、キャストからスタッフまで全部アメリカ人変
名を付けアメリカ製に見せかけて国際マーケットに売る。

こうして誕生したのが、マカロニ出世作「荒野の用心棒」でした。
主役の「名無し」を演ずるのは、TVドラマ「ローハイド」が終わった後、ろく
な仕事がなくブラブラしていたクリント・イーストウッド。
敵役は新進気鋭の若手俳優ジャン・マリア・ボロンテが、ジョー・ウェルズ名義
で出演。監督のセルジオ・レオーネがボブ・ロバートソン、音楽のエンニオ・モ
リコーネがダン・サヴィオと名乗って、堂々のハリウッド製もどきで国際マーケ
ットに殴りこみをかけたのでした。


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