長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

2020-01-19 | 映画レビュー(ひ)

 2010年代の終わりと共に多くのシリーズものが完結した2019年。まさに2010年からスタートしたドリームワークス製アニメ『ヒックとドラゴン』3部作も完結である。アカデミー賞、アニー賞の常連であり、メガヒットの人気シリーズだったが日本では冷遇されてきた。第1作は公開半年以上も前から芸人タイアップによる予告が流れ続けて食傷感を誘い、興行的に大コケ。当時、人気だった3D公開もろくに館数が確保される事はなかった。続く第2弾に至っては劇場未公開のソフトスルーである。完結編となる本作は本国に遅れること半年以上経っての劇場公開で、箱は小さい。劇場公開されただけでも良しとすべきか…。

 2019年のアニメ『天気の子』『アナと雪の女王2』が環境問題をテーマとする中、ドラゴンとの友情をテーマとしてきた本作は自ずと“自然との共生”に帰着していく。ドラゴンをアニメ的可愛らしさのデザインにしながら言葉を交わす事のできない存在とし、第1作目では粘り強い演出で主人公ヒックと竜トゥースの間に友情が芽生える過程を丹念に描いてきた。本作ではトゥースと同種の雌“ライトフューリー”が登場、2頭がやがてつがいとなるまでを1作目同様の胆力で描いており、この場面はほとんどネイチャードキュメンタリーの様相である。
 2頭が夜空に舞い上がる竜の舞踏は奇しくも本作の全米公開2か月後にオンエアされた『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8第3話と瓜二つ。同時にスタートしたこの2作によって10年代はドラゴンの描写がやり尽くされた感があった(しかも本作のボイスキャストにはジョン・スノウことキット・ハリントンが!)。

 ストーリーラインが前作と大差なく、場当たり的なプロットが惜しい。いわゆる悪役を排した『アナと雪の女王2』の新しさには叶わず、10年代の終わりと共にアニメ界の王者も代替わりしたのかも知れない。ドラゴンから自立するヒックの成長、そして「地震や噴火が起きた時はドラゴンからの合図」という言葉が胸に残った。このメッセージを胸に僕らは次の10年へ飛び立たなくてはならない。


『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』19・米
監督 ディーン・デュボア
出演 ジェイ・バルチェル、アメリカ・フェレーラ、F・マーレー・エイブラハム、クリストファー・ミンツ=ブラッセ、ジョナ・ヒル、クレイグ・ファーガソン、クリステン・ウィグ、キット・ハリントン、ジェラルド・バトラー、ケイト・ブランシェット

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