夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

高知での境界問題、新聞の記事がおかしい

2010年12月17日 | 社会問題
「1世紀勘違い」
「境界線変更へ」
 この見出しは高知県で町の境界が間違っていたとの東京新聞の16日の記事の見出しである。事は四万十町と中土佐町で起きている。
 だから私はそうか、百年の間境界線が間違っていて、それを変更するんだな、と思った。しかし実はそうではなかった。まずは記事を読んで欲しい。(漢数字表記は横組になるので洋数字に変えてある)

 7人は長らく中土佐町民として暮らし、住民税も中土佐町に納めていた。ところが、同町が2008年に実施した地籍調査で、実際の境界は考えられていたより西側に入り組んでいて、7人の住む約200アール分は実際に四万十町に属することが明らかになった。
 これを受け、7人はことし5月までに全員が四万十町に住民登録をし直した。だが「これまでの地域生活を変えたくない」などと町側に要望。両町議会じ、以前考えられていた通りに境界を変更する議案を9月に可決、県議会も12月下旬に可決する運びだ。来年夏には国が新しい境界とし認める見通し。

   中土佐町   __________ 
    ___________∥
    | ●住宅  ∥ 四万十町
    |___________∥__________ 
          
 上の図は使っているエディターソフトでは表現の仕方が無いので、おかしな図になっているが、御勘弁を。∥から右が「将来認められる境界」、その左側の___が「現在の境界」。記事の図では四つある●は一つで代表した。
 長い事、中土佐町だと思っていた地域が実は四万十町だった事が2008年に分かった。そこで7人は四万十町の住民になった。けれども以前の中土佐町住民に戻りたいとの要望が通り、境界は以前の通りになる、との記事なのである。
 だから「1世紀勘違い」は2008年に訂正された。そしてその時点では「境界線変更へ」となった。そうした意味では上記の見出しは正しい。
 しかし、現在はそうではない。「1世紀勘違い」の元の通りに戻す訳だから、「1世紀勘違いの境界線、元のままに」の見出しが正しい事になる。「1世紀勘違い」を生かすなら、「境界線元のままに」になる。「境界線元のままに変更」でも良い。つまり、「元のまま」が重要なのである。「境界線変更へ」を生かすなら、「1世紀勘違い、元のままに」になる。やはり「元のまま」が重要になる。

 先に引用した記事の前にはリードのような記事がある。そこには次のようにある。

 行政も住民も気付かなかった百年にも及ぶとみられる勘違いは、解消される見通しだ。

 嘘を言っては困る。百年にも及ぶ勘違いは一旦「解消された」が、再び「元のままに戻る」のである。「解消される見通しだ」ではない。2008年現在「解消される見通しだ」だったが、2010年5月現在では「解消された」のだ。それが2011年夏には「以前通りに境界を変更する事を国が認める見通し」なのである。
 記事も間違っていれば、見出しも間違っている。図も親切とは言えない。「将来認められる境界」は、正しくは「2008年まで勘違いしていた境界で、現在は消失しているが、2011年に再び認められる見通しの境界」である。「現在の境界」は、正しくは「2008年まで勘違いして無かった境界で、現在は存在するが、2011年には再び無くなる境界」である。
 そんな複雑な事を言える訳が無いのは百も承知。しかし「将来認められる境界」「現在の境界」とだけでは、記事の間違いと見出しの間違いと相まって、非常に分かりにくいと私は思う。
 ついでに、記事の「実際の境界は考えられていたより西側に入り組んでいて」は「はいり込んでいて」の間違いではないのか。「入り組む」とは「物事がからみあったり、複雑に構成されていたりする」である。実際の境界は私が上に書いたような単純な物ではなく、複雑な形をしているが、「からみあった複雑さ」などは無いのである。
 記事がどこかで何か「勘違い」しているか、単に頭が悪いのか。もしも私の読み方が悪く、私の頭が悪いのであれば、謝るしか無いが、これ以外の読み方を私は出来ない。