俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

主観的時間

2015-05-05 10:11:02 | Weblog
 ボクシングの「世紀の一戦」はメイウェザー選手がパッキャオ選手に判定勝ちした。メイウェザーの強みは驚異的なスピードだ。単に動作が早いだけではなく動体視力も優れている。多分、主観的時間が早く経過するのだろう。
 主観的時間が早い、とは分かりにくい表現だと思う。漫画の「サイボーグ009」と「エイトマン」についてイメージして欲しい。どちらも超高速で動く能力を備えており、彼らが超高速で動く時、何が起こるか?周囲の動きが殆んど止まって見える。脳の活動速度が百倍になれば、周囲の動きは百分の一になり、自分の動きは百倍になる。最近の漫画であれば「はじめの一歩」に登場する稲垣学というボクサーがその典型例だ。一旦ギアが入れば対戦相手の動作がスローモーションのように見える。
 実は私自身それを実際に体験している。アルバイトでトランポリンの指導員をしていたが、宙返りをする時には時間感覚が変わる。客観的には短時間の動作なのだが、本人には充分な時間に感じられる。だから着地に失敗しそうになってもちゃんと対応できる。
 羽生結弦選手が4回転ジャンプを跳ぶ時、観客にとってはほんの一瞬だから何回転したかさえ分からない。しかし本人はしっかり確認しながら回転しているから演技中に動作を修正することもできる。
 ベーブルースは当時の78回転のレコード盤の文字が読めたそうだ。これは単に動体視力が優れていたのではなく主観的時間を早めることができたのだろう。打撃の神様と呼ばれた川上哲治氏は「ボールが止まって見える」と言ったが、必要な時に主観的時間を早めることができたのだろう。もしいつもボールが止まって見える状態であれば退屈で仕方がなかろう。子供がじっとしていられないのは時間が早いからであり、老人がのんびりしているのは時間が遅いからだろう。
 あるいは崖から落ちて奇跡的に助かった人は、その短い時間に一生を走馬燈のように思い浮かべることが多いそうだ。だからこそ飛降り自殺は恐ろしい。ほんの一瞬の筈の落下が驚くほど長時間と感じることもあり得る。途中で飛降りたことを後悔しても手遅れだし、もしかしたら腕が砕け頭蓋骨が陥没するところをゆっくりと体験せねばならないかも知れない。一瞬の苦痛で総てが片付くと思っていれば大間違いになることもあり得る。

死因

2015-05-05 09:35:10 | Weblog
 あるご利益宗教は、信仰することで災害が軽減されると謳っているそうだ。例えば交通事故に遭っても、本来なら死ぬ筈の事故が半身不随で済み、半身不随の筈の事故が骨折で済むと言う。こんな馬鹿げた宗教を信じる人のお目出たさに呆れるが、似たことを厚生労働省が公言している。インフルエンザワクチンを接種すれば発症しにくくなり発症しても軽症で済む、とのことだ。これは全くデータに基づいていないし逆にこれを否定するデータなら沢山ある。
 あるいは降圧剤の効果も疑わしい。200mmHgを超える人であれば多少意味もあろうが、基準値をほんの少し上回る程度の人の場合、薬を飲まない人のほうが健康で長生きできるようだ。自覚症状があればそれを緩和することが目標になるが、検査数値が多少高い程度の人であれば、数値を下げることが自己目的化する。元々自覚症状が無いのだから、高血圧になったのは何らかの支障を克服するために必要な適応だろう。スポーツをすれば呼吸や脈拍が早くなるようなものであって、大半の人にとっては実は適性値だろう。それを無理やり下げるのだから有害であって当然だ。勿論どんな薬にも副作用があるのだからその薬害も確実にあるだろう。厚生労働省の2015年版「食事摂取基準」からコレステロールの摂取制限が撤廃されたことを受けて、1日に動脈硬化学会もコレステロール摂取制限を撤回したが、薬による数値操作の無意味さにもいい加減に気付いて欲しいものだ。
 昨年の日本人の死因は①癌②心疾患③肺炎④脳血管疾患⑤老衰とのことだ。癌の臓器別では①肺②胃③大腸④肝臓⑤膵臓となっている。
 大抵の人は肺炎が死因の3位になっていることに驚くだろう。実はこれは高齢者の誤嚥性肺炎が大半を占める。認知症などの高齢者は嚥下障害を起こして飲食物を肺に入れてしまうことが多い。これが肺炎の原因になる。だから肺炎の増加とは癌の増加と同様、日本人が長寿になった証しと言える。
 癌の中で最多の肺癌死を減らすことは簡単だ。他の病気で死ぬ人が増えれば肺癌で死ぬ人が減る。人は1回しか死ねないのだから統計上ではそういうことになる。肺炎も同じことであり、他の病気で死ぬ人が減ったからこそ高齢者の肺炎が増えたということだ。肺炎を無闇に恐れる必要は無い。