俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

大阪

2015-05-15 10:27:38 | Weblog
 大阪と言えばキタのことだと思っている人が少なくないが、キタの歴史は浅い。キタの中心地の梅田は元々「埋田」と表記されたように田んぼと泥沼を埋め立てた新興地だ。近隣に梅の名所の綱敷天神社があったことから字面の良い「梅田」に改められた。
 梅田が大阪の中心になったのは京都と神戸の中間に位置するからだろう。だからこそ国鉄(現在のJR)がこの地に大阪駅を作ったのだと思う。大阪のもう1つの拠点は難波を中心とするミナミだ。しかしここは真西に進めば大阪湾に出てしまうからキタと比べて交通の要衝にはなりにくかった。それどころかここは元々海だった。日本書紀に拠ると、神武東征において潮流の速い海があり「浪速」と名付けたと記されている。難波の語源は「難破」したからではないし、今のように「軟派」が多かったからでもない。
 地理や歴史に疎い人の中には北野天満宮が梅田にあると思っている人が稀にいる。綱敷天神社との混同だろう。なお橋下市長の出身校の北野高校は淀川を挟んだ対岸の十三(じゅうそう)にありこの「北野」あるいは旧北野村との混同もあるかも知れない。
 大阪は大阪維新の会の牙城だが、かつて全国的に自民党が強かった時代でも大阪では弱くone of themの政党に過ぎなかった。中選挙区制の頃、ある定数5人の選挙区では5党が議席を分け合ったこともある。つまり自民・社会・公明・民社・共産の各党が仲良く1議席ずつ取った。定数5人であればどの党も2議席を取ることは難しかった。定数4人であればどの党が落ちるか大混戦になったものだ。これは大阪の「反中央性」と価値観の多様性のシンボルのように私には思えた。
 全国レベルでは独り勝ちして「この世をば我が世とぞ思」っている自民党だが、今も大阪では弱い。昨年12月の衆院選挙の比例区での得票率を見れば、大阪の自民党が日本一弱いことは明白だ。あの沖縄での25.36%を下回る僅か24.79%で日本一低い。そのせいか人材にも乏しく、中央の自民党とは違って、何にでも反対するしか能の無かった某政党と同様、NOと言うことでしか存在価値を示せない体たらくだ。だからこそ共産党や民主党と連携してまで大阪都構想を潰そうと躍起になっているのだろう。

ゴール

2015-05-15 09:40:33 | Weblog
 ムービング・ゴールポストという言葉は日韓関係で使われることが多い。日韓の問題は1965年の「日韓基本条約」と「日韓請求権協定」で「完全かつ最終的に解決された」筈だ。それなのに延々と「まだだ」と要求し続ける。こんなことでは未来永劫解決しない。
 ゴールを動かさないことは議論のための基本ルールなのにしばしば動かされる。志賀原発における「活断層」も定義が曖昧なまま無内容な議論が続けられている。以前であれば「13~12万年前以降に動き今後再び動く可能性の高い断層」が活断層の定義だったが、2年前に突然「40万年前以降」に変更され、最近では「動く可能性のある断層」であればどれもが活断層扱いだ。「可能性がある」は便利で無責任な言葉だ。「殆んど可能性が無い」とどう使い分けられるのか説明できるだろうか。大体、活断層が無い筈の場所で断層を原因とする地震が起こると「未知の活断層が動いた」と言い逃れするのは無責任過ぎる。これは後出しジャンケンのようなものであり、学者の風上にも置けない厚顔無恥だ。富士山はいつの間にか休火山から活火山に変更されたがそれと同じようにいい加減な基準だ。
 生活習慣病の基準値もデタラメだ。見直される度に基準値が下げられて、今では中高年の日本人の殆んどが生活習慣病の患者にされてしまった。当初の数値を目標にして体質改善を図っていた人にとってはムービング・ゴールポストだ。
 黒と白の間には無数のグレーがある。それを黒と白に分けようとするからこんな馬鹿げたことになる。極めて白に近いグレーであっても「危険性はゼロではない」という魔法の言葉さえ使えば簡単に黒に分類できる。活断層も生活習慣病も、似非学者が恣意的に基準を定めているのが現状だ。
 憲法9条は曲解に曲解を重ねられている。最早、歯止めが掛からない。こんなことになったのはゴールを曖昧にしたからだ。すっかり可動式になってしまったゴールを固定できなかったのは、護憲を標榜する勢力による犯罪だ。彼らのような教条主義者が一字一句も改めさせまいとして憲法を不磨の大典にしようとしたから解釈改憲を許してしまった。玉虫色の文面を曖昧なままで放置せず、その都度適切な修正を加えていればこんな酷いことにはならなかっただろう。妥協は曖昧でも構わないが基準は明確でなければならない。妥協を基準にしてしまえばとんでもない事態を招く。