【中川】有機農業の推進についてお伺いします。9月定例議会で知事から「有機農業の推進に向け、積極的に取り組んでいく」との答弁をいただきました。
いま世界では有機農産物は大きな市場になりつつあります。アメリカでは5兆5000億円、EUでは4兆1000億円、中国でも9000億円の取引があると報道されております。
この2月17日、農林水産省は「SDGs生物多様性シンポジウム、未来をつくる食農ビジネス」を開催し、長野県立大学がサテライト会場となっていて、私も参加しましたが、学生を含めて100人の方が聴講をいたしました。ちょっと音声が悪くて聞き取れないところもありましたが、花粉媒介昆虫や土壌生物等、食料と農業における生物多様性は、食料安全保障だけでなく、持続可能な開発目標の達成において不可決であるが、生物多様性は遺伝子、タネ、生態系といずれのレベルでも減少を続けており、食料安全保障と持続可能な社会の実現が危ぶまれていることや有機農業は化学的に合成された肥料や農薬を使用しないことや有機物の施用による土づくりを行うことから、生物多様性を保全するとともに、農地等への炭素貯留を促進すること等が報告されておりました。生物多様性の観点からも有機農業の推進が必要だと思われます。
また、2月4日に、県会議員や市町村議員ら50人以上が参加して、「信州オーガニック議員連盟」が結成されました。規約では世界的な課題であるSDGs、持続可能な開発目標の達成と市民の健康長寿及び子どもたちの健やかな成長を願い、豊かな長野県の自然環境のもとで育てられ、遺伝子操作技術や化学物質等を用いない安全な農産物や食品を安心して食べることができる環境の実現を目指して、ゆるやかなネットワークを構成し、政策提言と社会的な活動を推進することをもって、市民の生活向上と地域の持続的な発展に寄与することを目的とすること等が確認されました。
マスコミ各社でも取りあげられ、日本農業新聞で、当日講演された愛媛県今治市の取組みについても報道されていました。今治市においては食と農のまちづくり条例が作られ、地産地消の推進、食育の推進、有機農業の推進を行ってきました。現在、給食の米はぜんぶ地元の特別栽培米を使っています。パン用小麦も米国産から地元産に切り替えを進め、小麦の作付けは現在23haとなり、給食用パンで今治産小麦の使用割合は80%に達しているということです。
豆腐も米国産から今治市産と特別栽培ダイズに切り換えました。地産地消と食の安全意識が地域に浸透し、地場産食材の給食を食べて育った世代は地元産を重視して購入するように変わって来ているということです。スーパーで今治市産の特別栽培、有機栽培の野菜コーナーができたり、地産地消をアピールするホテルや食堂が増えたりする等、生産と消費の経済的好循環を産んでいるとのお話でした。
そこで、農政部長に有機農業で関連してご質問をいたします。まず、新年度予算における有機農業推進の取組み方針をお伺いいたします。
【農政部長】新年度予算における有機農業の推進の取組み方針についてでございます。有機農業の推進につきましては、生産拡大、関係者のネットワークの強化、有機農業への理解の醸成の大きく三本の柱で取組みを進めているところであります。このため、新年度予算におきましては、生産拡大に向けては新規就農者の定着や技術向上のための講座の開催、ネットワークの強化に向けては、有機農業専任担当者による生産、流通、消費のマッチング活動、理解醸成に向けては全県的な研修会の開催やホームページでの情報発信を強化して参ります。さらに、様々な分野での多くの皆様と連携をし、有機農業を推進していくため、昨年設置いたしました県有機農業プラットフォームを核とした取組みを本格化させ、有機農業の定着推進を図って参ります。
【中川】農林水産省は本国会に種苗法の一部を改正する法律案を提出すると伺っております。種苗法の改正は苗やタネの育成者の権利を定め、登録品種の海外流出を防ぐことが目的とされています。一方で、「これまで行われて来た自家採種や自家増殖が制限されるのではないか」という農家の皆さんの不安もお聞きいたしました。農政部として種苗法の改正についての見解をお聞かせください。
【農政部長】種苗法の改正についてでございます。農林水産省は優良品種の海外流出を防止するため、品種登録の出願地、栽培地を国内等に限定できることや登録品種の自家増殖を許諾制とすること、また、在来種や品種登録されたことがない品種、いわゆる一般品種については従来通り農家の自家増殖を制限しない方針と報道されております。このうち、品種登録の出願地、栽培地を限定できるということにつきましては、本県が育成したオリジナル品種の海外流出を防止し、知的財産権の強化につながるものと考えております。また、登録品種の自家増殖を許諾制とすることにつきましては、種苗の入手が困難になる等、農業者の営農に支障が生じない内容となることが必要と考えておりまして法改正に向けた国の動向を注視し情報収集に努めて参ります。
【中川】種子条例を作る際に、県民の皆さんから寄せられた意見の中にあった「遺伝子組み換え農産物の不安」について、県は「遺伝子組み換え作物のガイドラインを作る」としてきました。現在の作業の進捗状況はどうなっているのか。お聞きします。また、県民の皆さんからは、遺伝子組み換えとともにゲノム編集についても不安の声がありました。国はゲノム編集は有機JASに含めないとしています。したがって、遺伝子組み換え作物についてのガイドラインは、ゲノム編集についても記載すべきと思うが如何でしょうか。
【農政部長】遺伝子組換え農産物のガイドラインについてでございます。ガイドラインの作成につきましては昨年の11月からこの2月にかけまして農業者の代表、農業関係団体、消費者団体等にガイドラインのたたき台についてその内容をご説明し、ご意見をいただきました。現在、これらのご意見をもとにガイドライン案の内容を検討しているところであります。ゲノム編集技術につきましては、従来の育種技術と同様の技術であり、活用を進めるべきとの意見がある一方、消費者の理解や不安解消が不十分との意見もあり、県内におけるガイドラインのたたき台の説明会におきましても、同様に両方の意見があったところであります。今回策定するガイドラインは、長野県の主要農作物及び伝統的種子に関する条例の4月施行にあわせまして、遺伝子組み換え作物と一般作物との交雑・混入を防止することが目的であり、現在ではゲノム編集について記載しない方向で検討しているところであります。なお、ゲノム編集技術について今後も議論の動向を重視しまして、状況の変化が生じた場合には、それに応じてガイドラインへの反映をしてまいります。
【中川】ゲノム編集された食品の安全審査とゲノム編集についての表示を国に求めるべきだと思いますが如何でしょうか。これは健康福祉部長にお伺いします。
【健康福祉部長】ゲノム編集技術応用食品の安全性の審査と表示についてでございます。まず、安全性の審査についてでございますが、厚生労働省ではゲノム編集技術は従来から用いられて来た育種技術と同様に手法で作られる食品であることから、食品衛生法に基づく安全性審査は不要としつつ、開発した事業者には当該食品の情報を国に届け出るよう求めているところでございます。また、表示につきましては、消費者庁が当該食品はゲノム編集技術によって得られた変異と従来の育種技術によって得られた変異と科学的に区別することが困難であること等から、食品表示法に基づく表示を義務づけることは妥当ではないというふうにしております。しかしながら、県民の中にはゲノム編集技術応用食品に対する不安の声があることから、国に対しまして意見交換等の場を介しまして、不安解消に務めるよう求めてまいりたいと考えております。
【中川】環境保全型農業直接支払い交付金の対象に自然農法が含まれていない理由はなぜでしょうか。環境に最も負荷を与えず持続可能な自然農法を県はどのように支援する考えをもっておりますか。農政部長にお伺いいたします。
【農政部長】環境保全型農業支払い交付金と自然農法についてであります。国の環境保全型農業直接支払い交付金は、環境保全に効果が高い営農活動を支援する制度で、具体的には地球温暖化防止のため、土壌中に堆肥や緑肥を鋤込み、大気中の二酸化炭素を吸収する取組みを行うことが交付の基本条件とされております。一方、自然農法は堆肥や緑肥を含め、肥料を一切施用しない農法であるため、国の交付金の対象とすることを困難としております。有機農業には様々な農法がありますが、県では有機農業推進の基本方針の中で、有機農業実践者の取組みが多様であることから、農業者の自主性を尊重することとしておりまして、農法に関わらず多様な有機農法の取組みを支援しているところであります。今後も様々な農法の有機農業の定着推進につきまして、有機農業を志す幅広い皆様を対象とした、技術・知識を習得するための講座の開催や研修先の紹介、アドバイザーによる技術的助言、農業者のネットワークづくり、販路拡大等を積極的に支援して参ります。
【中川】さて、種苗法の改正については国会審議はこれからです。国は種子法を廃止し、農業競争力強化支援法により都道府県が有する種子生産に関する民間事業者への提供を促進、さらに、種苗法改正で育成者権を強化するということですから、この話の流れは種子のビジネス化の促進ということになるのだと思います。ここに海外事業者が入ってくることも十分に考えられ、遺伝子組み換え種子が入ってくる恐れがあるわけです。国に対して種苗法の改正については慎重な審議を求めるべきだと思います。また、ゲノム編集について有機認証からは排除されているわけですけれども、表示も規制もしないということになれば、どうやって排除することができるのか、という疑問が残ります。やはり国に対してゲノム編集の安全性審査と表示を求めるべきだということを重ねて要請いたしまして一切の質問を終わります。