ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

ひめさゆり

2017-08-07 04:18:16 | 短歌





白かれと 人にいふかは ひめさゆり うすべにのこゑ うつむきてをり





*今日もツイッターの歌から採用しました。いろいろたくさんの歌があるのですが、こういう切れ方をする歌は、わたしたちにしては珍しいので、とりあげてみました。

白くあれと人に言うのだろうか、ひめさゆりよ。いや、その声は聞こえない。薄紅色の表情が、うつむいているだけだ。

「かは」は、「~なのだろうか、いや、そうではない」という反語の意を表す係助詞です。係り結びですから、対応する語は連体形になりますが、それは省略されています。

「をり(居り)」は、「~している」とか「したままでいる」とかいう、状態の存続を表す動詞です。これがわたしたちには少し珍しいのです。わたしたちはこのように、停滞している状態で歌を終わるのは好きではない。動詞で結び、発展的に活動が広がっていくという感じが好きです。たとえばこのように。




にきしねの ゑのこあふぎて 人を見る 目にうれひすむ わけこそとはめ




にきしねのような小犬が仰いで人を見ているその目に、憂いが住んでいる。そのわけを問おう。

こんなふうに、自分の意志で何かをする、という歌が好きです。ですから表題のような、停滞する状況で終わる歌を詠んでいると、ちょっとむずむずする。もう少し発展していきたいという感じがしますね。

だがこれはこれでまたよい。ひめさゆりという花は、薄紅色の美しい百合の花です。おとめゆりともいいうつむきがちに咲く姿は奥ゆかしい。とても珍しい花で、本州北部の特定の山に登らなければ見られないそうです。

しかし花はうつむいてだまっているだけのようだが、それだけではない。見えないところで何かをしている。実にこの花は一度、かのじょに大事なことを教えてくれたことがあるのです。信頼していた友達が裏切っているということを、かのじょに教えたことがあるのです。

かのじょはそれを知って、辛いとは思ったが、その友達を切った。気づいてほしいと思いながら、少しずつ離れて行った。だが友達は何も気付くことなく、はなれていくかのじょをとめもしなかった。

それで失ったものは、実に大きかったのだが。本当に人間というものは、最も大事なものというのが、わからない。

ですが、かのじょのほうは助かったのです。もうその友達に苦しめられることはありませんでしたから。その友達は影でかのじょにいやなことをしていた。それなのにかのじょの前ではとてもいい友達の振りをしていた。そのいやらしさを、花にとがめられたのです。

花はうつむいて咲いていながら、その友達のことをとても嫌がっていたのです。それで、かのじょにはわかったのです。






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