トランプ大統領を代表とする自国第1主義が世界的に広がりを見せている。この自国第1主義はかってのモンロー主義と同じであり、トランプ大統領が最初に始めたものでは無い。
そもそも国同士の争いは昔からある。15世紀末以降のヨーロッパ諸国によるアフリカやアジア、あるいはアメリカ新大陸に対する国家的な植民化競争、17~18世紀はイギリス、フランス等の激しい植民地争奪戦が、18~19世紀は資本主義国による植民地支配が激突した時代であった。
モンロー主義とはこのような時代を背景に1823年に米国モンロー大統領がラテンアメリカ諸国独立に対するヨーロッパの干渉を非難する主張であった。独立に反対する非難と言えば聞こえは良いが、自分らの利益を横取りするなと言う米国の自国第1主義であった。
19世紀を通じてモンロー主義は米国の外交政策の基本とされ、トランプ大統領の自国第1主義には立派な先例があるのだ。19世紀末に米国も国同士の争いに参加して第一次世界大戦を引き起こし、その反省から発足した国際連盟も世界各国を融合させることが出来ず結局第二次世界大戦を引き起こすことになった。
米国は連合国を主導して戦争に勝ち、世界のリーダーとしての米国の地位を築き、世界融合のための国際連合を結成し、またヨーロッパにはEUが出来た。このような自国第1主義の反省機運は第2次世界大戦後のことであり、残念ながら歴史的には自国第1主義がほとんどなのだ。
トランプ大統領の自国第1主義は、米国のそれまでの世界の警官としての役目を担う外交政策を放棄したために有名になったが、決して目新しいものではなく、現に典型をイスラエルの自国第1主義に見ることも出来る。
イスラエルは第2次世界大戦後、ユダヤ人迫害に反省したヨーローッパ諸国が現在の地にアラブ人を押しのけて作ったため現在もパレスチナ問題として数々の問題を引き起こしている。ヨルダン川西岸地区は第3次中東戦争でイスラエルによって占拠されたパレスチナ人の土地であるが、現在もそこに続々とユダヤ人を入植させ土地の拡大を図っている。
安全のためと称して入植地には高い壁を作ってパレスチナ人と隔離しており、国際的には違法とされているが、どこ吹く風で着々と進めている。トランプ大統領が先月28日に発表した中東和平構想は画期的と自画自賛しているが、イスラエルに与する提案であり、米国社会に深く浸透するユダヤ系国民に対する選挙目当てのプレゼントであると論評される。
また先日英国のEU離脱が実行され、英国のジョンソン首相はこれから世界の英国になると意気込みを示した。英国はかって大英帝国として7つの海を制してきたがその栄光をもう一度と夢見ていることに間違いない。正に自国第1主義の丸出しである。
第二次世界大戦後、米国は様々な先端技術を生み出し、情報化社会を先導し、世界の経済を引っ張てきた。しかし、中国の経済的な発展や技術的な進展が目覚ましく、中国企業のファーウェイが次世代通信規格5Gで世界の標準になる恐れが出始め、米国の世界1の座が危うくなると、米国は慌てだし米国第1主義が首を持ち上げてきた。トランプ大統領で無くとも例え民主党の誰かが大統領になっても多かれ少なかれこの傾向は維持されるであろう。2020.02.12(犬賀 大好-573)