日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

高齢者の介護問題は経済問題より影が薄い

2019年12月11日 09時20分58秒 | 日々雑感
 努力の先に希望があれば頑張れる。赤ちゃんや幼児の世話は2、3年間の期限があり、また成長に伴う無限の希望があり、多少の疲れは我慢できる。しかし、高齢者の世話の先は死である。死後財産を譲られる等の希望があればよいが、それもいつ手に入るか分からないのも大きなストレスの原因となる。1年後あるいは5年後に苦労が報われると分かればまだ覚悟を決めて頑張ることが出来るが、いつ終わりがやってくるか分からないのが普通であり、大きなストレスになるのだ。

 この厳しい現実を知ると、自分は子供の世話には絶対ならないと覚悟するものの、人間の本能は生である。増して認知症にでもなれば先の覚悟はどこかにぶっ飛び、残るは生への執着のみである。

 思い通りにならない高齢者の世話は大変なストレスを伴う。このストレスが介護対象者に向かうのは極自然である。厚労省による調査結果によると、高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等による、市町村等が虐待と判断した件数は、2018年度1723件で前年に比べ10.2%の増加がある。

 埼玉県で、今年2月、自宅で介護中の妻(77)を殺害したとして夫(83)が逮捕された。逮捕時に、認知症の妻の介護に疲れた、と話しており、その後食事をとらず自殺同様に死亡したそうだ。殺人は犯罪であるため覚悟の自殺をしたと思われるが容疑者の気持ちもよく理解できる。

 また、11月、福井県の民家で住人の会社役員(70)とその両親の3人の遺体が見つかった事件で、同居する妻(71)が殺人容疑で逮捕された。数年前から3人を一人で世話していたという。村一番の嫁との評判であったとのことであるが介護疲れの可能性が大きいようで、気の毒としか言いようが無い。

 このような老々介護、あるいは多重介護が殺人と直結するようであるが、身内の介護の仕事は他人任せに出来ないとの昔ながらの道徳観が強く残るためこのような悲劇が起こるのであろう。

 さて、動物の中でも高齢者の介護をするのは人間位であろう。赤ちゃんや幼児の世話は哺乳類であれば皆が間違いなく行う本能であろう。しかし、高齢者の介護となると人間以外の動物では聞いたことが無い。高齢者を大切にしなさいとの教えは儒教ではよく聞くが、恐らくすべての宗教がそうであり、介護は道徳の範疇だ。

 高齢者の世話は人間社会全体の問題であり、個人にだけ任せておけない。兎も角介護は大変な仕事であり、介護を専門とする施設でも不祥事は起こっているのだ。

 川崎市の有料老人ホームで連続殺人事件があり、救急救命士の資格を持つ施設の元職員が逮捕される事件が2016年にあった。恐らくこの職員は施設に入った頃は、社会の役に立ちたいとの情熱があったであろうが、現実の苦労に追われ殺人事件を起こすまでに至ったのだ。

 今月7日、菅官房長官は、訪日外国人の受け入れ拡大に向け、世界レベルの高級ホテルを50カ所程度新設の後押しをする考えを示した。この金があれば老人介護関係に回して欲しいと思うが、老人施設の建設は金儲けにはならない。経済効果を狙うとすればホテル建設であろう。

 食糧事情の改善や医学の進歩により高齢化社会は進み、介護の問題は社会問題としてますます大きくなるだろうが、経済の前には些細な問題となってしまう。これが現実か? 2019.12.11(犬賀 大好-556)

中高年のひきこもりは就職氷河期のせいか?

2019年12月07日 09時00分31秒 | 日々雑感
 今年3月末の内閣府の全国推計によると40~64歳の中高年のひきこもり状態の人が全国に61.3万人だそうだ。若い世代のひきこもりの原因は生まれながらの特質や家庭環境等によると思われるが、中高年の引きこもりは就職氷河期のため大学卒業後にうまく就職先を見つけられず、非正規やパートの仕事しかなく、結婚もできず、ひきこもりになってしまったケースが結構あるとのことだ。

 若いひきこもりは親と同居して食べるに困らない間は問題が見え難いが、年月が経ち高齢の親と中高年になったひきこもりの子との関係は深刻さを増し、こうした家族が関わる痛ましい事件も起こっている。

 今年5月登戸駅近くの路上で児童ら20人が殺傷された事件で、51歳の岩﨑容疑者が逮捕された。同容疑者は両親の離婚などで、幼少時に伯父夫婦のもとに引き取られたが、長期にわたって就労せず、外部との接触を絶った生活を送っていたとされる。

 また、6月には、息子を刺殺した76歳の容疑者が逮捕されることがあった。殺害された44歳の息子は定職につかず、アニメやゲームに心酔して、親の仕送りで暮らしていたそうだ。

 ひきこもりという言葉が社会に出始めるようになったのは、1970年代だったらしい。1976年、不登校や引きこもりや家庭内暴力などの数多くの非行少年をスパルタ式と呼ばれる独自の指導により矯正出来るという触れ込みで、戸塚宏氏により戸塚ヨットスクールが設立された。

 1970年代末から1980年代にかけて、校内暴力が社会問題化していたため、問題行動を繰り返す青少年の矯正施設として同スクールがマスメディアに注目され、また一方では指導行き過ぎによると思われる死亡事故も発生し、戸塚氏は大きな社会的批判も受けた。

 戸塚氏は現在も健在で、「ひきこもりが多いと話題の40代、50代なんて、40年前、私が治してあげられなかった世代じゃないですか」と語っているとのことだ。

 単なるひきこもりの人間と校内暴力等の問題行動を起こす人間を同じ指導法で矯正できるとは思えないが、戸塚氏によれば本質は同じと言うことかも知れない。

 先述の事件の当事者もひきこもっていたことは事実らしいが、幼い頃の環境も影響しているようであり中高年のひきこもりが就職氷河期だけが原因とは思えない。若い頃ひきこもり気味であった人間が就職氷河期を切っ掛けにひきこもり中高年になったのではないだろうか。

 兎も角1980年代~90年代は若者の問題とされていたが、それから約30年が経ち、当時の若者が40代から50代となりその親が70代から80代となった。若者のひきこもりはまだ立ち直る可能性が感じられるが、40代、50代となると人格が確立されており立て直りは極めて難しいと思われる。

 政府はバブル崩壊後の不況下で就職の機会に恵まれず、今なおその影響を引きずる「就職氷河期世代」の集中支援を打ち出しているが、これですべての人が救われるとは到底思えない。

 若年層のひきこもりは今でもあるだろう。このような人々を今から支援することの方が大切ではないかと思われる。2019.12.07(犬賀 大好-555)

外交交渉の結果発表は正直であって欲しいが

2019年12月04日 09時35分00秒 | 日々雑感
 日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄停止が先日なされたが、その発表内容が日本と韓国では随分異なっていることに今更ながら驚かされる。

 韓国政府の停止理由として、日本政府による韓国向け輸出管理措置の見直しについて日韓の対話が始められるからとしている。日本側の発表では、この件に関しては輸出管理という貿易上の措置を安全保障の問題であるGSOMIAとはリンクさせないという日本の主張を一歩も譲らず、日本側の完勝であったとの説明だ。これらの発表はいずれも国内向けであり、GSOMIAに関しても水面下で何かしらの交渉があったであろうから、本当の所は分からない。

 兎も角日本が完勝と言っても、これで貿易高の激減や観光客の激減等が解消され、日韓関係が良好な状態に戻れる訳でもなく、何をもって完勝と叫んでいるか全く理解に苦しむ。

 外交交渉において本当の所はよく分からない点では、すべての外交交渉でも同じであり、失敗したとの政府報道は無く、全て成果があったとの報道だ。

 さて、日米の貿易交渉については、日本車にかかる関税が継続協議となったこと、そして農産品に関して環太平洋経済連携協定(TPP)並みの開放となったことが成果とされ、今回の国会でその中身が精査される筈であったが、桜を見る会の不祥事で詳細な議論はされそうにもない。

 政府は農林水産物では品目ベースで関税撤廃率37%としか発表しておらず、この値はTPPの撤廃率より低く、日本の農業を守ったとの言い分である。しかし、金額ベースでの試算によれば決して誇れるような値では無いとのことだ。

 トランプ大統領がわざわざTPPから離脱をしてまでして、TPPを下回る成果獲得で納得する筈は無い。しかし、裏ではトランプ大統領はもっと大きな成果を手に入れたかもしれないのだ。今回の協議について大統領は、日本のデジタル市場を4兆ドル(約430兆円)規模で解放させた、と自慢したらしい。すなわち、米国サーバーから日本の消費者がダウンロードする際に消費税はかけるが今後関税はかけないと言う扱いを日本側が保証したらしい。

 この情報はネットからであり、新聞等のマスコミは取り上げておらず、真偽のほどはよく分からない。ディジタル税に関しては米国とEUが揉めているようであり、今後大きな問題となるかも知れない。関税ゼロなら消費者にメリットがあるのだから、安倍首相が自慢するように今回の貿易交渉結果は日米ウィンウィン状態なのかと言うと、本当の所が分からないだけにすこぶる疑問である。

 また、日ロ領土問題に関して、安倍首相は昨年11月、プーチン露大統領との間で、北方4島の内国後と択捉はさておき、色丹島と歯舞群島の2島に絞って交渉を進めるという、大幅な譲歩をして日ロ平和条約締結交渉を加速させると合意した。

 しかし、今年6月の26回目の日露首脳会談でも領土問題における進展は無く危惧した通りの独り相撲だったようだ。北方四島における共同経済活動について、観光ツアーや日露のゴミ処理の専門家の往来などのプロジェクトを実施することで一致したとの成果を誇ったが、本来の思惑は影も形も無かった。

 外交とは、利害を異にする他国との協議であり、両国にメリットが無いとうまく纏まる筈が無いが、自国が不利益になることは絶対に口に出せず、自国の成果のみを誇張する。これでは本当の所がよく分からないは当然だ。2019.12.04(犬賀 大好-554)