日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

不動産が厄介者になる時代ではあるが

2018年01月06日 10時21分02秒 | 日々雑感
 その昔、土地神話と言う言葉があった。どんな土地であれ、所有して居れば、いずれ価値が上がり、利益を生み出すものである、との意味である。実際バブル期には、多くの人が疑いなく信じ、競って購入したため、価格は異常に高騰したが、バブルとしてはじけ、土地神話は崩壊した。

 ご先祖様から受け継いだ土地は、子孫に引き渡すものであるとの意識は、必ずしも土地神話からでは無く、昔の家族制度の名残であろうが、この意識も時代と共に失われていくようだ。

 現在、日本は高齢化社会と共に人口減少社会に突入し、空き家・空き地・耕作放棄地など放棄された不動産が急増して社会問題化している。所有者不明土地問題研究会は、日本全土の所有者不明地が九州の面積を上回る約410万ヘクタールあるとの独自推計を公表した。

 親が亡くなり土地を相続する立場になっても、その土地から何ら利益を得ることが出来ないと分かると、敢えて遺産相続をしないのだ。しかし現法では、土地の遺産放棄は基本的には出来ないそうだが、遺産相続しないからと言って罰せられることは無い。

 遺産相続する権利は子供や孫、ひ孫と時間が経つほど増え、皆の合意を得るための手続きは複雑化し、土地がそのまま放って置かれる原因にもなる。こうして、所有者不明の土地はどんどん増えていくのだそうだ。

 土地が属する地方自治体も、その土地に利用価値が無いと受け取る気持ちになれない。誰かが相続してくれれば固定資産税が入ってくるが、受け入れれば雑草取りなどの管理に余分な責任を負うことになる。

 また、災害復旧、道路整備、といった公共のための事業を進める際に、所有者不明土地に勝手に手を加えることは、個人財産の侵害との立場からご法度のことだ。土地の所有者を見つけるためには、昔の土地台帳から探らなければならず、コスト増要因、所要時間の延長要因となる。

 かくして、誰からも見放された土地は厄介者として、他人に迷惑をかけることになる。行政も、元々誰かが所有していた個人財産であるため、勝手に扱うことは出来ないが、何らかの対策が必要となる。

 政府もようやく所有者不明の土地や空き家問題の抜本的な対策に乗り出す気持ちになったようだ。年明けに関係閣僚会議を開き、現在は任意となっている相続登記の義務化や、土地所有権の放棄の可否などを協議し、具体策の検討作業を急ぐそうだ。

 土地は不動産と称されるように天変地異でもない限り、永久に残る。現時点で何ら利益を生み出さないから所有者不明の土地となっても、これから先永遠に利益を生み出さないとは言えない。地域村おこし運動等の結果、価値が蘇るかも知れない。

 利益を生み出す土地にするための最大のネックは、土地が余りにも細分化されてしまったことではないだろうか。細分化された土地を集約することは大変な作業であるが、大規模化されれば利用価値は生まれる。政府はこの解決策に頭を絞ってもらいたい。

 またこれとは別に、国土交通省は昨年暮れ、所有者が分からない土地の有効活用に向けた新法案の骨子をまとめた。所有者不明の空き地に5年以上の利用権を設定し、公園や農産物の直売所など公益性のある事業目的に使えるようにする新制度の創設が柱である。

 もし、途中で土地所有者が名乗り出た場合、利用料の支払いや利用の中断も考慮されているようであり、財産権がいかに手厚く保護されているか窺い知れる。

 一部では所有者不明の土地が増え問題化していると言っても、まだまだ従来通り貴重な財産と考える人は多い。この点が問題解決の難しさであろう。2018.01.06(犬賀 大好-405)