日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

伝統美の国でのイノーベーションは無理?

2017年05月03日 09時19分06秒 | 日々雑感
 イノベーションとは、技術に限らず新しい社会的価値を生み出すことであろうが、一般的には技術革新に絞られ議論される。国連の世界知的所有権機関(WIPO)は昨年8月、世界128カ国・地域の技術革新力を比較した2016年のランキングを発表した。研究開発投資、特許出願数、科学技術論文数など82項目を国・地域別に点数化して作成した結果である。

 日本は、大学の水準や国際特許出願と科学技術論文数などを評価した ”イノベーションの質” 部門では1位を獲得したが、成果による新たな商品やサービスの提供などが少ないとして、総合では16位となったそうだ。

 特許や論文の内容がイノベーションと無関係で無いことは確かであるが、即イノベーションとなるかは疑問である。IPS細胞や青色ダイオードの発明は社会システムを変革するイノベーションとなろうが、4Kや8Kテレビの発明は特許化は出来ても社会構造まで変化させるものではない。昔から日本人は、独創性はないが改良・改善は得意とされてきた。イノベーションを社会システムや構造を変革させるものと捉えれば、先述の1位は過大評価となろう。

 日本は、米国に比較して技術ばかりでなく文化、スポーツにおいてもイノベーション的なものが少ない。ストリートダンス、ヒップホップダンスは米国発祥のダンスであり、動きの速さや踊りのスタイルには従来の社交ダンス等には無い個々の自由さがあり、ダンス文化を一変させるものである。元々は抑圧されたアフリカ系やヒスパニック系の文化であるそうだが、米国で花開き、若者の間では人気が高い。日本でも学校教育に取り入れられるまでになった。

 エクストリームスポーツ(extreme sports)とは、Xスポーツと略されるようであるが、速さや高さ、危険さや華麗さなどの従来のスポーツにない過激な要素を持ったスポーツの総称であるが、ほとんど米国で近年発祥したスポーツであろう。

 ネットで検索すると実に様々なXスポーツがある。スカイダイビングやパラグライダーは分かるが、始めて耳にするスポーツも種々ある。キャノピーパイロッティング、スカイサーフィン、ベースジャンピング、クリフダイビング等である。まだ、マイナーの域を出ないスポーツもあろうが、スケートボードやボルダリングはオリンピック種目となる程、世界中に広がっている。

 日本発祥のダンスと言えば、日本舞踊、盆踊りであり、スポーツと言えば剣道、柔道である。そこでは伝統を重んじ、独特な形(かた)があり、個人の勝手な動きは許されない。そこでは、伝統美である様式美や形(かた)が貴ばれ、歌舞伎や能の世界では家系まで重んじられる。ダンスやスポーツの世界においても個人の自由な発想に基ずく日本発のイノベーションは皆無であり、今後も出てきそうに無い。

 先日、”イノベーションへの道” と題する意見が朝日新聞、オピニオン欄に掲載された。そこでは、イノベーションを起こす人や企業を生み出すのに何が足りないか、2氏の意見が出されていた。

 その中でイノベーションを生み出せるのは異能、異端の人々だとし、原因を大人の世界に求めている。すなわち、タテ割、同調圧力、個人より組織といった日本特有の社会構造を指摘している。また、新卒で就職すると定年まで動かない組織の論理を優先したり、企業も困ったらお役所にお伺いを立てる村社会を指摘し、独立した個人としての自分の自覚の足りなさも指摘している。

 技術革新の点ではそれらも一因に違いないと思うが、文化やスポーツまで広げて考えると、イノベーション欠如の最大の原因は日本の教育制度にあるように感ずる。

 家庭教育や義務教育においては、”和を以って貴しとなす” の精神の下、平均的であることを是とする教育が基本である。平均値から外れることの恐怖を感じ、右向け右の同調圧力に従うことを、幼い時から刷り込まれてしまっている。社会の平均的なレベルアップには大いに役立っているが、異能、異端の人材を育てる制度になっていない。

 科学技術の長期的戦略として、2007年6月に閣議決定された戦略指針”イノベーション25”中でも、処方箋のキーワード ”出る杭” を伸ばす人材育成が叫ばれている。それから10年経ち、出る杭を伸ばす社会が定着ししつつあるとは到底言えない。
2017.05.03(犬賀 大好-334)

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