日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

オバマ大統領の核無き世界の困難さ

2016年04月20日 09時43分25秒 | 日々雑感
 オバマ大統領は、4月1日、ワシントンで開かれた核保安サミット後に会見し、核テロを防ぐ国際協力で成果を残したと強調した。核保安サミットは、オバマ大統領が、核テロは地球規模の安全保障に対する最も緊急かつ最大の脅威として提唱した国際会議である。サミットにおいては,世界の各国が連携して、核兵器の製造に適する品質の核物質であるプルトニウムやウランなどが核テロリズムに使われないように安全や保全を確保し、その維持と管理を厳格に行うことを議論したそうだ。

 オバマ大統領は、2009年のプラハで、「第一に米国は核なき世界に向けた確かな歩みを始めます」と宣言し、核軍縮と核の不拡散を進めることをプラハで宣言し、ノーベル平和賞を受賞した。「核軍縮と核の不拡散」は、米国の大統領ならば誰でも言いそうな言葉であり、「核無き世界への第1歩」がノーベル賞に値すると思われたが、手を付けたのは、この会議の提唱くらいであろう。

 核拡散防止は確かに大きな問題に違いないが、核保有する国がいくら声高に叫んだところで、断固既得権確保と叫んでいることと同じである。オバマ大統領には何かこれまでと異なる新しい取り組みを期待していたが、期待外れであった。

 核軍縮に関しては、米ロの核兵器はこの60年間で最も少なくなったと自我自賛したが、中国を始めとして米ロ以外の保有量は逆に増加しているとのことだ。イランの核開発は一応中止となったが、北朝鮮の核開発もかっては中止となったと宣伝していた.。しかし、いつの間にか再開された。核の保有は厳然と政治的な意味がある。イランは、潜在的核保有国のイスラエルと仲が良くない。イスラエルは武力を盾に周辺の国に気遣いなく傍若無人である。このような状況下で、イランがどこまで本気に核放棄を考えているか疑問である。まず、核放棄と引き換えに経済制裁を解いてもらい、国内の経済を立て直すことを最優先とするが、北朝鮮と同様に密かに核再開発を目論んでいると考えた方が自然である。

 日本政府は、今月10日、11日、広島で開催された主要7か国外相会議での[広島宣言」に、[核兵器の非人道性」は盛り込まず、「核兵器の使用が壊滅的結末を想起させる」との表現にとどめた。行間を読み取る文学的な解釈では全く同じことを表現していると思うが、外交文書では行間を読み取るとの感覚は全くない様だ。それでも、主要7か国の外相が揃って広島を訪れたことは画期的であろう。

 米国政府は、オバマ大統領が5月末の主要7ヵ国首脳会議で訪日した際、広島を訪問する可能性を探っているそうだ。今回のケリー国務長官の広島訪問の米国内での反応次第であるそうだ。米国では、原爆投下は戦争を早く終わらせ、米国民の犠牲の拡大を防いだと正当化する意見も強く、大統領の広島訪問での謝罪に反発する声が高まることを恐れているそうだ。

 原爆投下を謝罪しているような、していないような、玉虫色的表現は、得意の演説でいかようにでもなると思う。オバマ大統領は世界に大きな期待を抱かせ、ノーベル平和賞をもらったからには、広島・長崎訪問位のことは大したことではないだろう。是非訪問し、核兵器が大量殺人兵器であると言ってもらいたいものだ。

 オバマ大統領は、プラハ宣言をノーベル賞のためではなく、本心からの思いで行ったのであろうが、現実はロシアのクリミヤ併合等甘くは無かった。恐らく、核保有の重大さと、核無き世界実現の困難さをかみしめたことであろう。引退後は核保安サミットも無くなるようであり、残りの任期の内に、核廃絶に向けた、後世に残る、ノーベル賞に値する何かをやって貰いたいものだ。
2016.04.20(犬賀 大好-226)

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